No.146183 心・恋姫†無双 第二十三話南風さん 2010-05-28 23:57:33 投稿 / 全6ページ 総閲覧数:9628 閲覧ユーザー数:6799 |
心・恋姫†無双 ~大陸動乱編~
第二十三話 ~劉備の乱 咆哮~
「白帝城をどう攻めるか・・・・・・・・。」
本隊に別働隊が合流した後、劉備軍は軍議を開いていた。
「情報によると白帝城に篭る敵兵は約三万・・・・・・こちらとしては城を包囲しつつ、攻入りたいんですけど・・・・・。」
「入り組んだ地形の白帝城を包囲することは不可能です。また、軍を進めなおかつ陣をしける道も限られています・・・・・。」
「ふむ・・・・・難しいな。」
「どうにかならないかな?」
「はい。部隊を三つにわけ本隊はこちらの道から進み、まず白帝城を正面から攻めます。次にこちらの道を別働隊が進み、白帝城を裏側から。最後に左側面からの斜面を駆け下り奇襲をかけます。とはいえ、こちらの兵数も補充したとはいえあまり多くはないです。ですから、速さが勝敗を握る鍵となります。・・・・・戦が長引くと荊州から反乱軍の本隊が来る可能性がありますから・・・・・・・・・・・。」
「そうなった場合、苦戦を強いられてしまいます。」
「確かにな。向こうには人馬一体の涼州兵、それに勇猛で名を馳せた益州の将兵。負けるつもりは毛頭無いが・・・・・・勝てる見込みも少ないか。」
「そんなの関係ないのだ!!どんなに来ても鈴々がぎっちょんぎっちょんに叩きのめしてやるのだ!!」
「鈴々ちゃんの言うとおりだよ。例え北郷さんが来たとしても、叩きのめすだけ。」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「はい・・・・・・・・一応、対応策もありますので大丈夫だと思います。では・・・隊の振り分けを・・・・・・。」
――白帝城――
「劉備軍は、まずこちらを包囲してくるでしょう。」
「そうですか。どのように進軍してくると思いますか?」
「こちらの正面が本隊。後は裏から・・・・・・最後にこちらの斜面からの奇襲ですかね。」
「部隊が三か四ですか。」
「はいなのです。」
「入城・・・・・いや、城が陥落したら・・・・・・私達の勝ちですね。」
「そうなのです。目的は果たせます。それに偽報が思ったより効果あったみたいです。進軍速度が遅く、準備に余裕ができました。」
「わかりました。今現在の兵数は?」
「涙達の隊と最後まで残った益州兵合わせて三千といったところですね。」
「充分に時間は稼げますね。」
「はいなのです。では、涙はそろそろ出陣してきますね。」
「頼みます。では、自分の隊も準備が整い次第出陣します。」
時を同じくし、劉備軍の反乱軍討伐の情報は大陸中に広まっていた。
――反乱軍――
その日、一つの声無き慟哭が城中に響き渡った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!」
一人の将として抑えたつもりだった。
・・・・・・・・・・・・だが・・・・・瞳からは涙が溢れ、心は絶望で染まっていった。
黄忠将軍の一人娘璃々様、帰郷中に劉備軍の襲撃にあい行方不明。
「・・・・・・・・・・・璃々。」
紫苑の消え入りそうな声は様々な感情が入り混じる。
「璃々が行方不明・・・・・・巴郡陥落じゃと・・・・・・・・・・!!」
桔梗の声からは怒りのみ。
「陥された城は合わせて五つ。白帝城へは一本道です。」
「千里・・・・・・・・・・陥された城に兵はどのくらい?」
「・・・・・・・合わせて四千弱ですね。どれも小さく守兵の少ない城です。」
「そう・・・・・か。」
「お館!!」
「・・・・・・・一刀。」
「・・・・・・・・一刀様。」
「どうするんだい?」
「・・・・・・主。」
「ご主人さま!!」
「何で黙ってるよ!!」
「そうだよ!!」
「・・・・・・ご主人さま。」
憤りを隠せない仲間たちの声。
その声を受け止めた一刀は、静かに息を吸いそして吐き出す。
「前にも言っただろう。俺達は動かないって・・・・・・・ここで動いてしまったら今までの戦いが無駄になる。確かに・・・・・・・いや、話はここまでだ。」
その口から発せられるのは淡々なる台詞。
「まぁ、そうだろうね。」
「・・・・・・はい、わかりました。」
「・・・・・・納得はいかんが・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
「お館!!」
「「「ご主人さま!!」」」
「・・・・・・・・・・解散。・・・・・・・・・・・・・千里はどんな小さいことでも何でもいい。何かわかったら俺に教えてくれ。」
そう言い残し、一刀は足早に玉座の間から姿を消す。
そして、誰もその後を追おうとはしなかった。
――曹操軍――
「劉備が?」
「はい。」
「ふ~ん。あの甘ちゃんがね・・・・・その他の情報は?」
「申し訳ございません。劉備軍が動き、反乱軍を討伐しているとしか。それ以上の情報はありません。おそらくは、諸葛亮、鳳統の仕業かと。」
「さすがは伏龍に鳳雛。・・・・・・・・しかし、今回のこと桂花あなたはどう思う?」
「何かあったと見るべきでしょう。劉備の性格からして、反乱軍を自発的に攻め入るなど考えられません。」
「でしょうね。袁術は滅び、袁紹は私たちと睨み合っている。孫策がそのような事をするとは考えにくい。どこぞの小物に唆される事もありえ無い・・・・・・・。」
曹操の顔から笑顔がこぼれる。
「・・・・・・・華琳様?」
「・・・・・私たちが知らない英雄の器のもった者がいる。」
「まさか、そんな事ありえるわけがありません!!」
「そうね。桂花の情報収集能力と我が軍の間諜の力を軽視しているわけではないわ。」
「・・・・・・・どういうことですか?」
「どこにも属さず・・・・野に眠っているってことよ。・・・・・・・いや、影からこちらを常に見ている。隙をつくったものから喰おうとね・・・・・・・・・・・・。」
「まさか・・・・・・・そのような者が・・・・・・・・。」
「現にいるからこそ劉備は踊らされた。劉備軍、反乱軍の弱点を見事に突き、この大陸の二つの大きな勢力をぶつけるなんて、只者の仕業では無い。だが、真の英雄とも呼べない。・・・・・・・・・・桂花。」
「はい。」
「どのような小さい出来事でも良い。劉備軍と反乱軍の事で何かあったら直ぐに私に伝えなさい。」
「御意。」
荀彧がその場を去り、それと同時にどこからともなく曹操の姉が姿を現す。
「あら、今度は盗み聞き?」
「そんなことはしてないわ・・・・・・・だって気づいていたでしょ?」
「当然よ・・・・・・・どう思う?」
「・・・・・・・さぁ?ただ、言えるのはどんな事があっても華琳だけは守ってあげる。」
「そういうことを聞いているわけではないのだけれども・・・・・・・。」
「そういう事よ。それが私の存在する理由だから。」
「・・・・・・・わかったわ。では、久々に仕事を頼もうかしら。」
「えぇ、よろこんで。」
――孫策軍――
「・・・・・・わかった?」
「あぁ・・・・・・・・・・雪蓮の言うとおりだった。」
「ちっ、獣どもが・・・・・・やっぱり無理にでも探して殺すべきだったわ。」
「起きた事は仕方があるまい。・・・・・・・・・どうするつもりだ?間接的ではあるが我らが原因の一端を担ってしまったのは事実だ。」
「あら珍しい。てっきり止めると思ってたんだけど。」
「私とて鬼ではない。それに、借りがあるのも事実だ。」
「ふ~ん。」
「・・・・・・なんだ?」
「気に入った?」
「・・・・・・・・・・気に入ったか・・・・・・雪蓮と同じ・・・・・・・・・・かな」
「・・・・・・夢を見たの?」
「夢か・・・・・・どちらが夢なのかはわからんが・・・・・・・・・・私は借りを返したいだけさ。」
「ふ~ん。・・・・・・・・まぁいいわ。今はそういうことにしといてあげる。さて・・・・・・蓮華を呼んできてもらっていいかな?」
「・・・・・・・わかった。・・・・・・・・・・・・なぁ、雪蓮。」
「何?」
「・・・・・・・・私は変わらんぞ。今もこれからも・・・・・・・誰かさんとは違うからな。」
「ふふっ。誰かさんって誰かしらね~。」
「さぁ?」
場所は戻り、白帝城。
――白帝城――
「これで準備はできましたね。」
白帝城の門を見つめる恵雨。
そんな恵雨のもとに出陣したはずの涙がやってくる。
「大変なのです!!」
「涙!?出陣したはずでは?」
「それよりも伝えたいことがあるのです。」
涙に伝えられた言葉に驚きを隠せず、恵雨は城壁の上に駆け出す。
一方、劉備軍はと言うと・・・・・・
「「・・・・・・・・・。」」
劉備軍の軍師である諸葛亮と鳳統は目の前の状況に驚きと危機を感じていた。
「朱里ちゃん・・・・・・これって・・・・・・・・・・。」
「うん・・・・・・急がないと・・・・・・・・・。」
劉備軍が邑に立ち寄り、配給を行おうとした。
だが、その邑には誰も一人としていなかったのだ。
残されたのは家々のみ。
荒らされた形跡はなく、人がいた痕跡もある。
これらのことから、二人は同様の考えに行きついたのである。
「朱里!!雛里!!」
同じく異変を感じ取って二人のもとに趙雲がやってくる。
「星さんは先行して近辺の邑の偵察を!!」
「お、応!!」
「雛里ちゃんは主要な都市に伝令と、州境に斥候をはなって。」
「うん。朱里ちゃんは?」
「私は桃香さまにこのことを伝えてくる。きっと鈴々ちゃんも一緒だろうから・・・・・・。」
小さな体を震わせ、諸葛亮は自分の力の無さと自分たちの行動の愚かさに後悔した。
そう・・・・・・
それは、劉備軍にとって最悪の事態。
「それは本当なのか!?」
「っ!!」
諸葛亮の発言に張飛は驚き、劉備は唇を噛締める。
「・・・・・・はい。詳しくは星さん達が戻ってからではないとわかりませんが・・・・・・・確実だと思われます。」
「・・・・・・・・・どうして。」
「!!・・・・・・・・・・お姉ちゃん?」
「・・・・・・・・・。」
劉備から発せられる気に猛将と呼ばれる張飛すら恐怖する。
その気は重く冷たく・・・・・・暗い。
怒気でもなく殺気でもない気。
「どうして!!!!!」
気を含んだ声は陣中に響き渡り、外にいた兵達にすらどよめきがはしる。
「・・・・・・・・・おそらくは・・・・・・・・・。」
静かに口を開く諸葛亮。
「私達と同じかと思われます。」
「・・・・・・・同じ?」
「桃香様は、西益州の民に対し親身に接し、僅かな時で信頼を得ることが出来ました。・・・・・・・・・・ですから、今回の出来事でも・・・・・・・民から様々な声が上がりました。」
「そうだよ、だから私達はここにいる。・・・・・・・皆からの声があるから私達は戦っているの。けど、それのどこが北郷さんと同じなの?」
「・・・・・・・・選んだんです。」
「?」
「民が自ら・・・・・・・選んだんです。・・・・・・・・・・・・信頼できる君主を・・・・・・・・・・・・。」
――白帝城、城壁――
「・・・・・・・・・・・。」
恵雨は目の前の光景が信じられないでいた。
何も考えられないでいた。
「嘘じゃないのですよ。」
「・・・・・・・・えぇ。」
涙の言葉にも反応出来ずにいた。
一方涙は、嬉しさを隠せずにいる。
その光景を前に微笑みすら浮かべていた。
「・・・・・・どうしましょう。これでは涙達の策を考え直さないといけませんね。」
「・・・・・・・・はい。」
「戦いますか?」
「・・・・・・・・・・。」
「皆の・・・・・・・・ご主人様の笑顔をまた見るために。」
「!!」
一度は死ぬ覚悟をした。
そのために捨て身の策を考え、実行しようとした。
だが、今は違う。
友人の言葉に胸が躍る。
・・・・・・もう一度、あの方と会えるかもしれない。
・・・・・・・あの方の傍にいられるかもしれない。
・・・・・・・あの方の笑顔をまた見れるかもしれない。
「・・・・・・・・涙。」
「はい?」
「作戦を変更します。」
「・・・・・・・・どうしますか?」
「劉備軍と戦いましょう。・・・・・・・民を・・・・守るために!!」
「・・・・・・・・はい。」
恵雨の言葉に静かに微笑む涙。
恵雨は瞳に闘志が宿る。
恵雨の視線の先
―――そこには兵達に先導、護衛された民がいた。―――
民は道を覆い、女子供は家財を抱え、男達は皆手に武器を持っている。
そして、先頭が城門の前に来たとき民が一人一人と膝を折り、手を合わせる。
ある人は祈るように、ある人は手を合わせ、ある人は臣下が君主にとる礼の形。
ただ、民達の想いは一つ。
「北郷様についていきます。」
その想いが兵に伝わったのか、どこからともなく鬨があがる。
「御使いさまに栄光を!!大陸に平和を!!」
そして鬨の声は一つ、また一つと合わさっていく。
そして・・・・・・・・
「「「「「御使いさまに栄光を!!!!!!大陸に平和を!!!!!!」」」」」
「「「「「おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」」」」
鬨は民達からもあがり山々と谷にこだます。
――劉備軍――
鬨の声は劉備軍まで届く。
「!!・・・・・・・これは?」
「おそらくは、反乱軍・・・・・・いえ、北郷軍より上がっている声かと思われます。」
「嘘・・・・・・。」
「お姉ちゃん・・・・・・。」
「恐れながら桃香様。」
「・・・・・・・何?」
「私達は・・・・・・戦う相手を見誤りました。この戦い・・・・・勝敗関係なく多大な犠牲を払うことを覚悟してください。そして、どのような事があったとしても・・・・・・・・・歩みを止めずに歩き続けると約束してください。」
第二十三話 完
予告
姜維(恵雨)VS張飛
譲れぬ想いを刃に乗せて・・・・・・・
次回 心・恋姫†無双 ~大陸動乱編~
第二十四話 「劉備の乱 麒麟児」
天に槍を向けし者に・・・・・・・天罰を。
劉備軍VS北郷軍
ついに開戦!!
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前回、私の作品を読んでくれた方々に感謝を申し上げます。
この作品はキャラ崩壊およびオリジナル要素が強い作品となっています。苦手な方は申し訳ありません。駄文で誤字脱字等もあると思いますがよろしくお願いします。最後にこの作品の感想何でもかまいませんお待ちしております。
次の作品は6月の中旬に投稿したいと思います。
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