No.140762

真恋姫無双~風の行くまま雲は流れて~第30話

第30話です。

昼間から飲むビールうめえええええ!

2010-05-04 14:32:24 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:7432   閲覧ユーザー数:6826

はじめに

 

この作品はオリジナルキャラが主役の恋姫もどきな作品です。

 

原作重視、歴史改変反対の方

 

ご注意ください。

 

 

虎牢関の城門が倒れると同時に飛び込んだ影

 

その姿に覚えのあった雪蓮は舌打ちをする

 

先を越されたと

 

追い越さんと前に出ようとするものの

 

彼女等の前に躍り出た袁紹が部隊

 

彼等はたった一つの城門に押し寄せ

 

人の壁を構築する

 

その数三千

 

一度に通らんとするには

 

門はあまりにも狭すぎた

 

「邪魔よ!退きなさい!」

 

掻き分ける事も出来ず只管に押し続ける雪蓮達

 

そして

 

「押し返せえ!」

 

内側から彼等を押し返さんと押し続ける董卓軍

 

間に挟れ、両側から押され続ける袁紹軍、斗詩

 

「あだだだだ!マズイ!これはマズイ!」

「潰れる!」

「ちょ押すな~」

「何か出る!内臓的な何かでちゃううう!」

「やっ!ちょ!?誰ですかどさくさに紛れて私のお尻さわ…だめっ!だめえええええ!」

 

諸々の叫びを呑み込み、城門内は騒然としていた

 

 

「月殿ぉ!其処から降りてきて話をしませんか?」

 

城壁の上、そこに更に建てられた櫓の上に立つ月を見上げ、比呂は声をかける

 

赤兎に跨り飛び込んだ直後、比呂を取り囲んだ兵を片っ端から殴り飛ばし

城壁の上に通じる階段を昇り詰め、やはり城壁の上でも飛び掛かって来た兵達を殴り飛ばし

ようやく…比呂は月の下まで辿り着いた

 

それまでずっと遠く…反董卓連合の本陣を見据えていた月が、ようやく視線を自分の足元に移す

声をかけてきたのが比呂だと気づき、一瞬瞳を大きく見開いた月だったが

 

「お話があるならどうぞ此処まで『お上がりください』…私は『下りません』ので」

 

柔らかな笑みと嫋やかな口調で切り返す

 

「まいったな」

 

ぽりぽりと頬を人差し指で掻く比呂

あれは覚悟を通り越して頑固になってしまった顔だ

 

苦笑いをする比呂に月はどうぞと手招きをする、その様に肩を落とし比呂は梯子に手をかけた

 

「ふう、高いですな此処は」

 

冷や汗を浮かばせ、月に手を貸してもらい櫓の上に立つ比呂

彼の様子に月はふふふと小さく笑う

 

「比呂さんにも苦手な物があったんですね」

 

月のさも可笑しいという口調に比呂も連られて笑う…若干引き攣りながら

 

「誰にもそういう物はあるでしょう?俺は偶々高い所が苦手なだけであって…」

「ふふふ、御免なさい」

 

口元を手で隠しながら月は笑う、比呂が言い訳をするのが可笑しくてたまらない

まるで此処が戦場であることを忘れてしまう程に

知られたくなかった一面を知られてしまい、仏頂面になる比呂を横に月は「んんっ」と咳払いをし

 

「それで…どういったご用件でしょうか?」

 

柔らかな笑み…しかし目は笑っていない

月の瞳に映る比呂は敵であると…だが、そんな彼女の視線も何処へやら

比呂は遠く、それまで月が見つめていた自軍の本陣を見据え

 

「此処から…『何』を見ていたものかと思いましてね」

 

スッと視線を地上から空へと移し、視線の先の雲に手を伸ばす

 

「此処からなら…届きそうな気がしたのですが」

「…」

 

比呂の見つめる先を連られるように見上げる月

 

 

「何も…届きません」

 

暫しの沈黙を破った月の声…だがそれはとても弱弱しく、風の音にかき消されてしまいそうなほど

 

「どんなに高く登り詰めても…私には何も出来ません」

「…」

「ただ…其処にいるしか出来ないんです」

 

俯き、服の裾を握り閉める月

そして再びの沈黙…風の音だけが耳元を通り過ぎる

 

「そう言えば…母親になられたとか?」

 

沈黙を破った声にびくりとし、顔を上げれば比呂が優しげに微笑んでいた

 

「如何でしたか母親というのは?大変だったでしょう?」

 

裾を握っていた月の手を優しく握り、比呂は問いかける

 

「それは…もう…大変でした」

 

儚げに、しかし充実感あふれた笑みを返す月

 

「私はその…お、おっぱいが出ないので乳母さんにお願いしていたのですが、その他は全部自分達 でやろうって」

 

 

 

「恋?何をして…」

「…恋もおっぱい出す」

「恋殿…お乳は赤ちゃんを生まないと出ないのです」

「???」

「あああ!ウチにち〇こが付いてれば恋に赤ちゃん産ませてやれたのにぃ!」

「やめなさい!このど変態!」

 

 

「だからぁ!涎掛けは赤やぁゆうてんねん!」

「何を言うか!漆黒の黒こそ帝にふさわしいのだ!」

「あんた達いい加減にしなさい!しょっちゅう洗うんだから白に決まっているでしょ!」

「セキトにも涎掛け…」

 

 

「へえ…大分手馴れてきたじゃない?」

「うむ、おしめ替えの手捌き…見事に御座います」

「大したもんやなあ」

「へうう、そんなに誉められても…」

「…って!?ちょっと月!どんだけグルグル巻きにするつもりよ!?」

 

 

「今日は私の出番でしょうが!」

「何ゆうてんねん!ウチと入るに決まってるやろ!」

「たまにはねねにもやらせて欲しいのですぞ!」

「皆で入ればいい…お風呂」

「そうですね♪」

 

 

「なかなか寝付いてくれない子で、一晩中あやしていた事もあって…政務の時間に寝てしまう事もしばしばあってしまって」 

 

「毎日があっという間に過ぎて、でもいつも明日が待ち遠しくて…」

 

「こんな日が…いつまでも続けばいいと思っていました」

 

「洛陽復興…その事よりも…あの子の事だけが心配で」

 

 

いつしか比呂は月を抱きしめていた

腕の中から聞こえてくる嗚咽が誰にも聞こえないようにと

 

「逃げませんか?」

「え?」

 

月の髪を優しく撫でながら比呂は問いかける

 

「俺と一緒に月殿の『家族』を連れて…此処から逃げてしまいませんか?俺の村などはどうでしょう?山間の静かな村です。自分達が必要な分だけ作物を育て、狩をして…日々をのんびりと過ごす。悪くはないでしょう?」

 

歌うような比呂の声に、月はその情景を思い描く

 

「でも私…野菜を育てたことなんか…」

「大丈夫ですよ…子育てよりはうんと楽です。俺が土を掘り返します…貴女はそこに…種を撒いてくれればいい」

 

優しい、どこまでも優しい比呂の声…だが

 

「ありがとう御座います…でも」

 

比呂の瞳を見ればわかる

 

 

 

彼にはもう…ずっと

一緒にそうしたいと願う人がいるのだと

彼の願望は私ではなく別の人

 

 

 

すっと比呂から離れる

 

「もう…戻れませんから」

 

腰の剣を抜き…比呂に向ける

 

「もっと早くに…貴方に出会えていればよかったのに」

 

瞳から一筋の雫が流れ落ちた

 

 

あとがき

 

此処までお読み頂き有難う御座います

ねこじゃらしです

 

アツいですね~ネカフェなので温度調節が自分勝手に出来ないのが辛いです。

 

さてぼちぼち今回のオチに向けて進まねば

 

それでは次の講釈で


 
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