今日という日を焼き付ける。
夕暮れが近づいた5時すぎ、私は携帯電話だけをもって部屋を出た。
街の何もかもが夕陽を浴びて、長い影を作っていた。
夏の終わりを感じさせる風が吹いた。街路樹の葉がささやくような音をたてた。
空気の匂いや、車のクラクションの音、オレンジ色に光る宝物のような街の風景を
私は私に焼き付けていく。
そして、愛しむようにシャッターを切るのだ。
携帯電話のカメラ機能を使った安い写真だ。
しかし、そんなことは大きな問題ではない。
最後に紅く染まる西の空を撮った。
いつか、あの人にも見せてあげよう。
「これが、君への想いが通じた日の夕陽です」。
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掌編というにもあまりに短い。