雨が降っていた。
天がバケツをひっくり返したかのように、ざあざあ雨が降っていた。
私はベッドの上で天井を見つめながら、外で振り続ける雨音を聞いていた。
久しぶりのそのリズムに目を閉じ、身体で感じる。
今日、やっと梅雨が明けた。
今年の梅雨は長かったな、と覚醒してきた頭で思っていた。
水無月を過ぎ、文月の下旬になった今日、やっとのことでいつも通りの雨天になった。
水無月。
梅雨に入るその季節が、私は大嫌いだ。
いや、この街の皆は同じ思いだろう。
水の無い月――雨の降らない月なんて、なければ良いのに。
晴天は、何をするのにもやる気が出ないし、悪いことが起きそうな気もする。
ドラマでも小説でも、失恋や殺害みたいなシリアスシーンに、晴れは付き物だ。
晴れだと、何だかテンションが下がる。
シーツを指先で捲り、上半身を起こした。
頬に張り付いたネイビーブルーの髪の毛を指でつまみ、後ろに払った。
腰まである私の髪は、さらりと揺れる。
勿忘草色のカーテンを開けると、窓を打つ雨粒が目に入った。
青レンガのアパートの三階から地を見下ろすと、水たまりが幾つも出来ていて、それに雨粒が落ちている。
「……良い天気」
気分がよくて、つい呟いてしまった。
自然に顔が綻ぶのを感じる。
濃いブルーのカーペットを裸足で踏み付け、白のワンピースのまま、オリエンタルブルーのエプロンを纏った。
ラジオをつければ、どうやらやっと夏到来らしい。
せっかく梅雨も明けたことだし、お昼は外で食べようか。
久しぶりの雨に機嫌が良い私は、鼻歌なんか歌ったりして、キッチンにチョコレートケーキを焼きに歩いていった。
Good morning,Blue-Town!!!
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ブルータウンに雨が降る。
しとしとざあざあ、雨が降る。
これは、ここではない、どこかのお話。