アクセル全開! 真・恋姫†無双 第8話 因縁
官渡の戦いから一ヶ月以上が過ぎた。とりあえずは盗賊退治以外はこれと言った戦闘はしていない。
袁紹の河北四州を手に入れ華琳の勢力範囲は一気に倍増したのだが、その為、華琳は周囲の諸侯から今まで以上に警戒される存在になったため、国境警戒と袁家に縁のある豪族の制圧のための出動が皆、多くなったのだ。
そんなある日のことである。霞と稟が遠出のために出て行き、城には華琳、真桜、風、桂花、そして一刀と美沙緒だけの状態になったのだ。
つまりは現在城にいる将は真桜と一刀(と美沙緒)だけである。
これは華琳の策であり、自分を餌に本気で華琳を狙いたい相手を見ようと言うものであった。
しかし一刀は華琳が誰に来て欲しいかは顔を見て、なんとなく分かっていた。
それから数日後のことであった。
劉備軍が大軍を引き連れて城の近くまでやって来たのだ。
それを聞いた華琳は近くの出城に移った。
その事は劉備達の耳にも届いた。
「そう。曹操さんは近くの出城に移ったんだね」
「はい。そちらに手持ちの戦力を集中させているようです」
「良かった……さすが曹操さん。これで街に住んでる人は籠城戦に巻き込まれずに済むね」
「だから甘いのだ。お前は……」
劉備、諸葛亮、関羽のところにヴァリュザが来る。
「貴様……」
「だが事実だ。その甘さが全てにおいて己の足を引っ張る。それが分からんのか?」
「貴様言いたいことを言いおって!」
関羽が武器を構えるが……。
「やめておけ。前のようになりたいのか?」
ヴァリュザの言う前のようにとは益州を平定する時、ヴァリュザは劉備の方針とは違うような行動を取り、そのヴァリュザの行動に怒った関羽がヴァリュザに斬りかかったのだが……。
結果は関羽の惨敗。それどころか加勢した張飛と趙雲も返り討ちに遭い、三人がかりなのにも関わらずヴァリュザは三人を打ち負かしたのだ。
それも素手のみで……。
その後、劉備に言われてヴァリュザもやり過ぎたとして反省し、しばらくは自粛していた。
「くっ……。だが私は曹操が単に少ない戦力を有効に使えるよう、場所を変えただけだと思いますが……」
「もぅ~。愛紗ちゃん、曹操さんのこと悪く言い過ぎだよー」
「これから戦う相手に良いも悪いも無い。戦いとはそういうものだ」
「けど、朱里ちゃん。本当に曹操さんと戦わなくちゃいけないの?」
「曹操さんはこちらを攻めると既に予告していますから。現状、曹操さんに万全の状態で攻め込まれては、私達の戦力では一分の勝ち目もありません」
「それに、向こうから隙を見せたら噛みついてこいと言われているのです」
そこに趙雲も加わる。
「ならば手負いも当然である、今の曹操を攻め滅ぼす。それが最上だ」
「それって罠じゃないのかー?」
「少なくとも、主力の将が全て城を開けているのは間違いない。向こうも相応の危険を承知で仕掛けているのだろう」
「仮に罠があったとして……私がその罠を破壊してやろう。この拳でな……」
ヴァリュザは拳を握りしめる。
(ふっふっふっふっ)
「大軍団だね~」
美沙緒が城壁から目の前にいる軍団の数を見て、驚く。
「そうかしら?」
「まあそうと言えばそうだし、そうでないと言えばそうでないんだよな。これが」
翻る旗は、劉、関、張、趙と言う三国でも勇将名将のものばかりであった。
「しかしよ、籠城戦じゃないのか? 春蘭が戻るのは明日の朝の予定だろ?」
「最初から守りに入るようでは、覇者の振る舞いとは言えないでしょう。そんな弱気な手を打っては、これから戦う敵全てに見縊られることになる」
「そういうもんかね~?」
「ここで勝てば、我が曹魏の強さを一層天下に示すことが出来る。こちらを攻めようとしている連中にも、良い牽制になるでしょうよ」
「そうすれば皆の負担が減るってことか…」
「そのためには一刀、美沙緒、あなた達の命、賭けてもらう必要があるわ。……頼むわよ」
「……ああ」
一刀はその事を聞いて若干表情が変わる。
「どうしたの? 変な顔をして」
「前に言ったよな。俺は元々何かの部隊の隊長だって」
「ええ、言ってたわね」
「俺も似たようなことを部下に言ったことがあるの思い出してな。
もう俺自身がそんなこと言われるとは思ってなかったからな。
何か変だなーって思ってな」
「そうなの」
そんな時、桂花が華琳の元にやって来る。
「華琳様! 出陣の準備、終わりました! いつでも城を出ての展開が可能です!」
「さすが桂花。すべきことが良く分かっているわね」
「はっ。各所の指揮はどうなさいますか?」
「前曲は私自身が率いるわ。左右は桂花と風で分担しなさい」
「俺は?」
「……一刀と美沙緒は真桜と共に後曲で全体を見渡しておきなさい。戦場の全てを俯瞰し、何かあったらすぐに援護を回すこと。それがあなたの仕事よ」
「隊長としての勘を取り戻すには良い役割だな」
「頑張ろう、一刀!」
「当たり前なんだな。これが!」
「先日の反董卓の戦で、諸葛亮と関羽の指揮の癖は把握しております。必ずや連中の虚を突いてみせましょう!」
「ええ。よろしく」
その頃、外の劉備軍は……。
「この戦力差で野戦を挑むか…。無謀と言うか、自信過剰と言うべきか」
「初めから城に籠りたくはないのだろう。振る舞いの潔さだけは見事なものではないか」
「それにその方が色々手間が省ける」
「桃香様! 曹操さんが出てきました!」
「そっか……。なら、行ってくるね」
劉備は華琳と開戦の前の舌戦をしようとし、出て行った。
そして華琳と劉備は再び会った。
「良く来たわね、劉備。ちゃんと私の寝首を掻きに来たところは褒めてあげる。ようやくこの時代の流儀が理解できたようね?」
「曹操さん……曹操さん達のやり方は、間違っています!」
「何を言うかと思えば」
(確かに……)
それと遠くから見て聞こえているヴァリュザも思っていた。
「そうやって、力で国を侵略して、人をたくさん殺して……。
それで本当の平和が来ると思ってるんですか?」
「本当の平和……ねぇ」
「そんな、力がものを言う時代は……黄巾党のあの時に終わらせるべきだったんです!」
「だが力が無ければ人は……いや、生き物は従わない。それが生物の摂理だ」
そこにヴァリュザが劉備のところにやって来た。
「あなた、何者?」
「ヴァリュザさん」
「ご無礼を……」
ヴァリュザが丁寧に華琳に向かってお辞儀をする。
「だが私も少し意見を言いたくてな……。劉備、お前の言っていることは理想論でしかない。さっきから聞いてはいたが、そんなもので本当に人がついて行くと思うか?
ついて行く人間はいるだろうが、所詮はお前と同じ理想主義者。現実主義者はついては行けん」
「いいこと言うじゃない、あなた」
「話をとぎれせてしまったな。続けてくれ」
「ええ。なら、どうしてあなたは反董卓連合に参加したの? あれこそ、袁紹達諸侯が力で董卓をねじ伏せようとした…ただの茶番劇だったじゃない」
「それは都の人達が困っていたからです!」
「都の民に炊き出しをしたいだけなら、別に軍を率いる必要はなかったでしょう。それこそ、自分達だけで都に行けばよかったのよ」
「けど、それだけじゃ……意味が無いはずです! もっと根本をなんとかしないと! だから私達は、連合に参加して……」
「それこそ、あなたの嫌いな武力を使ってね」
「……っ!」
「その通りだな」
「官は腐り、朝廷も力を失っている。けれど、無駄なものは常にそこにあるの。それを正し、打ち壊すためには…名と力が必要なのよ。
今、あなたが背負っているような…強く大きな力と、勇名がね」
「私の背中にあるのは、力なんかじゃない。志を同じくした……仲間です」
「同じ事よ。志を貫くためには力が必要。その力で全ての不条理と戦い、打ち壊し、その残ったものからでなければ平和は生まれないわ」
「違います! ちゃんと話し合えば、戦わなくたって理解し合うことはできるんです!」
「ならばあなたはどうして今、ここにいる?」
「え……」
「ふっ……」
「話し合えば理解しあえると言うのなら、あなたがこの地に立つ前に、どうして私達のところには使者が来なかったのかしら?
連合の時でも、虎牢関や汜水関に使者を送ろうとは言わなかったわよね?」
「そうなのか?」
ヴァリュザが劉備に聞くと劉備は黙る。その通りだからである。
「……っ!」
「私達が先に攻め入ると言っていたから、話す必要はないと見たのでしょう?」
「そ、それは……」
「力とはそういうものよ。相手が拳を持っていれば、怖くなって殴り返そうと思ってしまう。
殴られるかも、殴られるだろう、そして……殴られる前に殴ってしまえ……とね。
だから、私は先に拳を示すの。殴って、殴って、殴りぬいて……降った相手を、私は慈しむわ。私に従えば、もう殴られることはないと教え込むの」
「そんな、無茶苦茶な……! そこまでずっと戦い続ける気ですか!」
「そうよ」
「話し合いで妥協できる程度の理想など、理想とは言わない。
それにそちらの者の方が理解できているようね」
「ふ……。確かに曹操、お前の言う通りだ。力を持つ者は力を示す必要があるからな」
「あなたがそちらにいる理由が分からないわね。私の考えを理解できるなら、何故こちらに来なかった?」
「この女……劉備の天下を見たくなっただけだ」
「そう……。では、劉備、私はどうあれ、あなたを叩き潰す。あなたの大嫌いな。力と兵と命をぶつけて……。
あなたが正しいと思うなら、今こそ私を叩き潰しなさい。その時は、私はあなたの前に膝を折ることでしょう。首を取るなりあなたの理想に従わせるなり、好きにすればいい」
「この兵力差と私相手に曹操。本当に勝てると思うか?」
劉備ではなく、ヴァリュザが華琳に聞く。
「負ける戦はしない主義よ」
「ならばその力を砕いてやろう」
ヴァリュザが戦闘態勢に近い状態に入る。
「待ちな!」
華琳のところに一刀と美沙緒が来る。
「一刀」
「むっ……貴様は……北郷一刀、そしてその女は睦月美沙緒だな」
「やっぱ俺達のこと知ってたか」
「どういうこと?」
「どうもあいつがあたし達の頭から離れないんだよね」
「最近になってあいつの姿は思い出してるんだけど、名前とかが思い出せねえんだよな……」
「忘れたのか……。ならば思い出させてやろう。我が名はヴァリュザ・ガード。
『アルハイム』最強の守護者!」
「『アルハイム』……」
「くっ……」
一刀と美沙緒が頭を押さえる。
「………どうした?」
「頭がな……」
「ほぅ……記憶喪失か……。そしてその女は幻影体になっていたとはな」
「げん……えい……たい……」
一刀と美沙緒が聞いた事ある言葉を一生懸命頭の中から出そうとするが……。
「まあいい。お前達に記憶があろうがあるまいが、私には関係ない。私は劉備につき従い、戦うまでだ」
「そんなこと……させないんだな。これが!」
一刀と美沙緒とヴァリュザは既に戦う気であった。
「どうしても……戦わないとダメですか?」
「当然でしょう。あの三人は既に戦う気だし、そもそも私が納得しないもの。そうしなければ、私はあすにもあなたを裏切って、全力であなたの城に攻め入るわよ。それでもいいのなら、あなたのしたいようになさい」
「……分かりました。戦いたくはないけれど、私はあなたを叩き潰します!」
劉備と華琳は舌戦の後、自分達の陣に下がる。
「この世界の習わしに従い、今は下がってやろう。本当ならここで貴様らを叩き潰したいがな……」
「へっ、言うじゃねえか」
そして一刀と美沙緒、ヴァリュザもそれぞれの大将と一緒に下がった。
「一刀、全軍を展開するわよ! 弓兵を最前列に! 相手の突撃を迎え撃ちなさい!」
「分かった」
「その後、一刀は後曲に。第一射が終わったら、左右両翼は相手を撹乱なさい! その混乱をついて、本体で敵陣を打ち崩すわよ!」
「御意!」
「問題はあのヴァリュザだな。あいつが俺を狙う可能性があるからな」
「その時は頑張ってね」
「言うね」
「アクセル!」
一刀がアクセルメモリを手にする。
「変身!」
一刀はアクセルに変身。
「さぁ、振り切るぜ!」
そして曹操軍と劉備軍の激突が始まった。
曹操軍は少数に対し、劉備軍は大軍。その上ヴァリュザも加わっているとなると戦況は圧倒的に曹操軍が不利。
戦いが始まってからそんなに経たないうちに曹操軍の兵士がかなり減っていた。
「隊長! 風がもう少し兵を回してくれって」
「これ以上は無理なんだな! これが!」
「分かっとるけど、それを何とかするのが隊長の役目やろ!」
「俺は元々切り込み隊長だ!」
「せやったの?」
「それに予備の兵力が無い状態で援軍を送れは無理あるだろ!」
しかし風のところだけでなく桂花のところも苦戦なのは分かっているが、やはり多勢に無勢であった。
「ところで華琳のところはどうなってる!」
「押されとるみたいよ! やっぱり兵隊が足らんのが響いとるみたいや!」
「……仕方ねえ。美沙緒! 行くぞ!」
「うん!」
一刀と美沙緒が駆けだし、華琳の元へと走る!
「真桜! 後ろは任せるからな!」
その頃、華琳は関羽と戦っていた。
「伊達に前線に立つわけではないか。……なかなかやる!」
「舐めてもらっては困るわね。しかし…さすが関羽…良い腕だわ。どう? 私のもとに来ない?」
「この状況で減らず口を…!」
戦闘中に関羽を勧誘する華琳。しかし言ってるほどの余裕はそんなにない。
(さすが天下に謳われる関雲長。まともにやり合えば保ってあと数合というところかしら)
「ここか!」
関羽と華琳に戦いに趙雲も参入する。
「星。お前は周りを頼む。私は曹操を!」
「いや、周りはもう既にいない…、曹操覚悟!」
関羽と趙雲、二人の攻撃に華琳も限界が来る。
(だめ、もう保たない!)
「スチーム」
その音声と共に華琳達の周りを白い蒸気が包む。
「な、何だこの煙は? 何も見えぬぞ!」
「前が見えぬ。それに温かい? この煙は一体……」
「この煙は……」
「こっちだ! 華琳!」
「え、あ……っ」
関羽と趙雲が混乱している隙に一刀が華琳のところにやって来て、美沙緒が無理矢理華琳を引っ張り出してスチームの外に出す。
「一刀!」
「本当にギリギリ間に合ってよかったぜ。華琳…」
「どうしてあなたがこんな所に! 後曲での仕事はどうしたの!」
「もう送れる兵がいない」
「え……」
「……限界だ。城に下がったほうが良いんだな。これが!」
「ここで兵を引けというの!? 劉備を相手に負けを認めろと?」
「だがまだ死んだわけじゃない。城まで下がって、春蘭達の合流を待てばいくらでも活路は見出せる」
一刀の意見に華琳は猛反発する。
「嫌よ! あの子のように甘い考えに膝を折るなんて…この私の誇りが許さないわ!」
「だから関羽と趙雲の二人と正面から戦っていたのか? 俺にしたらそっちのほうが馬鹿げてるぜ」
「馬鹿で結構。理想を貫くことを馬鹿と言うなら、それは私にとっては褒め言葉だわ。
それで野に散ったとしても、それこそ本も…」
華琳が言い終える前に、一刀が……いや美沙緒が華琳に平手打ちを与える。
「美沙緒……」
「あたしね。そう言う考え……嫌いだよ!」
「美沙緒……」
「何で命を大事にしないの!? 死んじゃったらそこで終わりなんだよ! だったらその一つだけの命、大事に使ってよ!」
「美沙緒……俺にも少し言わせてくれないか」
「一刀…」
「華琳。俺はそんなに馬鹿は嫌いじゃない。だがな……俺も美沙緒と同じだ。自分の命を大事にしない奴なんて馬鹿じゃなくても嫌いだ!」
「かず……と……」
「それにな、この一戦で負けただけで、華琳が劉備に負けたことになるのか!?
そんな訳ないだろ! お前はまだ生きている! 負けってのは膝を折って、死んだときだろ? 信念が折れたときだろ?
それを俺に言ったのはお前だ、華琳! あの言葉を嘘にするつもりなのか!?」
一刀に初めて心の底から怒鳴られる華琳。
今まで華琳のちょっとしたおふざけに一刀は怒ることは多々あった。
だが重大なところで一刀が怒ったことは一度もない。今初めての経験である。
「……」
「俺はそんなの絶対に認めないからな。今は城に退け。城に戻って、体制を立て直して籠城する力くらいは残ってるだろ?
春蘭や秋蘭、それに恋達が戻ってくるまで持ちこたえれば最後は勝てる。絶対に!」
「一刀……」
「春蘭や秋蘭がいないところで華琳が死んだらあの二人にどう説明すればいいんだ? あの二人俺以上に強くなって俺が死んじまう。だろ?」
「ふふ、そうね」
華琳の顔に笑みが浮かぶ。
「落ち着いたようだな」
「ええ、どうやら劉備との舌戦で少し頭に血が上っていたようね」
「とりあえず皆に指示を……」
「そうはさせん」
そこにヴァリュザが一人でやって来た。
「ヴァリュザ!」
「曹孟徳、北郷一刀、睦月美沙緒。お前達の命、私がもらいうける」
ヴァリュザが拳を構える。
「華琳! お前は先に下がれ! 俺と美沙緒はこいつの足止めをしてやる!」
「一刀! 美沙緒!」
「真桜さんに頼んで桂花ちゃんや風ちゃんにも城に下がるように言ってあるから。早く行って!」
「……二人とも、ちゃんと戻ってきなさいよ」
「ああ、約束してやる」
そして華琳はなんとか城まで下がった。
「ふん、逃げられたか。まあいい」
「どちらかと言うと俺達が目当てだろ?」
「その通りだ。あの時の……異世界だが……決着をつけよう」
「悪いがまだ俺はそんな気はないんだよな。これが!」
仮面ライダーアクセルに変身した一刀とヴァリュザが激突する。
「地斬疾空刀!」
一刀が地斬疾空刀を放ち、美沙緒が氣の刃を放つが、ヴァリュザは二人の攻撃を受け流す。
「玄武剛弾!」
一刀の手の氣が渦を巻き、その渦でヴァリュザを上空に飛ばす!
「はあああああああ!!」
美沙緒が拳の連打を放ち、ヴァリュザに当てようとするが……。
「甘い!」
ヴァリュザはなんと美沙緒の攻撃を全て受け止めたのだ!
「嘘!」
「ふん!」
ヴァリュザが美沙緒に蹴りを入れて、美沙緒は上から下に落ちる。
「美沙緒!」
「あいつ、あたしに触れれたよ……」
「ちっ……」
ヴァリュザが地上に着地する。
「我が鎧は幻影体を触ることが出来る。幻影体は特殊でな、この鎧なしでは触れることは出来ない」
「厄介だな」
「次はこちらから行くぞ!」
ヴァリュザがそう言って、一刀に一気に近づく。
「ふん!」
ヴァリュザが拳の連打を一刀に浴びせ、一刀は何とかエンジンブレードを縦にしながら防ぐがヴァリュザの拳はかなり強力であった。
「くっ!」
「まだ倒れるな。シュラ・ナックル!」
ヴァリュザが技の名前を言うと、先ほどよりも強力な拳を一刀に当て、当てたと同時に後ろに回り込み一刀の背中に一発拳を当てる。
「ぐお!」
ヴァリュザが先ほどの位置に戻る。
「くらえ。ギャラー・ホーンだ!」
ヴァリュザが一刀を上へと殴り飛ばした後、追いうちのキックを一刀に当てる。
「ぐわっ!」
一刀は思わず倒れこむ。
「一刀!」
美沙緒が倒れる一刀に近づく。
「ふん。あの時のお前はそんな強さでは無かった。もっと強かったはずだ」
ヴァリュザが一刀に近づく。
「一刀はやらせないよ!」
美沙緒がヴァリュザに戦いを挑む。
「白虎咬!」
美沙緒がヴァリュザに対して、氣を溜めた氣弾を放つ。
「ならば我も返そう」
そう言うとヴァリュザも氣弾を溜める。
「グルトップ!」
ヴァリュザの手から氣弾が発射されたが、それはどちらかと言うとエネルギー弾ではなく、エネルギー波であった。
「きゃあ!」
美沙緒の氣弾がかき消され、ヴァリュザの氣波に飲み込まれ、一刀よりも後ろに飛ばされる。
「美沙緒!」
「ふん。小娘はまだいい。だが貴様だけは私の手で倒してくれよう」
「許さん……」
「エンジン! マキシマムドライブ!」
一刀がエンジンメモリのマキシマムドライブを使う。
「やめておけ、それは私には通用しない」
「だったらこいつもどうだ?」
一刀はアクセルドライバーの左グリップにあるマキシマムクラッチレバーを引き、スロットルを捻ろうとする。
「一刀! ツインマキシマムは……!」
「危険だろ? だが今は危険を承知でやるんだ!」
「一刀ーーーーーーーーー!!」
美沙緒の忠告を無視して一刀がスロットルを捻った。
「アクセル! マキシマムドライブ! マキシマムドライブ! ……」
アクセルドライバーから「マキシマムドライブ」の音声が鳴りやまない。
「貴様………」
「絶望がお前のゴールなんだな! コード……、エースグランツァー!!」
一刀がエンジンブレードを持つ右手を無理矢理「アクセルグランツァー」を放つ、右足と重ねて、アクセルグランツァーとダイナミックエースを合わせたAの字型のキックをヴァリュザに当てた!
「ぐぅうううううう!!」
ヴァリュザはその攻撃を受けてかなり後方にまで滑る。
「ぐううう!」
ヴァリュザは受けきった。
「そんな……」
その様子を見ていた美沙緒は悲観するが……。
突然ヴァリュザの鎧の一部に爆発が起こる。
「何!?」
「へ、どんなもんだ……」
単独のツインマキシマムをしたため、一刀はくたくたの状態であったが……。
「美沙緒、立てるか?」
「う、うん」
「悪いが、俺は少しまずい。持ってくれ」
「う、うん……」
美沙緒が一刀を担いでその場を離れようとする。
「逃がさ……ん」
ヴァリュザが二人を追おうとするが、先ほどの攻撃で足にガタが来たのか動けなかった。
「くそ……。他には……自動修復機能の破損……。これは時間が経てば直るが……。この戦ではもう直らんな」
ヴァリュザは一刀達を追うのを止めた。
一刀は美沙緒に運ばれてなんとか城に辿り着き、変身を解除し、城壁で横になって華琳達に尋ねる。
「ところで真桜はどうした?」
「真桜は別の作戦があるからそちらを任せているだけ」
「そうか、ならいい……」
「よし! 総員城壁の上に待機! 籠城戦で敵を迎え撃つわ! 何としても春蘭達が帰ってくるまで耐えきってみせるわよ!」
籠城戦が始まり、劉備軍は普通に攻めてくるわ、抜け道を見つけて攻めてくるわの連続だったが、何とか華琳達は耐えていた。
一刀は敵が隊を分けて、休む部隊と攻める部隊に分けていることに気づき、華琳も同じ事をしようとした時、ついに来た。
それは各地に散らばっていた華琳の将達である。
「あれは春蘭に霞に秋蘭に凪、それに真桜と恋達も……どうやら同時に着いたみたいだな。これが!」
一刀は興奮するが、ツインマキシマムの反動で体が思うように動かない。
「悪いが、俺は動けねえ……」
「分かったわ。後は私達に任せて休んでなさい」
「わりぃ……」
一刀が美沙緒に膝枕をしてもらう。
「なあ、美沙緒。俺、今変身してないよな?」
「うん」
「それなのにお前が触れるようになってるな」
「そう言えば……」
「ヴァリュザにやられたからか?」
「……かもね」
そして華琳達はやってきた援軍と共に見事劉備軍を退けることに成功した。
「劉備の軍が撤退していく…」
「ようやくひと段落だな」
「そうね……」
「春蘭達がこんなに早く着くとは思わなかったんだな。これが……」
「本当は今日の日暮れ頃に着くはずだったのよ。それがこんなに日が高いうちに来てくれるなんて…私だって思わなかったわ」
「やはり華琳は愛されてるって事なんだな。これが……」
「そうね、帰ったら、秋蘭と一緒にたくさん可愛がってあげないと…」
「しかし今回の戦いはすごく疲れた」
一刀はまだ美沙緒に膝枕をしてもらっていた。
「あら。初陣でもあるまいし」
「あのな、ヴァリュザと激しい戦闘したんだぞ。それに単独でツインマキシマムドライブを使っちまったんだ。ガイアメモリで傷ついた体は自然治癒でしか治らねえんだ。
まあエンジンメモリがギジメモリだったから負担はまだ軽くて済んだけどな……」
「……何よ。だらしないのね」
「いいだろ、別に……」
華琳は突然、一刀の顔を美沙緒の膝から自分の胸元に近づけた。
「華琳…?」
「いいから、黙っていなさい」
「ああ」
「今日はありがとう。一刀のおかげで死なずに済んだわ」
「……」
「何か言いなさいよ」
「いや、黙ってろって言ったからさ」
「ばか」
二人はしばらくそのままで長い沈黙が続く。
(もう一刀の馬鹿)
美沙緒は二人のやり取りを見て少し嫉妬する。
「一刀」
美沙緒が嫉妬のあまり一刀の後頭部に自分の胸を当てる。
「やれやれ、大変なんだな。これが……」
一刀は二人のために戦おうと決意するのであった。
設定
ヴァリュザ・ガード
前はヴァルザ・ガードだったが、名前がかぶっていると指摘をもらったため名前を変更した。
小説にヴァルザの名前があったら誤字報告をお願いします。
「アルハイム」と呼ばれる組織の最高幹部。だが実力は「アルハイム」で一番強い。生身でもロボットを壊せるとも言われている。
普段は赤い鎧と仮面を付けており、その下は不明。
元ネタは「無限のフロンティアEXCEED スーパーロボット大戦OGサーガ」に出てくる敵幹部「リグ・ザ・ガード」。姿はそのキャラを若干凶暴化させたようなものである。
そのため武器は持たず、徒手空拳で戦い、技も同じである。
アルハイム
ヴァリュザ・ガードが所属していた組織。詳しい設定は特にないが、一刀と美沙緒が敵対していた組織でもある。
幻影体
特殊なもの。現時点では詳細は明かさない。
元ネタは「アスラクライン」の射影体。
おまけ
作者「第8話なんだな。これが!」
一刀「もう第8話か。しかし敵の名前を変更するとは…」
作者「まさか被ってたとは思ってなかった。偶然の一致だ。だけど何かあるといけないから名前は変えた」
一刀「お前トラブル嫌いだもんな」
作者「それが普通だろ。そして次回は仮面ライダー×真・恋姫†無双 魏編では書かなかった戦いが起こるぞ!」
一刀「と言うことは新しく書き起こしたものになるのか」
作者「そう言うことだ。だから最初の注意文がなくなるってことだ。それでは!」
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そして一刀の態度や口調が原作と違うことをご了承してください。
また本作の一刀の設定のため、一刀のパートナーとなるオリジナルキャラクターがいます。