No.147619

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 第三話

狭乃 狼さん

刀香譚の第三話です。

今回は例の超有名イベントです。

蜀ルートならこれを書かなきゃ、ですよね。

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2010-06-04 11:18:47 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:39371   閲覧ユーザー数:32567

 

 「一刀、桃香、久しぶりだな」

 

 「白れ「白蓮ちゃん!!久しぶり~!!」ん・・・って」

 

 ボフッ!

 

 馬から降りて近づく白蓮に、いきなり駆け寄り、抱きつく桃香。

 

 「わぷっ!!ば、ちょ、よせ桃香!・・・く、くるし・・・」

 

 桃香の二つのふくらみに顔を挟まれ、苦しむ白蓮。

 

 「おい桃香!白蓮の顔がかつてない色になってるぞ!!」

 

 「え」

 

 立ったまま、腕と足を痙攣させている白蓮。

 

 「わ!!ご、ごめん!!」

 

 「ぷはっ!!・・・し、死ぬかと思った・・・」

 

 「・・・女の胸で窒息死か。・・・ある意味理想の死に様だな」

 

 一刀のその発言に、そろって白い目を向ける二人。

 

 「・・・お前にとっては、だろうが」

 

 「一刀、目がやらしい」

 

 二人の視線にたじろぐ一刀。

 

 「そ、それより白蓮、随分こっちにくるのが早いじゃないか。手紙じゃもう四・五日かかるような風だったけど」

 

 あわてて話をそらす一刀。

 

 桃香はめっちゃ睨んだままだが。

 

 「ああ、あの手紙な。都を出る前の日に出したんだが、互いの足の速さを考えに入れてなかったんだ」

 

 「はは。らしいな、それ」

 

 「どういう意味だよ。・・・だけど驚いたよ。途中で変な集団を見つけてさ。官軍のような風だったから、

 

  どこのものか聞いたんだが、いまいち要領を得ない」

 

 「で、問い詰めたら、ただの賊だった、ってこと?」

 

 「ああ。しかも楼桑村を狙ってるってことだったからな、急遽道を変更して、こっちに飛んで来たんだ」

 

 「それでもこの速さは凄いよ。・・・さすが、白馬長史の名は伊達じゃないな」

 

 「よ、よせやい」

 

 一刀の言葉に顔を赤らめる白蓮。

 

 (む~)

 

 じっ、と白蓮を睨む桃香。

 

 「桃香?どうした?」

 

 「・・・なんでもない!!」

 

 「へんなやつだな」

 

 

 「ところでこいつはどうする?桃香の名を騙り、あまつさえこの邑を占拠しようとしたんだ。

 

  ・・・極刑が相当だと思うけど」

 

 そう言う一刀の顔は、怒気に満ちている。

 

 その視線の先には、縛られたまま、ふてくされた顔をした偽劉備がいた。

 

 「あれ?・・・こいつの顔は確か・・・。おい誰か!例の手配書を!!」

 

 「はっ!!」

 

 公孫賛軍の兵士の一人が、白蓮に一枚の紙を渡す。

 

 「ああ、やっぱりそうだ。こいつ、各州から手配されてる詐欺師だ。・・・名前は、”ななし”」

 

 「ななし?本名・・・じゃないよね?」

 

 首をかしげる桃香。

 

 「ああ。どうやらあちこちで偽名を使っているらしい。はっきりとした名はわからんそうだ。

 

 ・・・おい、お前の名は?」

 

 ふい、と。そっぽを向く偽者、ななし。

 

 「・・・まあいい、こいつは私が引き取ろう。北平でみっちり問い詰めてやる」

 

 「・・・今ぶった斬ってもいいのに」

 

 「おいおい、怖いこというなよ。・・・まったく、相変わらず、桃香の事だとそうなんだな、一刀は」

 

 呆れ顔の白蓮。

 

 と、こっそり熱くなった顔を抑える、桃香に気づく。

 

 (・・・桃香、やっぱり、お前、一刀を・・・)

 

 親友のその態度に、複雑な思いの白蓮であった。

 

 

 

 「さて、つぎは・・・と」

 

 一刀たちは残った二人の少女に視線を送る。

 

 「・・・だまされたとは言え、県令殿に刃を向けたのは事実。いかようにもお裁きを」

 

 黒髪の少女が大刀を地におき、両膝をつく。

 

 「姉者は悪くないのだ!あいつにだまされただけなのだ!

 

  だから許して欲しいのだ!!」

 

 赤い髪の少女が、黒髪の少女の前に立ち、かばう。

 

 「鈴々よせ。・・・さ、どうぞその手でお裁きを。ただ、義妹は私に従っただけです。

 

 彼女には何の罪もありません。どうか、義妹には寛大なるご沙汰を」

 

 「・・・・・・・・」

 

 「一刀・・・・」

 

 一刀は無言で、涙目になっている赤い髪の少女の前に立つ。そして、

 

 ぽん、ぽん、と、やさしい笑顔で頭をなでる。

 

 「にゃ?」

 

 そして、黒髪の少女の前に立ち、

 

 「なら、裁きを言い渡す。・・・名は、関雲長、だったな?」

 

 「はい」

 

 剣を抜き、少女――関羽の顔に、その切っ先をむける。

 

 「関雲長には、今後、この邑に止まり、我が配下となることを命ず」

 

 「え?」

 

 思わず顔を上げ、呆気にとられる関羽。

 

 「そしてその身、その命を、力なき人々のために使い、勝手に捨てることを禁ずる。・・・どうかな?」

 

 「あ・・・、は、はい!!そのお裁き、謹んでお受けいたします!!今後は私を真名で、愛紗と、

 

 およびください!!」

 

 涙を浮かべながら、深々と頭を下げる愛紗。

 

 「なら鈴々も愛紗と一緒にいるのだ!鈴々は張飛、字は翼徳、真名は鈴々なのだ!

 

 お兄ちゃん、お姉ちゃん、よろしくなのだ!!」

 

 「うん。俺の真名は一刀だよ。二人とも、これからよろしく」

 

 「私は桃香だよ。よろしくね、愛紗ちゃん、鈴々ちゃん」

 

 笑顔で硬く、握手を交わす四人であった。

 

 

 「・・・お~い。私のこと忘れてないか~?」

 

 「「「「あ」」」」

 

 白蓮の存在をすっかり忘れていた、四人であった。

 

 「いいけどさ。・・・なれてるし・・・。ぐすっ。じゃ、私は北平に向かうよ。

 

 近いうちにでも顔を出しに来てくれ」

 

 そう言って、馬にまたがる白蓮。

 

 「ああ、必ず行くよ、白蓮、気をつけて」

 

 「またね、白蓮ちゃん」

 

 「・・・桃香、”兄妹”、仲良くな」

 

 「え?あ、あ、うん・・・」

 

 そんな一言を残し、去っていく白蓮。

 

 「??」

 

 一刀と愛紗、鈴々はその意味を理解できず、ただ一人桃香は、

 

 (白蓮ちゃん、気づいてる・・・?)

 

 そう、心で思った。

 

 

 

 白蓮を見送った一刀たちは、愛紗と鈴々を伴い、屋敷へ戻る。

 

 その途中で、

 

 「ところで愛紗、鈴々、二人とも家族は?」

 

 「・・・おりません。私も鈴々も幼いころに亡くしました」

 

 「・・・そうか。ごめん、いやなことを聞いて」

 

 「いいのだ。今は愛紗がいるし、鈴々は寂しくなんかないのだ」

 

 そんな一刀たちの会話を聞いていた桃香が、

 

 「ね、私たち、家族になろうよ!」

 

 突然、そんなことを言い出した。

 

 「「「え?」」」

 

 「二人は義姉妹なんだよね?私たちも愛紗ちゃんたちの兄妹になって、みんなで家族になっちゃおう!!」

 

 「・・・そうだな、俺たちも家族が増えるのは嬉しいし、母さんも喜ぶな」

 

 「でしょ?」

 

 「よ、よろしいのですか?」

 

 「わーい!!兄者と姉者が増えるのだ!!」

 

 ためらいながらも嬉しそうな愛紗と、素直に飛び跳ねて喜ぶ鈴々。

 

 「よし、じゃあ、そこの広場、桃の木の下で、誓いを交わそうか」

 

 「「「はい(なのだ)!!」」」

 

 四人は近くの飯店で酒を分けてもらい、邑の中央にある、桃の木が何本も植えてある広場、

 

 桃園にて、杯を天に掲げる。

 

 群集が、何事かと集まりだす。

 

 「あの、みんな見てるんですけど」

 

 「いいさ。どうせなら、みんなに立ち会ってもらおうよ」

 

 「うん。さ、始めるよ!」

 

 

 

 「われら四名、今ここに天に誓う!!」

 

 「これよりは共に力をあわせ!!」

 

 「世のため人のために生きることを誓うのだ!!」

 

 「われら、兄妹姉妹の契りを結びしからは!!」

 

 「同年、同月、同日に生まれしことはかなわねど!!」

 

 「同年、同月、同日に死ぬことを願う!!」

 

 「天よ!われらが赤心、ご照覧あれ!!」

 

 ぐっ、と。杯の酒を飲み干す四人。

 

 すると、

 

 「わああああああああ!!!!!!」

 

 と、拍手と大歓声が、巻き起こった。

 

 

 

 

  時に、漢の初平元年、三月のことであった。

 

 

 

 

  ~第三話・了~

 

 

 

 桃香譚、第三話でございます。

 

 え?北朝伝ですか?

 

 すいません、まったくネタが浮かばないんです。

 

 浮かぶのはこちらの話ばかり。

 

 次は向こうを書きたいな~と、思ってはいるんですけどね。

 

 ・・・なんとも言えません。

 

 

 さて、今回は愛紗と鈴々が仲間になるお話でした。

 

 コメントに、愛紗斬れ、なんて書いてる方がいましたが、

 

 いくらなんでもそれは・・・・ねえ。

 

 愛紗のファンに殺されますよ、私。

 

 

 

 桃園の誓いはぜひ一度書いてみたかったシーンでもありますし。

 

 うまく書けましたかね?

 

 

 

 では、また次回、第四話にて、お会いしましょう。

 

 予告はあえてしません。

 

 では。

 

 


 
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