No.137101

輪・恋姫†無双 二十話

柏木端さん

第二十話投稿です。
ちょっとこの段階で知られるとまずい設定があるんですが、どこまで書いても大丈夫なのかのさじ加減が分からず四苦八苦してます。
まあ、そんなことはさておき、二人目の正式参戦です。

2010-04-18 13:17:51 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1913   閲覧ユーザー数:1770

とりあえず、起き上がった少女うぐぅ(仮)に謝罪した祐一と桃香は、「それじゃあこれで!」とはならずに、

 

「ねえねえ!あれ、すっごく美味しそうだよ!」

 

「わ~!ホントだ!ねえねえ!祐一さん!!」

 

「あ~…うん、桃香もお前もコレで買ってきな。………………なんか、一気に俺に不利な空間が完成したな…」

 

行動を共にしていた。

 

きっかけは、祐一が投げ飛ばした時に持っていたのが彼女の昼食用に買った饅頭だったらしく、それならばと祐一が自ら昼飯くらいなら奢ってやる!と握りこぶしと共に宣言したことである。

 

おかしなくらい一生懸命走っていたから、食い逃げでもしたんじゃないのか?という祐一の邪推が先にあったことも影響しているのかもしれないが。

 

実際は座れるところに向かっていただけで、冷めないうちに食べたかったというだけの理由だったらしい。街で騒ぎがあった様子もないし、信じられる理由でもあったのでとりあえず納得した。

 

だが、

 

「なんでだ?……何で…“また”なんだ?」

 

二人に買いに行かせて一人になると、ほぼ毎回、一人思案にふける。

 

桃香にも少女にも、一緒に行こうと言われるがこの考えごとをする為にやんわり断っている。

 

思索の内容は、彼しか知らない。

 

 

 

「………なあ?桃香?」

 

「なに?祐一さん?」

 

時はすでに昼飯時を大きく回り、見回りに戻ったのであるが。

 

「この【名前不定の幼女・仮称うぐぅ】はいつまで俺たちの後ろをついてくる気なんだろうな?」

 

「いいじゃない!みんなでまわる方がたのしいし~」

 

「うぐぅ!ボク名前不定じゃないよ!」

 

「あれ、幼女にはツッコミしないのか?」

 

「…………うぐぅ…」

 

無意識だったらしく、改めて指摘されて一気にへこんだ。

 

祐一にとがめるような視線を向けながら桃香はとりあえず話題をそらす。

 

「そ、そう言えば自己紹介もしてなかったね~!ねぇねぇ!私は劉備っていうんだけど、君の名前はなんていうの?」

 

「えと…ボクの名前は……………って、キミがあの劉玄徳さん~!!?!?」

 

「ふぇ!?え…うん…そう、ですけど……どの?」

 

急にどなり声をあげた少女に若干引きながらも、何とか聞き返す桃香。“あの”とか言われたらさすがに気になるらしい。

 

「“あの”曹操さんと対等に接する義勇軍の総大将で、行く先々の不幸を薙ぎ払い、黄巾党の討伐の最大の功労者だっていう!」

 

「えええ~~!!?」

 

「なかなかいい感じに背びれや尾びれ、果ては胸びれまでくっついて広まったな。」

 

確かに曹操と一緒に転戦していたが、対等な関係だったとは言い難いものだった。

 

転戦中は確かに曹操との共闘によって行く先々で黄巾党をなぎ倒してきたが、着いた時には既に壊滅的な被害を受けた後だった集落もあった。

 

炊き出しなんかをしたこともあったが、もともとが曹操から提供してもらった糧食が大半だったので規模もたかがしれていた。

 

そして黄巾党の討伐における最大の功労者は、むしろ砦を落とすきっかけを作った孫策の方が大きいだろう。

 

それでもそんな噂がたったのは桃香が市井の出であったことや、転戦中の村々で着実に人望を勝ち取っていったことや、

 

祐一が桃香に無断で怪我により戦線離脱を余儀なくされた義勇兵に旅人や行商人の姿をさせて、桃香のいい噂を流させたことなんかを理由にあげられるだろう。

 

桃香は驚愕と恐縮でいっぱいいっぱいになっているが、祐一としてはこの結果は狙い通りなので割と平然としている。

 

だが、いつまでも桃香がこうまでビクビクしてるのは不味いのでさっさと話を進めることにした。

 

「俺は相沢だ。真名は祐一な。お前は?」

 

「え?え?真名…あれ?」

 

「気にするな。俺は初対面の相手でも気にせずに真名を名乗るタチなんだ。」

 

「そ…そうなんだ…じゃあ、えと、祐一君、でいいの?」

 

「ああ。んで【名前不定の幼女・仮称うぐぅ】よ、お前の名前は?」

 

「その呼び方はもういいよ!!」

 

 

「えと、その、ボクは~……うぐぅ…」

 

「何!?本当にうぐぅって名前だったのか!!?」

 

「違うよっ!」

 

「そ、そうだよ!祐一さん、からかっちゃだめだよ!」

 

非難しているはずなのに、祐一を直視できていないあたり、

 

「ならなんでどもったんだ?お前も、ついでに桃香も。」

 

桃香もうぐぅが名前だと思ったらしい。

 

「え、えーと…それは…ほら、あ~…うぐぅ…」

 

「わ、わたしのことはいいんだよ!ほらほら、お名前は?」

 

露骨に話題をそらす桃香。名前不定の少女うぐぅは観念したように名乗る。

 

「あ、あゆ…だよ。」

 

真名を。

 

「真名じゃないのか?それ。」

 

「そ、ソウダヨ?」

 

「真名じゃない方の名前は?」

 

「い、いいんだよ~…ま、真名を許した間柄なのに真名じゃない名前で呼ぶのは、え、えーと、やぼってやつだよ!」

 

「………」

 

「な、なにかな?」

 

「………」

 

「うぐぅ…何か言ってよ~」

 

「名前。」

 

「うぐぅ…わ、わかったよ……」

 

今度こそ、本当に諦めたように名乗る。

 

 

「何進…だよ………」

 

 

十常侍など宦官の姦計にかかった、元軍部最高権力者の名前を。

 

「「ええ~!!?」」

 

 

とりあえず、何進と名乗った少女・あゆを城まで引っ張ってきた。

 

そこで事情聴取。聞きだした話をまとめるとこんな感じである。

 

 

洛陽の近辺に黄巾党の残党が居るという報告を受けて、盗賊討伐が決定された。

 

普段は華雄や呂布が行っているそれだが、生憎と既に別の用事で洛陽をあけていた。あるいはそれも宦官が用意したものかもしれないが。

 

官軍の中でもほとんど交流を持っていない兵との、しかも普段はあまり自らでは行わない討伐ということもあり緊張しまくっていたらしい。

 

そういう段取りで進められた討伐だが、根拠地として報告されたのは森の中。

 

そして森の中を行軍して黄巾党の残党と会敵。……ここまでは、まだよかった。

 

そのまま戦闘を行っているうちに、気が付いたら彼女は囲まれていた。

 

盗賊と、官軍の鎧を着た数人に。

 

一騎当千の武力なんて持っていない彼女はひたすらに逃げた。

 

だが逃げている方向はもともと戦闘を行っていたのと真逆。

 

孤立無援の状態でついに全方向をとり囲まれた。

 

そんな絶体絶命の危機に雄たけびと共に颯爽と登場した者が!

 

夜の闇にまぎれてよく顔が見えなかったが体格のいい人間だったという。

 

いきなり登場して、その雄たけびに兵がひるんでいる間にその脇(だと思われる)に抱えられ、空を飛んで包囲を逃げ出したらしい。

 

何故助けたのかと聞いたところ、その返答は「心の優しい女の子をほおっておけなかっただけ」というものだった。

 

そして包囲を抜けて近くの村に下ろされて「洛陽は危険だから戻らないように」と、「妹も殺させない」と約束してすぐに去って行った。

 

それからは防具や武具を売り払って得たお金で安い服を買い、洛陽から離れる商隊に手伝いとして同行して、そして最近この街まで来たと語って過去語りは幕を下ろした。

 

 

「なんだ、その超かっこいいスーパーマン……」

 

「す、すっぱーまん?」

 

「……なんか絶妙な混ざり方したな…」

 

ドクタースラ○プででてくるおっさんと、リアルタイムで知らないくせに妙に懐かしい正義の味方と…

 

「まぁ、いいや、お前はこれからどうするんだ?」

 

「これから?」

 

「そ、このまま商隊にくっついて妹の情報探すのか、それともどこかに腰を落ち着けて何かすんのか。」

 

「え、えーと……」

 

特に何も考えてなかったらしい。

 

「ねぇねぇ!祐一さん!あゆちゃん私たちの所に居てもらえないかな!」

 

「え!?」

 

「まあ、本人次第だな。客将として警備隊でも率いてもらえば問題ないだろ。………というか人事は俺より桃香の分野じゃないのか?」

 

「ねえねぇ!どうかな!あゆちゃん!」

 

「ボク……強くないよ?」

 

「私も戦うのは苦手だよ!」

 

「……胸張って言うなよ」

 

「あんまり頭もよくないよ?」

 

「私もお勉強は苦手だけど……でも大丈夫だよ!」

 

「……だからなんでそんなに自信満々の素敵な笑顔でそんなこと言いきれるんだろう…」

 

「マメちゃん探してても怒らない?」

 

「うん!」

 

「……マメちゃんって何だよ…」

 

「何とかいわないでよ!妹だよ!真名がやまめっていうからマメちゃんだよっ!」

 

「……ああ、すまん。」

 

 

 

この後、主要なメンバーを集めて行った顔合わせでもう一騒動あるのだが。

 

まあそれは、別の話。

 


 
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