撫子が羽化したその日。
その場に立ち尽くしていても仕方ないと思い、
「とりあえず、帰ろっか」
と提案し俺の家に行くことにした。
最初撫子は家に入ることに戸惑っていた。
「ん?どうかした?」
「い、いえ。お邪魔します」
「違うぞ、撫子」
「え?」
「ここは今日からお前の家でもあるんだから、ただいま、だ」
「は、はい。ただいま」
「そうそう」
後で何故戸惑っていたのか聞いてみたところ。「そ、その。民家に入ったことが無かったので・・・・(///)」と照れくさそうに言っていた。めちゃくちゃ可愛かった。
「あの、大和様」
「何?」
「その、シャワーを使ってもよろしいですか?」
「いいけど、大丈夫?怪我とか」
「はい。ほとんど完治していますから」
「そっか。えっと、そこが風呂場だよ。ああ、使い方教えるよ」
「ありがとうございます」
「こうするとお湯でこっちが水。それから、こっちがシャワーでこっちが蛇口だから」
「はい」
「んで、バスタオルとかはここの適当に使って。着替えは・・・」
まじまじと撫子の体を見てしまった。今の撫子の服はボロボロで何と言うか、エロかった。
俺は慌てて目線をはずした。
「き、着替えは何か俺ので着れそうなやつ見つけとくから」
声が上ずって早口っぽくなってしまった。かなり恥ずかしい。
「はい。何から何まですみません」
「いやいや、気にしなくていいよ。うん。本当に」
かなり申し訳なさそうに言ってきたので慌てて否定した。きっと顔は真っ赤だっただろう。
「そ、そんなことより、早く入ったら?」
「??はい。そうさせていただきます」
そう言うと撫子は風呂場に入っていった。
しかし、しばらくすると
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
と言う物凄い悲鳴が聞こえてきたと思ったら、ドガン!、ガジャン!と到底風呂場からしてくるとは思えない音が聞こえてきた。
「ど、どうした!」
何かあったのかと思いドアを開け放つと、撫子がものすごい勢いで飛び出し、抱きついてきた。しかも全裸で。
いきなりのことで気が動転しまくりながらもなんとか何があったのか聞こうとした。
「な、何がどうしたぁぁぁ。痛い痛い!」
抱きつかれたときはちょっと、いや、かなりうれしかったが、その抱きしめる力が半端なく強かったため、体の骨という骨が粉砕するのではないかと思った。
「ちょ、な、撫子。痛いし苦しい。もう少し弱くしてぇぇ、ガク」
「ゴ、ゴキ、ゴキ、ムシ・・・・」
俺はそこで気を失ったが、撫子はうわ言のように「ゴキ」だの「ムシ」だの言いながらガクガク震え続けていた。脱衣所を覗くと、何か戦争後のような感じになっていた。
撫子が落ち着くまで、30分掛かった。
そしてさらに、俺が意識を取り戻すのにもう30分掛かった。
「で?なにがあったの?」
意識を取り戻すと、胸が大きくて顔が見えづらかったが少し涙目になった撫子に膝枕されていた。とりあえず何があったか改めて聞いてみた。すると撫子は再びガクガク震えだし、顔を青くしていた。
「お、おい。大丈夫か?」
「は、はい(ガクガク)」
まったく大丈夫そうじゃなかった。どうしたものかと思っていると撫子が話し始めた。
「そ、その。脱衣所に出たんです」
「何が?」
「そ、それは・・・・・」
「それは?」
「節足動物門、昆虫網のアレです」
「それってつまりゴキb・・・」
「それ以上言わないでください!!」
「むーー!!」
いきなり口を押さえられた。それはもう思いっきり。また気絶しそうになると、撫子が慌てて「も、申し訳ありません」と謝ってきた。
「い、いや大丈夫。それにしてもそんなに苦手なの?ゴ・・・アレ」
「はい。と言うより、世間的に虫と呼ばれるもの全般が・・・」
「そ、そうなんだ」
なんだか以外だった。てっきり苦手なものなんて何も無いのかと思っていた。こんなこと言ったら失礼になるけど、まさかこんな女の子らしいものがのが苦手だったとは・・・
「昔・・・調整が終了したばかりの頃、私のいた研究所に大量のアレが発生したことがあって、それ以来アレだけでなく虫という虫が苦手になりまして・・・」
「そうだったんだ」
そこであることを思い出した。
「そういえば、風呂場がすごいことになっていた気がしたんだけど・・・」
そう言うと撫子はダラダラ汗を流しながら背骨が折れるのではないかというくらいすごい勢いで土下座をした。
「申し訳ありませんでした!!」
その反応だけであれが夢や幻ではなく、現実だと理解できた。
「は、ははは。いいよいいよ。気にしないで」
軽く自暴自棄になっていると撫子が懐から何かを出した。
「あ、あのこれがあれば大丈夫です」
それはM.B.Iの上限なしのVIPマネーカードだった。
「これ、どうしたの?」
「先ほど、M.B.Iから私の衣類等が届きましてその中にありました」
そういえばボロボロだったはずの服が綺麗になっている。俺が気絶している間にそんなものが来てたのか。
「ただ、お風呂のほうは修理にしばらく時間が掛かるそうです。本当に申し訳ありませんでした」
そう言って再び土下座をした撫子の頭に俺はポンっと手を置いた。
「まぁ、誰でも苦手なものとか嫌いなものの一つや二つあって当然だし、壊れたものも直せるならそれでいいよ。だから、本当もう気にしなくていいよ」
「はい」
撫子は今にも泣き出しそうだったがしっかりと答えてくれた。
一つ気になることが浮いてきた。
ゴキ・・・・アレが一匹出ただけであれくらい乱れたんだから、トラウマになったという大量発生したときはどうなったんだろう?
「なぁ、撫子」
「はい。なんでしょう?」
「初めてアレを見たとき、その、研究所ってどうなったんだ?」
「全壊しました」
「え?」
「ですから、全壊しました」
「・・・・・・・」
これからは二度とアレがでないよう家を綺麗にしよう。
我が家の全壊だけはなんとしても阻止しないと・・・
心に硬く決意する大和だった。
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その後の話を書きたいと思います。
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