城の離れに有る一室、周りは木々に囲まれており凛とした空気と静寂に包まれ、茶室としては十分の雰囲気がある
そんな空気の中、華琳は静かに茶に口をつけ静寂に包まれた茶室に茶器が僅かに音を立てる
「いらっしゃい、そこに座りなさい」
「ああ」
入ってきた男は長椅子に何時ものように座ると、華琳は腰を上げ男の背に寄りかかるように座りなおし
後ろ手に男の頬の傷跡をさわさわと撫でた
「貴方、最近ずっと部屋で瞑想しているようね。何か掴んだ?」
「考えは纏まった。後は実行に移るのみだ」
「・・・心配無かったわね。定軍山から帰ってきてから腕も消えてはいないようだし」
肩越しに男の強い表情を見ながら、華琳は何かを感じたのかニッコリと微笑み、顔を前に戻して茶器を手に取り
口に運ぶ
「定軍山で体験した事は貴方に大きなものを残したようね」
「・・・そうだな、愛する者を失うと言うのがどういうことか良く解ったよ。これで皆の苦しみを真に理解できる」
「そう」
「秋蘭やお前達が傷を負っても俺は全ての怒りに飲まれる事は無い。俺は皆の怒りと共に戦う」
背中越しに男の拳が握り締める音を聞こえた。華琳は彼の纏う気迫の質が少し変わりより暖かく包むようなものを
感じて安心したように背中にもたれかかる
「月にとって貴方は良い目標ね」
「聖女に目標としてもらえるほど俺は価値の有る人間じゃないよ」
男の言葉に笑みで返し、華琳は背中越しに男の瞳を覗き込む
「・・・前に貴方の眼の濁りが嫌いでは無いと言ったでしょう?」
「ああ、好きではないが嫌いでもないと言ったな」
「もう一つ理由が有るのよ。優しさの証とは別のね」
そういうと華琳は茶器を卓に置き、真直ぐ前を向き真剣な眼差しを空へ向ける。男は肩越しにそんな華琳の表情を
見て、正面に向き直り静かに口が開くのを待った
「・・・・・・貴方の眼は楔なのよ」
「楔?」
「ええ、私や将、そして古参の兵達は戦が近くにありすぎる。だんだんと戦に慣れていってしまうの、戦に対する恐怖や
緊張感が麻痺してしまい、戦が起きればまたかとまるで当然のように受け入れてしまうのよ」
「・・・」
「それがどれほど恐ろしいことか解るでしょう?自分達自身が奮い立った理由に霞がかってしまう
戦を無くす為に起ったはずが、戦というものが日常化してしまってくるの。戦に晒される民も同じよ」
華琳は恐ろしいものを見てしまったかのように空に見上げた眼を地に伏せ、顔は青ざめていく。
両腕は己を抱きしめ、カタカタと震えだしてしまう。男は振り向く事はせずに、前を見てただ己の纏う優しい空気を
強くするだけ
「フフッ、有り難う。私はね、王で有る以上戦で悲しむ民を忘れてはいけないの。将や兵は良いと思うわ
それで恐怖から逃げられるなら。現実から逃げても良い、けれど私はそこから逃げてはいけない」
「俺はそのための楔か」
「そうよ、この大陸は異常、人間同士が殺しあっているのに。私達は生まれた時からそれになれてしまっているけど
貴方はそうじゃない、慣れる事も無ければその眼が有るからずっと現実を見て生きていける」
「その代わりきついぞ」
「フフフッ、本当にきついのでしょうけど、そんな風に軽く言われるときつく感じないわ」
男の冗談めかした言い方に華琳はつい笑ってしまう。己をズタズタにするほどの痛みや暗い感情を知りながら
軽く笑顔で言ってしまうのだから、他人が聞いたら『本当に辛いのか?』と疑ってしまうだろう
「貴方を見ていれば私は感覚が麻痺することも無い、この狂った現状を冷静に見ることができる。
貴方の住む天の国は戦があまり無かったのでしょう?」
「俺の住む周りでは無かった。そして此処に来た今でも戦は大嫌いだ」
そう言い切る男は眼に強いものを宿し、華琳はその眼を見ながら冷めてしまった茶を口に含み、ゆっくり飲み込む
己の心を支えるものは此処に有ると、微笑みながら
「・・・そういえばフェイに何か恩賞を与えたそうだな」
「ええ、貴方が屋敷で寝ている間に西涼太守を任命したわ。桂花や鳳と話したことを木管に記録して頭にも入っているから」
「それに己が生まれた土地でも有るからか」
「ちょうど良いでしょう?戦には連れていけないしね」
「そうだな・・・俺にも茶をくれよ」
「自分でやりなさいな、私に給仕してもらおうなんて甘いのよ」
「お前が呼んだんだろう?まったく」
男はブツブツと言いながら茶を入れようとし、華琳はその作法に駄目だしをしながら笑っていた
お互いにこの平穏な時間が永劫に続く世にすることを心に誓いながら
演習場に土煙を上げ転がり倒れ込む一人の姿、女は地面に伏す者にゆっくりと歩み寄り剣を構え振り下ろす
地に伏す男は両腕で地面を叩き、振り下ろされる剣を避け跳ね起きると地面の落ちた剣を蹴り上げ手に持ち
横薙ぎに振う
ゴキンッ
女は横薙ぎを恐れる事無く踏み込み、男の顎に掌底を打ち込み鈍い音を立てて男はまた倒れる
仰向けに倒れる男の頭を鷲掴みにして持ち上げると、ずるずると引きずり端に置いてある飲料用の瓶の水を
頭からザバザバとかけ、気を失った男の目を覚まさせる
「起きろ、これで終わりか?」
「・・・がはっ、ごぼっ・・・はっ、はぁっ・・まだだっ」
春蘭は男が眼を覚ますのを確認すると男を無造作に放り投げる。地面に放り投げられた男は転がる木剣を拾い上げ
ガクガクと震える足を無理矢理立ち上がらせる
「霞に感謝するんだな、この木剣が無ければお前は何度死んでいるか解らん」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・次はっ・・・霞の番だから言っておく」
剣を構え、立ち上がる男を見ながら満足に笑うと、春蘭は握る木剣を握り締め男に容赦の無い一撃を振う
木剣を腰から抜き取り二本を盾にし脚で防ぐが身体ごと吹き飛ばされまた地面を転がる
「四本では逸らすこともかわすことも出来んのなら受けるか、だが受けるのも満足にいかんのだ
考えろ、お前だけの戦い方はまだ有る筈だ」
「ゴフッ・・・あ、ああ、解っているよ。考えは纏まっている。後は一人残らず俺は戦うだけだ」
男の答えに春蘭はニッコリ笑ってまた剣を構える
「ちょっとまった!」
「む?詠か、どうした?」
「どうした?じゃ無いわよ、あの馬鹿は何かしたの?怪我が治ったばかりだって言うのにズタぼろじゃない」
指を指す方には地面に仰向けに転がり、来ている服がボロボロになって立ちあがることのできない昭が居た
「昭が望んだことだ、武官全てと手合わせをするとな」
「はぁ?馬鹿じゃないの!?何考えてんのよアイツはっ!」
詠は驚き呆れ顔になると男の方へずかずかと歩いていく、そして荒い息遣いで寝そべる男の前にかがんで鼻頭を指で弾いた
「いたっ」
「痛いじゃないわよ、何やってんのよ?」
「う~ん・・・色々と考えた結果だ」
困ったように笑顔を向ける男に溜息を吐き、詠は頬に手を当て膝の上で頬杖をつく
「・・・・・・はぁ~、馬鹿なヤツの軍師になったものだわ、アンタの考えを僕は信じるだけよ
きっと間違って無いだろうからね。ただあんまり心配かけるんじゃないわよ」
「有り難う、所でどうしたんだ?」
「これからの方針が決まったの、その報告よ。正式には明日の軍議で知らされることになるわ」
その言葉を聞いて男の瞳の色が変わる
ようやく決まったか、俺の体の回復を待ったという事は、俺が率いる軍で攻めるということだろう
攻めるなら定軍山だな
「僕達が定軍山に行くことになったわ、武都は霞と春蘭、そして稟よ」
「華琳は?」
「許昌に残って他の将と呉に睨みを効かせる。流石に全ての将が出払ったら狙ってくるに決まってるわ」
なるほどな、呉は力を着けてきている。放って置けば必ず牙をむく、が今は下手につつかず攻めてきた蜀だけに
集中したほうが良い、そして蜀と呉が手を組むのを待つほうが良いとの判断か、しかし武都に将が三人で大丈夫なのか?
確かに俺達の最も攻撃力の有る部隊ではあるが
「春蘭達のことが心配?大丈夫よ、稟の話しだと既に武都は内部から城壁を壊したり、流言や陽動をして有るらしいわ
半分を手中に収めてしまえば稟の策に良いようにやられるだけよ」
「凄いな、稟には相変わらず驚かされる」
「アンタが評価したんでしょう?神機妙算って」
「昭、もう動けぬならば私は稟と次の戦について話して来るぞ」
「ああ、有り難う」
春蘭は男の頭をワシワシと撫でて笑顔を向けると、木剣を地面に突き刺し城へと向かう
「それで僕達はこの間と同じ編成よ。凪たちと秋蘭、風、僕、後は一馬」
「あ、一馬なんだが」
「うちの副官に頼むわ」
いつの間にか来ていた霞が詠の後ろから覗き込むように見下ろして声をかけてきた
ニコニコと笑って、その眼は期待に満ちていたが・・・
「駄目」
笑顔の詠の一言で口をあけて呆然としてしまっていた。詠は見上げて笑顔で霞の顔を睨んでいた
霞は困った顔になって詠を後ろから抱きしめ必死にお願いをしていた
「なぁなぁ、そんなこと言わんと頼むわ。昭だってエエって言ってくれたんやで!」
「駄目よ、一馬は元々昭を離脱させる為に居るんだから」
「詠、俺なら大丈夫だよ」
「うっさい」そういって詠は男の額を叩く、男は額をこすりながら詠の瞳を見ると、理解したのか
口を噤んでしまった
「うぅ、昭は大丈夫って言っとるし、実際秋蘭おるから大丈夫やろ~!」
「駄目、まったく、一馬の変わりにもっと良い副官つけてあげる」
詠から発せられた意外な言葉に霞は一瞬動きが止まり、更に詠を強く抱きしめて眼を輝かせ始めた
「な、なんやて?誰やっ!一馬よりなんて誰をうちに着けてくれるんやっ!!」
「フフッ、無徒をつけてあげる」
自信ありげに言う詠に、霞は頭に疑問符を浮かべ頸を捻る。
しかし俺は驚いてしまう、まさか詠は長老のことに気が付いたのか?それとも自分自身で話したのか?
もし自分で戦うことを望んだのならどれだけ月と詠は彼らに認められたというのだろうか、流石は聖女
「誰や?聞いたこと無いで」
「そうでしょうね、真名だし。名前は張奐よ。聞いたこと無い?」
その言葉を聞いて霞は酷く驚き、抱きしめた詠をゆっくり離しながら動きが止まってしまう
当たり前だ、武を誇るものが張奐を知らないわけが無い。張奐は宦官の暴政を一人で暴き暴れまわった剛勇だ
戦で上げた武功、頸は数知れず。だが宦官の悪性が蔓延り始め、一人で天子様を守り抜こうとした結果
家族を人質に捕らえられ、最後は脚の腱を切断されて家族を殺された。その後天子様の願いにより一人野に放たれ
彷徨っていたところを俺が邑に迎え入れた。その時の長老の瞳は何も無くただ乾き切った心を写すだけだった
「・・・ホンマか?あの張奐がまだ生きとって、そんでもってうちの副官に」
「ええ、本人にも聞いてみたら?後ろに来てるわよ」
振り返ると真後ろに立ち、見下ろす老人。その身体からは恐ろしいまでの気迫がその身体に押し込まれているのが解る
霞は条件反射のようにその姿を見て口の端を吊り上げ笑っていた
「これは失礼いたしました。貴女様のその身に押さえ込む気に反応してしまいました。お許しください」
そういうと老人は跪き、頭を下げ拳包礼を取る。よく見れば着ている鎧の胸には月詠と書いてある
俺はそれで納得がいった、長老は月と詠の為に立ち上がったのだ。もう一度自分の信じるものを守る為に
「我が名は張奐、真名を無徒と申します。この度は聖女の兵の一人として私は貴女様の副官として御世話になります」
「ほ、ホンマやったんやな。あの双武の張奐がうちの副官やなんて!こちらこそよろしく頼む、うちの真名は霞や!」
霞は長老の手を握って心から喜んでいた。良かった、これで霞が翠と対峙してしまった時、長老が兵の指揮をとる
長老の指揮ならばそうそう敗れることなどありはしない、しかし双武とはなんだ?
「なぁ霞、双武って何だ?」
「はぁ?知らんのか?双武の張奐ちゅうて、武器を剣でも槍でも二つ使って戦う有名な異名やで」
「ああ、なるほど」と感心していると、長老は寝そべったままの俺の近くに、詠の隣に膝を着くと
今度は俺に頭を下げてきた。
「昭様、恥ずかしながら戦場に戻る決意をしてきました」
「長老が決めたことなら反対しませんよ。共に戦いましょう」
「これからは聖女様達と同じよう真名で御呼びください、こうすることが貴方様へ私からの恩返しと思ってくだされ」
無徒は落ちた木剣を拾い上げ、脚をゆっくりと動かし始める。どうやら脚は完全では無いようだ、華佗から腱は繋げたと
聞いていたが、そこから歩く練習はどれだけ辛かったのか想像は出来ない。恐らく血の滲むような訓練の末今のように
なったのだろう。それだけで無徒の覚悟が計り知れる
「昭様はまだ動くことが出来ないようですから、それまではこの老兵がお相手しましょう」
「お・・・おおおっ、おおおおおっ!!もちろんやっ!うちの武とどっちが上か勝負じゃ」
霞は武者震いをしながら木で出来た偃月刀を握り締め、声を上げて喜び振り回す。そして一直線に
無徒へと走り、偃月刀を頭上へ振り下ろし、無徒は片手で剣を振り回し偃月刀を弾く
「あ~あ、始まっちゃったわね」
「だなぁ、しかしよく無徒が戦う気になったな」
「アンタの話を聞いたからよ」
「俺の?」
「無徒の足は月や僕を守る為に必死で治してた。その後、無徒はアンタが傷つきながら戦場に居ることを聞いて
もう一度戦場に立とうと決心したのよ。これがせめてもの恩返しだって」
俺は空を見上げた。恩返しか、俺はそんなことより生きていてくれるだけで十分恩返しになるんだけど
だから俺個人としては、戦場に立つのは反対なんだよなぁ・・・
「華琳にも話しは通しておいたし、大丈夫よ。無徒は簡単に死んだりしないわ」
「ああ、華琳はなんて?」
「解るでしょ?喜んでたわよ。素晴らしい人材が増えたとね」
そうだな、華琳なら無徒が仲間になるのを喜ぶだろう。前々から眼を付けてはいたようだし、霞の副官ならば
簡単に死ぬ事は無い、なぜなら俺の自慢の義弟が鍛えた兵たちが居るからだ
「さて、それで戦は定軍山に僕達は向かうわけだけれど」
「敵は?」
「斥候の話しによると近くの新城には韓遂と黄忠、そして厳顔が居るらしいわ」
・・・厳顔まで居るのか、翠と蒲公英は下がったというより罰せられているんだろうなぁ
話しだとどうやら無断で兵を動かしたようだから、自業自得だな
「経験を豊富に積んでる奴等が居るから面倒ね、それに定軍山がよっぽど欲しいのでしょう
それだけの将を置いて退かないでいるのだから」
「そのようだ、攻めてこないのは決め手が無いからだろう?秋蘭を罠にはめたのもその理由か」
「ええ、南と荊州に戦力を集中させているし、ほとんどの将は其方に行ってるようだからね」
いくら良い将が多いと言っても兵数は俺達の方が上、将によって兵の力が変わる事は有るが、俺達の将も負けては居ない
戦は将が多くとも兵がそれに伴わなければ意味が無い、将が互角なら余計だ
「今回はアンタと真桜に頑張ってもらうわよ、解ってるでしょう?」
詠は俺を見てニヤリと笑う、俺はその悪意のこもった笑いを見て背筋に悪寒が走った。今回、風の出番は無いな
次の、新城攻略で力を発揮してもらうか
「真桜は?」
「先に話して置いたから仕込みはバッチリよ」
バキンッ
木同士がぶつかり合う音が響き、地面に木剣が突き刺さり、張奐は刺さって剣を見て霞に向き直ると拳包礼をとって
詠の元へと歩いてくる。どうやら霞の勝のようだ
「めっちゃ強い!そんで楽しいっ!また頼むわ、その脚が全快したらな」
「この老兵を気に入っていただけて恐悦至極、その時は手加減しませんぞ」
ニカっと笑い背中からかけられた霞の声に言葉を返す。やっぱり無徒も武が好きなのだな、元々己の武勇を
誇っていたのだから当然だろう。脚が完全に治ったときはどれだけ俺達の力になってくれることか、頼もしい限りだ
「詠様、場所を移し今回の作戦について話すのですかな?」
「そうね、アンタの屋敷で良い?」
「なら夜だな、今から俺は霞と手合わせだ」
俺の言葉を聞いて詠はため息を吐いて呆れ顔、「馬鹿ねぇ、ホントに付き合いきれないわ。また秋蘭が泣くわよ」
そういって軽く手を振り、俺に頭を下げる無徒と共に行ってしまう。解っているさ、俺が軍を率いるなら俺は簡単に
死んではいけない、そして昔のように己を捨てて戦えばまた皆を、秋蘭を泣かせてしまうんだ。
「ほんならやろうか、ホンマに剣は四本で良えのか?」
「ああ、本気で来てくれ。俺は全て見切って見せる」
「カカカッ!相変わらず良い眼をしよる。ほんなら行くで」
「・・・・・・ホント、アンタは馬鹿ね」
「あははははは・・・」
屋敷では傷だらけの身体で客間の椅子に座る男が居た。隣の秋蘭は困った顔をして男を見つめ
周りの者達は呆れ顔だったり、傷だらけの身体を見て痛そうに顔をゆがめたりと様々だった
「はぁ・・・それじゃ説明するわ。まずは編成は袁家の時と同じ、今後はこの編成が叢雲の軍として動くことになるわ」
「それは決定ですか!」
凪たちは声を上げ顔を見合わせてて喜び、一馬もまた義兄の将として組み込まれたことを心から喜んでいた
「ええ、軍議でも正式に決定したわ。牙門旗も秋蘭と区別をつけるために叢の牙門旗を作る予定よ。僕達は雲の兵、今後は
各人己の行動を見直すように、特にあんたら三人は気をつけなさい」
「ううぅ・・・」
「あははーなのー」
「バレとるなぁ・・・」
「私達の軍の将は仕事サボってるだの街中の有名菓子屋前で徹夜で並んでるだの、変な噂の有る軍にしたくないからね」
詠は凪たち三人を指差す。三人は苦笑いしているが、どうやら警邏中に菓子を買いに行ったり、茶屋でサボっているのが
耳に入ったようだな。今後詠の駄目だしで少しは厳しくなるかもしれないなぁ
「私達の編成なんだけど副官は秋蘭、軍師は僕と風。兵の統括は凪に任せるわ」
「今回はどうするのなのー?」
「最初は昭と真桜が、その後二手に分かれるわ、昭と秋蘭と僕。凪達と一馬、風ね」
「よろしくおねがいしますねー」
「はい」
風は相変わらずといった感じで今回組む凪達と挨拶をしていた。となると風と組むのは一馬か
疾風と風、良い組み合わせだ
「一馬、風を頼む。今回俺の隣には秋蘭が居るから風の足になってやってくれ」
「はい兄者、風さんを必ずやお守りします」
「ふふふ、頼もしいですねー。戦で大切なのは速さですから、一馬君にはきたいしているのですよ」
一馬ならば山岳地帯でさえ馬を操るのは余裕だろう、風に倒れられるのは困るからな。俺と真桜の策が終わり次第
凪達と入れ替わる。その時、風と一馬には存分に活躍してもらおう
「敵の情報は変わっていないのか?」
「秋蘭は軍議に出たわよね、あれから変わってないわよ」
「そうか、ならば敵は老獪な戦術を組んでくるやもしれん。凪達は気を抜かんようにな」
秋蘭の言葉に凪達の目の色が変わる。前回、春蘭と秋蘭、そして俺と一馬が手傷を追わされたことを思い出したのだろう
どうやら士気は十分のようだ、だが秋蘭のいうとおり敵は英雄と経験豊な将二人。気など抜けない
「今回は袁家の時と違って定軍山の後、連続して新城を攻めるわ、昭と真桜が巧く行けば城攻めも負担が少なくなる」
「真桜、よろしく頼む」
「任しといて!うちら工作隊の力見せたるわ!!」
「それじゃ具体的な策の話しに移るわ・・・・・・」
策は俺と真桜にかかっている。今回の為にもう一着外套を作ってもらわないと駄目だな。黒い外套を
今度はボロボロにしないように作戦が終わり次第脱ぐとしよう、秋蘭に話せば服屋に頼まずに作ってくれるだろう
秋蘭が言うにはよく着るなら作った物を着て欲しいようだ、せっかく作ってもらうんだ長く着ていけるよう大事にしよう
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定軍山にまた入ります
最近の睡眠時間は3~4時間、私はそのうち倒れます
私に休みと時間を下さい
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