第三十七話 苦肉
とうとう曹操軍がやってくる。その数はおよそ80万以上。こちらは劉備、孫策軍が合わさっても15万程度。まったく話にならない数の差である。
でもそれをなんとかしなくては未来はない。だが決して勝機がないわけではないのだ。こちらには冥琳、諸葛孔明、鳳統の蜀呉が誇る三軍師がいる。他にも詠やねねや穏と言った新進気鋭の軍師たちだっているのだ。彼女たちがいてくれるのなら一方的な展開にはならないはず。そう。勝機はまだあるのだ。
「さて、現在の状況を整理しよう。」
現在、呉と蜀の重臣たちはこぞって建業の城で会議を開いている。当然ながら、議題は曹操軍だ。
「先日、曹操からの書状がきた。それによると曹操軍は我らの倍以上の軍を引き連れてやってくる。」
今、この場を仕切っているのは冥琳である。他の者たちも冥琳の話に耳を傾けていた。
「その数はおよそ80万。いや、あくまで噂程度の信憑性しかないので、100万を超えるかもしれん。」
「100万!?」
みんなが驚くのは無理もないだろう。こちらの兵力の倍以上。あまりにも圧倒的過ぎる。常に最悪の状況を想定内に置くと言うのは軍師としての当たり前の考えではあるが、これでは自分から敗北宣言しているようなものだ。
「敵軍勢の数、そして我らの兵数。なおかつ健在の状況を考えるに、平地での決戦はこちら側にとって不利となる。」
冥琳のこの話に乗るように朱里と雛里もまたこれに頷いた。
「広い荒野では大軍の方が有利ですからね。」
「となると、平地以外での戦闘を考えなくてはなりませんね。」
次々と自分たちの置かれて行く状況を整理しながら策を練っていく。詠もねねも穏も冥琳たちの言葉にうなずくなり、意見したりしている。
その頃、一刀は…………
「………桃香。」
「………はい。」
「彼女たちの言っている事、分かるか?」
「…………さっぱりです。」
空気と化していた。いや、状況は理解できているのだ。しかし、彼女たちのあまりの真剣さに口をはさむ事が出来ずにいる。隣にいる桃香も同じである。大体の話は理解できているのだろう。でも、彼女たちが次から次へと話を進ませるものだから、どんどん付いていけなくなってしまっていた。
雪蓮にいたっては、もはや我関せずな態度である。もうすべてを冥琳に任せるつもりなのだろう。健気にも蓮華は、冥琳たちの難しい会話に必死になって追いつこうとしているのがよく分かる。
王たちをほっておいて軍議はどんどん続いた。
そして、とうとうある程度の話が纏まってきたのだ。
「これから劉備軍は軍をまとめて赤壁にある我が城に集結してもらいたいのだ。」
冥琳の提案に朱里が反応する。
「赤壁………長江に面した土地ですね。なるほど、長江を使って曹操軍の動きを抑制するんですね。」
「その通りだ。我らも軍をまとめ、赤壁へと向かおう。」
軍師たちがあり程度の話をまとめていると周りから勿論質問などが飛び交う。その口先を切ったのは関羽であった。
「ちょっと待て。決戦は良いが国を開けておいてもよいのか?曹操が赤壁にやってくるとは限らないだろう。もしも、誰もいない国を攻められてしまったら………。」
もっともな意見である。曹操の目的は一応は雪蓮と桃香の首とはなっているが、本当の目的は土地そのものである。まあ、土地を取られてしまったら首を取られたも同義なのだが……。
「それはあるまい。」
「なぜ、そう言いきれる?」
「関羽よ。お前は曹操の何を見てきたのだ?」
「な、なに?」
まるで挑発するかのように窘める冥琳に、関羽はカチンと来たようだ。
「曹操は誇り高き英雄のひとりだ。劉備と孫策という英雄二人が餌となれば、曹操は必ず赤壁へとやって来るだろう。それに誇り高き英雄となれば、強敵と闘うという誘惑にあらがう事はせん。」
「しかし………!」
「それにだ。赤壁を決戦の場にしなければ、我らに勝機はない。あの場所で闘う事が我らの最大にして唯一の勝機なのだよ。」
来なかったら敗北、来たらなんとかなるかもしれない。あまりにも相手に頼った戦術である。でもそれしかない事は関羽も理解出来てはいた。でも、このまま言わせておくのは何となく悔しいから、関羽はさらなる質問をした。
「決戦はいいが、どうやって闘うつもりだ?」
そう。ものすごく当たり前の質問。しかし、その当たり前があまりにも困難なのだ。相手は100万を超える大軍隊。こんな天文学的な数字の軍と戦った事など両陣営共にないだろう。だからこそこのように軍師たちが集まり作戦を練っているのだから。
しかし、関羽のこの質問に対し冥琳は鼻で笑いながら答えた。
「大軍相手に効果のある策と言えば………一つしかないだろう?」
ものすごい邪悪な笑みであった。関羽は理解できなかったようだが、彼女たちの軍師である諸葛孔明は理解できていたようだ。
「………そうですね。」
と、言った。まるで苦虫を潰したかのような辛い顔をしながら………。
曹操軍side
現在、曹操軍は陸路を進み、呉の国境周辺へと進軍していた。その途中に陣を張り、呉と蜀の動きに備えるつもりでいたのだ。
「桂花。呉と蜀の動きは?」
曹操軍は現在、軍議を開始していた。もうここは敵地なのだから、いつどんな奇襲を受けても何の不思議もない。
「はっ!今のところ、こちらの動きに対して、大した動きは見せてはいません。ただ……」
「ただ、何?」
「はい。間諜の話によると、両軍はこちらに向かわず赤壁へと向かっているようなのです。」
「赤壁? そう………ならば我らもそちらに向かうとしましょう。移動の準備をしなさい!」
即決。即決であった。一応曹操には曹操なりの考えがあるのだろうが、あまりにも早く、そして愚かな判断だ。当然ながら彼女の軍師たちはこれに反対する。
「お待ちください!華琳様!」
稟だった。彼女は曹操にも負けないくらいの迫力で曹操に進言した。
「赤壁などに向かわずとも、下丕と建業を抑えれば、この戦は我らの勝利となります。」
もっともな意見だ。何も敵に合わせる必要などはどこにもない。むしろ城を開けてくれるのなら好都合と言うもの。それに相手が赤壁へと向かうと言う事はそこに何かしらの罠を強いていると言う事だ。それが分からないような曹操ではないのだが………。稟は曹操が何を考えているのか分からないでいたが、自分の考えには間違いがないと信じ、さらに進言する。
「勝利を確実なものとするには、必要のない損害は回避すべきです!」
稟の意見に曹操軍の重臣たちは頷いた。当然だ。当たり前であり、最高の策なのだから。
だが、曹操は………
「稟。私は誰?」
と聞いてきた。
「………はぁ?」
さすがに稟も分からいでいる。曹操はもう一度聞いた。
「私は誰だと聞いている。」
と。
稟はその問いに答えた。
「貴方は………曹……猛徳様に在らせられます。」
そう。目の前にいるのは曹操猛徳。自分の主。覇王である曹操猛徳だ。間違える筈がない。しかし、どうしてそんな事を聞くのかと稟は心の中で思っていた。すると曹操は、言葉を続けた。
「そこまで分かっているのなら、私が何を望み、何を考え、何を求めているかは分かっているわね?」
「…………」
そうだった。この人は覇王だった。いつも曹操は口を酸っぱくして言っている。覇王とは天道の下、堂々と天下への道のりを歩く者。それが覇王であり、曹操猛徳だ。
でもしかし………
「しかし、華琳様………!」
今度ばかりの戦いは、間違いなく天下分け目の大決戦になる。絶対に勝たなくてはならないのだ。曹操の誇りは大きく、そして強い。でも誇りのために負けてしまったら元も子もないではないか。稟は必死になって曹操の考えを改めさせようとした。だが、
「くどい!」
逆に曹操の逆鱗に触れてしまったようだ。あまりの迫力に思わず開いた口が塞がってしまった。曹操は言葉を続ける。
「私は曹操猛徳!覇業を成し得る者だ!王のいない敵本城を急襲して天下を取ったところで、それは天下を盗った事にしかならない!稟、貴方は私を、天下を盗んだ愚か者として歴史に名を残せと言うのか!」
「ち、違います!………そうは言ってはおりません!」
ただ、自分は自分の主に完全なる勝利を与えたいだけなのだ。決して、愚か者として歴史に刻みつけたいわけではない。むしろ、その逆。歴史に曹操の名を高らかに残したいのだ。しかし、曹操はそれを愚かと言った。卑怯な事だと。堂々としていないと。
「ならば、小賢しい検索などはしないでちょうだい。………私は赤壁で堂々と決戦を行い、その勝利と共に天下を得る。」
曹操らしい。あまりにも曹操らしい意見だ。しかし、今回ばかりは曹操の意見には賛同は出来ない。この決戦は大陸の命運がかかった戦い。敗北などはもってのほかなのだ。曹操の軍師たちはそれを一番よく知っている。いや、曹操だって知っているはずなのだ。それなのに、赤壁で決戦を行うと言う。風も無駄と分かっているものの曹操に進言した。
「しかし、華琳様。稟ちゃんの言葉もまた真実です。乾坤一擲の勝負はやるべきではないというのが、軍師としての意見ですけど………?」
そう、現実を考えるのならば、稟の言う事が真実なのだ。それが分からないような曹操ではないはず………
風の言葉に対して、曹操は……
「そうね。確かに稟の言う事は正しいわ。」
稟の正当性を認めていた。
「でも………仮に負けたとしてもそれは天命でしょう。劉備と孫策の二人が天下を取るのならば、それはそれで良いではないか。」
「華琳様!それは……!」
あまりにも無責任な話だ。それでは今まで何のために闘ってきたのか分からないではないか。
「でもね。稟。」
「は、はい。」
間を入れずに曹操は続ける。
「己のやり方を曲げて進む事になんの価値がある?………私と言う存在が思い、考え、信じた道を歩いた結果があればこその覇業。」
曹操にとっての覇業とは勝利のみではない。己の考えを曲げず、自分自身の価値を見出すことが彼女にとっての覇業。
「覇業のために歩くのではない。私は、私と言う存在の意味を証明するために為しえる。………分かったわね。稟。」
決してその覇業のために事を成すのではない。曹操は曹操と言う存在の意味を見つけるために覇道を歩むのだ。意味のない戦いは曹操の覇業の意味を否定する事になる。だからこそ、彼女は劉備と孫策と闘うのだ。自分の存在を否定しないように……意味のある自分を見つけるために。そして自分を納得させるために。
曹操の言葉に稟は……
「………御意。貴方の御心を量れなかった不明をお許しください。」
静かに頷いた。納得はしてはいないのだろう。しかし自分は曹操の軍師である。主の望む戦いを補佐するのが役目。ならばこそ主の望まない戦いの進言など、まさに蚊帳の外と言うもの。あまりにも差し出がましい。そう自分を納得させた。
そんな稟の心情を理解したのか、曹操は稟に言った。
「そんな事はないわ。理を中心とする貴方の言葉こそ至言。こんな我がままな私を許して頂戴。」
と、配下である稟に頭を下げたのだ。
「華琳様、おやめください!そ、そのような……!」
さすがの稟もこれには焦ったようだ。何も非難しているわけではなかったのだが……。
「でもね。稟。」
「は、はい。」
「今回のこの戦、私は私情を中心に置きたいの。 劉備の言葉が偽りである事を証明するために。」
徐州を攻める際、劉備がそうお酢に向かって言った言葉。
『貴方は間違っている。』
その言葉はいつも自分の脳裏にひっついて離れない。もしかしたら自分は迷っているのかもしれない。だが、それを認めるわけにはいかないのだ。自分の在り方に疑問を持ち、劉備の考えに賛同してしまったら、今までの戦いがまったくの無駄になってしまうではないか。そんな事は絶対にあってはならない。そう、絶対にだ。
「華琳様、このような事を言うのは忍びないですが、あまり劉備の言葉に執着してしまわれると身を滅ぼしますよ。」
稟は華琳にそう告げた。すると華琳は怒ることも無く静かに答えた。
「執着とかじゃないわ。………ただ、自分自身に筋を通すだけ、それだけよ。」
と。
こうして、曹操軍は劉備、孫策を討つべく、赤壁へと進路を変更したのだ。そこには幾恵の罠が仕掛けられていると知りつつも……。
場所は赤壁へと移る。
「黙れ!黄蓋!私は呉の大都督だぞ!」
「ふん!まともに戦おうともせぬ者が大都督など、片腹痛いわい!」
現在、孫策軍と劉備軍は、赤壁の地で陣を張り、曹操軍の襲来に対しての軍議を開いていた。両軍ともにどうやって曹操軍を迎え入れるかという作戦を考える大切な軍議の時間だと言うのに横から祭さんが冥琳たち、軍師たちにチャチを入れたのだ。戦いとは頭でするものではないと。当然ながら、冥琳はこれに激怒し、こうして二人の口論が始まったのだった。
「そこに直れ!黄蓋!成敗してくれる!」
「やれるものならやってみせい!」
とうとう冥琳が腰にかけていた剣に手をかけてしまった。もう、これは口論ではなくなってきてしまった。蓮華や小連は勿論、亞莎と明命もただオロオロと右往左往するのみであった。
「し、雪蓮さん。と、止めなくてもいいんですか!?」
桃香だ。さすがにこの二人のやり取りを黙って見られなくなってしまったのだろう。雪蓮に言ったのだ。
「え?やっぱり、私が止めなくちゃいけないの?」
「あ、当たり前じゃないですか!」
雪蓮は、さも当然に不思議に思っていた。私が止めるの?と。桃香はそんな雪蓮に当たり前だと怒って言った。
「ふーん………まあ、確かにこれじゃ二人とも引けるに引けなくなっちゃうわね。」
そう言って、祭と冥琳の間に入って行ったのだ。
「は~い。そこまで。」
冥琳も祭さんも手には自分の得物を携えていた。もし、あと少し雪蓮が間に入ってくるのが遅かったらどうなっていたか………。
「祭。貴方、とんでもない事をしちゃったわね。」
静かに言うが、どことなく雪蓮は怒っているようにも見える。その静けさが、余計に雪蓮の怖さを強調しているようだ。
「私たちと劉備軍の協調を乱したあまりか、呉の大都督でもある冥琳に対する数々の暴言。擁護の範疇を完全に過ぎてるわ。どうする?冥琳。」
冥琳に話を振った。
「このような愚か者を側に置いておけば兵の士気にかかわります。軍議にのっとり処刑すべきです。」
ものすごくあっけなく言った。これに対し、当然ながら蓮華たちは焦る。
「冥琳!なんて事を言うの!祭を処刑するなんて!」
あまりにも当然に言うものだから、蓮華たちは冥琳たちに怒りだした。ずっと共に闘ってきた仲間を簡単に処刑するなんて言語道断である。
「一刀からもなんとか言ってちょうだい!」
冥琳と雪蓮が蓮華の言葉を無視するものだから、蓮華は一刀に必死になって頼み込んだ。
「え、ええ!?お、俺!?」
「勿論よ!一刀も姉さんたちを説得してちょうだい!」
あまり乗り気ではないが、一刀は蓮華の言う通り説得を試みた。
「な、なあ。雪蓮。」
「何?一刀。」
「さすがに処刑はどうかと俺も思うのだけど……。」
「ふ~ん、一刀もそう思うんだ。」
「そ、そりゃあね。」
雪蓮は少し考えた後、改めて祭さんに言ったのだ。
「蓮華も一刀もこう言っているものだし、処刑はやはり止めましょう。冥琳もそれで良いわね。」
雪蓮が処刑を止めにしたのだから、冥琳がその結論に口を出せる筈も無く、祭の処刑は中断されたのだ。蓮華たちはほっと胸を降ろした。ところがだ。
「でもね。この場を荒らした罪は重いわよ。処刑はしないけど罰として、祭には鞭打ち五十を言い渡すわ。」
「ご、五十!!」
あまりにも重い罰に思わず一刀は言い返してしまった。本当に五十なのかと。五回の聞き間違いではないのかと。でも、それは聞き間違いではなかった。五回ではなく五十回。それが雪蓮の出した祭さんに対する罰だった。これがどれほど重い罪なのか、分からない者はここにはいなかった。
鞭打ち
罪の大きさに対して回数が増えていく罰である。この鞭打ちはどんな悪行をしようとも精々十数回。それで十分なのだ。大概の人間は十数回も数えないうちにショック死してしまうのだから。それなのに祭さんに対しては五十回。もはや処刑すると言っている事と同義である。仮に生き延びられたとしても体には一生消えない傷が出来るだろう。女性である祭さんにとってはそれは死と同じくらいの苦痛のはずである。
「祭を連れて行きなさい。」
雪蓮は兵たちに命令し、祭さんをこの軍議場から追い出したのだ。これから祭さんは兵たちの眼前の元、恐ろしい目にあうのだろう。そう考えているうちに祭さんは兵たちに連れて行かれ、この場からいなくなってしまったのだ。
この諍いは、呉のメンバーだけではなく、劉備陣営にも多大な戸惑いを与えた。
「御使い様。」
「うん?どうしたの、桃香。」
隣から、袖をひっぱりながら桃香が一刀に尋ねてきたのだ。
「あ、あの人、大丈夫なんでしょうか?」
「………祭さんならきっと大丈夫だよ。」
そうだ、祭さんならきっと大丈夫なはずである。そう、一刀は信じていた。
「これから私たちは一体どうなるんでしょうか?」
「どうなるって?」
「だってほら。戦う前からこんなにめちゃくちゃになっちゃって………。愛沙ちゃんなんて雪蓮さんと今の事で口論してるし……。」
「………………」
ものすごく遠回しな言い方である。本当はそんな事を言いたいのではないのと丸わかりだと言うのに………。
「俺たちと一緒に闘う事に不安があるの?」
「っ………!」
分かりやすいリアクションをしてくれた。本当に分かりやすい子だ。本当は雪蓮たちを闘う事に不安があったのだろう。でも雪蓮には大きな借りがある手前、そんな事を言う事が出来なかったのかもしれない。
「桃香。」
「はい。」
「これから、恐らくなんだろうけど、もしかしたら祭さんは俺たちを裏切るかもしれない。」
「え、ええええ!!」
「シッ!静かにして。」
一刀は桃香の口を押さえて、耳元で静かに話した。
「ど、どういう事なんですか?」
「まだ、予想の範囲だから絶対とはいえない。だからすべてをここでは話せないんだ。」
それにどこで曹操軍の間諜が聞き耳を立てているか分からない。
「でも、もし祭さんが俺たちを裏切ったら………。」
「裏切ったら?」
「俺たちを信じて欲しい。」
「信じる?」
「そうだよ。信じて欲しいんだ。祭さんの事を。俺たちの絆を。」
桃香たちにとって祭さんはあまり交流のない人物であろう。そんなよくも分からない人物を信じろと言うのは少し無理があるかもしれない。でも桃香は言った。
「分かりました。信じます。」
と。
「ありがとう、桃香。」
信じると言ったのだ。これでもう大丈夫だろう。このあまりにも危なっかしく綱渡りな『苦肉の策』は………
「あ、雪蓮と関羽さんが喧嘩しようとしてる。止めなきゃ!」
「本当だ!止めなくちゃ!」
……………………………………
………………………
………
その夜、一刀の予想通り、祭さんが自軍の陣営から離れて行ってしまった。裏切ったのだ。自分たちの軍を、仲間を。それを一刀たちが知るのはすでに祭さんがいなくなってしまった後であった。
つづく
おまけ
「退屈じゃ。」
ここは洛陽。曹操軍の本拠地であり、天子がいる大陸の首都である。その街の城の一室いる少女は退屈そうにしていた。もしかしなくてもこの少女は美羽である。
「退屈ならば余の仕事を少しは手伝え!」
その傍には豪華な装飾の付いた法衣を身にまとった少女がいる。この大陸の皇帝、神楽である。
「まったく!華琳たちはこの大陸の命運をかけた戦いに言ったというのに。よくお前は我関せずな態度を取れるな。」
「ふん。曹操の所には七乃がいるのじゃぞ!七乃がいるのならば、曹操軍は無敵に決まっておろう。向かう所敵なしじゃ。」
「……・・お主、自分の言っている事が分かっているのか?」
「ん?何じゃ?」
「劉備軍と孫策軍には北郷一刀がいるのだぞ。」
「どういう事じゃ?」
「つまりだ。このままでは七乃と一刀が闘うのは必然だと言う事だ。」
………………
「うお!そうであった!」
「今更、気付いたのか?」
「ぬぬぬ~!!妾は一体どっちを応援すればよいのじゃ!?七乃には勝って欲しいし、一刀にも負けて欲しくはない!ぬおお!!一体、どっちを応援すればよいのじゃ!」
「…………」
ふう。と、ため息をついた後、神楽は美羽に言った。
それは天が決めるだろうと。
あとがき
こんにちわ、ファンネルです。
ここまでは原作どおりになってしまった。しかし原作と違うところは、七乃さんが曹操軍に加担しているところです。このあたりをきちんと書けたらいいなと思っています。
とうとう一年たってしまった。一年間、書き続けていまだに完結しないってどんだけ遅いペースなんだろうと、思ってしまっています。
なんだかここまで来ると時間を気にせず、完結できたらいいな~。程度に思ってしまいます。
これからも不定期に更新すると思いますが、その時は応援してくださいね。
では、次回もゆっくりしていってね。
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こんにちわ、ファンネルです。
続きです。ほとんど原作のような話ですが、見て言ってくれるとうれしいです
では。ゆっくりしていってね。
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