「ん~…もう朝か…」
ここは魏の首都、許昌。
天の御使いこと北郷一刀は朝の陽ざしに目を覚ました。
「今日は警邏のあと華琳に書類届けて…」
などと今日の予定を考えながら身支度をすませる。
とそんな時…
ドドドドドドドドッ!
「…なんだ、騒がしいな?」
一刀は外から聞こえる大きな足音に気付く。
その足音は次第にこっちに近付いてくる。
バァァン!!
と唐突に一刀の部屋のドアが開けられた。
「「隊長!!」」
「なんだ二人とも、こんな朝っぱらに」
真桜、沙和の二人が部屋に飛び込んできた。
何があったかわからないが二人は酷く慌てている。
一刀はまず二人を落ち着かせようと声をかけた。
「いったい何があったんだ?」
「な、凪が…」
「っ!凪がどうした?」
なにか緊急なのか一刀は二人の声に耳を傾ける。
「凪ちゃんに…」
「凪に?」
「「耳が生えちゃったの(んや)!!」」
「…へ?」
一刀はポカンと口を開けた。
二人は凪に『耳』が生えたというのだ。
「耳って人間だったらあるだろう…」
一刀は至極当然のように言った。
人間で耳が無いということは無いはずだ。
そんなに慌てることではないような…と一刀は思った。
しかし…
「ちゃうねん!耳は耳でもあれはちゃうねん!!」
「でもすっごくかわいいの~…///」
真桜はよくわからないが一刀の言うことを強く否定している。
沙和は何かを思い出したかのようにふやけた笑顔を見せた。
とそこに…
「一刀殿これはいったいどういうことですか!」
「兄さま!!季衣が!」
「北郷、聞きたいことがあるのだが…」
さらに稟、流琉、秋蘭の三人が一刀を訪ねてきた。
そして三人が言うことは総じて…
「「「(姉者、季衣、風)に耳が生えた」」」
だった。
「耳…?」
一刀はますますわからなくなってきた。
「なんや、春蘭様に季衣に風様もですか!」
「ああ、朝、起きたら頭の上に…」
「ビックリしました…季衣なんてよく見たら犬の尻尾もありましたよ」
「「尻尾!?」」
「ああ姉者も黒い猫の様な尻尾が…(あれはかわいいかったなぁ)///」
「風にも…ありましたね」
一刀の部屋を訪ねた5人は一刀そっちのけで話を進め出した。
話を聞いていると耳や尻尾や猫、犬といった単語が飛び出してきた。
一刀はまさかと思う。
「ねえもしかして…春蘭と凪と風と季衣に獣耳と尻尾が…生えたの?」
5人は一斉にうなずく。
「へぇ…ってええええぇぇぇぇ!」
朝の状況はそれぞれこうだった。
~真桜、沙和サイド~
「凪~朝やで~」
「凪ちゃん起きて~」
二人はいつものように凪に合流しようと凪の部屋の前に来ていた。
しかし今日はいつもと違って返事が無い。
「なんや…今日、凪は寝坊かいな…」
「だったら起こしてあげるの~」
「しかたないなぁ…凪~入るで~」
二人は戸を開き部屋の中へと入った。
案の定、凪は寝台の上で寝ていた。
布団をすっぽり頭の上までかぶっている。
「あらま~ホンマめずらしいな…」
「凪ちゃんぐっすり眠ってるの…」
しかし今日は朝から仕事だ。
いつまでも寝かせるわけにいかない。
二人は互いにいたずらっぽく笑い行動を開始する。
二人は布団をつかみ…
「凪!起きろ~!」
「凪ちゃん!起きるの~!」
バサァ!!
二人は一斉に布団を剥ぎとった!!
とそこで二人が目にしたのは…
ピョコン!
と出てきた凪の銀髪と同じ色をした耳だった。
「「…」」
「さわ、まおう…なんだぁ…」
凪が寝ぼけ眼で起き上がる。
二人は凪の頭についているそれを見て固まる。
「ふぁ…。もう朝か…二人ともどうしたんだ…?」
まだ眠いのか、目をこする凪。
そんな中、何も言わない二人を見て不思議に思い首をかしげる。
「どうしたんだ…?」
(真桜ちゃん…あれ!)
(あかん!今の凪を見てるとあかん!)
(でも~!)
(あかんて!うちあんなのツッコミきれんて!それに…なんかイケナイ感情が…///)
(真桜ちゃん~!!)
「二人とも…どうしたんだ?私の顔に何かついているのか?」
凪は二人の挙動不審な行動を怪しく思いだした。
凪は顔のまわりを触りだす。
そしてのその手が頭に回った時…
さわ…
「ん?なんだこれ…」
「凪ちゃん…」
「凪~…」
さわ、さわ…
二人は覚悟して何も言わずに凪の前に鏡を持ち出した。
凪は鏡の前に映った自分を見る。
「…?」
さわ、さわ、さわ…
「っ!なんだ、これは~!!」
凪の叫びが部屋にこだました。
~秋蘭サイド~
(ん…朝か)
秋蘭は朝日に目を覚ます。
寝台から出ると先ず身支度をするため顔を洗いに行こうとする。
「そういえば…」
昨夜、春蘭が泥酔して部屋に戻ってきたことを思い出した。
(まだ眠っているだろうな…行ってみるか)
そう思い秋蘭は隣の春蘭の部屋に行った。
案の定寝台で布団をかぶって丸くなっている春蘭。
秋蘭そんな姉を見て微笑む。
(全く…あれでは本当に猫だな)
そんな姉をしばらく見ていたい、と思うがさすがにこのままにしておくわけにはいかないと思い秋蘭は春蘭を起こすことにする。
「姉者、朝だ。起きてくれ」
「んん…しゅうらん…?」
布団の中から春蘭が出てくる。
すると秋蘭の目に映ったのは…
「あっ姉者…耳が…」
凪と同じく黒い耳が生えていた、よく見ると尻尾まである。
思わず秋蘭は顔を真っ赤にし、破顔してしまう。
(姉者…反則だぞ…!///)
「耳?どうしたんりゃ?」
「ん?姉者まだ酔っているのか?///」
「んにゃ?にゃんだ!声が変だにゃ!!てかにゃんだ!耳!!?」
春蘭は顔を赤らめて大慌てになっている。
(だから姉者!!反則だ…!!///)
思わず鼻血が出そうになる秋蘭だった。
~流琉サイド~
流琉は沙和や真桜達と同じように季衣を起こしに部屋の前に来ていた。
「季衣~!朝だよ~!」
「流琉~…」
「ん?どうしたの季衣?」
どうやらもう起きているようだ。
しかしその声にいつもの元気が無いように流琉は思った。
(どうしたのかな…?)
「季衣?入るよ?」
「あわわっ!待って~!」
「もう…」
と言いつつ流琉は部屋に入る。
すると季衣は寝台の向こうに布団をかぶって隠れている。
「どうしたの、季衣?」
「流琉~どうしよう…」
「だからどうしたのっ…て…」
季衣は布団を取って恥ずかしそうに立ち上がる。
そこにはかわいらしい尻尾と耳があった。
思わず声を失う流琉。
「これ…どうしたの?」
「わかんないよ~、起きたらついてたんだよう」
流琉は恐る恐る尻尾を触ってみる。
「うひゃ!!流琉くすぐったい!」
「ごッごめん季衣!」
「もう~///」
顔を赤くして膨れる季衣だったが外見もあまり怖くない。
それどころか…
(ちょっと、かわいい…///)
そんなことを思う流琉だった。
~稟サイド~
朝、稟はいまだ夢の中にいた。
するとそこに来客を示す音がした。
トントン
とその音に目を覚ます稟。
「ン…どなたですか?」
近くにあった眼鏡を掛け来客に応じる。
こんな朝に誰だろう…と思う稟。
すると聞こえてきたのは聞きなれた声だった。
「稟ちゃん~起きてますね~?」
「風ですか…どうしたんです。朝早くに珍しいですね」
普段だったら風は起きるのはもう少し遅く、むしろ自分が起こすことが多いからだ。
そう思いつつ戸をあける。
すると風がいきなり入って来た。
「ちょッ…どうしたんです…布なんかかぶって、よく見ると寝巻姿じゃないですか…」
「ちょっとした緊急事態なのですよ~」
そして布を取り去る風。
「なんですか…それ?」
目に入ったのは耳と尻尾だった。
よく見ると猫の物らしい。
「それ…本物ですか?」
「触ってみますか~?」
「はぁ…」
と言って稟は触ることにした。
耳に触ってみるとくすぐったそうに耳が動く、風自身もくぐったそうだ。
稟は思わず顔をほころばせてしまう。
「稟ちゃん、くすぐったいですよ~」
「すっすみません!///」
稟は恥ずかしそうにいう風の声を聞いて手を離す。
どうしたのかと風に稟は聞いてみると、起きたら生えていたとのことだった。
「風は本当にメス猫になっちゃいましたね~」
「何を言ってるんですか…しかし、これで人前に出るのはさすがに…」
あんまり困ってなさそうな風をたしなめる稟。
「心当たりは無いんですか…」
「ん~あるとすれば…」
その時、耳尻尾の生えた者に対面した者たちの考えは一緒だった。
もっとも思いつく人物…
北郷一刀だった。
ということで一刀の部屋に集まった5人だった。
しかし。
そう言われても心当たりのないのが北郷一刀本人だった。
「なんや~隊長やないんか…」
「本当に北郷ではないのか?」
「「「じ~~~~っ」」」
「だから知らないってば…見てみたいけど…」
「本音がだだもれです」
と願望が出た一刀をつっこむ稟。
しかし、いったい何が起きたのか?
少なくとも一刀は知らないと言っている。
「とりあえず4人にあってみようか…見てみたいし」
「兄さま…本音が出てますって」
本音をいう一刀にただ苦笑する5人だった。
1か所ずつ回るのも時間がかかるということで4人を1か所に集めることとなった。
集まったのは大広間。
先ほど居なかった耳尻尾の生えた当事者に華琳、桂花も呼ばれた。
「あんたたち、なんなのそれ…」
と聞くは桂花だった。
目の前にいる春蘭、季衣、凪、風の四人を見てため息をついた。
「あら?かわいいじゃない、今日はそれで楽しもうかしら」
華琳に至っては、驚きはしたもののこれを機会と言わんがばかりに閨に誘うつもりらしい。
「まぁ待て華琳、かわいいのは認めるけど今はやめてくれ…」
「「かわッ///」」
一刀のかわいい発言に顔を赤くする凪、春蘭。
「兄ちゃんにかわいいって言われちゃったよ、流琉♪」
「もう季衣ったら…」
一刀の発言に嬉しそうにする季衣。
「おやおや、風達はお兄さんの毒牙にかかってしまうのですか~」
「何を言ってるんですか、風…」
いたっていつもの反応をする風。
しかし、ここにまだいない人物がいた。
「…で霞がいないと」
「先ほど呼びに人を出したのだが返事がなかったらしい」
今、一刀は秋蘭と一緒に霞を呼びに行っていた。
呼びに人を出したのだが部屋の前で呼んでみたら何の返事もなかったとのこと。
何かあったのだろうか、ということで一刀と秋蘭が出向いたのだった。
そして二人は霞の部屋の前につく。
「お~い霞いるか~?」
「霞、居るなら返事をしてくれ」
「・・・」
部屋の前で二人が呼ぶも返事はない。
「どうしたんだろう・・・」
「何かあったかもしれんな・・・北郷、部屋に入ってみよう」
「そうだな・・・霞、入るからな」
一刀が戸に手をかける。
鍵は掛かっておらずすんなりと開いた。
「鍵は開いているのか・・・」
「霞~いるか~」
真っ暗な空間に戸が開いたことで光が入る。
すると寝台の上に丸くなっている人影を見つける。
「何だ寝てたのか・・・霞起きて」
「待て、北郷!」
突然秋蘭が一刀を止める。
一刀が不思議そうな表情を秋蘭に向けたその時。
「うにゃ~~!!!」
「うわ!!」
ドッタ~~~ン!!!
突然何かが一刀の背に飛びかかってくる。
「なっなんだ!!」
「北郷!!」
一刀が背の方を見るとそこにいたのは・・・
「うにゃ?」
と首を傾げて顔を猫のようになでる霞だった。
その頭には耳、その先を見ると尻尾がある。
「・・・へっ?」
「まさか・・・霞までもが・・・」
「ゴロゴロ・・・」
一刀がポカンとした表情をし、秋蘭は頭を押さえる。
そう霞も春蘭、季衣、凪、風と同じような状況だった。
ただ違うのは・・・
「ふにゃ~~ん」
ペロペロ
「うわ!!霞、くすぐったい!!///」
霞は一刀にのしかかり、頬を舌でなめ回している
秋蘭は気づく。
「・・・これではまるで」
猫そのものだと。
「秋蘭、これ…」
「…わからん、いったい何が…?」
と猫化してしまった霞を眺めていたその時。
「兄様、秋蘭様!!大変です!!」
流琉が息を切らせて走って来た。
「流琉か…とは言ってもこっちも少し面倒なことになってるのだが…」
「霞様…?ってまさか霞様も…」
「ん…もってことは…まさか流琉…」
「はい兄様。実は…」
秋蘭と流琉、一刀は霞を担ぎ急いで広間に戻るとそこには…
「ふー!!」
「ああもうこのバカ春蘭!何やってんの!ちょッ!コラ!やめなさい!」
「くぅーん…」
「凪ちゃん、何でそんなにさびしそうなの!?可愛いけど~!」
「何があったんや!凪!ああ季衣ちょっと待て!ほら遊んでやるから!!」
「わうーわんわん!!」
「すー…ゴロゴロ…」
「風はいつもどおりというか…一番平和ですね」
「稟様!やったら季衣の方手伝ってや~!!」
「かと言っても…風、私の膝の上で眠っているんで…」
一刀達が見たのは春蘭、凪、季衣、風による奇行だった。
春蘭は桂花を敵と見ているのか今にも飛びかからんばかりである。
凪は体を丸めてさみしそうに耳を垂れさせ、心なしか尻尾にも元気が無い。
季衣は遊んでくれと言わんばかりに走り回っており真桜が必死になだめている。
風はいつものように眠っているがその姿は猫そのものだった。
これらの姿は先ほどの霞を見ているようで…
「何があったんだ…?」
「それはね」
その問いに隠れていた華琳が答えた。
「突然気を失ったかのように倒れたと思ったら目を覚ますとああなっていたのよ…」
「「華琳様!」」
その姿は少し髪が乱れており何かと争ったかのようだった。
「目を覚ました春蘭に飛びかかられてね…さすがにびっくりしたわ」
「それは災難だな」
あの春蘭が野生全開で飛びかかる、危険極まりないことだろう。
「で!あなたが抱えているそれは何!」
「何って…霞だよ」
「それはわかってるわよ。な・ん・で!抱えてるのかしら!///」
「だって…」
「うにゃ?」
「…なるほどね」
顔を猫のようになでる霞。
この猫化した霞をほおっておくと何をするかわからない。
だから抱えてきたのだ。
「とりあえず!もうおろしていいのでは!?」
「まあそうだな…ほら霞、下ろすぞ?」
「うにゃぁぁああ~~!」
「って痛い!痛いから!」
霞はおろそうとする一刀にしがみつき離れないと言わんばかりにしがみついている。
「どうしたんだ…?」
「ほう…まるで一刀から離れたくないようじゃないか?」
「何言ってるんだよ、秋蘭…ッて華琳?」
「…なに?」
隣にいた華琳は誰が見てもわかるような表情をしている。
まるで周囲にはどす黒いオーラがあるような…
「どうしたんだ?顔が「なんでもないわよ!!」ですか…」
「ふふふ…」
「もう…兄様ったら…」
「隊長達!!そこで話とらんでこっち手伝ってぇな!!」
そんな四人を見て真桜が助けを求め出した。
するとさびしそうに寝転んでいた凪が耳を立て一刀達の方を見る。
それと同時に季衣も反応し凪と共に一刀めがけて走りだす。
「うわ!季衣それに凪!?」
一刀の目の前に来ると二人(二匹)は飛びかかって来た。
「わんわん♪」
「くーん♪」
「ふにゃ!!」
ドターン!!
思いっきり飛びかかったせいか一刀にくっついていた霞が離れる。
その代わりに季衣と凪が一刀にくっついってきた。
ちなみに服は寝巻のままのため直接、女性特有のやわらかさを感じる一刀。
「いってぇ…うわ!凪、やめろって!くすぐったい!!季衣も!!///」
二人はすぐに一刀の顔をなめまわす。
そんな状況を見ている華琳たちは…
「ちょっとむかつくわね…秋蘭?」
「さすがにこれは…全く」
「兄様のバカ…」
誰もがわかる不機嫌な顔をしていた。
「見てないで助けろよ!」
「あら?嬉しそうなんだけど?」
「まあ女の子に押し倒されてうれしくないわけないけど…」
「じゃあ放置ですね、華琳様」
「秋蘭酷い!!」
「私もこんな状況見せられて不機嫌にならないわけないだろうに…なあ流琉?」
「秋蘭様の言うとおりですッ!」
「流琉~!!」
その後見はなされた一刀はしばらくの間、凪、季衣、それと戻って来た霞に遊ばれまくってボロボロになっていた。
と今回はギャグ路線でいきます。
さて突如猫耳、犬耳が生えてしまった春蘭、季衣、凪、風、霞。
次第にこの五人は本当の動物のようになってしまいました。
この五人、そして一刀の運命はいかに!ってとこですね。
このネタは春蘭が猫のように(虎?)なることから魏のキャラを猫、犬に当てたらどうなるかってとこで考えました。
自分の考えでは風、春蘭、霞は猫。
凪、季衣は犬だと思っています。
そんなわけで前回が暗い話だったので今回は明るくさせていただきます。
ではいつも通り誤字等ありましたらご報告お願いします。
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前回暗かったんで今回は明るく行きます。
ではどうぞ!