No.151008

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 第七話

狭乃 狼さん

刀香譚七話です。

突如現れたななし。

その真意、そして、結末は。

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2010-06-16 14:03:38 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:28673   閲覧ユーザー数:24059

 「牢破りまでして、何が狙いだ」

 

 一刀が目の前の男に問いかける。

 

 「決まってるだろうが。貴様だ。貴様の首を落とすことだ!!」

 

 男が一刀を憎らしげににらみつける。

 

 「・・・逆恨みか。情けないやつだ」

 

 「何とでもほざけ!!さあ、覚悟してもらおうか!?」

 

 「・・・おいおい、まさかとは思うが、そこにいる五千程度の戦力で、俺たちを討とうってのか?」

 

 「くくく。そのまさかよ。貴様らなど、これだけの兵がいれば十分」

 

 「・・・なめてくれる。たかが詐欺師の分際で」

 

 怒りをあらわにする白蓮。

 

 「・・・どっかに伏兵でもいるのか?それとも、援軍のあてでも?」

 

 「そんなものぁ、いねえよ。・・・鬼が一匹いるだけだ」

 

 「・・・鬼?」

 

 「そうだ。天下無双の鬼神がなあ!!」

 

 男がそう言ったときだった。

 

  うわあああああああああああああ!!!

 

  ぎゃあああああああああああああ!!!

 

 はるか後方から、無数の悲鳴が轟いた。

 

 「な、なんだ!?」

 

 「始まったぜ!地獄の殺戮劇が!!」

 

 

 

 一刀と桃香、白蓮が男と対峙するのは幽州軍五万の最前。

 

 そのはるか後ろ、後曲に待機していた、易京所属の元劉虞軍の兵たちが、次々と屍の山へとその姿を変えていた。

 

 そこに立つは一人の少女。

 

 その真紅の髪を揺らしながら、まるで雑草でも刈るかのように、次々と兵士たちをなぎ払っていく。

 

 「止まれ!!」

 

 ぴた。

 

 突然の声に少女が動きを止める。

 

 少女の前に、三人の人物が立ちはだかる。

 

 愛紗、鈴々、華雄である。

 

 「・・・たった一人で、二万近い死傷者を出すか。何者だ、貴様」

 

 「こいつ、めちゃくちゃ強いのだ」

 

 「ああ。この私が、敵を前にして震えが止まらんとはな」

 

 「・・・おまえたち、恋の邪魔する?・・・なら、殺す」

 

 戟を構える少女。

 

 「そう簡単にやれると思うな!関雲長、参る!!」

 

 少女に向けて、全力で偃月刀を振るう愛紗。が、

 

 ガキッ!!

 

 「な!?」

 

 「・・・おまえ、弱い」

 

 愛紗の渾身の一撃を軽々と受け止め、逆に吹き飛ばす。

 

 「なら、こんどは鈴々が相手なのだ!!たりゃーーーーー!!」

 

 鈴々が丈八蛇矛を次々に繰り出す。

 

 しかし、少女はそれすらも軽くいなす。

 

 「・・・お前も弱い」

 

 どがっ!!

 

 「うにゃ!!」

 

 戟の柄で鈴々を弾き飛ばす少女。

 

 「関羽!張飛!ならば今度は私だ!!我が戦斧を受けよ!!」

 

 「ふん」

 

 華雄の轟撃を片手で受け止める少女。

 

 「・・・馬鹿な」

 

 「・・・お前も、恋の敵じゃない」

 

 ぶんっ!!と、手に掴んだ斧ごと、華雄を振り払う。

 

 

 「華雄!!くっ、これほどのやつが、この世に二人もいるとは!!」

 

 「(ぴくっ)・・・二人?違う。恋は一人だけ」

 

 「・・・貴様のことではない!我が主にして義兄、劉北辰様のことだ!!」

 

 愛紗が少女に言う。

 

 「・・・そいつ、強い?」

 

 「そーだ!!お兄ちゃんなら、お前なんか敵じゃないのだ!!」 

 

 「・・・なら、そいつを倒す。そうすれば、おかあさん、助かる」

 

 立ち上がった三人には見向きもせず、その場から歩き出そうとする少女。

 

 「待て!!貴様を義兄上のもとには行かさん!!」

 

 「そーなのだ!!お前の相手は鈴々達なのだ!!」

 

 少女を囲む三人。

 

 「・・・なら、お前たちを殺してからにする」

 

 「やれる物ならばな!!関羽!張飛!」

 

 「応(なのだ)!!」

 

 「・・・来い」

 

 

 

 「愛紗たちが?!」

 

 「は!お三方で相手をしておられますが、足止めが精一杯かと!!」

 

 「うそ?!愛紗ちゃん達が三人がかりで?!」

 

 「なんてやつだ」

 

 後曲からもたらされた報告に、驚愕する一刀たち。

 

 「ふん。三人がかりとはいえあの娘を止めるか。やはりたいした者だな、関羽と張飛は」

 

 薄ら笑いを浮かべて言う男。

 

 「・・・おい、ななし野郎。いったいあの子は何者だ」

 

 「聞いた事ぐらいあるだろう?飛将軍、呂奉先の名は」

 

 「・・・まさか、あの子が、呂布?」

 

 「そう、愛しい愛しい、俺の娘さ」

 

 「「「はあ?娘ぇ?」」」

 

 ななしの発言に驚く一刀たち。

 

 「正確にゃあ、ここの太守をやってる丁原の養子だがな。その丁原を一月ほど前に俺の嫁にしたのさ。・・・いい薬があったんでな」

 

 「まさか・・・、貴様、陽建どのを?!」

 

 「死んじゃあいねえよ。まあ、ちぃとばかり量を間違えちまって、人形みたいになっちまったがな」

 

 「この・・・外道が!!」

 

 剣に手をかける白蓮。

 

 「あいつは親思いのいい娘だぜぇ?母親を元に戻して欲しけりゃ、俺の言うことを聞けと言ったら、素直に聞いてくれたぜぇ」

 

 げらげらと下品に笑うななし。

 

 「・・・許せない」

 

 スラリと、腰の靖王伝家を抜き放つ桃香。

 

 

 

 「二人とも、待て」

 

 一刀が二人を制する。

 

 「一刀!何で止める!?」

 

 「おにいちゃん!!」

 

 二人には答えず、ななしに歩み寄る一刀。

 

 「・・・おい、本当に丁原さんを元に戻せるのか?」

 

 「くくく・・・。さあ、どうおも・・・う・・・」

 

 ななしが一刀の方に振り向いた瞬間、その表情が突如凍りつく。

 

 「??何だ」

 

 その表情の変化に、首をかしげる白蓮と桃香。

 

 「おにいちゃん・・・?」

 

 「もう一度聞くぞ。丁原さんは元に戻せるのか」

 

 一歩。一刀がななしに寄る。

 

 「ひっ!く、来るな!!」

 

 さらに一歩、無言で踏み出す一刀。

 

 へたり、と。その場に腰を抜かすななし。

 

 見れば、その背後にいる兵たちも、全員が腰を抜かして座り込んでいた。

 

 一刀がななしの前に立つ。

 

 「・・・どうなんだ。丁原さんは治るのか?」

 

 「む、むむむ、むりだ。そんな事、出来っこねえ!!」

 

 「なら、丁原さんはどうなる」

 

 「ひ、一月近く薬漬けだったんだ。も、もう永くねえ」

 

 「そうか。・・・だそうだぞ、どうする」

 

 「「え?」」

 

 桃香と白蓮が視線を背後に転じる。

 

 そこには、

 

 

 「りょ、呂布!!」

 

 愛紗達を振り切ってきた紅髪の少女、呂布が立っていた。

 

 「・・・おかあさん、助からない?」

 

 「い、いや、だから、な」

 

 「・・・おかあさん、死ぬの?」

 

 ざ、と。踏み出す呂布。

 

 「ゆ、許してくれ!!な!?そ、そうだ!母親ぐらい、俺がすぐに新しいのを見繕ってやる!!だから!!」

 

 「・・・恋のおかあさんは、おかあさんだけ」

 

 ななしに向かい、歩き出す呂布。

 

 「おかあさん、返せ」

 

 「ひっ、ひっ、ひいいいいいい!!!!」

 

 地べたを這いずり、逃げ出そうとするななし。

 

 だが、体は全く動かない。

 

 「・・・おかあさん、返せ」

 

 一閃。

 

 方天画戟で、足を切断される、ななし。

 

 「ぎやあああああああ!!!!」

 

 のた打ち回るななし。

 

 次に、腕。「ひぎいいいい!!!!!」

 

 さらに、胴。「かはあああああ!!!!」

 

 そして、最後に、頭。

 

 すべてが終わったあと、それはもはや、原形をとどめてはいなかった。

 

 がらん、と。

 

 呂布の手から戟が離れる。

 

 「・・・うああああああああああああっっっっっっ!!!!!!!」

 

 呂布の叫びが、あたりにこだまする。

 

 長かった夜は明け、日が昇り始めた。

 

 


 
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