No.144946

『舞い踊る季節の中で』 第47話

うたまるさん

『真・恋姫無双』の二次創作のSSです。
明命√の作品となります。

一刀の調査報告に納得行かないものの、それに拘っている訳には行かない。
そんな思いに悩む彼女達は、その先に何を見たのか・・・・・・、

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2010-05-23 11:12:33 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:18657   閲覧ユーザー数:13484

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -寿春城編-

   第47話 ~ 普通である事に踊らされる花を愛でながら、詩を詠む ~

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

        神の手のマッサージ(若い女性には危険です)

  最近の悩み:某日、某天幕、深夜にて、

        ・・・・・・・・昨日は、酷い目に遭った。 まぁおかげで、助かったと言えば助かったのだけ

        ど、毎回ああいう目には遭いたくはない。 常識はずれの力を持つ、この世界の将達、

        次ぎにあんな事があれば、同じ用に助かるとはとても思えない。 かと言って添い寝を

        断ろうにも、今の明命は聞いてくれそうもない。 下手すれば泣かれる。いや実際泣き

        はしないが、目に涙を浮かべそうになる。 あんな顔をされて、俺に断れる訳が無い。

        うーん、どうしたらいいだろうか? 本当の事なんて流石に言えないし、寝相を理由に

        したとしたら、きっと明命の事だ、自分を縛ってでも、添い寝を敢行するに違いない。

        隠密である彼女に、少しぐらい縛った所で、大して意味があるとは思えないが、それは

        それで、色々不味い。 彼女のような魅力的な女の娘が、縛られて俺の横に居る等、及

        川じゃないが、そういう性癖が無くても、そういう気にさせられそうで不味い。

        一体どうしたら・・・・・・・・・・、よし、間に荷物を置けば、少しぐらいの寝相なら、

        

        だからって、なんで、何時の間に衝立と反対側に寝てるのっ?

        駄目、そんな毛布引っ張っちゃ、同じ布団で寝るなんて、嫁入り前の娘がする事じゃあ

        りません。 義兄さんはそんな風に育てた覚えはありませんよ。 等と、現実逃避に、

        ボケ倒して見たが、それで状況が良くなるわけじゃない。 そうだ、明命がこっち来た

        なら、俺が明命の布団で寝れば、って、手どころか、服を掴まれたら、それも不可能、

        此処は何とか、気づかれぬように、明命の手を・『ぎゅっ』 って、明命さん、なんで、

        俺を抱き枕よろしく、抱きつくんですか、とにかくこの体勢は色々不味いです。 その

        色々柔らかいものが、 明命の香りが、俺を危険領域へ持って行きます。 

        ぐぐぐぐっ、駄目だ、幾ら寝ぼけているとは言え、此方の世界の将の力は常識外れだ。

        俺の力程度では、引き剥がせない。 かと言って明命相手に点穴は出来ないし、この姿

        勢では、相手の力を利用する事もできない。 なら次に寝相で動く時まで何とか耐えて、

        見せれば、

        

  (今後順序公開)

桂花視点:

 

 

困った事になった。

事態そのものは、特に問題はないのだけど、

これを華琳様に報告する事事態が、私を悩ませている。

かと言って、この報告内容からして、これ以上、時間も人材も浪費する訳には行かない。

優秀な細作は、只でさえ養成が難しい上、華琳様の軍を置いても、数は決して多いとは言えない。

やはり、此処はありのままを報告するしかない。

 

『あの男は、ただの庶民です』

 

だと、

でも、それは、華琳様の目を疑う事、

認めたくは無いけど、華琳様が見初めた男が、ただの庶人である訳が無い。

そう思って、第一報後も、続けて調査をさせ続けたのだけど、

そうして送られて続けて来たのは、第一報とそう変わらない調査報告だった。

 

(これでは、まるで私が無能みたいじゃないのっ!)

 

華琳様に言われて、直ぐに調査を開始させたのだけど、

すでに一ヶ月以上が経つ訳だから、報告をしない訳にはいかない。

嘘を報告するなど、最初から選択肢には無い。

例え吐いた所で華琳様なら必ず見抜かれる。

 

(本当に、暗殺してやろうかしら・・・・・・)

 

等と、出来る訳も無い事を、一瞬だけ頭に浮かべ、

気の重くなる思いで、華琳様の執務室に足を向ける事にした。

 

 

 

 

「ふーん、面白いわね」

「えっ?」

 

気の重くなる思いで、報告したあの男の調査結果に、何故か華琳様は、満足げに笑みを浮かべられます。

そんな私に、気づかれたのか華琳様は、

 

「私が、調査結果に満足しているのが、不思議みたいね」

 

私の、心を読まれたかのように図星を指してきます。

 

「貴女の事だから、満足いかずに、再調査を散々命じたのでしょう? そしてその結果がこれ、

 これ以上、時間と人材を使う訳には行かないと判断して、私に、これを報告しに来た。

 その判断は正しいわ」

「では」

「ええ、調査は別命あるまで、打ち切って良いわ」

「え?」

 

完全な打ち切りではなく、別命あるまで?

 

「この調査結果で疑問に思わない所はまだまだね。

 でも実際に、北郷をその目で見ていなければ、それも無理と言うものかも知れないわね」

 

そう言って、私を特に責める事も無く、笑みを浮かべられます。

そう、分からない。

あの男を調査して出て来たのは、ただの凡人である事だけだった。

南陽の街で、一風変わった人気の茶館の主である事、

その前は、丹陽の街に少しだけ住んでいた事、

武の腕はからっきしで、考え無しに勢いだけで、張遼に勝負を挑み、あっさり人質にされた事。

街の人間には、それなりに人望はあるが、それだけの事、

 

ただ変わっていると言えば、

その店が、孫呉の軍師である諸葛瑾の手配で出来、

諸葛瑾の屋敷に家人として、将である周泰と同じ屋根の下に住んでいると言う事、

そして、丹陽では同じように、周泰の屋敷で、家人として住み込んでいた事。

そして、そんな奴が何故か軍師として参戦していた事だけ

まぁ、ここまでなら、権力を持つ者が、気に入った者と言う事で、まったく無い話ではない。

 

あと気になると言えば、

戦場で人質として攫われた者が、命を落とさずどうやって戻ったかと言う事と、

丹陽以前が幾ら調べても、その形跡が一向に不明だと言う事くらいだけど、

それとて、そう気にするような物ではない筈。

なら一体なにが、華琳様を満足させているのか、悔しい事に、今の私には全然分からない。

 

 

 

 

「ふふっ、悔しいと思う事は良い事よ。

 その思いは人を成長させるわ。

 もっとも、過ぎれば毒にしかならないけどね」

 

私の想いが華琳様に伝わったのか、そのような優しい言葉を掛けてくださいます。

 

「これを見る限りは、北郷は多少気になる所は在っても、ただの庶人、

 でも、私が見た北郷は、庶人の振りはしていても、それで納まるような器ではないわ。

 連合の軍議で、あれだけ正体を隠せたのですもの、これくらいの事はやってのけるでしょうね」

「では、先程の中止命令と言うのは」

「そう、貴女の判断は、ある意味正しいわ。

 散々探らせて報告が、これなら、今は、これ以上探っても無駄と言う事。

 優秀な細作は、他に幾らでも仕事があるのだから、北郷が正体を表す気になるまでは、静観するしかない

 わね」

 

ああ、華琳様は、私めに全幅の信頼を寄せてくださいます。

このような調査報告しか出せなかったと言うのに、なんて慈悲深いのでしょう。

 

「それと、近いうちに、出掛けたい所があるから、留守をお願いするわ」

「どちらへ?」

「宝の持ち腐れをしている連中から、玉を譲り渡して貰いに行くわ

 交渉しだいで、兵二万と糧食三カ月分位、代価にする事になるかもしれないから、その時は、よろしく頼

 むわね」

「そ・そんなにですかっ」

 

華琳様の仰った数に、私は眩暈がする。

華琳様が、誰の事を言っているかは分かるけど、本当にその価値があるかは、甚だ疑問がある。

糧食はともかく、兵二万は、行き先が袁家となれば、民達がそれなりに騒ぎ出す。

でも、華琳様がそう言う以上、華琳様にとって、それだけの価値があるはず。

なら私は、その二万を、民に不満を与えぬよう、捻出するのが仕事。

華琳様が私に任されると言う事は、私にそれが出来ると見込んでの事、その期待を裏切るよう事は出来ない。

だから、私は、

 

「分かりました。

 行き先の無い難民や、過疎化した村、罪人、張姉妹にも国境付近で募集活動をさせる等、とにかくかき集

 めて、見かけだけでも、兵士に仕立て上げて見せます」

「そう、方法は任せたわ。

 それと、調査結果を隠さず、時期を見極めて報告した事に対して、褒美を上げなければいけないわね。

 今夜、私の部屋に来なさい。 たっぷり可愛がってあげるわ」

「はっ、はい。 ありがとうございます」

 

私は、もっと自分を磨いてみせる。

このお方に全てを捧げ、もっと寵愛を受けてみせる。

 

 

 

詠視点:

 

 

はぁー、鬼才と言われた、賈文和も落ちぶれたものよね。

こうして、落ちぶれる羽目になった原因である一勢力に、侍女として仕えるだなんて・・・・・、

まぁ、月は肩の荷が降りたみたいで、イキイキと仕事をしているのだから、ボクとしては、文句は無い。

あの娘は、昔から、何故か掃除や料理、お裁縫が好きで、よく侍女の仕事を奪って、侍女を困らせていた。

もっとも月も、その辺りは、弁えていたから、本当の意味で仕事を奪うような真似はしなかったけど、

 

ボクは昔からそういうのは苦手で、この一月は散々だった。

まぁ、桃香や愛紗も、慣れない事だと分かってはいるので、頬を引き攣らせながらも文句は言ってこない。

だからと言って、そのままと言うのは、ボクの自尊心が許さないので、必死に仕事を覚えた。

まぁ、そのおかげで最近は、大きなドジも無く、仕事をこなしてはいるのだけど、肩が凝る事には違いない。

桃香達程ではないけど、最近また一回り大きくなった胸が、それを助長している気がする。

 

月や朱里達には悪いけど、あの娘達が羨ましい。

こんなのが大きくても、良い事なんて無い。

重いわ、肩は凝るわ、邪魔になるわと、三重苦、

その上、男共には変な目で見られるし、このメイド服が、それを余計助長させている気がする。

見せる相手が居るなら、ともかく、そんなものに、ボクは興味は無い。

月さえ幸せなら、ボクはそれだけで、十分幸せだから、

無駄かもしれないけど、いい加減新しい侍女服を用意してもらおうかしら、

 

『 うん、よく似合っているぞ詠 』

 

ふと、あいつの、何時かの言葉と、どこか寂しさを感じる温かな笑顔が、脳裏に浮かぶ。

 

「だぁぁぁぁっ! あいつの事なんて、ボクは考えて無いんだからねっ!」

 

ざわっ

 

「・・・・・詠ちゃん」「わっ、びっくり」「詠よ」「「詠さん」」「詠」「あはははっ吃驚したのだ」

「なっ、なんでもないわよ」

 

そうだ、会議の最中だった。

ボクと月は表に立つ事は出来ないけど、こうして、桃香の後ろで、時折意見を聞かれる。

朱里達からしたら、荒廃した洛陽を、短期間にあれだけ回復させて見せた、ボク達の手腕を買っての事、

ボクと月は、もう政治の世界に関わるつもりは無かったが、世話になっている手前、意見を言うくらいは、手伝っても構わないと思っている。

まぁ、最初は、桃香達の甘ちゃん振りには、怒りを通り越して呆れはしたが、その想いが本気で、真剣に取り組んでいる辺りは評価はしても良いと、ボクは判断した。

まぁ、あいつの甘さと、覚悟に比べたら、とても足元には及ばないけど、

 

 

 

 

まったく、あの大馬鹿のおかげで、とんだ大恥を掻いてしまったわ。

心の中で、あいつに文句を言い、二~三発、ぶん殴る。

そうして、桃香達の会議の内容を適当に聞き流し、聞かれた事には、それなりに真剣に答えてあげて行くと、

今日の内容は終わりなのか、朱里が話を纏め、愛紗が指示の確認をし始める。

うん、ちょうど良い機会かもね。

ボクは愛紗が言い終わるのを待ってから、

 

「そう言えば、あいつの調査はどうなったの?」

「え・詠ちゃん」

「はわわ、あ、あの、そ・それは・・・・・」

 

ボクの突然の発言に、月は心配げに見つめ、

朱里は、動揺を見せる。

 

そう言う所が、甘いって言うのよ。

あいつは、甘くて直ぐに顔に出るけど、こういう時に、そんなものを見せる程、甘い覚悟をしていないわ。

とりあえず、朱里の反応から、答えなど聞かなくても、どういう調査結果だったか、大体想像がついた。

だけど、分からない奴は、分からないのよね。

 

「あいつ? それは、どういう事だ朱里よ」

「そ・それはその」

「愛紗よ、詠は大方、呉の北郷殿の事を、言っておるのだろう。

 ふむ、あの御仁には私も興味がある。 朱里の様子からして、その結果は出ておるのだろう。

 ぜひ調査の結果とやらを、聞いてみたいものだな」

「はわわっ」

 

あの場に居た星と桃香が、興味を示すが、愛紗は逆に、

 

「ああ、身の程を弁えずに、桃香様を愚弄し、桃香様の優しさに付け込んで、厄介事を押し付け、

 朱里のような女子供に、手を上げる無礼者の事か」

 

等と辛辣な言葉を吐く、まぁ傍から見たら、あいつの行動は愛紗が言った通りだし、愛紗も態とああいう物言いをしているのは分かる。

会議と言うのは、例え無意味に思えても、反対意見を出される事で、惰性的に物事を進めず、その内容をよく確認する事が出来る。

でも、今の愛紗の言葉は、おそらく本音。

あいつの事を知らなければ、そう映る様に見せた、あいつの罠。

だけど、ボク達は、もうあいつの事を少しだけだけど、知る事が出来た。

だから、

 

 

 

「まぁ、愛紗が言う事は分からぬ訳では無いが、どのような過程であれ、桃香様を導き、朱里を過ちから

 救い出し、月と詠の命を助けた事には違いあるまい。 興味を持つなと言う方が無理と言うもの」

「う゛っ、たしかに」

「それに、今のような言い方は、桃香様や月達に無礼であろう。

 まぁ、おぬしが二人を本当は厄介者と思っていない事ぐらい、皆分かっておるから、問題はあるまいがな。

 そうであろう、月に詠よ」

「はい、皆さんが良くして下さっているのは、よく分かっております」

「ふん、そんな事一々確認取らないでよね」

 

まったく、星も愛紗をからかうのは良いけど、ボク達を巻き込まないでほしものだわ。

 

「ねぇ朱里ちゃん。 北郷さんの事なら、私も聞きたいなぁ」

「はわわっ、 し・仕方ありません・・・・」

 

負い目のある朱里からしたら、桃香に、ああして請われれば、納得行かない調査結果であっても、報告しない訳には行かないでしょうね。

 

 

 

 

「で、結局は、呉の将のお気に入りなだけの、成り上がりの庶人を、一月も掛けて調査をしたと言うのだな」

「はわわっ、あの人は、絶対そんな言葉で表せるような人ではないんです」

 

朱里の調査結果に、愛紗は頬を引き攣らせながら、結論を纏める。

まぁ、愛紗の気持ちも、分からない事は無い。

まだ桃香達には、優秀な細作は少なく、結果の出ない調査に、人材と時間を掛ける余裕なんて、とても無いのだから、

 

「だが調査結果がそう言っているっ。

 軍部としては、これ以上無駄に人材を使う事は、見逃す事は出来ない。

 朱里よ、本日を持って、その者についての調査を打ち切る事を、強く要請するっ!」

「はわわ、そんな困ります。 あの人の事を調べる事は、今後に大きく影響するはずです」

「私もあの者には会った事はあるが、とてもそのようには思えぬっ!

 雛里は、どう思っているのだ」

「あわわっ、し、しょれは」

 

はぁ~、愛紗、もう少し相手を考えて、物を言いなさいよ。

雛里に、そんな睨みつけるように言ったら、怖がるに決まっているでしょう。

 

「愛紗よ、そんな睨みつけては、雛里も、答えようにも答えられぬ。

 せっかくの美髪公で謳われたお主の顔が、鬼のような形相になっておるぞ。

 うむ、それとも鬼の形相を持って、美髪公と謳われたのかも知れぬな」

「星っ!」

 

まったく、星の悪癖にも困ったものだけど、それくらいの冷静さは持っていて欲しいものだわ。

 

「あ、あの、私も調査は続行する方に賛成です。

 ですが、愛紗さんの意見も分かります。

 現在私達に、それ程、細作に余裕がある訳ではありません。

 ですから、同盟国である呉の動向を見張るのと平行して、と言う意味で、最低限の人数で、調査を続けさ

 せて頂けないでしょうか」

 

まぁ、その辺りが妥当でしょうね。

気の小さいと言う、性格に問題はあるけど、雛里が一番、今の状況を正確に判断しているわ

 

「だが、そのような事をすれば、呉の動向を見張るのに穴が出来てしまう。

 どっちつかずの調査では、意味が薄い」

 

そろそろ、潮時ね

 

「ボクも、雛里の意見に賛成」

「詠よ、今はお前の意見を聞いている時ではない。 黙っていてもらおう」

「元々ボクの質問から始まった事、ボクにだって、意見を言う資格は在ると思うわ。

 それに、桃香達が危うくなれば、月とボクだって危うくなる。

 なら、みすみす過ちを見逃す事はできないわ」

「ほう、それはどういう事か、聞かせてもらおうではないか」

 

そう言って愛紗は、ボクを睨みつけ、猛将と言われる関羽の、気魄をぶつけて来る。

 

 

 

 

ふんっ、たしかに、たいした気魄よ。

そこらの将なら、これだけで戦意を失うでしょうね。

でも、恋の本気になった時の気魄は、こんな物じゃないわ。

 

「言ったでしょ。

 ボク達は、あいつの事を話す気は無いって」

「なにぃっ!」

 

脅せば良いって物じゃないわよ。

 

「でも、すでに知っている事については、隠しても意味は無いわ。

 あいつには、朱里と雛里が警戒しているだけの物を、確かに持っているわ。

 それに、呉が動く時は、まず間違いなくあいつも動く、これは絶対ね」

「そのような確証の無い事で、私が意見を変えるとでも、思っているのか」

「なら、話を変えるわ。

 朱里、あいつに渡された本はどうなったの?」

 

朱里は突然話を振られ、一瞬慌てるも、

 

「はい、お抱えの医者にも確認させた所、すごく内容に驚いていましたが、1/3は効果がある事が、確認

 出来ました」

「他は出鱈目を書いてあった訳か」

「いいえ、そう言う訳ではなく、それを確認する知識と技術が無いとの事です、ですが、前後の文章や、判

 断付く所だけを部分的に見ても、嘘を書いてある様子は無く、まず使えるとの事でした。

 それに、この書き掛けの本を、何処で手に入れたかを、酷く気にしておられていた事から、間違いないと思

 います」

「あわわ、そ・それと、あの本がもたらした知識を、全て使えるとした場合、今の我等にとって、二割近くの

 戦力の増強と同じだけの効果がある、と試算が出ました。 その上、その知識の効果を確認して広めれば、

 通常の医療にも大きく貢献しますから、より多くの人達を救える事になると思います」

 

朱里に続いて、雛里がとっさの判断で、朱里を援護する

まったく、そう言う事は、もっと早く報告しなさいよ。

おかげでしなくても良い、討議をしちゃったじゃない。

 

「だ、そうよ。

 それだけの物を、あっさり渡すような奴を、愛紗は庶人だと言い張るつもり?

 まさか、天下の関雲長ともあろう人が、そんな暗愚な判断はしないわよね」

「ぐっ、・・・・・・分かった。 ただし雛里の言うとおり、最低限の人数でだ。

 引き上げた細作は、他の諸侯達の動向を見張ってもらう」

 

 

 

 

会議が終わり、皆がそれぞれの仕事に戻っていく。

最終的に雛里と愛紗の意見は正しい。

いくらあいつが脅威と言っても、あいつにばかりに気を割く訳には行かない。

朱里の意見が、そのまま通るようだったら、ボクがそれに反対意見を出すつもりだった。

それにしても、

 

 

・・・・・・茶館の主か

 

 

確かに、あいつの能力を無視すれば、その方がお似合いよね。

あんな甘い奴は、軍師なんて血生臭い世界は似合わない。

あんなんじゃ、いつか壊れるだけ、

・・・・・・・・でも、あいつなら壊れずに耐えるかもしれない。

辛いだけだと言うのに、・・・・・・・・・・・・本当、大馬鹿よね。

 

そう言えば、あいつの淹れたお茶、確かに茶館の主だけあって美味しかったわよね。

月じゃないけど、本気で、お茶を淹れるのを頑張ってみようかな。

あいつじゃないけど、

 

一生懸命入れたお茶を、美味しそうに飲んでもらえるのは、たぶん、悪い気分じゃないと思うから。

 

 

 

美羽視点:

 

 

名ばかりの朝議の終わりに、七乃が思い出したかのように、

 

「そう言えば、孫策さんからお手紙が来ております。

 なんでも、美羽様の大好きな蜂蜜を使った、変わったお菓子を作る者が居るから、その者の作るお菓子と

 作り方を献上したいとの事です」

「おぉ~♪ 孫策め、やっと妾に恭順する意思を見せる気になったか、ふむ、良きに計らうが良い」

 

ふん、妾達に機嫌をとって、油断を誘おうと言うのか、

まぁ良い、今はその策に乗っておく事にしよう。

周りの名ばかりの臣は、そんな妾の思いとは裏腹に、

孫策の態度に嘲笑をしながら、微塵も不審には思うておらぬようじゃ、

 

「それと、曹操さんが、取引したい事があるから、此方に来ると言っています。

 日程的には重なりそうですが、どういたしますか?」

「うむ、構わぬであろう。

 孫策は客将とは言え、妾の臣、その配下の者が来たとて、さして問題はあるまい」

 

取引か・・・・・・、大方、張遼を譲り受けたいとでも言うのであろう。

眼下に映る臣は、もう、どれだけ曹操から搾り出そうか算段を始めておる。

まったく呆れるばかりじゃ、まぁ張遼とて、妾の所で不遇の扱いを受けておるよりは、その方が幸せであろうが、そう簡単に渡す訳にはいかぬ。

我等の悲願を果たす為にも、張遼も孫策も踊って貰わねばならぬ。

どうしたものかと、七乃を見ると、此方をにっこり笑みを浮かべて見詰めている。

どうやら何か良い手があるようじゃ、

 

 

 

 

 

もうすぐ、もうすぐじゃ、

 

もうすぐで、妾の望みが叶うのじゃ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです。

 第47話 ~ 普通である事に踊らされる花を愛でながら、詩を詠む ~ を此処にお送りしました。

 

さて、今回は、孫呉以外に視点を当てて、物語を描いてみました。

細作のに関しては、殆どの方が、展開を読まれていたと思います。

 

各く諸侯が、それぞれ少しずつ動き始めました。

そんな中、一刀にどんな運命が待ち受けているのか、?

曹操と一刀の邂逅はあるのか?

張遼の運命はどうなるのか?

そして美羽の望みとは?

沢山の謎を残したまま、次回へと続きます。

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。


 
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