No.148913

真・恋姫†無双 ~天ハ誰ト在ルベキ~ 第弐話 チカイ

桜花さん

遅くなりました、ようやく完成した第弐話です
まだ、初戦闘までいきませんwww
これよりも、極力早いペースで書いていきたいと思います
極力、名前は原作に合わせたいですが、おそらく無理なのでご了承をお願いします
ご意見・ご感想がいただけたら幸いです

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2010-06-08 01:58:48 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5020   閲覧ユーザー数:3966

 崩れた城壁。立ち上る黒煙。聞こえる呻き声。

 こんな殺伐とした風景はこの時代の街では当然のことなのだろうか?

 思わず、三人に問いかけようとするが、顔を見たらそんなことは口に出せなかった。

「・・・・・・」

 何も言わなくても分かる。明らかな異常事態が発生しているのだ。

 皆、唖然としたような、怒りを噛みしめるような、形容しがたい表情だった。

「な、なぁ」

 思わず声をかける。が、

「沙和、真桜、怪我人の救出に行くぞ!!」

「あいよっ!」

「うんなの~!」

 俺の問いかけも虚しく、三人は駆けだして行った。

 取り残された俺は未だに混乱していた。

(何が起こってるんだ? 怪我人? ・・・・・・って!)

 さっき聞いたばかりじゃないか、黄巾党が暴れまわってるって。こんなこと考えなくても分かる。ぼぅっとしてる場合じゃない! 俺も早く怪我人を助けに行かなくちゃ!

 そうして、遅れて俺も走り出した。

 

 

 街は正に阿鼻叫喚の様相を呈していた。

「痛ぇ、痛ぇよぉ・・・・・・」

「頼む目を開けてくれよ、死ぬなよぉ」

「もう駄目だ、この街も目をつけられちまった」

 苦痛に喘ぐ者、既に事切れている友に話しかける者、絶望にくれる者。

 ここが地獄でないなら一体何処なのだろう、と思うほどのひどい有様だった。

 しかし、立ち止っている場合ではない。皆を救わなくては。

「大丈夫ですか!?」

 私は傷を押さえている青年のもとに駆け寄り、傷を確認する。

「うぅ」

「この程度の傷なら大丈夫です。これを塗れば、すぐよくなりますよ。」

 不安にならない様に微笑みかけながら、応急処置を行っていく。

 すると、不意に後ろから声をかけられた。

「おい、おんた。薬を持っているのか?」

「え、えぇ。少しですが・・・・・・」

「凪、あかん!!」

「えっ?」

 瞬間、空気が爆ぜた。

「薬!? 薬があるのか!?」

「俺に薬を分けてくれ!!!」

「俺だって、怪我してんだ。お嬢ちゃん、その薬を俺によこせっ!!」

 わぁぁぁあああぁぁぁーーーーー。

 狂ったかのように、私に向かって人が群がってくる。

 迫りくる誰もが狂気に取りつかれた顔をしていた。

 まずい、まずいまずい! このままでは暴動が起こってしまう。

「凪ちゃ~ん!!」

 切れ切れに2人の声が聞こえる。

 恐らく、沙和も真桜も圧倒的な人ごみに呑まれてここまで来れないだろう。 

 普通の人に氣弾なんてうつなんて出来ない。それこそ大惨事になってしまうし、この暴動がより大きくなる。 

(でも、どうする? どうすれば良い? 私は何をすれば良い!?)

 身体が固まって動けない私に人の波が私に迫る。

 思わず目をつぶり、この後見舞われるであろう衝撃に身構えた。

「・・・・・・・」

 なぜだろう。少し周りが静かになった気がする。

 幾ばくかの時間がたち、きつく結んだ瞼からゆっくりと力を抜く。

 衝撃は私を襲うことは無く、背後から声が聞こえた。

「お前ら・・・・・・、少し黙れ!」

 それほど大きく無い声だったのに、なぜこんなにもはっきりと聞こえたのだろうか。

 そこにいる全員が私の後ろをみつめている。

「少しは頭は冷えたか? じゃあ、周りを見渡してみろよ。酷い怪我で動けない人が沢山いるだろ? こんなくだらないことで騒いでたら、手遅れになっちまうかも知れないんだぞ! 同じ街に住んで、今まで一緒に暮らしてきた仲間じゃないのかよ!?」

 声が響く。

 人々が正気を取り戻していくようだった。

 言葉だけで暴動を鎮圧出来るなんて、一体何者なのか? 思わず振り向くと、そこには・・・・・・

「御遣い・・・・・・様・・・・・・?」

 先程出会った青年がそこにいた。表情は怒っている様にも、悲しんでいる様にも見えた。

 しかし、注目すべき点はそこじゃない。私は疑問を抱かずにいられなかった。

(本当に同じ人物なのか?)

 さっきは優しいが頼りない感じしかしなかったのに、今は何だ? 凡人では持ちえない荘厳さと人々を包み込む優しさが同居する、今まで誰からも感じたことの無い氣だった。この氣はあまりに特異すぎる。やはり、この方が御遣い様かもしれない。いや、御遣い様なんだろう・・・・・

「いいか? 俺には少しだが医者の心得がある。だから、そっちの人たちは自分で歩ける位の怪我人をここに連れてきてくれ。おいっ!そこのあんたとあんたは医者を探して、一緒に酷い怪我してる人のところを回って医者の手伝いをしてやってくれ。于禁さん、李典さん」

「は、はいなの!」

「お、おう、なんや?」

「こっちの人を連れて、建物の下敷きになってる人とかの救出をお願い。途中で手伝えそうな人がいたら、無理矢理でも良いから手伝わせて。」

「楽進さんは俺の手伝いをお願い。身のこなしからして、格闘技してるでしょ? それなら、骨折とかの応急処置出来るよね? ・・・・・・楽進さん?」

「は、はいっ、出来ます。大丈夫です。」

「よし、それじゃ各自動いてくれ。一刻を争うんだ、皆頑張ってくれ!」

 

 

「ふぅ~、なんとかなったか」

 医者にあとは任せてくれて大丈夫だと言われ、一息ついている。

 でも、今振り返ってみると俺結構すごいこと言ってた気がする。

 医者の心得なんて、学校でやった応急処置とか剣道部での打撲・捻挫の治し方とか位しかわかんないよ!? 役に立つなら、もっと真剣に受けとけば良かったかもなぁ。

 そんなこと考えてると、向こうから来た楽進さん達に声をかけられた。

「お疲れ様です。本当に今日はありがとうございました。」

「いや、俺はそんなに大したことしてないよ。治療も楽進さんにかなり頼るとこ多かったしね」

「いえ、そんなことありません。初めて聞く治療法もありましたし、なにより怪我した人を安心した表情にさせてくれていたことで、無用な二次災害もありませんでしたから」

「ああ、俺の世界では治療する側が不安な顔してると、患者の治りも良くないって言われていたからさ。出来るだけ、俺が自信ある様に振る舞って、余計な心配を与えない様にしていたんだよ」

 すると、李典さんがこんなことを言った。

「でも、一番はあの演説やろ? なぁ、沙和?」

「そうなの。あそこにいた人がみんな聞き入ってたの。あんなこと普通じゃありえないの」

「せやせや、うちらじゃ何も出来んかったもんなぁ」

「確かにそうだな。私は頭が真っ白になってしまったし、あれがなかったらどうなっていたかと思うと正直怖いです。」

 三者三様に褒められた。でも、何がそんなにすごいか全然分からない。

「あのままじゃヤバい・・・・・・まずいと思ったからとにかく突っ込んで行ったけど、何も考えてなかったから上手くいって良かったよ」

「いやいや、もっと胸張ってええと思うで? あんな状況で突っ込んで行くこと自体、普通は出来ひんし」

「そうなの。自信もって良いと思うの」

「そうかな? じゃあ、そうさせてもらおうかな」

 三人で笑っていると、楽進さんが何かを言おうとしていた。

「どうしたの、楽進さん?」

「あの、一つお願いがあるんですが・・・・・・」

「お願い?」

「先程、この街の長に言われたのですが、この街の城主や守備隊は黄巾党の襲撃の際に全員逃げ出してしまったようなのです」

「何だって!?」

 守備隊が住民をおいて逃げ出す? 城主も一緒に? 訳が分からない。命が大切なのは分かるが、じゃあこの街の人はどうすればいいんだ!

「そこで、志願者や怪我の軽かった人で自警隊を作ろうという話になりました。恐らく、またあいつらはこの街を襲いに来ますし」

「そうか、そうだね。ん? で、俺へのお願いって何なの?」

「その自警隊のまとめ役の依頼をうけまして、是非やってほしいとのことです。」

「うん、隊長ね。いいy・・・・・・って、俺が!?」

「はい、ちなみに住民はみんな賛同しているそうです」

「ええやん、やったったら」

「わたしもそう思うの~」

「荷が重いような気がするんだけどなぁ、俺じゃ皆が命を預けるに値しないと思う」

「それは違います。命を預けるに値するかしないかは、預ける側が決めることです。値すると決めたならば、それで死んでも構いません。でも、その様に言われてしまうとそれは信頼を裏切ることになるんです。」

「・・・・・・」

「個人的な意見ですが、私も引き受けて頂きたいと思っています。私も命を預けるに値する方だと思っていますので」

「ちょ、凪、抜け駆けはなしやで。うちもそう思っててん」

「そうなの、凪ちゃんずるいの~。私もそうなの」

「いや、これは、・・・・・・すまん」

「えっ、三人とも参加するの?」

「はい、勿論です。元々、人々を守りたいと思っていたので、請われなければ、逆にこちらから頼んででも参加するつもりでした」

「そっか。・・・・・・それならわかった。その任を引き受けさせてもらうよ」

「はい!!」

「よっしゃ!!」

「良かったの~!!」

 みんな喜んでくれている。こっちも見ていて嬉しくなるような笑顔だった。

 きっと、街の人たちもこんな笑顔で生活していたんだろう。そんな生活を俺は守れるように努力しなくては。

「あと、もう一つお願いがありまして。これはお願いというより、頼みなんですけど・・・・・・」

「うん?何かな」

「えっと・・・・・・、私の真名を受け取ってもらいたいんです」

「えっ?」

 真名というのはこの世界独特の風習で、親友や恋人とかの信頼している仲の人同士が呼び合う、特別な名前のことだ。俺は楽進さんの真名は「凪」ということは知っているが、本人の許可が下りなくては知っていてもそれで呼んではいけない。もし呼んでしまったら、本人や周りの人に殺されても文句は言えないくらい失礼なことらしい。しかも、これを言って良いということは、呼ぶことを許した本人にも責任がある。俺が変な振る舞いをしていたら、楽進さんまで変な評価をされてしまう。そんなもの果たして俺が受け取っても良いのだろうか。

「・・・・・・、だめですか?」

 俺が真名の意味を思い出すのに、ちょっと時間が空いてしまったらしい。楽進さんが俯いてしまっていた。

「いやどころか、むしろ嬉しいくらいなんだけどさ。俺なんかが呼んでも良いの?」

「はい、是非お願いします。」

「わかった。俺は楽進さんのことをこれから真名の「凪」って呼ばせてもらう。これからよろしくね、凪」

「こちらこそお願いします、御遣い様」

「だーかーらー、凪、あんたはどんだけ人の話無視すんねん!さっき抜け駆けすんな言うたばっかりやないかっ」

「そうなのそうなの。しかも二人で良い感じの雰囲気出しちゃってたりするの。凪ちゃんなんてもう知らないの~」

 二人は凪の方から俺に向きなおると、

「うち(わたし)の真名も受け取ってほしいねん(の)!!」

 完璧なハモリで言われた。

「ちょっと待った。凪があげたからって理由じゃないよな?」

 それを口にした瞬間、形容しがたいくらい怖い顔で睨まれた。

「本気でそれ言ってるん? 流石に失礼すぎやで。流石に自分の真名は自分が認めた人にしかあげへんわ」

「ほんとは三人一緒に言おうって約束してたの。でも凪ちゃんが暴走して先に言いだしちゃって、わたしたちが言う機会を逃しちゃったの」

「せや、まさかこうなるとは思ってへんかったわ」

 二人同時に凪を見据えた。

「うぅ・・・・・・、すまん」

 凪が俯いてちっちゃくなっている。なんか可愛いかも。

「なら、謹んでもらうことにするよ。これから李典さんを真名「真桜」と、于禁さんを真名「沙和」で呼ばせてもらう。真桜、沙和、よろしく頼む」

「良かった・・・・・・」

 ふぅ、と一息つき、凪はほっとした顔をしていた。

 三人を見ていると不思議な安心感がこみあげてくる。本当に仲がいいな。

「俺も一つ頼みがあるんだけど、良いかな?」

 表情を引き締めて彼女たちに向き合う。これだけは言わなくてはならない。

「はい、なんなりと」

 空気の違いを悟ったのか、向こうも佇まいを正して応えてくれた。

「俺のことを『御遣い』って呼ばないでほしいんだ」

 少し空気が凍った。真意がつかめない、そんな感じだった。

「と、言いますと?」

 意を決した様に、凪が訊いてきた。

 俺も臆せずに話し始める。

「俺が別の世界から来たっていうのは話したよね? 最初に来たときにはこんなのは夢の出来事だと思っていたんだ。でも、実際にこの町に来て、黄巾党に襲われた人や亡くなった人を見て、みんなから真名をもらって、これが現実だとやっと受け入れることが出来た。それに今俺はここで隊長っていう責任を負おうとしてる。だからこそ、みんなには俺一個人、北郷一刀として扱ってほしい。だから、俺を知る人には『御遣い』っていう外見で呼ばれたくない、そう思ったんだ。だめかな?」

「えっ、いや、しかし・・・・・・」

「えぇやん、凪。本人がそう言うとるんやから」

「そうなの~。凪ちゃん、呼ぶのがいやなの?」

「そうなのか? 凪?」

「い、いや全然そんなことはなくてですね。むしろ呼びたいくらいなんですが・・・・・・」

「なんや~、もしかして、凪恥ずかしいんと違うか?」

「っ!!」

「凪ちゃん、困ってるの~。図星みたいなの」

「凪はホンマに分かりやすいなぁ」

「沙和! 真桜! うううぅ・・・・・・。そ、そうだ、では、『隊長』というのはどうでしょうか? 実際に私たちは貴方の下で働くわけですし」

「う~ん、俺は三人とは対等な立場でいたいし、上に立つなんて思ってないんだけどな」

「確かに『隊長』ではあなた自身のことを表せていないかもしれません。ですが、私たちはあなたのことを上っ面だけで理解しているわけではないことは分かっていてくださいますよね?」

「ああ、それは真名を預けてもらった時点で十分に理解してるつもりだよ」

「ですが、公的な場では流石に名前で呼び合うわけにもいきません。望んではいないとは思いますが、形としては私たちがあなたの下につくことになります。下の私たちが名で呼ぶのは他の人に示しがつきません。ですから、『隊長』を妥協点とさせていただけませんか?」

 少し考えて、真桜たちの方を見る。

「2人はどう思う?」

「凪がそこまで言うんなら、それでもええで」

「私は別にどっちでもいいの」

 即答だった。やっぱり、この三人の絆は相当強いんだなと、あらためて思った。

「みんなが賛成なら、隊長でも良いよ」

「はい、ではこれからお願いします、隊長!」

 凪が力強い返事で応えてくれた。

 それを見て、微笑みながら俺も言葉を返す。

「でも、私的な時には名前で呼んでくれると嬉しいな」

 そういうと三人は揃って俺から顔を逸らしてしまった。

 この後いくら問いただしても、明確な答えはかえってこなかった。

 ただ、唯一返ってきたのは、それは反則です(や/なの)、という訳の分からないものだった。


 
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