――ジロー……私には分かってたんだから。思ってたとおり。アンタ、やっぱり……
居なくなってからというもの、どれだけ彼に再び会うことを望み、そしてそのたびにそれが叶わないと思い知らされどれだけの涙を流したことだろうか。
その彼が今、目の前に“居る”のだ。それこそ手を伸ばせば届くような距離の先に。
彼は再び会えたということが不思議だとでもいうような表情で、黙ったままじっと彼女―リロットを見つめている。
――どこにいってたかと思えば。……とにかく、また会えてよかったわ。
――どうしたの? 浮かない表情なんかしちゃって。……もしかして私と会えたことが嬉しくないって言うの? もしそうなら、ホントに許さないんだからね?
何となく暗いように感じたこの場の雰囲気を少しでも和らげようと、そう言って冗談っぽく笑いかけるが、ジローの表情は一向に明るくならない。
いくら話し掛けても何も話さないジローに多少の怒りを覚えたが、ぐっとこらえて笑いかける。
笑いかければ、この重苦しく耐えがたい真っ暗な重圧が変わると信じて。
だってジローの笑顔が見たかったから。
重い空気が流れる。
再びジローに会うことを強く願っていたリロットには何よりも悲しい、沈黙。
彼女にとってこの重苦しい雰囲気は、あまりにもつらすぎた。
――せっかく会えたのに。……どうして喜んでくれないの? 私はずっと願ってたのに。ジローはやっぱり私なんかの事……!
一筋の涙がしゃがみ込んだ彼女の頬を伝う。
一度こぼれた感情は、たやすくは止められない。一滴、二滴と地面に垂れてはその部分を濡らしていく。
ふと、心地良い暖かさを感じて涙で潤んだ瞳を向けると、まず最初にぼやけた視界に映ったのは、困ったように“笑っている”、ジロー。
――そんなわけないだろ?
久しぶりに聞いた彼の声は、たったそれだけの一言でも何より暖かで……そして彼女が望んだものだった。
――仕方ないよな……リロットとまた会えたことは確かに嬉しいし、まあいいか、こういうのも。
――? どういうこと?
――いや、気にするな。もう何も気にすることなんてないさ。時間は沢山ある。
――そうね。
――それじゃ、そろそろ適当にふらつくことにするか?
――はいはい。……って言っても、どこに行くのよ?
――とりあえず競争だ!
――あっ、ちょっと待ちなさいよ、ジロー!
ここは平和で暖かな、例えるなら楽園。明るくて、そしてどこまでも真っ暗な、楽園。
――仕方ないわね、全く。
呆れたように、しかしどこか幸せそうにそう言うと、すでに少し先のところまで駆けて行ってしまったジローに追いつくべく、彼女も駆け出した。
「嫌あああああぁぁぁ!!!」
カムクラとオガワラとを繋ぐ国境。
そこに、リロットの親友で、赤組主席たるエーファの悲痛な叫びが響き渡った。
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オンラインゲーム【NikQ】のパラレルワールド(っていう設定)
本編ストーリーとの関係はほとんどありません。