武具を手に入れて城へと帰った一刀一行はそこで近くの邑が賊に襲われていると言う報告を受ける。雪蓮はその報告を受けて行動できる将を連れてそこに急行するのだった。
邑へ急行している途中雪蓮が真剣な顔をしながら喋りだした。
雪蓮「それにしても、珍しいわね。」
冥琳「なにがだ?」
雪蓮「いや、賊の事よ。ここのところ賊なんてなかなか現れなかったじゃない?」
冥琳「…たしかにな。思春が入ってからというもの、その武勇に恐れてか賊が攻めてくることなど無かったからな…」
雪蓮「ええ…それに私達は民に対してそこまでの暴政をしているわけじゃないしね。…皆私たちのことを慕ってくれているみたいだし…」
蓮華「たしかに…変ですね。賊が増えたり、襲ってこないような政策はしてきたつもりです。…そうやすやすと襲われることなどないと思いたいのですが…」
そう言って蓮華が悔しそうな顔をする。
一刀「うーん…もしかしたら俺達はとばっちりを受けているのかもしれないね…」
腕を組みながら考えていた一刀がつぶやいた。
思春「どうゆうことだ?」
一刀「うん…いくら俺達が民のことを思って収めていても他はそうじゃない人の方が多い。そういったところから賊が増えていってもおかしくは無いだろ?」
蓮華「たしかにそうね…」
一刀「そして膨れ上がった賊たちは自分達が食べていけるようになるべく奪うものが多い邑に行くのは当然のことだろ?」
冥琳「ふむ。たしかにその通りだが…さすがの賊たちも裕福な邑から簡単に奪えるとは思っていないのではないか?」
一刀「冥琳…気付いているんだろ?」
冥琳「何がだ?(ニヤニヤ)」
冥琳はたまにこうやって自分でもわかっていることを、わざと黙って一刀に答えを言わせるようにしてくる。
一刀「はぁ~」
雪蓮「なによ~二人して…ちゃんと説明してよ~」
仲間はずれにされているのが気に入らないのか、雪蓮がほっぺたを膨らましながら抗議してくる。
一刀「まぁ簡単に言うと、手下の人数が増えたことで賊を仕切っている者が勘違いしたって事」
雪蓮「あ!なるほどね~それはありえるわね。」
蓮華・思春『どういうこと(なの)(だ)?』
二人はいまいち要領を得ることができないのか頭を捻りながら答えを聞いてくる。
冥琳「つまりだ。自分達が強いと勘違いしてしまったって事だ。それこそ雪蓮や祭殿、思春の武勇を忘れるほどにな…」
蓮華「!!…なるほど。少数なら自分の力量を過信しないが、大勢なら過信してしまうということか…」
思春「…たしかに。戦いは数という言葉もあるくらいだしな」
一刀「そういうこと…まぁ他にも理由はあると思うけどね…」
蓮華「む?…一刀。その理由とはなんだ?」
一刀のつぶやきに気がついて蓮華が聞いてくる。
一刀「…蓮華。最近届いた都の知らせ知っているだろ?」
蓮華「たしか…霊帝が近々亡くなるかもしれないってやつか?」
霊帝とはこの時代の皇帝であるが、ほとんど飾りであり実権は十常侍が握っているようなものだった。しかしいくら飾りといっても皇帝であり、ある程度民の事を考えていたのか賊が一気に増えることなど今まで無かった。
一刀「そう。真偽のほどはわからないけど、多分本当のことじゃないのかな?そのせいで前にもまして暴政が行われることになり、結果民の怒りが膨れ上がりそれが賊が増える要因になっているんだと思うよ。」
雪蓮「……冥琳も同じ考え?」
冥琳「ああ…あくまで予測でしかないがな。もしかしたら近々大きな戦が起こるかもしれないとまで考えているよ。」
思春「やりきれんな…」
思春は顔をゆがめる。
雪蓮「…そうね。でもだからといって邑を襲うことを良しとするわけにはいけないわ。賊に落ちてしまえばそれはもう人とは呼べない……ただの獣よ」
そう言って雪蓮が厳しい顔をした。
一刀「ああ…わかっているつもりなんだけどね…」
思春(一刀…)
思春は一刀のつらそうな顔を見て心配をしていた。
一刀以外の者は自分の手で人を殺したことがある。冥琳はどうかわからないが、それでも自分が考えた策で人を大量に殺してきた。だから人を殺す覚悟・責任・つらさ…そういったものはすべて乗り越えてきた。蓮華様も孫堅様の娘として幼い頃からどういったものか教えてもらってきただろう…。
しかし一刀はどうか?民として生まれ、やさしい性格。やさしさとは言い換えれば非情になりきれない甘さがあるとも言える。そんな一刀が人を殺し、目の前で人が死んでいく様を見ていく。そんなことをしてしまえば一刀の心が壊れてしまうのではないか?今までの一刀はいなくなってしまうのではないか?
そういった不安を胸に、邑へと行動するのであった。
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「伝令より報告!!賊は今も邑を襲撃中。その数500ほどのことです。また邑のあちこちで火の手が上がっており、被害甚大ということです。」
雪蓮「わかってるわ。見えているもの……くっ獣どもが…」
雪蓮達の目の前にはそこら辺から火の手が上がっており黒煙が上がっていた。
そして遠目でもわかるように逃げるものが次々と死んでいく。
本来なら聞こえないはずなのだが、耳に逃げ惑う民の悲鳴が聞こえてくるようだった。
冥琳「雪蓮…」
雪蓮「ええ…きけぃ孫呉の兵よ。獣に落ちたものに遠慮はいらん。…民が受けた痛みを倍にしてかえしてやれ!…いいか!逃してしまえばそれは必ず仇として返ってくる一人残らず殺せ!!…全員抜刀せよ!」
雪蓮の掛け声に全員が剣を抜く。
冥琳「雪蓮・思春・私の隊は敵を一人残らず駆逐しろ。残りの隊は民の救出に専念せよ!」
冥琳の指示に全員が頷く
雪蓮「全軍…雄叫びと共に突撃せよ!!」
ウォオオオオオオオ………
こうして一刀がはじめて経験する戦いの火蓋が切って落されたのであった。
~一刀side~
た、助けてくれぇ…
死にたくないよぉ…
民の悲痛の声が聞こえる…
へへっ…おらぁ死ねよ!
お?コイツはいい女だな…さらっちまうか。
人の皮をかぶって獣どもが叫ぶ。
まさにこの世の地獄といってもいい光景だろう。そこには人の負の感情のすべてがあるように感じた。
怒り…悲しみ…欲望…絶望…殺意…
それが渦巻いて景色が黒くなっていくようだった。
それはけして煙のせいではなく、濁った感情が表に表れているのではないだろうか…
蓮華「一刀!…なにぼさっとしているの早く民を助けに行くわよ」
一刀「…あ、あぁ」
一刀は何が起こっているかわからなかった。
いやわかりたくなかった。
初めて見る死の光景。
それを理解できるほど心に余裕はなく、言われるままただ人を助けることを考えるようにした。
そこに腕を抱え、足を引き釣りながら近づいてくるものがいた。
一刀「…!大丈夫か?」
…「はぁ…はぁ…大丈夫…です。」
大丈夫?そう言っては見たもの、目に見えて大丈夫じゃないことはわかりきっていた。
一刀「くっ…今すぐ安全なところに連れて行くから…」
…「ま、まってください。あっちのほうに…まだ逃げ遅れたものがいます…くぅ」
一刀「喋るな!…あっちだな。すぐに向かう…君。この子を安全な場所に連れて行ってくれ。」
「は!」
一刀は近くにいた兵士にこの子を託し、言っていた場所へと移動しようとする。するとつらそうな顔をしながらその子はこちらを見てくる。
その目には涙が流れていた。
…「あ、ありがとうございます。…私にもっと力があれば守れたのに…うぅぅ…」
一刀「…すまない。俺達がもっとはやくこれたら…とにかく今は自分のことを考えて…後は任してくれ。」
その言葉を聞いて安心したのか、血と涙を流していた少女は糸が切れたように一刀に倒れこんだ…
一刀「……この子を頼む。…他のものは俺について来い。助けに行くぞ!!」
『御意!』
倒れた子を先ほど呼んだ兵士に頼み、他の者達と一緒に言われた場所へ向かう。
そこに更なる絶望があるとも知らずに…
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一刀が向かった先…そこには直視するのも嫌になるくらいひどい光景が広がっていた。
老人…子供…女性…
戦う力を持っていないものたちの無残な死体があちらこちらにあった。
そこらへんに落ちている石と同じように、あたかも当然のように…
その光景にしばらく言葉を失っていると、こちらに向かってくる女性が見えた。
その手には子供を抱えていた。
一刀「あ!…」
その女性は手を伸ばし、口をパクパクさせる。
タ…ス…ケ…テ…
しかし、必死に伸ばした手が一刀に届くことが無かった。
エ…
女性は子供を抱えたまま倒れこみ、その背には矢が刺さっていた。
ナンデ…
賊A「あったり~」
賊B「ちっ…俺が当てたかったのにな」
そう言って賊たちは弓を構えていた。周りには賊の仲間達がおり皆笑っていた。
ナニヲイッテイルンダ…ナニヲワラッテイルンダ…
賊A「次の獲物を探せばいいだろ?そこら辺にいるだろうしな…」
賊B「お?さっき殺した女から子供が出てきたぞ?」
子供「お母さん?…どうしたのお母さん…」
弓を構えていた賊の一人が女性から這い出してきた子供を見つけた。
賊A「ちょうどいい。今度はコイツを的にしようぜ」
子供「うえぇぇぇん…おかぁさーん…」
賊の一人が再び弓を構える。
チョットマテヨ…マサカ…
賊B「それはいい考えだな。じゃあ俺からいくぜ」
ヒュッ……
子供「ひぃ…」
……………
賊A「ほら~さっさと逃げろ♪」
ヒュッ……
…………………ヤメロ
賊B「あっははは…楽しいな♪」
キリキリキリ………
……プツン
嗚呼ああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ………
ここで一刀の意識は途切れた……
~一刀side・終~
~思春side~
雪蓮達は賊を掃討していた。数は相手の方が多くとも所詮は民から賊になったもの。訓練を受けている兵士の相手になるはずが無い。
瞬く間に賊を殺していく。
思春「どうした賊どもよ!弱いものには襲い掛かってくるのに私には向かってこないのか!血の味を覚えた獣よ、鈴の音は黄泉路への道しるべと知れぃ!」
その掛け声と共に思春は、賊たちに突撃していく。
その姿に狂気に支配されて、醜い笑顔を浮かべていた賊たちの顔に絶望が浮かび逃げ出すものまでいた。
冥琳「逃がすな!!自分達が何をしでかしたか教えてやるのだ!!」
そう言って冥琳は兵達に指示をだした。
思春もその指示に従い、更に突撃しようとするといつの間にか近くにいた雪蓮に呼び止められた。
雪蓮「思春。この辺りはあらかた片付いたわ。あなたは一刀たちを手伝いに行ってくれない?」
思春「は!」
雪蓮「おねがいね。……何か嫌な予感がするのよ。特に一刀は今回初めて戦いに出ているわ。大丈夫と信じたいけど…一刀はやさしいから…」
そう言って雪蓮の顔がゆがむ。
思春「はい。…すぐに向かいます」
雪蓮「おねがいね…」
そう言葉を交わしたあと、思春は一刀たちが指示をだしているであろう場所へと急ぐのだった。
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思春がその場所へ行くと、兵達に指示をだしている蓮華がいた。
思春「蓮華様ご無事でしたか。雪蓮様の命によりこちらに来ました」
蓮華「思春ありがとう、大丈夫よ。」
そう言って蓮華はこちらに顔を向けた。
思春は蓮華様の無事を確認した後、もう一人ここにいるはずの一刀の姿を探す。
しかしその姿は見つからない。
思春「蓮華様。一刀はどこにいるのですか?この辺りにはいないようですが…」
蓮華「え!たしかこの辺りで私と一緒に指示をだしていたのだけど…」
そう言って蓮華は周りを見渡して一刀の姿を探す。
するとけが人を運んでいた一人の兵士が話しかけてきた。
「あの…北郷様なら、先ほどこの者に逃げ遅れている者がいると聞いてそちらに向かいましたが?」
思春「そうか…わかった。けが人を安全な場所へ送っていってやれ」
「は!」
思春の言葉を聞き、兵士はけが人を安全な場所へと運んでいった。
思春「蓮華様。私は一刀の方へ行ってまいります」
そう言って蓮華の言葉を聞かずその場をあとにする。
蓮華「ちょっと思春!…もう今作業しているものはこのままそれを続けろ。他のものは私について来い!」
そう周りの兵に指示を出すと蓮華達も思春の後を追った。
兵の話を聞いたとき思春は嫌な予感がした。
それは、雪蓮様の勘を聞いたせいかもしれないし、もっと前から感じていたのかもしれない。
思春(どうか…この予感がはずれていてくれ)
そう思っているが、こういうときの雪蓮様や自分の勘は嫌な事ほど当たってしまうことを思春はわかっていた。だけど願わずにはいられなかった。
思春(大丈夫…大丈夫だよな一刀…)
まるで自分に言い聞かせるように思春は願っていた。
しかしその願いは叶う事が無かった……
思春がその場につくと兵士達が固まっていた。
そこに一刀の姿は無い。
思春「どうした!何を固まっているのだ!」
そう叫ぶと、兵士達はビクッと反応を示しこちらを向く
「あ、甘寧様…それが…」
兵士達はうろたえながら言葉をつむぐ…
その姿にイラつき兵士達をどかす。
思春「どけ!…一刀!だいじょ…ぶ…か…」
兵達をどかした後に見えた光景は目を疑うものだった。
真っ赤に染まった大地
そこに子供を抱えた一人の男
その周りにはその男が切ったのであろう、人であったモノの成れの果て
男が持つ武具は、最近になって見た武具の一つ、その者だけにしか扱うことができない武具
その武具の両方の刃で切ったのだろう…その刃には血が滴っていた。
そして男の顔、体あちこちが赤く染まっていた。
何より驚くのはその男が見たことの無い表情をしていたからだ
いや見たことの無い表情というより、表情がないのだ。
まるで仮面を被っているような顔
その顔で人の成れの果てを見ていた
何もするわけでなく
ただただ見ていた
思春「一刀ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
私は何もわからないのにその男の名前を叫んでいた…
~思春side・終~
皆が笑顔になるために
その願いをこめて鳴らしていた鈴
その鈴は壊れてしまった
音を鳴らすことができない
皆が笑顔になるために
その願いを込めた音が無くなってしまった
あれだけ響かせていたのに
あれだけ皆を喜ばしていたのに
残されたのは静寂と暗闇
その鈴には今は何も届かない
みなさん、ども!秋華です
思春「おまえ…やりすぎじゃないか?」
やっぱりそう思います?
思春「当たり前だ!!今までのほんわかした感じはどこへいった!!お前には真ん中が無いのか?」
あーないですね(キッパリ)
思春「おまえというやつは…」
まぁまぁそんなに怒らないでください。
こういう場面があるからこそ、あのほんわかした感じが生きると思いませんか?
思春「そ、そうなのか…?」
そうですよ(たぶん…)
思春「…わかった。…ということらしいので、読者の皆さんそう納得してもらえると嬉しい」
おねがいします。
で、次なんですけどね。
今度はちょっと拠点っぽくなると思います。
思春「なんでだ?」
それはですね。それぞれの視点から今の一刀を見てどう思うかを書きたいと思うのが一つ。
それと一刀と他の人の絆を深めるシーンが書きたいのが一つですね。
思春「そんなことしなくても、私と一刀との絆だけで良いのではないか?(私が主人公なわけだし…)」
それは、だめです。
そもそも呉のいいところは将ごとに家族の絆みたいなものがある所なので、ここは誰が反対しようが書きます。
まぁ思春との絆が一番強くなるのは当然ですが…
思春「そうか…意外に考えているんだな…」
失敬な!!
これでも頭使ってますよ。
どうやったら思春がかわいくなるかとか…どうやったら思春がデレてくれるとか…
思春「///////////オマエトイウヤツハ…少し感心した気持ちを返せ!!」
と、まぁこんな感じになります。じゃお待ちかね今日の思春ちゃんですが…
思春「話を勝手に終わらすな!!…それにこんなシリアスを本編でやっといて、やるのか?」
やりますよ。だってここは本編とは別ですから…
じゃ発表しますよ~
今回はデレ妻思春パート2です
思春「な!//////またあんな恥かしいことをやれと!?」
まぁそうですね。それに今回は萌将伝のアンケートバージョンです。
思春「な!//////私に裸ワイシャツをやれと?」
ええ、だってアンケートに思春いなかったんですよ?私としては一番それが似合うのは思春だと思っているので…
思春(そ、そんなこと言われたら断れないじゃないか…/////)
じゃ台詞はこれで…でわでわ次回もまた見てくださいねあでゅー
思春「////ほ、ほら…珈琲飲むだろ?…あつっ…な、何笑ってるんだ?笑うなよ////……罰としてやけどした舌を治してくれ…え?どうやってって…/////わかってるんだろ?こうやってだよ…んっ/////」
あぁ…ここに理想郷ができちまったな…
思春「ああ…これでは私のイメージが…」
そんなもの、第一話から無いぞ?
思春「!!キサマノセイデーーー」
フッ悔いなどあるはずもない!!……ザシュ…すみません悔いだらけです…
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ども!秋華です。
今回は、シリアス+少しグロいです。
自分ではグロくないと思いますがとりあえず…
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