時は流れ、約束の日が迫ってきた
一刀は白帝城に向かうために成都を明日たつ
皆はついて来ると言い張ったが、一刀は聞かなかった
自分自身との決着は自身でつけると…
だから、出立の前日。
桃香は一刀を自室に呼び出した
コンコン
天界式ノックは既に蜀では広まっていた
「は~い」
「一刀だ。
桃香、俺に用だって?」
「う、うん!入ってください」
ガチャ
一刀は扉を開けて中に入る
中には桃香が一人何かを持って立っていた
桃香は落ち着きのないように一刀を弱弱しく見つめる
「一刀さん。
あのね、私ね。卑弥呼さんに聞いたの。
一刀さんが、蜀の王様だったって…」
「卑弥呼さんの言っていた始まりの外史の俺…かい?」
「うん…。
本当なら、この蜀の王様は一刀さん。
私は、貴方から…愛紗ちゃんを…鈴々ちゃんを…全部、全部盗っちゃった」
「桃香…」
桃香はその瞳を涙で一杯にし、一刀を見つめる
「私が…私が、存在しちゃったから…一刀さんは…」
彼女がここ数日考えていたこと
それが、自分の存在そのものだった
一刀は本来蜀の王
しかし、その位置には自分がいる
外史は別、そしてこの一刀はカズトとは別人
しかし、それでも彼女は辛かった
好きな人の本来居るべき位置を奪ってしまったかもしれない
そんな気持が彼女を苦しめていた
「バカだなぁ…」
一刀は桃香をギュッと抱きしめる
「俺は…人の上に立てるような人間じゃないよ
そして、蜀は玉座に君が居てこそ輝きを増すっというもの。
君が、気にする必要は一つも無い」
「一刀さん…」
桃香もぎゅっと背中に手を回す
しばらくたって
「落ち着いたかい?」
「うん…。ごめんね////」
「いいよ。それより、俺を呼んだのは?」
「えっと、ね。
これを渡したいっと思ったの。」
桃香は手に持っていた木箱を渡す
「これは…?」
一刀は箱を手渡される
「一刀さんの新しい武器。
双剣:『干将・莫耶』だよ」
一刀は、思い出した
自分の剣が先の戦いで使い物にならなくなってしまった…
「そうか…わざわざ。ありがとう」
「う、うん////
実は、その剣ね…。
私達三姉妹の髪の毛を溶かし込んであるの。
一緒に辛いことも、楽しいことも乗り越えていけますようにって。
本当なら、一刀さんが蜀を立つ日に渡したかったんだけど…
こんなことになっちゃたから…」
「桃香…。ありがとう。
女性にとって命ともいえる髪を俺なんかのために…。
劉三姉妹の魂の宿る剣にかけて、俺は必ず帰ってくる。
この剣に誓う。」
護衛は、韓湘子が攻撃できなかった愛紗が付き添った
そして、約束の日
深夜・白帝城城門前
一刀と護衛の愛紗はそこにいた
「韓湘子…約束道理、来てやったぞ」
すると
ギィイ…っと誰もいないはずなのに城門がゆっくりと開かれた
「入って来い…ってか?」
一刀は歩き出そうとした
「一刀様…!」
愛紗は一刀の手をギュッと握る
「愛紗…?」
愛紗は泣きそうな顔をしていた
「一刀様…やはり、私も…」
大好きな人が死地へと向かう
それもたった一人で…
それが、彼女を一人の少女に変えていた
「愛紗…。大丈夫、大丈夫だから…
俺達の心は繋がっている…
俺は、一人じゃないんだ」
一刀は愛紗の手を包むと優しく心配ないと諭す
それでも、彼女は震えていた
「…愛紗」
一刀は彼女を抱きしめた
「約束する…必ず帰ってくるから」
一刀に抱きしめられてようやく愛紗は落ち着きを取り戻した
「はい。
一刀様…。御武運を…」
「あぁ。
この剣に誓って!」
一刀は愛紗をゆっくりと放し、歩き始めた
振り返ることなく歩く一刀を涙の流れる瞳で見つめる
「勝たなくてもいいから…。
どうか、ご無事で……!」
愛紗は両手を胸の前で組み、祈るように白帝城を見上げる
白い城壁はどこまでも冷たい色を放っていた
同じ頃
玉座の間
華琳は玉座に座らされていた
その広い部屋の中心には韓湘子が立っていた
「韓湘子…いえ、カズト。
本当に貴方は、一刀と戦うつもりなの?」
韓湘子は振り返りもせず、答える
「あぁ…そうしなければ、オレは消えることができない。」
「くだらないわ。本当に…馬鹿げてる」
華琳の声には涙が混じる
「やれやれ…キミの目の前でヤツを殺せぬな。
ならば、決着は鏡花水月の中で行うとしよう」
韓湘子はため息をつきながら言う
「それが…気に入らないのよ!
なんで、なんで貴方はそこまで人を気遣えるのに…幸せになる権利は誰よりもあるのに!
なんで!?なんで、そんな下らない結末を望むのよ!」
「言った筈だ…。
これは、断罪だと。自分自身(オレ)を裁けるものは、ヤツ(俺)だけだ」
「えっ!?」
「お喋りが過ぎたようだな。
ヤツがきたようだ…」
すると、
ギィイイイイ
っという音と共に一刀が玉座の間に現れた
「待っていたぞ…北郷一刀。」
同時刻
一刀は韓湘子のいる玉座の間へと歩いていく
やつは王だった
それならば、相応しい決闘の場所がある
それこそが、玉座の間だ
ギィイ…!!
鈍い音をたてて玉座の間の扉が開く
その広い部屋の中心に一人の男が立っていた
韓湘子…
真名をカズト
本当の名をホンゴウカズト
自分自身の未来の姿
覇王にして、仁君…
無名にして、最強…
肯定派から大英雄として崇められる男がそこにいた
「待っていたぞ…北郷一刀。」
真・恋姫†無双 魏ルートアフター
外史伝外伝
『外史伝エピソード零:鏡花水月編』
第十話『輝く剣:干将・莫耶』
「遅かったな…」
韓湘子…
「…華琳は無事なんだろうな?」
「無論だ…」
韓湘子が指を鳴らすと、玉座が光に照らされた
そこに…
「一刀ぉ!」
華琳が座っていた
「華琳!
よかった…無事だったんだな!?」
一刀は嬉しそうに華琳に駆け寄ろうとする
しかし…
「敵に背を見せるのは未熟者のすることだ…」
韓湘子が冷たく言い放つ
ファン!ファン!!ファン!!!!
数本の剣が一刀の目の前に刺さり、光を発する
それが、結界の境界線
「なぁ!」
「ちょっとでも触れてみろ…
貴様の体は光に帰ることになるぞ」
一刀は悔しそうに振り向く
「そうか…お前を倒さなきゃ、華琳は助けられない…そうだな?」
「あぁ…そうだ。
オレを倒さぬ限り、この結界は消えない」
韓湘子は一振りの剣を取り出して鞘から抜いた
一刀も腰に下げていた双剣を抜く
「ならば…華琳のために、俺は自分自身を倒す!
決着を付けるぞ…韓湘子!」
構える
桃香から送られた夫婦剣
白き刃は、桃香のように優しい光を放ち
黒き刃は、一刀のように全てを包むように黒く光る
その名を『干将・莫耶』
彼女達恋姫と一刀の心が決して離れることのないように
そんな願いが込められた稀代の名刀
「武器を変えたか…。
しかも、宝具級ときたか…。面白い
だが、それではオレには届かないぞ。」
韓湘子は瞳を閉じる
「I have borned the darkness
―――私の心を闇が覆う―――」
その口から呪文がつむがれる
「Darkness is my blade,Despair is my Escutcheon
―――闇を力に、絶望を糧に――― 」
体の回りから黒い気があふれ出していく
「 I have been no defeated at the shining
―――無限の光を闇へと染め―――
I do not have the happiness at all
―――己の幸せをゆるさない―――」
その黒い気は外史自体を侵食していく
「 And, I have never accepted the shining
―――光を闇に覆わせて―――
I have been always solitary, and blake the world in the dark
―――常に闇に浸かり、破壊を繰り返す――― 」
やがて黒い気は二人以外の全てを覆いつくし、ゆっくりとその空間を作り変えていく
彼が…絶望の果てにたどり着いた極致
「 Therefore, there is no meaning that I have existed those worlds
―――故に、全ては無意味であり――― 」
韓湘子はゆっくりと右手を掲げる
「 My all life was Repetition of despair
―――我は闇へと消えていく――― 」
最後の呪文がつむがれた瞬間…彼の世界は再生された
何処かの荒野
月や星の無い真っ暗な夜空
禁術中の禁術…結界 『鏡花水月』
「俺はお前を超えてみせる!
そして…思い出させてやるよ…北郷一刀が持つべき、本当の力ってヤツを!」
「ふっ…
いいだろう・・・・・・もはや、言葉はいらん
オレは貴様を殺し・・・このオレを消す!」
一刀も己の愛刀を構えた
「(華琳・桃香、皆・・・)力を・・・貸してくれ!」
「いくぞ、北郷。はぁ!」
長刀から斬撃が飛ばされ、一刀を襲う
「ぐぅああ!」
何とか防ぐ
が、一刀の目の前には視覚化された斬撃がもう二本迫っていた
「そんな!?」
ギャイイ!
もう一発を干将ではじき返すも、防御後の無防備なところに最後の斬撃が迫る
「ぬぅうう!!」
一刀は莫耶で受け止めるも、吹き飛ばされてしまう
何とか体勢を立て直し、韓湘子を見つめた
「今のは!?」
韓湘子は長刀を弄びながら説明しはじめる
「燕返し…だ。
本来は…俺の持つ宝具の一つ、「備前長船長光」により放たれる技なんだが…。
特別だ、もう一つ見せてやる…!」
ギラン!
今度は金色の光が一刀を襲う
金色の光は一刀を包むと、そのまま地面に叩き付け、続いて吹き飛ばした
ドン!!
「ぐぅあ!」
数十回以上転がりながらようやく止まった
「なんだ!?今の」
「エクスカリバーの技『勝機の光』。」
ニヤリと笑いながら剣を弄ぶ
「前回の戦いで見せてやった宝具の無限召喚はこの力の一部から流れ出たものに過ぎない
この結界を発動している限り…いちいち宝具を召喚せずとも、俺の持つ全ての宝具の技を再現できる。
この白帝剣一本でな。しかも、技の能力も…完璧に再現可能。
それが、オレの鏡花水月の本当の能力だ」
長刀を下に向け、独特の構えを取る
「まだまだぁ!!」
一刀は距離をつめると打ち合った
ギャイイ
刃物がぶつかる
激しい連武
轟音とともに振り下ろされる剣
ギャィイイというけたたましい音ともに繰り返される攻防
「北郷一刀、覚悟!」
ふたたび、剣から光が放たれる
光を転がりながら何とか避け
一刀は一気に距離をつめる
「お前は…誰かを守るために戦ったんじゃないのか!?」
「!?!?
いきなり何を言い出すかと思えば…」
一刀と韓湘子は再び打ち合う
ギャイィ!!
「皆を守る王として、戦ってきたんじゃないのか!?」
「それはそうだろう!
オレは、王だったからな。
乱世を終わらせるため・・・戦うしかなかった
誰かのためにあらねばならない・・・
誰かの支えにならねばならない・・・
誰かを守り続けなくてはならない・・・・
そんな強迫観念に似たものに突き動かされ続け…8の人間を救うために・・・2の人間を犠牲にし
一部の人の幸せを作るために、それ以上の人間に絶望を与えたりもした。
絶望を与えた人間を救うためにより多くの命を救おうとした!」
韓湘子は横薙ぎに剣を振るい、一刀を剣圧だけで吹き飛ばす
「そうだ・・・
今度こそ笑顔あふれる世界に変えたかった
今日こそ・・・
乱世を終わらせる
今度こそ・・・
誰も悲しまないはずだ
オレは理想を捨て切れなかった!」
韓湘子の武器から、ふたたびツバメ返しが放たれる
ガ!ガッガ!ドン!!
「はぁ━!!」
一刀は体を回転させ、その反動を使い連撃を切り落とす
韓湘子はお構いなく、剣を振り上げる
「だが、考えてみろ!
その結果はどうだ!!??」
何度目になるか分からない剣同士の激突
韓湘子に押されながらも一刀は必死に押し返そうと試みる
「オレのすべては正史に奪われた…」
一刀は韓湘子を何とかはじき返す
「愛した女達も・・・愛した国も・・・愛した世界も…全てを奪われた!
そして、唯一この手に残った愛紗からオレは引き離され、使役し続けられた
最後は、外史を守るという存在価値をも奪われた!!」
手を広げ演説でもするかのように叫ぶ韓湘子
「外史の破壊なんてしたくはない!」
ギャン!
「だが、オレは永久に正史によって縛られ続けられる!
一生だ。自由意志など皆無に等しい」
いつか韓湘子が言っていたことを、一刀を睨みながら再び叫ぶ
「お前の記憶を垣間見た…
最初は意味が分からなかったが、やっと分かった
あれは、お前の過去だった。
お前は愛紗を守る力を欲していた!」
「そうだ!
だが、そのために犯した…オレの罪は大きすぎる。
救いたかったはずの外史を破壊させられ…!
殺したくもないのに、泣き叫ぶ人々をその手に掛けなければならない…!
消えかけている外史、正史に影響を与える大きくなりすぎた外史、正史の気に入らない外史、混沌とした外史…オレは、泣きながら全てを消していった!
大人も。子供も!女も!!老人も!!!全てを殺してきた!!!!
その罪はオレが消えることでしか償えぬのだ!」
韓湘子は更なる猛攻をかける
「そして、何より…始まりの外史で愛した女と、同じ人物に巡り合っても…名前すら、告げられぬ!
そのたびに、走るこの胸の痛みが・・!?
今すぐにでも抱きしめてしまいたいほどの…愛しさがぁ!
貴様に耐えられるかぁ!?」
さらに語尾を強め、一刀と打ち合う
凄まじい剣戟の音があたりを支配する
「そうだ!北郷!!
誰かをすくいたいという気持ちが綺麗だから憧れた!」
一刀は必死に応戦する
韓湘子さらなる攻撃を仕掛けてくる
一刀は両腕に力を込めると白帝剣と打ち合った
「そうだ!オレはその志を捨てらねぬままただ乱世を駆け抜けた!」
白帝剣が一刀を横薙ぎに襲う
ギャン!という轟音と共に一刀は大きく弾き飛ばされた
「ぬぅあ!」
「もはや遊びはここまでだ!消えろ小僧!」
白帝剣に巨大な力が注ぎ込まれていく
「まずい!」
一刀はその攻撃を何とか避けようと、剣を交差させ韓湘子のエクスカリバーを弾く
韓湘子はそれにかまわず、腰の白帝剣を抜くと、手首に回転を加えながら振るう
一撃目・二撃目を何とか弾き返すが、連撃が容赦なく襲い掛かる
幾度目かの攻防の後、一刀を剣で弾き飛ばす
「まだまだぁ!!」
一刀は再び距離をつめると打ち合った
ギャイイ
刃物がぶつかる
激しい連武
轟音とともに振り下ろされる剣
互いの死力を尽くしてぶつかり合う二人の北郷一刀
鏡花水月の下、韓湘子の力は跳ね上がっているはずなのに…なぜ、こうも打ち合えるのだろう?
答えは簡単だ
鏡花水月とはすなわち心を映し出す鏡
『北郷一刀』の心を映している鏡だ
そう、それが彼の、ホンゴウカズトの誤算
本来同じ空間に同一人物が二人もいるなんて…ありえない
だが、二人はここに存在している
つまり、韓湘子の鏡花水月は北郷一刀にも影響を与えてしまったのだった
始まりは純粋な気持から…
誰かを救いたいという優しい心が、北郷一刀の原点
そして、愛する人たちとの心のつながりこそ彼の力の源だ
ホンゴウは其れを捨てた
少年はそんな青年が捨てたモノを全て手に入れていた
よって、彼らの力量差は埋まり互角の勝負ができるまでになったのだった
しかし…あくまでも最低限の互角
だが、一刀には想いの力が駆け巡っている
之が、彼を伝説の英雄と互角以上の戦いを起こせる理由だ
「はぁ!!」
一刀は渾身の力を込めた一撃を韓湘子の白帝剣に叩き込んだ
「なぁ!?」
ここで、韓湘子が始めて後退した
「ちぃ!
なぜだ!?
何故ここまで貴様は戦える!?」
苛立ちを隠そうともせず、一刀に問う
「ま・まだ、わからない、のか?
はぁはぁ、俺の力の源…、其れは…みんなとの絆だ!」
「そんなもので…この韓湘子を倒せるものかぁ!!!」
韓湘子は白帝剣に気を込める
刹那
再び一刀の頭にあるはずの無い記憶が浮かぶ
そこは何処かの荒野
屍が転がるその世界に、韓湘子はいた
目から大粒の涙を流しながら…
『なぜだぁ!?』
泣き叫んでいた
大粒の涙を拭うことすらせず、叫ぶ…
『なぜ殺さねばならん!!!!!?』
再び画面が切り替わる
闇夜に染まったその荒野に一つの人影があった
その人影は喚起に酔っている
『やった!やったぞ!!
オレはついにこの力を手に入れた!!
神仙を超える…禁忌の力を!!
これで…、オレは皆を救うことができる!
外史を守ることができる!!
愛紗の笑顔を沢山見ることができるんだ!!!
もはや、正史の操り人形ではないんだぁ!!!!』
再び、画面が切り替わる
そこは、日本の戦国時代のようだった
戦場を一人の死神が掛けていた
韓湘子だった…
彼は目に付く人を容赦なく消していった
女・小姓・武将・農民・子供…全てを無に帰するまで彼は壊して壊して壊しつくした
殺して、殺して、殺しつくした
『なぜ!?なぜだ!!?
オレは…力を得たのに。なぜ、殺戮を続けているんだ!?』
瞳から涙があふれ出る
『もう…人の涙を見たくないんだぁ!
頼む…もう、殺させないでくれ!!!!!!!!!!!』
悲痛な叫びに反し、身体は正史の言うとおりに動く
正史による強制力は彼に外史を消させていく
まるで、
貴様は只の人形。生きる価値の無い無力な男だ。
っとせせら笑うかのように…
『オレは…オレはぁ!
うわああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
そして、いつも死しかない場所から彼は消え、次なる地獄へ送られる
正史による外史の抑止力
それが、韓湘子の仕事だったのだ
韓湘子の顔に驚きが浮かぶ
「オレの記憶を見たか…ならば、それだけで理解できただろう?
ホンゴウカズトという男が、このオレが…どれだけ世界にとって有害かということが…な!」
韓湘子は剣を振り上げる
だが…
『一刀様!』『一刀殿!』『一刀!』
『お兄ちゃん!』『一刀様!』
『バカ遣い!』『かずと…』
『北郷!』『北郷殿!』
ここに居ないはずの彼女達の声が聞こえる
そして、今最も聞きたかった声がする
『必ず…戻ってきてきてください…一刀様』
『一刀…私の傍にいなさいよ』
愛紗、華琳の言葉がよみがえる
そして再び景色が浮かぶ
青空の広がる広大な草原
その空に浮かぶ光輝く宮殿
どこまでも続くようなその草原に一刀は立っていた
手には見たことのない双剣
白く輝く彼の心
一刀の頭に聞いたことの無い言葉が浮かぶ
I have reborned the shine
「そうか…これが…」
これがヤツの失ったもの
ならば、今はこいつを借り受けよう
華琳のために…
そして、おまえ(俺自身)を救うために
一刀は現実に引き戻された
「愛紗、華琳、皆…力を、貸してくれ!!!」
それが・・・最後の力となって、一刀の体に光が集束する
「来い!!白帝剣!!!!」
光が一刀の手に集まり、双剣を包み込んだ
そして、一刀の双剣は…白く輝く双剣
「でぇい!」
一刀は剣を振るい、韓湘子から放たれた気弾を切り伏せる
宝具・神剣白帝へと昇華その双剣で…
「何!?貴様…どうやって!?」
「みんなの心が…俺に勇気をくれる。
それが…。…俺の……俺たちの…力の源
いくぞ!韓湘子!!これが、俺たちの力だ!!
I have reborned the shine
―――俺の心を光が照らす―――」
ピシィ!!
「なぁ!?」
韓湘子は音のした方角を見る
すると、鏡花水月にヒビが入っていた
「馬鹿な!いったい何が起きているんだ!?」
戸惑う韓湘子の隙を突き、一気に唱える一刀
「 Shining is my blade,Geniality is my Escutcheon
―――手に持つものは輝く剣と愛しき盾―――
I have been no defeated at the darkness
―――闇に染まることも―――
I do not have the happiness at all
―――幸福に溺れることもなく―――」
バキィ!ピキピキ!!
次々に壊れて良く韓湘子の世界
「オレの…鏡花水月が!?」
バキィ!ピキバキィ!ピキ
「 However, I do not have the degeneration in the darkness even at any times
―――刻(とき)という牢獄さえも超えていく―――
I have been always solitary, and prays for her victoriy
―――そして、俺にできるのは唯一無二。唯、勝利を祈ること……―――
Therefore, there is no meaning . I have existed the world
―――故に、己が存在理由は俺さえも理解できず…―――」
ここで、韓湘子ははじめて気が付く
これは…
「ぬああぁ!
まさか!貴様!!」
そして、北郷一刀の世界がゆっくりと形を成していく
光輝く青空
一面を覆う青い草原
そして、その天空にそびえる宮殿
「馬鹿な!有り得ん!!これは…」
そう、これは…
「鏡花…水月…だと言うのか?」
韓湘子は自身の目を疑った
自分が数百年のときを掛けて辿りついた神仙としての極致をこの男はこうも簡単にしてのけた
「I have wished Prayer of hopes
―――光の中にこそ、答えがある―――」
瞬間!
硝子が割れるがごとく韓湘子のいや、ホンゴウ カズトの世界は破壊された
「これが…俺の鏡花水月
『光の宮殿』とでも言うかな?
この世界では、希望や愛、信頼や絆…それらが強ければ強いほど、術者の力は増大していく。
そして、光に相容れないものの力は失われる。」
韓湘子はハッと自身の手を見た
白帝剣がひび割れている
「き、貴様…。オレの力を逆利用したのか!?」
一刀は双剣白帝を構える
「そうだ。
結界発動の起爆剤は貴様の力。
同時に、俺達のパスは切断された…」
一刀は、一呼吸置き、
「俺は一人で戦っているんじゃない!
オレの中に溢れるのは、三国の皆の心!それら全てが貴様の相手!!
いくぞ…、韓湘子。
いや…神仙ホンゴウカズト!
想いの貯蔵は充分かぁ!!!!!!!!!!!!」
つづく
あとがき
さて、一刀と韓湘子の最後の戦いが始まりました
ついに発動した一刀の鏡花水月
その力で理想の自分に打ち勝ち、華琳をそして、自分自身を救えるのでしょうか?
全ての決着は次回…
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第十話『輝く剣:干将・莫耶』
一刀とカズト。
二人の戦い果てに何があるのか…
そして、その時桃香は?愛紗は?華琳は?
今、最後の戦いが幕を開ける