「え・・・?カイ・・・ン・・・・・・?」
チロは言葉を失った
「そんな・・・冗談でしょ・・・?」
ジャルスは疑った
「はわ・・・はわわわわ・・・・・・」
サイは混乱した
ただ一人クロだけは黙して思案していた
「・・・・・・・・・」
(あいつがこの国の重要どころを担っているとは思っていたが・・・
まさか、リノミア王そのものだったとはな・・・)
「にゃははー!!
その驚いた顔!!
それだ!!それが見たかったんだよ!!」
玉座に座っていたカインは立ち上がり哄笑した
「オレ達を騙して何が面白い!!」
それを聞いたチロがいきり立った
「面白いに決まってるじゃないか!!
最高のエンターテインだ!!
それに・・・オレは一言も嘘はついてないぜ?
リノミアに住んでるし、この城で働いてる」
「で、お前は何をたくらんでるんだ?」
クロが冷静に尋ねる
それに対しカインは朗らかに笑いこう言った
「にゃはは・・・
何もたくらんでなんか無いさ
ただ、こうしたほうが盛り上がるから身分を隠してただけだ」
「そんな言葉が信じられるとでも思っているのか!!」
クロも立ち上がり剣を構えた
「クロ様」
そんなクロを遮るようにジャルスが名前を呼んだ
「残念ながらカインの言葉は本心です
本当に私たちをからかっているだけですわ」
ジャルスの言葉にクロが剣を収めた
「お前がそう言うのならばそうなんだろう」
ジャルスは他者を翻弄することを得意とすることから他者の嘘を見抜くことに長けていた
「おい、クロ!!良いのかよ!!こいつはオレ達に嘘をついてたんだぞ?!」
「にゃはは・・・
チロ君、事実の隠蔽は嘘とは言わないんだぜ?」
「もう良いチロ・・・お前は黙っていろ
お前が腹を立てるたびあいつを楽しませるだけだ」
「黙ってろだと?!」
いらついていたチロの怒りの矛先がクロに向いた
「にゃははー!!本当におまえらは面白い!!」
もう4度目となるクロとチロのやり取りをカインはニヤニヤしながら観戦していた
「はぁ、どうもカインは私に近しい性格のようね・・・」
「お?嬉しいねぇ!こんな美人と趣味が合うとはね」
カインはおどけたように手を叩いて喜んだ
「あら?近しいとは言いましたけど、趣味が合うとは言ってませんわよ」
「ん・・・?どういうことだい?」
「私はこんな城を造るほど趣味は悪くはないって意味ですわ」
ジャルスの一言にカインが固まった
「ハハハ・・・シュミガワルイ・・・・・・」
目は焦点があわず、何処か遠いところを眺めていた
「ね、姉さん・・・失礼・・・です・・・・・・」
サイの一言にカインの目に光が戻りかけた
「こんな猫でも・・・一応・・・王様・・・なんですから・・・・・・」
そして次の一言でカインの心は音をたてて崩れ落ちた
「ハハハ・・・コンナ・・・イチオウ・・・・・・」
ジャルスはその目に光るものを見た
「あわわわわ・・・そ・・・そんなつもりじゃ!!なかったん・・・です・・・・・・」
サイは再び混乱した
そんなサイを眺め、込み上げる鼻血と戦いながらジャルスはぼんやりと考えていた
(意外に気にしてたのね・・・)
そんなカインに今までチロとにらみ合っていたクロが追い打ちをかけた
「そんなことはどうでもいい
今日は頼みがあってきたんだ」
「ハハハ・・・ソンナコト・・・・・・」
カインは現実でも玉座から崩れ落ちた
しばらくして、心を粉々に砕かれ再起不能かと思われたカインが急に顔を上げた
先ほどまでの枯れ切った表情は消え失せ、出会った頃のような不敵な笑みが戻っていた
「そうだったね
まぁ、大体想像はつくけど・・・用件は何だい?」
「暗黒魔獣について知っている情報があったら開示してもらいたい
もしなければ、調査をお願いしたい」
クロが要件を簡潔に告げると、案の定チロが食ってかかった
「だから何でお前が仕切るんだよ?!」
「お前に任せていると夜が明けるからだ」
「なんだと?!」
「にゃははー!!流石に五回も見せられると飽きるよ
それより今は案件のほうが重要なんじゃないか?」
カインの言葉にチロは口をつぐんだ
「それで、先ほどの提案は受けてもらえるのか?」
クロが再度尋ねるとカインはあっさりと答えた
「まず第一の案件の暗黒魔獣については、今お前らが知っている以上の情報は持ってないな」
「なるほど・・・で、二つ目の案件についての回答を聞きたいのだが」
クロが再び促すと、カインはまたもやあっさりと答えた
「一言で言うと・・・承諾・・・だ!!」
カインのあまりにも簡潔過ぎる答えに一同の声がハモった
「「「「・・・・・・・・・は?!」」」」
「い、いや・・・そんなにあっさり・・・」
チロは戸惑い
「やはり何か裏があるのか・・・」
クロは疑い
「はぁ・・・」
ジャルスは呆れ
「・・・・・・・・・」
サイは混乱の末、言葉を失った
「クロ君」
不意にカインに名前を呼ばれたクロはとっさに反応できなかった
「このリノミアが何で発展してきたかは覚えてるよな?」
「・・・貿易と・・・技術開発・・・・・・
ま、まさか!!おまえまで利用しようというのか!!あの忌まわしき獣を!!」
クロが声を荒げた
クロの言葉に他の3匹もいきり立った
そんな4匹をよそにカインは言葉を続けた
「そう、技術開発だ!!
こんな面白い研究を他に任せられるか!!
オレはこの世のすべてを解明して見せる!!
なぁ、楽しいだろ?
ワクワクするだろ?
一つ謎を解明するたびオレ達はさらなる高みへと飛翔できるんだ
高く!さらに高く!!
もっともっと進化できると思ったら楽しいだろ?
ハッハー!!」
少年のように目を輝かせながら語るカインに4匹は少し
訂正、かなりの心の距離を感じていた
((((うわー・・・ついていけねー・・・・・・))))
心なしか物理的にも距離を取っていた
そんなバカなやり取りをしていたその時、突然窓のガラスが砕け散り何者かが室内に侵入してきた
いち早く反応したのはクロだった
「誰だ!!」
叫ぶと同時に抜刀し、侵入者に斬りかかった
侵入者は素早く剣を合わせクロの剣を斜めに受け流した
クロはその勢いで壁に激突し気を失った
「クロ!!」
「クロ様!!」
「クロさま!!」
三者三様に叫びチロは侵入者に相対し、ジャルスとサイはクロの元へ駆けて行った
「よくもクロを!!誰だお前は?!」
「俺の名前はエン=グリフトル・・・
カイン=ハルバードを殺すものだ」
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ただ一言謝りたい
ごめんよ・・・クロ・・・・・・