「一人でこの風景を見るのも、もう5年目か……」
俺は酒を注いだお猪口を、ちびちびと飲みながら桜舞い散る木にもたれ掛かり、その風景を眺めていた。
「ここも何一つ変わらないな、本当あの時のままだな……」
5年前と変わらないのに、あいつだけがいないこの風景に何ともいえない感情に襲われ、気づいたときには、眼から涙がこぼれだしていた。
しばらく声を押し殺して、ただただ涙が止まるのを待っていた。
気分が落ち着いてから、一年間の報告をするため、そこにいない、あいつに向かって語りかけるように話し始めた。
印象に残っている事から本当に些細な出来事まで、できるだけ長く詳しく話していた。
まるで今の時間が終わる事を恐れているかの様に話すことを途切れさせぬように話し続けていた。
だが、話しをすることもいつしか無くなっていき、恐れていた沈黙が訪れる。
それを誤魔化すように、お猪口に入っていた酒を一気に飲み、酔いに浸っていた。
ふっと桜を見上げた時に、風が吹き、枝が揺れたのがまるであいつが笑ったように見えて、少しだけ気分が軽くなった気がした。
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短編と言えないほどかなり短いです。
数行の文ですがよろしければ暖かい目で見ていただけると幸いです。
駄作でもし想像をふくらませてくれたらうれしいです