「一刀、桃香、久しぶりだな」
「白れ「白蓮ちゃん!!久しぶり~!!」ん・・・って」
ボフッ!
馬から降りて近づく白蓮に、いきなり駆け寄り、抱きつく桃香。
「わぷっ!!ば、ちょ、よせ桃香!・・・く、くるし・・・」
桃香の二つのふくらみに顔を挟まれ、苦しむ白蓮。
「おい桃香!白蓮の顔がかつてない色になってるぞ!!」
「え」
立ったまま、腕と足を痙攣させている白蓮。
「わ!!ご、ごめん!!」
「ぷはっ!!・・・し、死ぬかと思った・・・」
「・・・女の胸で窒息死か。・・・ある意味理想の死に様だな」
一刀のその発言に、そろって白い目を向ける二人。
「・・・お前にとっては、だろうが」
「一刀、目がやらしい」
二人の視線にたじろぐ一刀。
「そ、それより白蓮、随分こっちにくるのが早いじゃないか。手紙じゃもう四・五日かかるような風だったけど」
あわてて話をそらす一刀。
桃香はめっちゃ睨んだままだが。
「ああ、あの手紙な。都を出る前の日に出したんだが、互いの足の速さを考えに入れてなかったんだ」
「はは。らしいな、それ」
「どういう意味だよ。・・・だけど驚いたよ。途中で変な集団を見つけてさ。官軍のような風だったから、
どこのものか聞いたんだが、いまいち要領を得ない」
「で、問い詰めたら、ただの賊だった、ってこと?」
「ああ。しかも楼桑村を狙ってるってことだったからな、急遽道を変更して、こっちに飛んで来たんだ」
「それでもこの速さは凄いよ。・・・さすが、白馬長史の名は伊達じゃないな」
「よ、よせやい」
一刀の言葉に顔を赤らめる白蓮。
(む~)
じっ、と白蓮を睨む桃香。
「桃香?どうした?」
「・・・なんでもない!!」
「へんなやつだな」
「ところでこいつはどうする?桃香の名を騙り、あまつさえこの邑を占拠しようとしたんだ。
・・・極刑が相当だと思うけど」
そう言う一刀の顔は、怒気に満ちている。
その視線の先には、縛られたまま、ふてくされた顔をした偽劉備がいた。
「あれ?・・・こいつの顔は確か・・・。おい誰か!例の手配書を!!」
「はっ!!」
公孫賛軍の兵士の一人が、白蓮に一枚の紙を渡す。
「ああ、やっぱりそうだ。こいつ、各州から手配されてる詐欺師だ。・・・名前は、”ななし”」
「ななし?本名・・・じゃないよね?」
首をかしげる桃香。
「ああ。どうやらあちこちで偽名を使っているらしい。はっきりとした名はわからんそうだ。
・・・おい、お前の名は?」
ふい、と。そっぽを向く偽者、ななし。
「・・・まあいい、こいつは私が引き取ろう。北平でみっちり問い詰めてやる」
「・・・今ぶった斬ってもいいのに」
「おいおい、怖いこというなよ。・・・まったく、相変わらず、桃香の事だとそうなんだな、一刀は」
呆れ顔の白蓮。
と、こっそり熱くなった顔を抑える、桃香に気づく。
(・・・桃香、やっぱり、お前、一刀を・・・)
親友のその態度に、複雑な思いの白蓮であった。
「さて、つぎは・・・と」
一刀たちは残った二人の少女に視線を送る。
「・・・だまされたとは言え、県令殿に刃を向けたのは事実。いかようにもお裁きを」
黒髪の少女が大刀を地におき、両膝をつく。
「姉者は悪くないのだ!あいつにだまされただけなのだ!
だから許して欲しいのだ!!」
赤い髪の少女が、黒髪の少女の前に立ち、かばう。
「鈴々よせ。・・・さ、どうぞその手でお裁きを。ただ、義妹は私に従っただけです。
彼女には何の罪もありません。どうか、義妹には寛大なるご沙汰を」
「・・・・・・・・」
「一刀・・・・」
一刀は無言で、涙目になっている赤い髪の少女の前に立つ。そして、
ぽん、ぽん、と、やさしい笑顔で頭をなでる。
「にゃ?」
そして、黒髪の少女の前に立ち、
「なら、裁きを言い渡す。・・・名は、関雲長、だったな?」
「はい」
剣を抜き、少女――関羽の顔に、その切っ先をむける。
「関雲長には、今後、この邑に止まり、我が配下となることを命ず」
「え?」
思わず顔を上げ、呆気にとられる関羽。
「そしてその身、その命を、力なき人々のために使い、勝手に捨てることを禁ずる。・・・どうかな?」
「あ・・・、は、はい!!そのお裁き、謹んでお受けいたします!!今後は私を真名で、愛紗と、
およびください!!」
涙を浮かべながら、深々と頭を下げる愛紗。
「なら鈴々も愛紗と一緒にいるのだ!鈴々は張飛、字は翼徳、真名は鈴々なのだ!
お兄ちゃん、お姉ちゃん、よろしくなのだ!!」
「うん。俺の真名は一刀だよ。二人とも、これからよろしく」
「私は桃香だよ。よろしくね、愛紗ちゃん、鈴々ちゃん」
笑顔で硬く、握手を交わす四人であった。
「・・・お~い。私のこと忘れてないか~?」
「「「「あ」」」」
白蓮の存在をすっかり忘れていた、四人であった。
「いいけどさ。・・・なれてるし・・・。ぐすっ。じゃ、私は北平に向かうよ。
近いうちにでも顔を出しに来てくれ」
そう言って、馬にまたがる白蓮。
「ああ、必ず行くよ、白蓮、気をつけて」
「またね、白蓮ちゃん」
「・・・桃香、”兄妹”、仲良くな」
「え?あ、あ、うん・・・」
そんな一言を残し、去っていく白蓮。
「??」
一刀と愛紗、鈴々はその意味を理解できず、ただ一人桃香は、
(白蓮ちゃん、気づいてる・・・?)
そう、心で思った。
白蓮を見送った一刀たちは、愛紗と鈴々を伴い、屋敷へ戻る。
その途中で、
「ところで愛紗、鈴々、二人とも家族は?」
「・・・おりません。私も鈴々も幼いころに亡くしました」
「・・・そうか。ごめん、いやなことを聞いて」
「いいのだ。今は愛紗がいるし、鈴々は寂しくなんかないのだ」
そんな一刀たちの会話を聞いていた桃香が、
「ね、私たち、家族になろうよ!」
突然、そんなことを言い出した。
「「「え?」」」
「二人は義姉妹なんだよね?私たちも愛紗ちゃんたちの兄妹になって、みんなで家族になっちゃおう!!」
「・・・そうだな、俺たちも家族が増えるのは嬉しいし、母さんも喜ぶな」
「でしょ?」
「よ、よろしいのですか?」
「わーい!!兄者と姉者が増えるのだ!!」
ためらいながらも嬉しそうな愛紗と、素直に飛び跳ねて喜ぶ鈴々。
「よし、じゃあ、そこの広場、桃の木の下で、誓いを交わそうか」
「「「はい(なのだ)!!」」」
四人は近くの飯店で酒を分けてもらい、邑の中央にある、桃の木が何本も植えてある広場、
桃園にて、杯を天に掲げる。
群集が、何事かと集まりだす。
「あの、みんな見てるんですけど」
「いいさ。どうせなら、みんなに立ち会ってもらおうよ」
「うん。さ、始めるよ!」
「われら四名、今ここに天に誓う!!」
「これよりは共に力をあわせ!!」
「世のため人のために生きることを誓うのだ!!」
「われら、兄妹姉妹の契りを結びしからは!!」
「同年、同月、同日に生まれしことはかなわねど!!」
「同年、同月、同日に死ぬことを願う!!」
「天よ!われらが赤心、ご照覧あれ!!」
ぐっ、と。杯の酒を飲み干す四人。
すると、
「わああああああああ!!!!!!」
と、拍手と大歓声が、巻き起こった。
時に、漢の初平元年、三月のことであった。
~第三話・了~
桃香譚、第三話でございます。
え?北朝伝ですか?
すいません、まったくネタが浮かばないんです。
浮かぶのはこちらの話ばかり。
次は向こうを書きたいな~と、思ってはいるんですけどね。
・・・なんとも言えません。
さて、今回は愛紗と鈴々が仲間になるお話でした。
コメントに、愛紗斬れ、なんて書いてる方がいましたが、
いくらなんでもそれは・・・・ねえ。
愛紗のファンに殺されますよ、私。
桃園の誓いはぜひ一度書いてみたかったシーンでもありますし。
うまく書けましたかね?
では、また次回、第四話にて、お会いしましょう。
予告はあえてしません。
では。
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刀香譚の第三話です。
今回は例の超有名イベントです。
蜀ルートならこれを書かなきゃ、ですよね。
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