No.136736

恋姫異聞録50  -西涼の英雄-

絶影さん

今回も一寸短めです。

祝!50回!皆さんココまでこれたのは皆さんが読んでくれて
応援してくださったおかげです。本当に有り難うございます><

2010-04-16 21:40:05 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:13993   閲覧ユーザー数:11242

 

なんだったんださっきのは、舞王からだったのか?今目の前に居る男はあれほどの殺気を放つようには

全然見えない、優しさと暖かさしか気迫から感じられない・・・いや、そんな事はどうでも良いこいつに勝たなきゃ

 

馬超と対峙する男は、抱きしめる秋蘭を優しく地に横たわらせると腰から刀を二本抜き地面に突き刺す

 

地面に剣なんか突き刺してどうするつもりだ?噂で聞いた舞とかいうやつか?確か地面に大量の剣を

突き刺して、まるで剣の草原のようだったと聞いたけど、いや足は動かないはずだ舞うなんて

 

男は刺した二本の刀に踵をあわせて、刀をまるで足をその場に固定する為の楔のようにすると腰を落とし

更に輝く剣を一本拾い上げると剣の腹を盾のようにして構えた

 

「・・・何のつもりだ?それであたしの攻撃を防ぐつもりか」

 

「ああ、俺には躱せない、なら受け止めるだけだ」

 

「受けきれるものかっ!そんな剣を一本構えただけでっ!」

 

馬超の言葉を聞いてなお男は構えを解かず、その目には鉄のような覚悟を灯し、地面に根をはるが如く

ゆっくりと足を刀と地面に固定する

 

本気であたしの槍を受けるつもりだ、でもこの技はそんなんじゃ破れない、英雄の父様の槍だっ!

 

馬超も槍を構えなおし息を大きく吸い込み、細く絞る様に吐き出し、腰を低く先ほどの構えに移る

 

ふううぅぅぅぅ・・・何処を狙う?喉か?胸か?それとも腹か?何処を狙っても入りそうだけど相手はあの殺気を

放った奴だ油断しちゃいけない、もし防がれてもさっきと同じく連撃で石突を叩き込めば良い

 

打ち込む場所を定める為にゆらゆらと揺れる馬超の槍に対して男は微動だにせず、ただ剣を構え静かに

攻撃の時を待つ、男のあまりの落ち着きはなった様子に馬超の槍は狙う場所を定めることが出来ずにいた

 

よし胸だ、胸に突き入れる。今のあたしの攻撃なら穂先が無くても身体ぐらい貫ける、防がれたら石突で腹だっ

 

馬超の槍がぴたりと止まり、漏れ出していた殺気と気合を身体に押し込むと、必殺の一撃の力を溜め男の

胸に狙いを定める

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

馬超は男を睨みつけるが男はただ鉄のような意志をその目に灯すだけ、後ろで横たわる秋蘭を守るため

不退転の覚悟をその心に秘めて

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・シッ!」

 

馬超の短く吐く息が聞こえた瞬間、腕から先が消えたように加速し男の胸に向かい一直線に槍を突き入れた

 

ドズンッ!!

 

鈍い音が響く、槍の突きを見切った男は瞬時に胸の前で剣を盾にして防ぎ、馬超の攻撃を全身で受け止めていた

あまりの威力に地面に突き刺した剣ごと男の体をずらされ、耐える男の口からはバリバリと歯を食いしばる音が立つ

 

「なっ!止めたっ!くそっ」

 

馬超はそのまま止まらず、石突を喰らわせようと槍を回転させようとするが槍はまるで固定されたように動かなくなる

 

 

 

 

「えっ、こ、このっ!はなせっ!」

 

動かなくなった槍の先を馬超の目が捉えたのは男の両手、穂の無くなった槍の先をギリギリと握り

馬超の槍は口から血を吐く男に動きを止められてしまった

 

「・・・ゴボッ・・・はぁっ、はぁっ止めたぞっ・・・ここからだっ!」

 

男の眼は鋭く輝き、口元は笑みを作ると槍を更に握り締め、ズルズルと槍ごと馬超を引き寄せ始める

 

なっ!うわわわわっ!やばいっ、コイツなんでこんなに握力があるんだっ!あたしが引っ張られるっ!

 

武器を取られてしまうと思った馬超は足を踏ん張って止め様とするが、男の握力と腕力に引きずられる

 

「こ、このぉっ!」

 

目の前まで引きずられてしまった馬超は槍を手放し男の顔を殴りつけるが今度は男に腕と胸倉をつかまれてしまう

体の動きを完全に止められた馬超はもがいて脱出しようとするが逃げられずにじたばたとするだけになってしまった

 

「は、はなせぇっ!」

 

「・・・うおおおおおおおおおおおっ!」

 

男は叫び、そのまま前へ馬超の体ごと押し出し、身体を入れ替え腕と胸倉を抱え込み背負い投げで地面に叩きつけた

馬超は背中から地面に叩きつけられ息がつまり、一瞬体が動かなくなってしまう

 

「うぐぐぐ・・・」

 

「はっ、はぁっ、はぁっ、俺の勝ちだ」

 

馬超の目の前には輝く剣が突きつけられ、男は馬超を見下ろしていた

 

な、何でだっ!あたしの攻撃は剣一本に防がれるような攻撃じゃない、それに防がれたとしてもこんなに

動くことが出来るなんて、どうしてっ!?

 

「馬騰とお前の槍は違う、馬騰は二撃目を考えない、だから一撃必殺の槍、あれは俺には耐えられない」

 

そんなっ、あたしは父様の槍を間違って覚えたのか?でもなんで舞王がそんなことわかるんだっ!

 

「俺の眼は相手の動きを覚え、動きを予測する。お前の槍が迷っているのも解った」

 

「そんな・・・じゃあ本当に、あたしは間違えて」

 

馬超の顔が悲しみに染まる、男はそのまま見下ろし、剣を喉に向け振り上げると馬超は目をつぶり

涙を流して死を覚悟した

 

御免なさい父様、せっかく最後の技まで見せてくれたのに、あたしは本当に馬鹿だ・・・

 

・・・・・・目をつぶる馬超の身体に一向に終わりの時がやってこない、痛みも衝撃も襲ってこない、不思議に思い

ゆっくり目を開けると目の前の男は鞘に剣を納め、近くで横たわる秋蘭を優しく抱き上ていた

 

「なっ、何故トドメを刺さないっ!馬鹿にしてるのかっ!」

 

急いで身体を起こして叫ぶと男は困った顔をしてしまう、そして片手で秋蘭を抱えたまま空いた手で地に刺さった

刀を抜き、腰の鞘に戻していく

 

「勝負は着いた、それに華琳は人を殺す為にこの剣を俺にくれたんじゃないから、そんなことをしたら華琳に対する裏切りだよ」

 

「あたしは英雄の娘、無様に負けて生かされるなんて」

 

「先に穂先を落とした秋蘭のお陰だ、穂先があったら貫かれていた。だから勝負は引き分けだ」

 

男は秋蘭を優しく抱きしめ、頬を撫でて声をかける。まるで家で寝ている妻を優しく起こす夫のように

 

 

 

 

「・・・うぅ・・・」

 

「良かった、胸は大丈夫か?」

 

「ああ、巧く防具で受けたから大丈夫だ」

 

男の手を掴んで目を開けると、秋蘭は弓を拾い上げ馬超のほうを見る。そして安心したように溜息を吐く

 

「殺していないな、昭の眼も濁ってない」

 

「心配するな、約束は守るよ」

 

「怒ったら解らん」そういって少しすねると兵達の後ろから春蘭の声が聞こえ、兵達の間を割って男達に

駆け寄ってくる

 

「華琳様は大丈夫か?!」

 

「・・・・・・」

 

駆け寄ってきた春蘭の頬の傷を見て男の顔が強張り、それを見た春蘭は男を強引に胸に押し込んで抱きしめた

 

「大丈夫、頬を斬られただけだ」

 

「・・・うん」

 

顔を赤くしながら春蘭は男を抱きしめたまま状況を確認し始める

 

目の前で地に腰をつけているのは馬超、秋蘭が勝ったか。いや、二人で勝ったのだな、昭の口の血を見るに

先ほどの音は昭か、ならば華琳様は?

 

春蘭が鋭くぶつかり合う金属音の方に気が付き、目線を向けると華琳と馬騰が互角に打ち合う姿が目に入った

 

「おお、さすがは華琳様、あの馬騰と互角だ!」

 

「・・・・・・」

 

腕の中の男は複雑な顔をすると、足が限界に着たのかその場に膝を着いてしまい、それに気が付いた秋蘭は

自分の身体も満足ではないのに男の隣に来ると心配そうに顔を覗き込む

 

「大丈夫だ、それよりも」

 

「ああ、華琳様だな」

 

三人の言葉に馬超も華琳と馬騰のほうに目線を向ける。自分の父の勝利する姿を信じて

 

 

 

 


 
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