No.146394

真・恋姫†無双  星と共に 第19章

BLACKさん

この作品は真・恋姫†無双が前作(PS2)の続編だったらという過程で作られた作品です。

2010-05-29 22:33:17 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:6008   閲覧ユーザー数:4995

 

真・恋姫†無双  星と共に  第19章

 

 

官渡の戦いから一ヶ月半以上が過ぎた。とりあえずは盗賊退治以外はこれと言った戦闘はしていない。

袁紹の河北四州を手に入れ華琳の勢力範囲は一気に倍増したのだが、その為、華琳は周囲の諸侯から今まで以上に警戒される存在になったため、国境警戒と袁家に縁のある豪族の制圧のための出動が皆、多くなったのだ。

そんなある日のことである。霞と稟が遠出のために出て行き、城には華琳、真桜、風、桂花、そして一刀と星だけの状態になったのだ。

つまりは現在城にいる将は真桜と一刀と星だけである。

これは華琳の策であり、自分を餌に本気で華琳を狙いたい相手を見ようと言うものであった。

しかし一刀は華琳が誰に来て欲しいかは顔を見て、なんとなく分かっていた。

 

(だが本当に来るのだろうか……劉備は……)

 

それから数日後のことであった。

劉備軍が大軍を引き連れて城の近くまでやって来たのだ。

それを聞いた華琳は近くの出城に移った。

その事は劉備達の耳にも届いた。

 

「そう。曹操さんは近くの出城に移ったんだね」

「はい。そちらに手持ちの戦力を集中させているようです」

「良かった……さすが曹操さん。これで街に住んでる人は籠城戦に巻き込まれずに済むね」

「私は曹操が単に少ない戦力を有効に使えるよう、場所を変えただけだと思いますが……」

「もぅ~。愛紗ちゃん、曹操さんのこと悪く言い過ぎだよー」

「けど、朱里ちゃん。本当に曹操さんと戦わなくちゃいけないの? 私が行こうとは言ったけど……」

 

そう、これは劉備が先日の占い師の言葉を聞いて、攻めた方がいいかと諸葛亮に聞いたところ、攻めた方がいいとして劉備達は攻めてきたのだ。

 

「曹操さんはこちらを攻めると既に予告していますから。現状、曹操さんに万全の状態で攻め込まれては、私達の戦力では一分の勝ち目もありません」

「それに、向こうから隙を見せたら噛みついてこいと言われているのです」

 

そこに趙雲も加わる。その趙雲はこの世界に元から居た趙雲である。

 

「それって罠じゃないのかー?」

「少なくとも、主力の将が全て城を開けているのは間違いない。向こうも相応の危険を承知で仕掛けているのだろう」

 

そして劉備軍は城の前に集まっていく。

 

 

「大軍団だな」

 

一刀が城壁から目の前にいる軍団の数を見て、驚く。

 

「そうかしら?」

「まあそうと言えばそうだし、そうでないと言えばそうでないな。俺はこれ以上の数を見たことがあるからな」

 

翻る旗は、劉、関、張、趙と言う三国でも勇将名将のものばかりであった。

 

「なあ華琳」

「何?」

「あそこに趙と言う旗印があるように思うが……」

「ええ、あるわよ」

「と言う事はどうやらこの世界の私は劉備に従ったようですな」

 

そこに星が来る。

 

「星」

「まあ前から予想は出来てましたらね」

「星、戦えるか?」

「私を誰だと思っているのです? 私は趙子龍、相手が例え自分であろうと手は抜きませぬ。

それに私は……」

 

星は一刀に近づき、一刀の顎を優しく撫でる。

 

「私は北郷一刀殿……主であるあなたの剣ですぞ」

「そうか……。野暮な事を聞いたな」

「いえいえ…主が優しいのは分かっておりますから……」

「そうか……。華琳」

「今度は何?」

「舌戦に俺も加えさせてくれないか? 劉備に聞きたいことがあるからな」

「……いいでしょう」

「話は変わるが戦いは籠城戦じゃないのか? 春蘭が戻るのは明日の朝の予定だろ?」

「最初から守りに入るようでは、覇者の振る舞いとは言えないでしょう。そんな弱気な手を打っては、これから戦う敵全てに見縊られることになる」

「そういうものか?」

「ここで勝てば、我が曹魏の強さを一層天下に示すことが出来る。こちらを攻めようとしている連中にも、良い牽制になるでしょうよ」

「そうすれば皆の負担が減るってことか…」

「そのためには一刀、星、あなた達の命、賭けてもらう必要があるわ。……頼むわよ」

「……ああ」

 

そんな時、桂花が華琳の元にやって来る。

 

「華琳様! 出陣の準備、終わりました! いつでも城を出ての展開が可能です!」

「さすが桂花。すべきことが良く分かっているわね」

「はっ。各所の指揮はどうなさいますか?」

「前曲は私自身が率いるわ。左右は桂花と風で分担しなさい」

「俺は?」

「……一刀と星は真桜と共に後曲で全体を見渡しておきなさい。戦場の全てを俯瞰し、何かあったらすぐに援護を回すこと。それがあなたの仕事よ」

「ああ!」

「先日の反董卓の戦で、諸葛亮と関羽の指揮の癖は把握しております。必ずや連中の虚を突いてみせましょう!」

「ええ。よろしく」

 

 

その頃、外の劉備軍は……。

 

「この戦力差で野戦を挑むか…。無謀と言うか、自信過剰と言うべきか」

「初めから城に籠りたくはないのだろう。振る舞いの潔さだけは見事なものではないか」

「桃香様! 曹操さんが出てきました!」

「そっか……。なら、行ってくるね」

 

劉備は華琳と開戦の前の舌戦をしようとし、出て行った。それに一刀も付いて行く。

そして華琳と劉備と一刀は再び会った。

 

「良く来たわね、劉備。ちゃんと私の寝首を掻きに来たところは褒めてあげる。ようやくこの時代の流儀が理解できたようね?」

「曹操さん……曹操さん達のやり方は、間違っています!」

「何を言うかと思えば」

「そうやって、力で国を侵略して、人をたくさん殺して……。それで本当の平和が来ると思ってるんですか?」

(………)

「本当の平和……ねぇ」

「そんな、力がものを言う時代は……黄巾党のあの時に終わらせるべきだったんです!」

「なら、どうしてあなたは反董卓連合に参加したの? あれこそ、袁紹達諸侯が力で董卓をねじ伏せようとした…ただの茶番劇だったじゃない」

「それは都の人達が困っていたからです!」

「都の民に炊き出しをしたいだけなら、別に軍を率いる必要はなかったでしょう。それこそ、自分達だけで都に行けばよかったのよ」

「確かにそうだな」

「けど、それだけじゃ……意味が無いはずです! もっと根本をなんとかしないと! だから私達は、連合に参加して……」

「それこそ、あなたの嫌いな武力を使ってね」

「……っ!」

「その通りだな。華琳の言っていることは間違っては無いな」

「あなたは……」

「悪いが俺も少し意見を言わせてもらう。俺も昔々は一つの国の王だった」

「王様……」

「ああ。今は違うがな。それで俺も王だった時、似たようなことが俺が居た世界にもあった」

「似たようなこと?」

「黄巾の乱や反董卓連合結成みたいなことだ」

「それで、どうしたのですか?」

「俺は仲間と一緒に戦った。そして俺は最初は太守になった。それで連合結成の時は俺は袁紹みたいに力の強い奴から手紙をもらった。

断ろうかと思っていたが、街の人達を助けたいという一心があったから参加した。だけど、それ以外にも理由があった」

「他の理由?」

「下手に断れば、俺達が諸侯に狙われると言うことだ。つまりは力に従わざるを得なかった。その時の俺達には力が無かった。だから参加せざるを得なかったというのもある」

「そんな……」

 

劉備は驚きの顔を見せる。

 

「だが俺はそれでも困っている人達を助けたいと思ってやった。後悔はしていない」

「そうですか……」

「華琳、話をとぎらせて済まなかったな。続きを……」

「ええ、官は腐り、朝廷も力を失っている。けれど、無駄なものは常にそこにあるの。それを正し、打ち壊すためには…名と力が必要なのよ。

今、あなたが背負っているような…強く大きな力と、勇名がね」

「私の背中にあるのは、力なんかじゃない。志を同じくした……仲間です」

(仲間……)

 

一刀は思わずうつむいてしまう。

 

「同じ事よ。志を貫くためには力が必要。その力で全ての不条理と戦い、打ち壊し、その残ったものからでなければ平和は生まれないわ」

「違います! ちゃんと話し合えば、戦わなくたって理解し合うことはできるんです!」

「ならばあなたはどうして今、ここにいる?」

「え……」

「話し合えば理解しあえると言うのなら、あなたがこの地に立つ前に、どうして私達のところには使者が来なかったのかしら?

連合の時でも、虎牢関や汜水関に使者を送ろうとは言わなかったわよね?」

「……っ!」

「私達が先に攻め入ると言っていたから、話す必要はないと見たのでしょう?」

「そ、それは……」

「そうなのだろ?」

 

一刀が詰め寄るように劉備に問う。

 

「う………」

「俺にも同じような事があった。俺の仲間の一人をいただくために攻め入ると言ってきた。その事もあって、俺は先に攻めることを決めた」

「どうして!? あなたも色んな人達の笑顔を守りたいなら……」

「そう……守りたいからこそ。俺は力を振るった。力を振るうことなんて本当はしたくない。

だけど、話すだけではダメなときもある。俺達はそれを理解し、自分達の理想と矛盾しながらも戦う事を決めた。

だが君は違う。君は自分の理想と自分のやっていることの矛盾に気付いていない。力を理解していない」

「そうね、力とはそういうものよ。相手が拳を持っていれば、怖くなって殴り返そうと思ってしまう。

殴られるかも、殴られるだろう、そして……殴られる前に殴ってしまえ……とね。

だから、私は先に拳を示すの。殴って、殴って、殴りぬいて……降った相手を、私は慈しむわ。私に従えば、もう殴られることはないと教え込むの」

「そんな、無茶苦茶な……! そこまでずっと戦い続ける気ですか!」

「そうよ」

「でなきゃ無理なときもある」

「話し合いで妥協できる程度の理想など、理想とは言わない。

私はどうあれ、あなたを叩き潰す。あなたの大嫌いな。力と兵と命をぶつけて……。

あなたが正しいと思うなら、今こそ私を叩き潰しなさい。その時は、私はあなたの前に膝を折ることでしょう。首を取るなりあなたの理想に従わせるなり、好きにすればいい」

「この兵力差と私相手に曹操さん。本当に勝てると思ってますか?」

「負ける戦はしない主義よ」

「どうしても……戦わないとダメですか?」

「当然でしょう。そもそも私が納得しないもの。そうしなければ、私は明日にもあなたを裏切って、全力であなたの城に攻め入るわよ。それでもいいのなら、あなたのしたいようになさい」

「……分かりました。戦いたくはないけれど、私はあなたを叩き潰します!」

 

劉備と華琳と一刀は舌戦の後、自分達の陣に下がる。

 

「一刀、全軍を展開するわよ! 弓兵を最前列に! 相手の突撃を迎え撃ちなさい!」

「分かった」

「その後、一刀は後曲に。第一射が終わったら、左右両翼は相手を撹乱なさい! その混乱をついて、本体で敵陣を打ち崩すわよ!」

「御意!」

 

そして曹操軍と劉備軍の激突が始まった。

曹操軍は少数に対し、劉備軍は大軍。戦況は圧倒的に曹操軍が不利。

戦いが始まってからそんなに経たないうちに曹操軍の兵士がかなり減っていた。

 

「隊長! 風がもう少し兵を回してくれって」

「これ以上は無理なんだな! これが!」

「分かっとるけど、それを何とかするのが隊長の役目やろ!」

「予備の兵力が無い状態で援軍を送れは無理あるだろ!」

 

しかし風のところだけでなく桂花のところも苦戦なのは分かっているが、やはり多勢に無勢であった。

 

「ところで華琳のところはどうなってる!」

「押されとるみたいよ! やっぱり兵隊が足らんのが響いとるみたいや!」

「……仕方ない。星! 行くぞ!」

「御意!」

 

一刀と星が駆けだし、華琳の元へと走る!

 

「真桜! 後ろは任せるからな!」

 

 

その頃、華琳は関羽と戦っていた。

 

「伊達に前線に立つわけではないか。……なかなかやる!」

「舐めてもらっては困るわね。しかし…さすが関羽…良い腕だわ。どう? 私のもとに来ない?」

「この状況で減らず口を…!」

 

戦闘中に関羽を勧誘する華琳。しかし言ってるほどの余裕はそんなにない。

 

(さすが天下に謳われる関雲長。まともにやり合えば保ってあと数合というところかしら)

「ここか!」

 

関羽と華琳に戦いにこの世界の趙雲も参入する。

 

「星。お前は周りを頼む。私は曹操を!」

「いや、周りはもう既にいない…、曹操覚悟!」

 

関羽と趙雲、二人の攻撃に華琳も限界が来る。

 

(だめ、もう保たない!)

「これでもくらえ!」

 

その音声と共に華琳達の周りを白い煙が包む。

 

「な、何だこの煙は? 何も見えぬぞ!」

「前が見えぬ。この煙は一体……」

「この煙は……」

「こっちだ! 華琳!」

「え、あ……っ」

 

先ほどの白い煙は星が真桜に忍者の事を話して真桜が遊び半分で作った煙玉の煙であり、一刀は煙玉を投げたと同時に破偉派で撃ちぬいたのだ。

関羽と趙雲が混乱している隙に一刀が華琳のところにやって来て、星が無理矢理華琳を引っ張り出して煙の外に出す。

 

「一刀!」

「本当にギリギリ間に合ってよかったぜ。華琳…」

「どうしてあなたがこんな所に! 後曲での仕事はどうしたの!」

「もう送れる兵がいない」

「え……」

「……限界だ。城に下がったほうが良い!」

「ここで兵を引けというの!? 劉備を相手に負けを認めろと?」

「だがまだ死んだわけじゃない。城まで下がって、春蘭達の合流を待てばいくらでも活路は見出せる」

 

一刀の意見に華琳は猛反発する。

 

「嫌よ! あの子のように甘い考えに膝を折るなんて…この私の誇りが許さないわ!」

「だから関羽とこの世界の趙雲の二人と正面から戦っていたのか? 俺にしたらそっちのほうが馬鹿げてるぜ」

「馬鹿で結構。理想を貫くことを馬鹿と言うなら、それは私にとっては褒め言葉だわ。

それで野に散ったとしても、それこそ本も…」

 

華琳が言い終える前に、一刀が……いや星が華琳に平手打ちを与える。

 

「星……」

「私も昔似たような事をした。だから本来なら言えた義理ではないが言わせてもらう。己の命を大事にしろ! 何故命を大事にしない!? 死んでしまったらそこで終わりだ! だったらその一つだけの命、大事に使え!」

「星……俺にも少し言わせてくれないか」

「一刀…」

「華琳。俺はそんなに馬鹿は嫌いじゃない。だがな……俺も自分の命を大事にしない奴なんて馬鹿じゃなくても嫌いだ!」

「かず……と……」

「それにな、この一戦で負けただけで、華琳が劉備に負けたことになるのか!?

そんな訳ないだろ! お前はまだ生きている! 負けってのは膝を折って、死んだときだろ? 信念が折れたときだろ? 

あの言葉を嘘にするつもりなのか!?」

 

一刀に初めて心の底から怒鳴られる華琳。

今まで華琳のちょっとしたおふざけに一刀は怒ることは多々あった。

だが重大なところで一刀が怒ったことは一度もない。今初めての経験である。

 

「……」

「俺はそんなの絶対に認めないからな。今は城に退け。城に戻って、体制を立て直して籠城する力くらいは残ってるだろ?

春蘭や秋蘭、永琳に光琳、それに恋達が戻ってくるまで持ちこたえれば最後は勝てる。絶対に!」

「一刀……」

「春蘭や秋蘭がいないところで華琳が死んだらあの二人にどう説明すればいいんだ? 俺が死んじまう。だろ?」

「ふふ、そうね」

 

華琳の顔に笑みが浮かぶ。

 

「落ち着いたようだな」

「ええ、どうやら劉備との舌戦で少し頭に血が上っていたようね。とりあえず皆に指示を……」

「真桜に頼んで桂花や風にも城に下がるように言ってある。早く行け!」

「我らもすぐに行く」

「……二人とも、ちゃんと戻ってきなさいよ」

「ああ、約束してやる」

 

そして華琳はなんとか城まで下がった。

 

「さてと……」

「俺達も撤退の前に……」

 

二人はようやく煙が晴れて体勢を立て直した関羽と趙雲を見る。

 

「むっ!? 私がもう一人?」

「初めましてだな。この世界の私よ」

「この世界?」

「信じられぬかもしれないが、私はこことは別の世界の私だ。だが私であることに変わりは無いぞ」

「何を訳の分からぬことを!」

 

趙雲よりも関羽が理解できないために怒りを顕わにする。

 

「悪いが俺達も撤退するからな」

「そうはさせん!」

「そう言うと思ったからここに留まったんだ」

「ならばお主らの頸をもらいうける!」

「悪いが死ぬわけにはいかない!」

 

一刀が満月と新月を抜き構え、星も槍を構える。

 

(愛紗の力は主もご存じのはず)

(ああ。かなり強いってことはな。俺だって恋や星に稽古をつけてもらっている。それに倒すことは目的じゃない。撤退することだ。星もその事を頭に入れておけ)

(分かっております)

 

 

そして一刀は関羽、星は趙雲と対峙する。

 

(やっぱり愛紗は別の世界でも愛紗だな。凄い気迫を感じる……)

「こちらからいくぞ!」

(雷の如き力を!)

 

一刀は静かに力を溜める。

関羽がそんな一刀よりも先に先手を取る。

 

「でぇえええええい!」

 

関羽が青龍偃月刀を横から振るう!

 

「くぅううう! 二門・電鋼刹火!」

 

一刀は青龍偃月刀を何とか下から切り上げるようにして払いのけ、そして再び関羽の体に対して下から切り上げるように満月と新月を振るい、一刀は満月をとっさに地面に突き刺し投げ、後ろから破偉派を抜いて関羽を撃つ。

 

「くっ!」

 

破偉派から放たれた氣弾は関羽の腹部に命中。関羽は思わず怯む。

 

「飛んで行けぇ!」

 

一刀は破偉派を投げ捨てると同時に地面に刺していた満月を抜いて、満月と新月を関羽の上から振るい、関羽を後方に吹き飛ばす!

 

「愛紗!」

 

関羽が飛んで行くのを星との戦いの中、よそ見をする趙雲。

 

「よそ見をしている場合ではないぞ!」

 

星がつば競り合い状態であった趙雲の武器を上になぎ払い、星は自分の武器を横振りにして、趙雲を後ろに弾き飛ばす。

 

「がはっ!」

 

飛ばされた趙雲が同じく飛ばされていた関羽の所に飛ばされる。

 

「星、大丈夫か?」

「何とかな……」

「……退くぞ、星」

「御意!」

 

一刀と星は何とかしたと見て、二人して急いで撤退し、何とか城の門が閉じる前に城に辿り着いた。

 

 

一刀は城壁で華琳達に尋ねる。

 

「ところで真桜はどうした?」

「真桜は別の作戦があるからそちらを任せているだけ」

「そうか、ならいい……」

「よし! 総員城壁の上に待機! 籠城戦で敵を迎え撃つわ! 何としても春蘭達が帰ってくるまで耐えきってみせるわよ!」

 

籠城戦が始まり、劉備軍は普通に攻めてくるわ、抜け道を見つけて攻めてくるわの連続だったが、何とか華琳達は耐えていた。

一刀は敵が隊を分けて、休む部隊と攻める部隊に分けていることに気づき、華琳も同じ事をしようとした時、ついに来た。

それは各地に散らばっていた華琳の将達である。

 

「あれは春蘭に霞に秋蘭に凪、それに真桜と恋達も……どうやら同時に着いたみたいだな」

 

一刀は興奮するが、体が思うように動かない。

 

「どうしたのだ? 主」

「愛紗と戦った時、結構力を使ったのか……体が動かん……」

「主……、華琳悪いが私は主を……」

「分かったわ。後は私達に任せて休んでなさい」

「悪い……」

 

一刀が星に膝枕をしてもらう。

そして華琳達はやってきた援軍と共に見事劉備軍を退けることに成功した。

 

「劉備の軍が撤退していく…」

「ようやくひと段落だな」

「そうね……」

「春蘭達がこんなに早く着くとは思わなかったぜ……」

「本当は今日の日暮れ頃に着くはずだったのよ。それがこんなに日が高いうちに来てくれるなんて…私だって思わなかったわ」

「やはり華琳は愛されてるって事なんだな……」

「そうね、帰ったら、秋蘭と一緒にたくさん可愛がってあげないと…」

「しかし今回の戦いはすごく疲れた」

 

一刀はまだ星に膝枕をしてもらっていた。

 

「あら。初陣でもあるまいし」

「あのな、関羽相手に何とかしようとしたんだ。力だけじゃなくて精神も結構使ったんだ……」

「……何よ。だらしないのね」

「いいだろ、別に……」

 

華琳は突然、一刀の顔を星の膝から自分の胸元に近づけた。

 

「華琳…?」

「いいから、黙っていなさい」

「ああ」

「今日はありがとう。一刀のおかげで死なずに済んだわ」

「……」

「何か言いなさいよ」

「いや、黙ってろって言ったからさ」

「ばか」

 

二人はしばらくそのままで長い沈黙が続く。

 

(もう一刀の馬鹿)

 

星は二人のやり取りを見て少し嫉妬する。

 

「一刀」

 

星が嫉妬のあまり一刀の後頭部に自分の胸を当てる。

一刀の頭は二人の胸によりサンドイッチ状態になっていた

 

「やれやれ、大変だな。これは……」

 

一刀は二人のために戦おうと決意するのであった。

 

 

その日の夜、一刀は少しフラフラ状態でありながらも軍議に参加した。

 

「ところで春蘭達はどうやって早く帰ってこれたのかしら?」

 

華琳が疑問に思っていたことを春蘭達将に尋ねる。

 

「それは……」

「私が説明します」

 

その説明をしようと咲が名乗り出た。

 

「咲。ではどういうことか説明してちょうだい」

「はい。実は私達の下にある伝書が届いたのです」

「伝書?」

「はい。中身は至って簡単。『曹操様の危機、至急本城に戻れ!』っと書かれていたのです」

「そう……。その伝書は誰が書いたのかしら?」

「それは……」

「私達も分からないのです」

「分からないとはどういうことかしら?」

「見たこと無い字で書かれていたので、誰が書いたのかが特定できず……」

「ああ。それ私が書きました」

 

するとそこに一人の小さな少女が現れた。

その少女は朱里みたいな背であり、体格もよく朱里に似ていたが、顔つきが全然違い、凄く腹黒そうなことを考えてそうな顔で、服装は三国志のゲームに出てくるキャラクターのような物だと一刀と星は思った。

 

「あなたの名は?」

「私の名は司馬懿。字は仲達。真名を黒美(くろみ)と申します。黒美とお呼び下さい。曹操様」

「では黒美、どうしてあなたがこの伝書を出したのかしら?」

「はい。私は前から曹操様にお仕えしていましたが、地味な仕事しかしていませんでした。

しかし私は軍師としての仕事がしたいと前から考えておりました。

そんな時に曹操様の居城が手薄なのを知り、何かあったらまずいと思い、各地に散った将達に伝書を送りました」

「それは誰かの命令でやったのかしら?」

「いいえ。私の独断です。どんな処罰でも受ける覚悟はございます」

 

黒美はひざまづき、華琳は黒美に近づく。

 

「黒美。いえ、司馬懿」

「はい」

「本来なら厳罰に処すところだけど、あなたのお陰でこの窮地を脱せれたのは事実。よって今回は不問とします」

「………はっ!」

「今後は私の下で働きなさい。軍師としてね」

「分かりました!」

「黒美、私の事は真名で呼んで構わないわ。それとあなたの真名を他の皆にも呼ばせようと思うけど良いわね?」

「構いません」

 

こうして司馬懿が加わった。

 

(司馬懿か……)

(後に晋を作るものの祖ですな)

(ああ。そのために曹一族に対してクーデターを起こす)

(しかしそうでないかもしれませぬな)

(ああ。恋のように裏切らないかもしれないからな)

(それが外史と言うものですからな)

(もしクーデターを起こしたりしたら、俺が止めてやるよ)

 

一刀と星はそう思う。

 

 

どこかの山の祠では曹操軍が劉備軍を退けたことを知る普浄と潘臨。

 

「どうやら失敗したようね」

「ああ。まさかこの世界の司馬懿があちらにつくとは思わなかったからな」

「司馬懿って最後は曹魏を裏切る人間よね? 私はてっきり味方しないと思ったのけれど……」

「うむ。そう考えていからこそ、劉備に進軍するように勧めたが誤算だった」

「これからどうするの?」

「しばらくは静観……と言いたいが、私はある準備をするため奥に引き籠もることにする」

「何をする気かしら?」

「何、特殊な呪いだ。発動には時間がかかるのでな。それまでは私に近づくな。いいな」

「ええいいわよ。ところで何を使う気なの?」

「これだ」

 

普浄は懐から一冊の本を取りだす。

 

「あら、それって……」

「そう、あの戦いの時に回収したものだ」

「悪い人ね」

「これは役に立つ。だがこれを使えば他の外史やこの外史にもいくつか影響があるかもしれん」

「それって結界を越えてまずいことにならない?」

「構わん。あの老人共が何を言ってこようが私には戯言にしか聞こえん。それではな……」

 

普浄はそう言って祠の奥へと入っていく。

 

「私も静観しようかしらね」

 

潘臨は静観することを決めた。

 

 

おまけ

 

 

作者「第19章だ」

一刀「すこしハイピッチか?」

作者「さあな」

一刀「次は司馬懿が出たか……。でもお前の別の作品だと司馬懿って完全な敵だよな」

作者「最初はその司馬懿とつながりがあるかのような台詞が普浄にあったのだが、クロスオーバー関係を一切なしにしたかったからやめた」

一刀「そうか…」

作者「次回で魏に出てくる最後のオリジナルキャラの登場だ。その次はオリジナル話だ。

それでは!」


 
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