No.140950

『舞い踊る季節の中で』 第38話

うたまるさん

『真・恋姫無双』の二次創作のSSです。
明命√の作品となります。

虎牢関に立て籠もる賈駆、張遼、呂布、陳宮の将達、彼女達は連合の罠に何を思うのか。

2010-05-05 09:02:08 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:19419   閲覧ユーザー数:13849

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』虎牢関編

  第38話 ~ 舞うが如く咲き乱れる喧嘩華 -後編- ~

 

 

(はじめに)

 

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

        :●●●●

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(ただし本人は無自覚)

         気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

         神の手のマッサージ(若い女性には危険です)

北郷流舞踊(裏舞踊):設定の一部を公開

    神楽を発端とする流派で、その色を強く引き継いでいる。 途中宗教弾圧や権力者に利用された事も

    あり、裏舞踊の形で流派の存続を図った時期もあったが、その時代においても流派の理念は失われる

    事なく研鑽を続けてきた。 そして、その理念の下、流派や舞などに拘らず、多くのものを取り入れ、

    昇華させていき、現在では、極僅かながら、周囲の自然界の"氣"を操るに至る。

 

    舞に使うものも、鈴・扇・笹・榊・幣・帯だけではなく、剣・槍・弓等様々の物が使われる。一刀曰く

    「一つを覚えれば、後は心を知ろうとすれば、自ずと理解できる」との事で、それを言うだけの実力が

    あると一門も認めており、父を差し置いて、継承者筆頭候補となっており、主に扇子を愛用している。

    また、裏舞踊の一環として、祖父に強引に●●●●を習得させられたが、一刀は裏舞踊の色の強いこの

    道具嫌っている。 北郷流の理念に関して一刀は、「馬鹿馬鹿しい考えだと思うけど、高みを目指そう

    とするのは悪い事じゃないと思う」と語っている。

    一刀が居なくなった後、途絶えたかどうかは不明。

    また、古い歴史を持つ舞踊の一派という特性上、其れなりの教養者が門下生として、または、支援者と

    して北郷家と付き合いがあった。そのため、料理人、医者、教授、武術家、政治家等と様々の人種と関

    わりを持ち、それらの人々は、当時まだ小さかった一刀を可愛がり、スポンジが水を吸収するが如く覚

    えが良かった一刀に、自分の持つ技術や知識を、喜んで(面白がって)教えていった。

    

  (今後順序公開)

 

★オリキャラ紹介:

諸葛瑾:

  姓 :諸葛    名 :瑾    字 :子瑜    真名:翡翠

  武器:"双天" 対の双剣

  武力:52(平均的な将を60とした場合)

  智力:81

  政治:89

  家事:92

  魅力:想像にお任せします(w

  焦った時の口癖:『 あうあう 』又は 『 ぁぅぁぅ 』等の類語です

  性格:基本的に温厚で、外見に反して大人の女性

     だが、焦ると地が出てしまう。(朱里と違って、自分を律しています)

     警戒心が強い性格だが、一度心を許されると、親身になってくれる。

     妹がいるため、基本的には面倒見が良く、放っておくと、食事を取るのを忘れる明命を心配してよく

     食事を差し入れていた。

     やはり、妹がいるためなのか、時折人をからかって、その反応を楽しんだり、とんでもない悪戯を仕

     掛ける悪癖もある、だが性質の悪い事に普段が完璧なだけに、周りは怒るに怒れないでいる。

     家事全般は人並み以上に出来、そこらのお店以上と自負していたが、丹陽で知り合った男性の腕を見

     て自信を喪失。 以降こっそり腕を磨いているが、全然敵わないと嘆く毎日を送っている。

     武術は好きではないが、妹達を変態共から守るため、必要最低限身に付けたもの。

     姉妹揃っての発育の悪さをコンプレックスに思いつつも、それを武器にする強かさを持っている。

     自分を子供扱いしない男性が好みだが、言い寄ってくるのは変な趣味の持ち主ばかりで、17の時、現

     実の男(変態の多さ)に愛想が付いた時に『八百一』と出会う。 以降のめり込み、妹達を洗脳する

     も、基本的には周りには秘密にしている。そのうち執筆も行うようになり、掲載されるようになる。

     数年たった現在では、定期的な愛読者もつき『八百一』の主要作家の一人となっている。

     黄巾の乱後、作品が益々洗練され、世に愛読者を急増させる要因となった。

霞(張遼)視点:

 

 

虎牢関に撤退してから、今日で七日目、連合は阿呆みたいに、今日も城壁に向かってひたすら攻め立てとる。

上から見た感じ、一番仰山おる金ぴかの鎧着た連中は、はっきり言って雑魚もいいところ、禄に陣形も取れへん新兵と言った所や、あんなんは、うちらの敵や無い。

圧倒的な兵数差が無ければ、打って出て蹴散らせるような連中や、

 

もっとも、全部が全部そう言うわけやあらへん。

一番手強そうなのは、曹の牙門旗を掲げてる連中や、曹操の所だけあって、よく調練されている上、数が多い。

次に馬の牙門旗を掲げてる涼州の騎馬で構成された隊や、馬騰が連合に付いたのは意外やったが、騎馬を使った突進力は、うちの部隊と同じか、それ以上かもしれへんなぁ。

 

そして、遥か後方やけど、先日戦った劉と孫の牙門旗、数は少ないけど、油断ならん連中なのは、身に染みて分かってる。

まぁ、あんな後方に居るってことは、これ以上功を立てれんように、後ろに回されたんやろうな。

専守防衛を命令されている此方としては、厄介な連中が後ろに下がってくれてるっちゅうのは、楽でええけど、

 

「・・・・・・・・・ウチだけで考えていても、ええ考えが浮かばへん、賈駆っちに相談してくるわ。

 ねね 此処は頼んだで」

 

ウチは恋の傍に立つ少女に声を掛けて、その場を後にする。

 

このまま終わる連中じゃ、あらへん。

賈駆っちに、あいつ等がやって来そうな手を考えてもらわなあかんな。

 

 

 

 

 

ねね(陳宮)視点:

 

 

「ねね 此処は頼むで」

「了解したです」

 

ねね の言葉に、霞は城壁を降りて行くです。

もっとも、頼まれなくとも、此処の防衛を任された以上、恋殿と ねね で必ず守ってくれるです。

本来であれば、恋殿の武を連中に骨の髄まで見せ付けてやりたい所ですが、連中め卑怯にも五倍の兵力を用意して来たです。

まぁ、このまま放っておいても、数ヶ月も経てば、連中は冬の厳しさと兵糧で自壊するです。

そんな失策に気がつかない連中に、腹を立てても仕方ないですね。

 

「「「「 わぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!! 」」」」

 

眼下に見下ろす光景の中に、新たな気勢と共に、動きがあるです。

見れば、数千程度の隊が、鋒矢陣形で味方の前線中央を無理やり割り込み、向かって来ているです。

 

「やれやれ、ろくな調練がされていないどころか、功を焦って暴走を許すですか。

 呆れて言葉も無いです」

 

幾ら連合で、指令系統が定まっていない、と言ってもこれはない。 そうため息を吐きながら見ていると、やがて前線に出て城壁に取り付くと、横陣のように横に広がって、此方の矢や投石を防いでいたと思ったら、後退していくです。

 

「ん? ただの根性なしの部隊とは思えないですが、何のつもりですか?」

 

やがて、その部隊を発端に、曹操の軍が下がり始めると、後は雪崩式に戦線が大きく崩れゆき、金ぴかの鎧を着た連中を殿に、戦線全体が後退していくです。

 

「無様ですね。 我らを釣ろうとしたのでしょうが、これではあまりにも崩しすぎです。

 これでは立て直すだけで、数日を要するです」

「・・・・・・・ねね、出る」

 

ねね の横に立つ、我が真なる主、恋殿がそう呟かれます。

 

「賈駆殿より、守る事に専念せよと言う事でしたが」

 

恋殿は心広きお方、それ故、瑣末な事など、覚えておらぬ事があるため、確認を取ってみるのです。

仮初なれど、一応恋殿の主の軍師の言う事、通すべき義理は通さねばなりませぬ。

 

「・・・・・・・・今が好機」

「分かりました」

 

恋殿が、それでも出撃と仰られたのです。

ならば、臣下である ねね は、主の望みを叶える為に動くまでです。

 

「天下無双の飛将軍、呂布殿の出陣ですぞっ。 者共後に続くのですーーーっ!」

「「「「 おおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!! 」」」」

 

 

 

 

霞(張遼)視点:

 

 

「そうね、たしかに、ボク達に気づかれずに、あれだけの事をやって見せた連中だもの、何かやってくると見

 た方が良いわね。 一番可能性が高いのは、虎牢関は囮で別の部隊が洛陽を攻める、って事だけど、今のと

 ころ、それらしい動きを見せている勢力は無いわ」

 

さすが賈駆っち、それなりに考えてはいたっちゅうわけか、だけどな

 

「だけど連中の中に、変わった事を考える奴がおる、せやから警戒しておいた方が、ええと思うてな」

「確か劉備と孫策の所と言って・」

「申し上げます! 呂将軍と陳軍師が出撃なされましたっ!」

「なんやとっ!」

「ちょっ、ボクはそんな命令出して無いわよっ!」

 

大きな部屋に、兵の報告が響くと共に、今度は、ウチと賈駆っちのそれを上回る大声が、部屋中に響き渡る。

 

「それが、敵の一部隊が、前線に中央に割り込んだと思ったら、周りを巻き込むように後退し・」

「そんな見え透いた罠に引っかかる ねね と恋じゃないはずや、本当は一体何が在ったか言うてみっ!」

 

兵の報告に、ウチは苛立ちを隠せず、兵に怒気を向けてしまう。

恋はともかく、ねね は、ああ見えても一流の軍師や、罠と分かってて今の戦力差で出撃すわけあらへんし、ねね が主と慕う恋が出撃するのを黙っている訳が無い。

 

「ほ、本当にそれだけです。 ただ、敵の後退が異常で、戦線を大きく崩しながら、敵の部隊全体を巻き込んで

 後退しているのです」

「はぁー? まさか敵が本気で、崩れながら敗走している、とでも言うつもりかいな」

「恐れながらその通りです」

 

一体、何があったんや? とにかく、それが事実なら、恋達の判断も分からないまでもない。

せやけど、専守防衛の厳命を無視して出撃って、なんで、ウチの所の軍は、こうも猪ばかりやんねん。 頭が痛くなってくるわ・・・・・・

 

「し・しまった。 そう言う事。 霞っ、直ぐ二人を連れ戻してちょうだいっ!

 これは罠よっ! しかも連合軍の大半を餌にしたね!」

 

賈駆っちの言葉に、ウチは一瞬『そんな馬鹿な』と言いかけて呑み込む。

 

「わかった。 ウチも出撃するけど、最悪の場合は、賈駆っちだけでも一足先に逃げるんやで、月が逃げる時

 間ぐらいは稼いでみせる」

「分かったわ」

 

ウチは賈駆っちに、そう言い残して、部屋を駆け出る。

敵の狙いが分かった。 まさか、連合と言う形を利用して、こないな大掛かりの罠を仕掛けてくるとは、思わへんかった。 そもそも、連合軍の大半を犠牲にする覚悟で餌にするなんて策、普通は考えつかへん。

一端崩れた戦線を戻すのは難しい、しかも大軍で在れば在るほど、時間がかかるっちゅうもんや。 せやから、今回崩れた所は、追撃を食らえば痛手を被るのは必死、しかもそれが、恋の率いる部隊となれば、壊滅的な痛手を被る事になる。

 

武に自信がある者ほど、 戦況を見極める目がある者ほど、 引っかかりやすい手や。

ウチも汜水関の事が無かったら、引っ掛かってたと思う。

そして、こないな嫌らしい手を考えるっちゅうのは・・・・・・・・劉備か孫策の所かも知れへんな。

まぁええ、こないだの鬱憤を晴らすつもりで、一暴れしてみせたる。

飛将軍・呂布と、神速の張遼の恐ろしさを、骨身に染み込ませてやるわっ!

 

「全員騎乗ーーっ! 出るぞ!」

「「「「 応っ!! 」」」」

 

 

 

 

 

 

ズンッ

 

「雑魚に用は無いっ!」

 

ウチの槍が、敵の下級兵の喉を突く、

喉を突かれた兵が倒れるのを確認せずに、力任せに偃月刀を横に払う。

 

ヴォッ

 

ドガカッ!

 

三人の兵を纏めて、ふっ飛ばしながら馬を走らせる。

はっきり言って、目の前の敵は雑魚もいい所や、 ウチの部隊の敵やあらへん。

だけど厄介なのは数や、そして、ウチらの周りに居ない雑魚で無い連中や、

 

(やるやないけ)

 

そう心の中で呟きながら、戦況をもう一度見直す。

敵の前曲中央と、中曲にかなりの痛手を与えたが、涼州の馬超率いる隊に、賈駆っちとの間を絶たれ、その隙に公孫賛の隊に城壁に取り付かれてしもうた。

まだ、賈駆っちの隊が耐えてるが時間の問題やなっ、

 

(なら、此処までか)

 

ウチは決断し、馬を勢いをつけて敵の小隊を食い散らかしていく。

そして、更に幾つかの小隊を食い散らかしながら、進めていった先に、お目当ての顔が見えるようになる。

 

「恋っ!」

「・・・・・・・・霞」

 

恋の周りには、飛び散るように死体の山が転がっていた。

恋相手に、まともに戦おうとする事が、間違いだって分からんのかいな。

死体の山に哀れと想いもしたが、それも一瞬の事、

 

「見てみい、もう、虎牢関はあかん、戻ることもでけへん」

「・・・・・・・・・・ごめん」

「ウチに謝ってもしょうがあらへん、賈駆っちには月を連れて逃げるように言ってあるさかい、今度はウチら

 の番や。 ウチの隊は時間を稼ぐだけ稼いだら、逃げるさかい、先に行き」

「張遼殿、申し訳ありませぬ」

「とっと行きっ」

 

そう言い捨てて、ウチは再び馬を走らせる。

そして、突いてくる部下達に向かって、もう一度叫ぶ

 

「ウチ等は、時間を稼げるだけ稼いだら、敵の薄い所を見つけて突破する。 気合いれいっ」

 

 

 

 

一刀視点:

 

 

「深紅の呂旗、 此方に真っ直ぐ突っ込んできます!」

 

伝令兵がそう報告してくる。

どうやら、孫策達は、俺の望みどおり、穴を開けておいてくれたようだ。

報告から暫らくして、深紅の呂旗を持つ部隊の姿が見えると、俺は後方に合図を送り、相手の部隊に道を空けさせる。

そして、相手部隊の先頭に立つ二つの騎馬が隊から離れ、速度を落としながら顔が見えるほど近づいてくる。

牙門旗からして、呂布と陳宮であると分かるけど・・・・・・やっはり、女性なんだと、俺の知る歴史との違いを再確認させられた。

 

「・・・・・・何のつもり?」

 

赤髪の少女、おそらく呂布が、そう聞いてくる。

その目には、警戒心というより、不可解といった感じの色が浮かび上がっていた。

そして逆に、その隣の童女?は、警戒心に溢れる目で、此方を睨みつけていた。

俺は二人の見た目に騙されること無く、理解する。

呂布は、噂にたがわぬ、強さを持っている事を、

そして陳宮は、見た目通りの年齢ではない事に、・・・・・・なにより子供に出来る目じゃない。

 

「此方から戦う意志はないよ。 通りたければどうぞ」

「ふん、臆病風に吹かれたですかっ」

「き・貴様っ! 我等を・」

「蓮華」

 

俺の言葉に、陳宮が此方を挑発し、蓮華がそれに乗りかけるのを、俺は声と手で制止する。

良い手だ。 今の状況を怪しんで、罠かどうかを確認するのと同時に、此方の大雑把な性格を、あの一言で読みに来た。

だけど、そんなものは最初からありやしない、あるのは此方の都合だけ、

 

「もう勝負はついた。 これ以上無駄に兵を損失させたくないだけだよ。 それはそちらも同じだと思うけど」

「・・・・・・」

 

俺の言葉に、陳宮は、ますます疑念を強く抱く。

まぁ、それもそうだよな、普通はこんな事しやしない。 連合に対する裏切りにもなる。

だけど、

 

「天下無双と謳われる飛将軍・呂布と、その配下にいる陥陣営、そして鍛えられた兵士、それを討ち取るだけの

 価値が、もはや此の戦にはない。 それでも、無駄に戦いたいというなら、孫呉の兵ただ独りになろうと、相

 手をさせてもらうよ」

 

敵は三万の兵を一人で壊滅に追いやった豪傑だ、しかも主力である袁家を食い散らしながら来た連中だ。 なら新米軍師である俺ならば、連合相手に言い訳が立つ。

蓮華は、気に入らないようだけど、被害を無視してまで今戦うべき相手ではない言うと、しぶしぶながら納得してくれた。

 

此の戦、前曲中央と本陣を成していた袁家以外は、そんなに被害は出ていない。

曹操は、此方の思惑に気づき、万全の体制で乗ってくれた。 袁紹や袁術が猛攻を受けている間に、なんとか体制を整え直した馬超や公孫賛は、連合崩壊を防ごうと、敵部隊に横撃を掛け、賈駆の部隊と切り離し、他の諸侯と共にそのまま城門に取り付いてくれた。 劉備と孫策達は、戦線を広げようとした相手を押さえ、敵が逃げやすいように此方に流してくれた。

 

「・・・・・・わかった。 通らせてもらう。 ねね」

「わかりました」

 

此方を、ただひたすら見ていた呂布の一言で、陳宮は引いてくれた。

分かっているはずだ。 呂布自身はともかく、配下の兵は、あの大軍を食い破って来た後では、疲労が溜まっており、本来の力が出せない事を、そして、薄かった壁と、此方の申し出の理由に、

ほんの一言二言だけど言葉を交わしただけ抱けど、この少女なら気がついたはず、

 

罠ではないと、ただ利用されただけだと、

 

そして、それを示すかのように、此方を憎々しいと言わんばかりに睨みつけると

 

「命拾いしたですね」

 

そう、言い捨てて、もう此方に興味はないとばかりに、踵を返す。

だけど、呂布はいまだ此方の瞳を覗き込んだまま、

 

「・・・・・・名前」

「え? あぁ、北郷一刀だ」

 

小さく呟くように、名前を聞いて来た。

一見無表情ながらも、多くの感情を表してくれる瞳に、一瞬飲まれそうになる錯覚を覚え、躊躇するも名前を告げる。

 

「・・・・・・覚えとく、・・・・・・・・・・それと、・・・・・・ありがとう」

 

そう言い残して、陳宮と共に此の場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

「ふぅー、行ってくれたか」

「一刀、これで本当に良かったの?」

 

呂布達が立ち去って、安堵の息を大きく息を吐き出したところに、蓮華が面白くないと言わんばかりに、言ってくる。

まぁ戦場において、剣を一合も合わせず、敵を見逃す等と言う行為は、蓮華達にとって考えられないことかもしれない。 だからその反応は当然だと思う。

 

「その目で見たろ? 幾ら弱兵とは言え、あの数を食い破って来た相手だ。 戦えば此方の被害も相当なものに

 なる。 悔しくても、今は力を溜めておくべきだよ。 それに、最低限の体面は保ったんだ。 孫呉にとって、

 それほど名を貶める事にはならないよ。 むしろ此方から都合の良いように喧伝していけば、今のだって、英

 断と受け取ってくれる」

「それは前に聞いたわ。 それにしても、よく次から次へと、そんな悪知恵が浮かぶものね」

 

俺の説明に、蓮華は呆れた様に言ってくるが、俺はそれを苦笑交じりに受け止める。

でも、それで構わない。

呆れられようが、馬鹿にされようが、俺は無為に命を奪う気は無い。

避けられる道があるというのに、人に殺しあえと言うつもりは無い。

逃した相手が、いつか敵になったとしても、助けられるものなら助けたい。

たとえ、呆れられようが、甘いと言われようが、

そう在り続けるつもりだ。

 

「でもよかったよ。 話が分かる人で」

「次もそうとは限らない。 その時は、一刀の意志はどうあれ、戦わせてもらう」

 

俺の零す言葉に、蓮華は将の顔で、言葉遣いで、そう告げてくる。

甘い事を認めるのも、敵が従った時だけだと、釘を刺してくる。

それは分かっている。 将が判断を間違えれば、それはそのまま、兵士の死へ繋がる。

将は、自分の命だけでない、付いて来る兵士や、民達の命を背負っているんだ。

だから、甘い事ばかりも言っていられない。

 

理想は大切だけど、現実を見なければ、民に絶望を与えるだけ。

でも、それでも理想は必要なんだ。

人が人として生きるために、

こんな悲しい世の中を終わらせるために、

理想と現実、共に見失ってはいけないんだ。

 

(でも、戦うか・・・・・・)

 

そう心の中で呟きながら、呂布の事を思い出す。

あの瞳の奥に映る色、そして周囲ものを在るがままに、受け入れているような感覚・・・・・・・・・・・・、先日見た張飛も強かったけど、あれはそれ以上だ。

少なくとも、慣れない馬上では、勝てないだろうな。

 

 

 

 

 

華琳(曹操)視点:

 

 

四町先(約440㍍)を騎馬隊が袁紹と袁術の兵士達を、蹴散らしながら、縦横無尽に絶えず移動している。

大量の歩兵に囲まれて、身動きが取れなくならないように、弓兵に狙いをつけさせにくいように、絶えず周囲の状況と戦場全体の状況を把握しながら動き、その武を振るっている。

 

そしてその武は、素晴らしく、一振りで数名の命が刈り取られ、

その突きは、相手に受け止めさせる事もなく、次々とその命を貫いていく。

まるで、物語に出てくる戦乙女のように、その気高い魂を輝かせながら。

 

「欲しいわね」

「張遼をですか」

 

私の呟きを、隣にいる桂花が聞き逃す事無く確認を取ってくる。

そして、反対側にいる秋蘭は、

 

「また華琳様の悪い癖が・・・・・・」

 

と、溜息をつく

失礼ね、悪い癖と言われるほどではないと思うのだけど、

それに、私の覇道に役立つ事なのだから、何処にも問題はないはずよ。

 

「もちろん、張遼と呂布の両方よ」

「では、春蘭にそのように伝えます」

「桂花、まて」

 

私の言葉に、桂花が動こうとしたのを秋蘭が止めに入った。・・・・・・珍しいわね。

 

「秋蘭、何か問題があって?」

「華琳様、恐れながら、張遼はともかくとして、呂布を生け捕るなどは不可能です」

「あら、それ程の者なの? ますます欲しくなったわね」

「華琳様がどうしてもと仰られるなら、その時は姉者か私、どちらかの命はないものとお考えください」

 

秋蘭の言葉に、私は一瞬眉をひそめるも、すぐにそれは笑みに変わる。

秋蘭に、其処まで言わせるほどの武を持つ者、確かに欲しいけど、二人の命を天秤に掛けるほどではないわ。

そして、主の不快を買ってでも、そう忠告する秋蘭の忠誠心が嬉しく感じる。

 

「そう、なら前言は取り消させてもらうわ。 でもその代わり張遼は生け捕りなさい」

「では華琳様、頃合を見計らって、包囲網を薄くした場所を作り、張遼の隊を其処へ誘き寄せ寄せた後、秋蘭に

 張遼と部隊の切り離しをしてもらいます。 其処へ春蘭に一騎打ちで捕獲させます」

「任せたわ」

「「御意っ」」

 

ふふっ、張遼、あなたの魂の輝きは、私の手に在ってこそ、その輝きを増すと言うもの、

貴女が、より高みを望むなら、私の所に来なさい。

私なら、貴女を完全に使って見せるから、

 

 

 

 

 

 

「でぇぇぇぇいっ」

 

ズッ

グシュ

ザッ

ヴシッ

 

一息に放った四連続の突きが、殆ど同時と思えるぐらいに、四人の雑兵の命が消し飛ばされる。

飛んでくる弓を、避わし、払い(そのついでに、雑兵を飛ばし)続けながら突き進む。

 

(そろそろ限界やな)

 

賈駆っちは、洛陽へ逃げ出したやろうなぁ。

視界の端に映った城門には、賈駆っちの部隊が押し込まれつつも、最後の抵抗をしている。

まったく、ついてへんわ。 勝ち戦だと思ったら、これやからな・・・・まぁそれだから、おもろいんやけどな。

 

さて、何処を突き抜けるかや、

ん? あそこが妙に薄くなってる。

曹操の所か・・・・・・たぶん罠なんやろうけど、それを食い破ってこそ、生き残れるっちゅうもんや、

そう判断し、部下共に檄を掛け、其処へ馬を走らせる。

そうして、纏い付こうとする金と銀の鎧を着た兵士達共を蹴散らかしながら進んでいると、視界の淵に呂旗を見つけ、それが戦場から遠退いて行くのが分かった。

 

恋と ねね は無事抜けたようやな、・・・・・・・・・・しかし、えらい早く抜けたもんやな。

誰が守ってんね。

 

「転進するでーーーっ!」

 

ウチの視界に映った牙門旗を見て、馬を弧を描かせながら方向を変える。

そういや、糞餓鬼の躾を忘れ取ったわ。

同じ包囲網を抜けるなら、ついでに、あんたの頸を獲らせて貰う。

あの世で、華雄に謝らせんとあかへんからなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

こんにちは、うたまるです。

 

 

  第38話 ~ 舞うが如く咲き乱れる喧嘩華 -後編- ~を此処にお送りしました。

 

まずはお詫び、張遼の口調がおかしい所があるかもしれませんが、方言に詳しくないため、その辺りは脳内補正をお願いいたします。m(_ _)m

 

さて今回は、今までの中で最大数の人間の視点で書いてみました。

虎牢関での連合対董卓軍の勝負は今回でついてしまいました。

呂布は離脱し、賈駆も数人の兵を連れて、すでに虎牢関から撤退しています。

残るは、城門を守る賈駆の隊の兵士と、張遼の隊だけとなりました。

 

そして、今回の話で、一番可哀想だったのは、華琳ではないかと、 視点を用意されながらも、結局、華琳の愛の囁き(罠)は張遼に努スルーされてしまいましたし(w

 

そして、ねね、主を想い主のために頑張るも、恋に振り回される哀れな軍師、

少し原作と違い、シリアスに入っている気もしますが、其処は、私の妄想補正が掛かっていますので(w

 

次回は、お待ちかね、 張遼と一刀の対決となります。

さすがに、呂布のときみたいに話し合いではすまなさそうですよねぇ・・・・・(汗

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。

 


 
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