この作品は
「飛天の御使い」のサイドストーリーです。
キャラ崩壊、セリフ崩壊の部分があるとは
思いますが、そこはご了承ください。
南蛮
先の蜀軍の侵攻を追い返した美以率いる南蛮軍は、その夜勝利の宴を開いていた。南蛮の新鮮?!な森の木の実や、川の魚介類、猪や像などが存分に振舞われていた。あの戦以来、兀突骨は文醜にべったりになっており、それを半ば呆れ気味に眺めているのが袁紹と顔良だった。文醜は男からの猛プッシュになれてないせいもあって複雑な心境だった。
「兀ちゃん、アタイには『斗詩』っていうオンナがいるから兀ちゃんとは付き合えないよ。なっ、分かってくれよ・・・。」
「・・・・・・猪々子、俺の・・・・。斗詩にはあげない。」
「だから・・・・・違うっての!もう・・・麗羽様ぁ、助けてくださいよぉ・・・。」
困っている文醜の姿を見ながら、苦笑している袁紹は兀突骨に向かって
「兀突骨さん、猪々子さんはわたくしの可愛い部下ですのよ。あなたがいくら猪々子さんのことを好きでもこれだけは譲れないんですの。分かってくださいますか?」
「兀ちゃん、文ちゃんや私たちと友達って事じゃダメかな?」
「・・・・・・・・・・・・・やだ。」
「「はぁ・・・・・・。」」
さっきからいくら説得しても全然きいてくれない兀突骨に3人はほとほと困り果てていた。
「美以さん、あなたからも何か言ってください。」
「ん?麗羽たちも南蛮にずっといればいいにゃ。もうみぃたちと家族みたいなもんなんだから・・・。南蛮も住んでみればいい所だにゃ?そのうちみぃたちが蜀の土地ももらって一大国家を築いてやるにゃ。そしておっきなムネムネに囲まれてみんな仲良く暮らすにゃぁ。」
美以の壮大な理想に袁紹も顔良も「「はぁ~。」」とため息をついた。そんな宴の最中、ミケ、トラ、シャムが血相を変えてやってきた。
「だ、大王しゃま、五胡にゃ。五胡の連中がやってきたにゃ!!!」
「数は30騎にゃ。もう直ぐそこまできてるにゃ!!」
「・・・・・にゃぁ」
その場の空気が一気に冷めていく。
「とりあえず、ここじゃ戦えないにゃぁ。みんな山の方へ向かうにゃ!」
美以の指示で袁紹たちは南蛮の山岳部ヘ向かって駆け出した。
五胡の兵の数は少ないが、全て騎馬隊で構成されているため機動力は圧倒的だった。五胡の兵は南蛮の兵たちを次々に殺していく。そして、確実に美以たちに迫ってきていた。崖沿いの道に差し掛かったときに後方から矢が飛来する。文醜はそれをかわすが、避けたはずみにバランスを崩して崖へと落ちていく。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「文ちゃん?!」「猪々子さん?!」
もうだめかと思った時、文醜の腕を掴んだのは兀突骨だった。
「・・・・猪々子、大丈夫?・・・・今・・・・引き上げるから・・・。」
「あ、あぁ、ありがとな、兀ちゃん。」
そう言って文醜を引き上げようとした兀突骨の背に矢が突き刺さっていく。
「・・・・・っ、・・・・・くっ・・・。」
「兀ちゃん?!」
苦しそうな兀突骨の表情に文醜が思わず声を掛けた。兀突骨の身体はそのまま崖へと落ちていこうとする。このままでは文醜ともども落ちてしまうと思った兀突骨は、文醜を掴んでいる腕を振り上げて文醜を崖の上に放り投げてそのまま落ちていった。落ちていく兀突骨は文醜に
「今まで・・・・・楽しかった。・・・・・猪々子・・・・・ありがとう・・・・。」
そう笑顔で言って崖を落ちていった。
「兀ちゃーーーーーーーーーーーん!!!!」
文醜は落ちていく兀突骨に叫ぶ。落ちていく兀突骨の身体は岩肌にぶつかりながら遥か下へと落ちていったのだった。文醜は目の前で起きた事に呆然としていた。初めて自分のことを好きだといってくれた男が目の前からいなくなった。今までそんなことがなかったからどう接していいのか分からなかったが、友と呼べるくらいの仲でもあった。南蛮で出会った勇猛な戦士・兀突骨。武人としてこれほど頼もしい仲間が出来たことを嬉しくも思った。そんな兀突骨が落ちていった。呆然としている文醜の元に袁紹と顔良が駆けつける。
「文ちゃん、敵がもう直ぐそこまで来てるよ。早く逃げないと・・・・。ってどうしたの文ちゃん?」
「猪々子さん?どうしたんですの?」
袁紹と顔良は文醜の顔を見て驚いた。崖を見つめる文醜の瞳からはとめどなく涙が流れていたからだ。そんな文醜の様子に困惑する2人。そんな2人に兀突骨のことを話す。
「兀ちゃんが、アタイを助けるために矢を受けて崖に落ちていったんだ・・・・。こんなアタイのために・・。」
「・・・っ、そんな兀ちゃんが?」「兀突骨さんが・・・・・・・。」
そんな文醜の言葉に顔良は信じられないといった感じで首を振る。袁紹はそんな文醜をみていられなくなり俯く。そんな3人のもとに五胡の騎馬が一騎やってきた。文醜に向かって振り下ろしてきた剣を文醜は斬山刀で受け止め、そのまま剣で振り落として切り裂いた。そんな文醜の瞳は涙でぬれてはいたが、その奥は強い怒りの光で満ちていた。
「・・・・き、・・貴様らぁ!・・・・よくも兀ちゃんを。許さねぇ!!!・・うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
文醜は斬り倒した兵の乗ってきた馬に跨り、五胡の兵たちのもとへ駆け出していった。そんな様子を見た袁紹は
「斗詩さん、私はこの事を美以さんたち知らせてきます。あなたは猪々子さんの手助けをしてあげて。」
「分かりました。」
そう顔良に指示を出し袁紹は美以たちのいる場所へと駆けて行った。顔良は金光鉄槌を構えて文醜の後を追っていく。その後、袁紹の知らせを受けた美以たちが五胡の兵のもとへ来た頃には、五胡の兵は文醜によって物言わぬ屍へと姿を変えていた。
そんな惨状の場に立つ文醜の瞳からは止めどなく、涙が溢れ出ていた。そんな文醜を袁紹と顔良が抱きしめる。文醜は在りし日の兀突骨の姿を思い出し、2人の胸の中でいつまでも泣き続けたのだった。
あとがき
飛天の御使い~幕間・四~を読んでいただきありがとうございます。
今回は『なかつきほづみ』さんの提案した企画である
「恋姫総選挙」のための応援作品です。
私は猪々子を猛プッシュして応援しているため
今回の幕間は猪々子を取り上げてみました。
楽しいオチのつく幕間のはずが、こんなにも悲しい物語になりました。
でも、なんか猪々子の涙する作品を書いてみたいと思っていたので
これはちょうど良かったのかもしれません。
拙い未熟な文章ではありますが、少しでも楽しんでもらえたら幸いです。
感想、コメントもよろしくお願いします。
いつも幕間は「限定公開」でしたが、今回は応援作品ということで
一般公開にしております。
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恋姫†無双の二次創作です。
蜀の侵攻を追い返し、宴を楽しむ袁紹たちの元へ
戦の影が忍び寄っていた。
今回は、「恋姫総選挙」応援企画作品です。
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