No.138549

『舞い踊る季節の中で』 第32話

うたまるさん

『真・恋姫無双』の二次創作のSSです。
明命√の作品となります。

連合軍結成後、出陣を前に一刀は覚悟を決めた。
だけど、その背景には、悩み、苦しむ姿があった。

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2010-04-25 00:12:15 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:20133   閲覧ユーザー数:14365

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』

  第32話 ~ 伝わらぬ想いに舞う心 ~

 

 

(はじめに)

 

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

        :●●●●

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(ただし本人は無自覚)

         気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

         神の手のマッサージ(若い女性には危険です)

 最近の悩み:最近、二人の様子が、また変わってきた。 時折ボーとするのは相変わらずだが、よく目が

         合うようになった。 これだけなら、特に問題は無いのだが、その瞳に、何か熱いものを

         感じる。ぶっちゃけ、艶を感じるのだ。 以前二人に感じた時は、その何というか、妙な

         雰囲気に陥ったり、明命が無邪気に抱きついてきた時だったのだが、最近は、只、其処に

         いるだけで、感じる事が増えてきた。・・・・・・うん、とりあえず寝る前にしっかりと舞いを

         練習して、雑念を追い払う事にしよう。

         それにしても、女の娘って、こうも短期間で変わっていくものなのかなぁ? それと、こ

         うも変わってきた原因はなんなのだろう? うーん、分からん、よし今度思い切って聞い

         てみよう。

  (今後順序公開)

 

★オリキャラ紹介:

諸葛瑾:

  姓 :諸葛    名 :瑾    字 :子瑜    真名:翡翠

  武器:"双天" 対の双剣

  武力:52(平均的な将を60とした場合)

  智力:81

  政治:89

  家事:92

  魅力:想像にお任せします(w

  焦った時の口癖:『 あうあう 』又は 『 ぁぅぁぅ 』等の類語です

  性格:基本的に温厚で、外見に反して大人の女性

     だが、焦ると地が出てしまう。(朱里と違って、自分を律しています)

     警戒心が強い性格だが、一度心を許されると、親身になってくれる。

     妹がいるため、基本的には面倒見が良く、放っておくと、食事を取るのを忘れる明命を心配してよく

     食事を差し入れていた。

     やはり、妹がいるためなのか、時折人をからかって、その反応を楽しんだり、とんでもない悪戯を仕

     掛ける悪癖もある、だが性質の悪い事に普段が完璧なだけに、周りは怒るに怒れないでいる。

     家事全般は人並み以上に出来、そこらのお店以上と自負していたが、丹陽で知り合った男性の腕を見

     て自信を喪失。 以降こっそり腕を磨いているが、全然敵わないと嘆く毎日を送っている。

     武術は好きではないが、妹達を変態共から守るため、必要最低限身に付けたもの。

     姉妹揃っての発育の悪さをコンプレックスに思いつつも、それを武器にする強かさを持っている。

     自分を子供扱いしない男性が好みだが、言い寄ってくるのは変な趣味の持ち主ばかりで、17の時、現

     実の男(変態の多さ)に愛想が付いた時に『八百一』と出会う。 以降のめり込み、妹達を洗脳する

     も、基本的には周りには秘密にしている。そのうち執筆も行うようになり、掲載されるようになる。

     数年たった現在では、定期的な愛読者もつき『八百一』の主要作家の一人となっている。

     黄巾の乱後、作品が益々洗練され、世に愛読者を急増させる要因となった。

明命(周泰)視点:

 

 

街を出立して、何日も経ちました。

行軍自身は順調で、私は各地に飛ばした部下からの報告を纏めながら、穏やかな日々を過ごしています。

 

「・・・・・・穏やかですか・・・・・・はあぅぅ・・・・・・」

 

そう、順調過ぎた行軍とは裏腹に、私の心境は決して穏やかではありませんでした。

祭様の励ましもあって、私は一刀さんと、より親密になろうと、試行錯誤しました。

ですが、うまくいきませんでした。

例えば、

 

行軍初日、夕刻:

 

 

私は、一刀さんの姿を探しましたが、幾ら探しても見当たりません。

そうこうする内に、夕食の時間になり、あまり遅くなっても、当番兵に迷惑をかけるので、一刀さんの分を残しておいてもらおうと向かうと、何故か、当番兵達と一緒に給仕をしている一刀さんの姿がありました。

 

「か・一刀さん、ここで何してるんですかっ」

「あっ、明命どうしたの? そんな驚いた顔をして」

 

私の言葉に、一刀さんは、意味が分からないとばかりに、此方を不思議そうな顔をされます。

 

「なんで、一刀さんが、給仕をしているんですかっ」

「いや、やっぱり、どうせ食べるなら美味しい方が良いだろうし、なんか手持ち無沙汰だったしね」

 

なんて、暢気な事を言ってきます。

どうやら、一刀さんは、ずっと当番兵と一緒に、此処で夕食を作っていたようです。

どうりで、他を幾ら探しても見当たらないわけです。

美味しい食事という意見には賛成ですが、行軍中、一刀さんにそんな真似はさせるわけにはいけません。

 

「とにかく、当番兵みたいな真似は、今すぐやめてください。

 将たる一刀さんが、そんな真似をされては、兵の士気にかかわります」

 

私の強めの言葉、と言うか将という言葉に、周りの兵が、驚きの顔で一刀さんと私の顔を、交互に見ています。

当たり前です。 行軍中、将が下級兵と同じ食事を食事を取ると言うのは分かります。 現に私達将も、同じ内容のものを食べています。

ですが、平時ならともかく、行軍中、将自ら兵達のために食事を作るなど、聞いたことがありません。

そんな事をすれば、将は舐められ、士気にかかわるからです。

 

「どうしたの明命、そんな大声出して」

「しぇ、雪蓮様、冥琳様、その、これは、あの・」

「あら、今日は一刀が作ってるの?」

「成る程、そう言う事か」

 

一刀さんを止めようとしていると、食事を取りにきた雪蓮様達が、給仕をしている一刀さんに気がつかれてしまいます。

 

「北郷、お前が以前、行軍中に食事を作ったと言う話は聞いている。

 だがあれは、戦の決着後の朝だから、兵達への労いと言う意味で許された事だ。 普段よりこのような真似を

 されては軍紀に影響する。 美味しい食事には感謝するが、このような事は、はっきり言って迷惑だ」

「えーー、美味しい食事の方が「雪蓮っ!」・・・・そんな怖い目で睨まなくたって、分かったわよ」

 

一刀さんは、私達に謝罪の言葉と頭を下げ、この場を去っていきます。

 

「あらら、北郷さん行っちゃいました~。 せっかく一生懸命美味しいお夕飯を作ってくれたのに、

 冥琳様~、少し強く言いすぎではないでしょうか?」

「あれが、本当に一生懸命なだけなら、ああいう言い方はせんよ。 穏、お前はもう少し、気を許した仲間に

 対しても、目を磨く事だ」

 

 

 

 

 

二日目:

 

 

昨日は、一刀さんのせいで、一刀さんに迫る雰囲気ではなくなってしまいましたが、今日こそはと、部下への指示を早く終わらせ、一刀さんを探しますが、今日は直ぐに見つける事が出来ました。

一刀さんは、穏さんと、なにやらお話をされているようです。

私が近づくと、一刀さんは、目の前の焚き火に掛けてあった薬缶で、お茶を煎れてくれますが、すぐに穏さんとお話の続きをされます。

 

「・・・・・・このような陣形を布かれた時、北郷さんならどう動きますか?」

「状況の設定は、前回と同じで良いんだね?」

「はい、ただし、相手の将は前々回と同じとしましょう」

「そうだね、なら、六:三:一に分けて、六を方形陣に組んだ後、距離800で鶴翼の陣に変えて、相手を待つ

 かな」

「ほえっ? でも、この兵数ですと、簡単に突破されちゃいますよ~」

「良いんだよ、突破されても、と言うか態と突破させるんだ」

「あぁ~、成る程~、前回この将は、策に嵌って隊を分断された挙句に、各個撃破されていますから、疑心暗鬼

 にさせるんですね。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・実はその三は囮で、囮と見せかけた本体が、浮き足立った

 相手を叩くと言うわけですね。 あれ、でも残りの1は?」

 

穏さんの、言葉に一刀さんは、地面に書かれた地図の中、幾つか並べられている小石から離れた場所を、手に持つ扇子で場所を示し、

 

「状況は前回と一緒と言ったろ?、なら此処で・・・・・・・・」

「えーーーーーーっ!、そんなのずるいですーっ、せっかくの勉強会なのですから、真面目に考えてもらわない

 と困ります」

「十分真面目だって、実際やったら、相手はどう思う?」

「・・・・・・あぁ~~、やっぱり、引っかかっちゃうでしょうねぇ~、完全に意識の外にある出来事を、そんな場所

 でやられたら、意識がどうしてもそっちに行っちゃいますね~」

 

一刀さんと穏さんは、どうやら、仮想の敵と状況を設定して、戦術の勉強をしているようです。

穏さんは、一刀さんの戦術や考え方が面白い様で、一刀さんとの勉強に夢中です。 そして、穏さんはこうなるとなかなか止まりません。

 

・・・・・・・・・・・今日はどうやら諦めた方がいいようです。

 

 

 

 

 

三日目:

 

 

一刀さんが、食事の準備をする事は無いはずです。

穏さんは、先程蓮華様に呼ばれていたので、問題ないはずです。

三度目の正直と言います。 今日こそは、一刀さんとゆっくりお話をします。

 

 

「そうだ、南の方に行くと、其処では飲み水の確保が困難で、川の水は毒水とも呼ばれ、飲んだ者の何人かが、

 腹痛や下痢などの症状に苦しまされる」

「あぁ、そう言う事か、それは単に水の中に目に見えない虫や、いろんな成分・・・・・・えーと、とにかく体に良く

 ない泥が混ざっていて、それが原因でそういった症状がでるらしいんだ」

 

冥琳様と一刀さんが、なにやら話しこまれています。

正直、珍しい組み合わせです。

そして一刀さんの言葉が途絶えた時を見計らって、冥琳様は

 

「すまんが、今、北郷と大切な話をしている。 少し貸してもらうぞ」

「あのー、何のお話を?」

「なに、行軍中に起こる病気や、怪我の応急処置や、予防について簡単に纏めたものを書いていると聞いてな、

 そこで、比較的起こり易い状況や症状を話して、書く内容の検討材料にしてもらっている。 これが完成して

 軍内に広めれば、兵の損失を大きく減らす事が出来るし、病気など士気にも大きく影響をうける事態を、回避

 しやすくなる」

 

冥琳様は話の内容を簡単に説明してくれます。

たしかに、病気や怪我を減らせる事が出来れば、兵を増やすのと同等、いいえそれ以上の戦力の増強になりえます。 なにより、一人でも多くの兵を家族の元へ帰す事が出来ます。

 

「周瑜一応、道中の携帯用って事なんだけど・・・・・・」

「同じ事だ。 むろん北郷の言うとおり、庶民にも広める事は約束しよう。 だが広めるにしても、軍で実績を

 上げてからの方が、広めやすい事には変わりない」

「まぁ、結果的に広まれば、俺としては問題ないけど、 で、さっきの対策としては・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

一刀さんと冥琳様は、真剣に話し合われます。

私は、邪魔をしては悪いと、その場を離れる事にしました。

 

 

 

 

 

四日目:

 

 

き・今日こそは、一刀さんとゆっくり話をして見せます。

右拳を胸の前で握りながら、心に誓っていると

 

「明命ちゃーん、ちょっとお願いがあるんですが良いですかー」

 

穏さんが、いつものゆっくりとした話し方で、話しかけてきました。

 

「何でしょうか?」

「はい~、今から、明日合流予定の賀斉様の軍を、お出迎えに行って欲しいんですよー」

「えっ、今からですか? それに何故、私なのでしょうか?」

「ほら~、賀斉様って、前回明命ちゃんに会った時、えらくお気に入りの様子でしたから、明命ちゃんが行っ

 たら喜ぶかなーって思って」

 

穏さんの言葉に、賀斉様に会った時の事を思い出します。

賀斉様は祭様より御年配ご婦人ですが、旧臣の一人で、かなり気難しい方です。

ですが、何故か私を猫っ可愛がりをし、前回もその豊満な体で抱きつかれ、窒息しかけた事もあるくらいです。

そう言う訳で、穏さんが仰られる事も分かるのですが・・・・・・

 

「あのー、他の者ではいけないのでしょうか?」

「えーーと、申し訳ないんですが、 明命ちゃんに、そう言われると思わなかったものですから、もう先触の

 使者を送っちゃいましたぁ・・・・・・もしかして、用事がありましたか?」

「いえ、いいです、そう言う事なら、其方を優先させるべきですから・・・・・・」

「明命ちゃん、申し訳ありません」

 

穏さんが、申し訳なさそうに言う姿を余所に、私は肩を落として、任務に向かう事にします。

 

 

 

 

 

連合到着前日:

 

 

そんな訳で、なんやかんやと邪魔が入ったり、

そういった雰囲気になれなかったり、

急な仕事が入ったりで、

一刀さんと、落ち着いた雰囲気になる事が出来ないまま、明日には、もう連合に合流してしまいます。

そして、今日は、珍しく一刀さんは一人です。

・・・・・・で・・も・・・・・・

 

「どうしたのだ明命、そんな顔をして」

「思春様っ、いえ、あのこれは、その」

 

思春様に心を見透かされたようで、思わず慌ててしまう私に、思春様は小さく溜息をつかれ

 

「北郷のところに行かなくてよいのか? 今日は、誰も邪魔するものはおるまい」

「きっ、気づいていられたんですかっ!?」

「あんな、悩ましげに、あの男を見ておれば、気がつかぬわけあるまい」

 

思春様の言葉に、私は顔が熱くなるのが分かります。

ですが、そんな私を思春様はからかう事もなく、落ち着くのを待たれてから、

 

「もっとも、あの張り詰めた様子では、想いを告げるのは、よした方がよかろう」

「・・・・・・・・はい、私もそう思っていた所でした」

「だが、ああなる前、今までとて、この時間帯以外にも機会があったはず」

 

思春様の言葉に、私は首を振ります。

昼間は、任務中と言う事もありますが、周りにあれだけの目があれば、個人的な会話など、とても出来ません。

それに、雪蓮様達に、色々教えを受けているようですので、邪魔をするわけにもいきませんでした。

 

そして、夜は・・・・・・

 

 

 

 

二日目の夜中:

 

 

一刀さんが、寝る少し前の時間帯を利用してお話しようと、一刀さんの天幕に向かうと、一刀さんはまたもや、いませんでした。

一体こんな時間に何処に行かれたのか心配にもなったので、姿を探すと、陣から少し離れた所で、舞を舞われていました。 私はその姿を見て、邪魔をしては悪いと思い、様子が分かるぎりぎりの所で眺める事にしました

一刀さんが舞われているのは、何時か見た悲しい舞です。

一刀さんは以前、裏舞踊と言っていました。

 

そして、今はあの時以上に、悲しく、そして、危うい感じがします。

いえ、正確には違います。前以上に何も感じないのです。

舞は美しく、心を奪われそうだというのに、心に残るのは虚、

そして、確かに其処に居ると分かるのに、存在が希薄なのです。

只、そのあり方が、私には、何か危ういと思えてしまうのです。

 

一刻も経った頃、一刀さんは扇子を閉じます。

終わったのかと思ったら、今度は、何も持たずに舞われます。

更に半刻経った頃、ふと妙な事に気がつきます。

一刀さんの周りの地面が、前より平らになっている気がします。

気のせいでしょうか?

 

そして、やがて舞を終えたと思ったら、少し離れた所に何かを取りに行き、それを地面に差していきます。

どうやら、木の枝か何かのようですが、それを自分の周りを囲むように差しています。

やがて一刀さんがその中心に立つと、再び舞を舞われます。

 

ですが、その光景は驚愕するものでした。

一刀さんの立つ位置から、離れた所に差してある木の枝が、次々切断されるのです。 次々と宙に舞うのです。

順番は無いようですが、木の枝は隣り合ったもの同士が、同時に切断される事は無く、隣にあった枝は次の瞬間には宙に舞っているのです。 そして、宙に舞った枝は地面に辿り着く前に、再び引っ張られるように、宙を舞うのです。

 

やがて、地面に差した枝の半分は切断され、残り半分は、一刀さんの周りを飛び交っています。

その数はおおよそ三十、・・・・・・・・そして、それも次の瞬間には、全て空中で真っ二つに切断され、地面に落ちて行きます。

そして、一刀さんは、そのまま、そんな事なかったかのように、舞い続けます。

 

そんな不可思議な光景に、私は驚き、目を凝らしていると、

時折、一刀さんの周りを月光を受け、何かが光っているような錯覚に陥りました。

そして、月光に照らされた一刀さんの表情を見て、

私は、これ以上、見ていては行けないと感じ、その場を後にします。

 

 

 

 

 

連合到着前日:

 

私の表情に、思春様は、私の気持ちを察してくれたようです。

目を瞑り、数呼吸した後、

何時も以上に厳しい目を私に向け

 

「あいつは、今、将ならば通らなければいけない道を通っている。

 そんな時、色恋沙汰を持ち込めば、あいつは道を間違えかねん」

「・・・・・・・・・なんとなく、気がついていました」

「・・・・・・なら、今回の行軍中、そう言う事を持ち込むのは止めろっ。 あいつがどういう道を選択するにしろ、

 今回は、もうそれ所で無くなる筈だ。 それが分からないお前ではなかろう」

「はい・・・・・」

 

思春様の言葉に、私は胸を締め付けられます。

分かってはいました。

一刀さんの心境が、本当はそれ所では無い事に・・・・・・、

そして、それが日に日に強くなっていた事に・・・・・・、

それでも、昨日までは、一刀さんの力になるのではと思えていました。

でも、今日は、完全にそれ所では無くなっています。

 

一刀さんは自分で気がついていないようですが、そう言った事情もあって、今日は誰も近づきません。

雪蓮様が、見かねて、何とかしようと近づこうとしましたが、冥琳様に引っ張っていかれました。

これは、一刀さん自身が、乗り越えなければいけない事だからです。

・・・・・・・・だから、私も一刀さんに近づく事が出来ません。

 

一刀さんが、悩み苦しんでいるのに、私は何も出来ません。

その事が、とても悲しく、そして悔しくて仕方ありません。

只、こうして、拳を握り締めて、見守る事しか・・・・・・

 

「・・・・・・はぁーー、・・・・・・明命、私は最初に聞いたはずだ。 北郷のところに行かなくてもよいのかと」

 

何も出来ない自分を恨んでいると、思春様が大きく溜息をつかれ、そのような事を言われます。

 

「明命は、あいつのために何も出来ないと、勘違いしているようだが、それは違う」

「えっ?」

「あいつが、雪蓮様を襲った後、お前はどうした」

「えっ?」

「無気力に地面に座り込む、あいつを、どう立ち直らせた」

「・・・・・・・・・・」

 

思春様の言いたい事を悟った私は、思春様の話を黙って聞きます。

 

「只、傍に居るだけで、人は強くなれる」

「・・・・・・・・・・」

「家族の温もりが、絶望から救う事もある」

「・・・・・・・・・・」

「今あいつに、北郷に必要なのは、逃げ込む場所ではなく、守るべきものを自覚させる事ではないのか」

「・・・・・・・・・・」

 

思春様は、其処まで言うと、私に背を向け、

 

「・・・・・・・・・・後は自分で考えろ」

 

そう言って、この場を後にされます。

 

「ありがとうございます」

 

私は、去り行く思春様の背中に、そう言葉を掛け、一刀さんの方を振り向きます。

そうです、忘れていました。

翡翠様は教えてくれました。 落ち込んでいるとき必要なのは温もりだと、

祭様が教えてくれました。  うだうだ悩む前に、飛び込めと、

そして、思春様が思い出させてくれました。

今一刀さんに必要なのは、一緒に居る事だと、

そして、それは私の一刀さんに対する原初の想い。

 

だから、私は、一刀さんの背中に向かって飛び込みます。

 

「ちょっ、明命いきなり何を?」

「いいんです。 今日はずっとこのままで居ます」

「えっ、えっ? えーーーーーーーーーーーっ!?」

 

何時かのように、私は一刀さんを背中から抱きしめます。

恥ずかしいですが、とても心地よいです。

一刀さんの温もりを感じます。

一刀さんの匂いがします。

 

「みっ・明命、もうちょっと力抜いてくれないと、いろいろと当たると言うか・」

 

一刀さんが、顔を赤くして、何か言っています。

でも、今日の所は聞いてあげません。

この所ずっと邪魔が入ったんです。

だから、その分も含めてこの感触を楽しみます。

 

思春様は、ああ言われましたが、私は諦める気はありません。

一刀さんに、余裕が戻ったら、また挑戦します。

邪魔が入っても構いません。

何度だって挑戦して見せます。

 

 

この温もりを、離したくありませんからっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

こんにちは、うたまるです。

 

 

    第32話 ~ 伝わらぬ想いに舞う心 ~ を此処にお送りしました。

 

今回は、明命√に相応しく、明命視点のみのお話となりましたが、・・・・・・明命泣いていいよ さぁこの胸で(w

と思わず呟いてしまうような内容となりましたが、お楽しみいただけたでしょうか、

一応メインとしては、明命虐めの方ではなく、戦を前にして、無意識に気が張っていく一刀を、見守る事しか出来ない明命の苦悩を書きたかったのですが、上手く伝わったでしょうか?

そして、明命らしい、対処は書いていて微笑ましかったですが、今後もこの調子が続くのかもしれないと思うと、明命が不憫で仕方ありません・゚・(ノД`)・゚・ ・・・・・・・・・・・・早く何とかしてあげねば、

 

そして、行軍に参加しているにもかかわらず、今回も出番の無かった蓮華・・・・なんか本気で哀れになってきたなぁ

まぁ思春姉御のおかげもあって、一刀は平常心と、大切なものを思い出す事が出来ました。

毎回時間系列は、むちゃくちゃですが、こういう演出ですので御了承ください。

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。

 

 

 

 

 

PS:一刀が最後、何があたって焦っていたかは、読者の皆様のご想像にお任せします(w


 
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