No.136475

真・恋姫†無双 金属の歯車 第二十九話

・真・恋姫†無双をベースにMGSの設定を使用しています。
・クロスオーバーが苦手な方には本当におすすめできない。
・俺のMGSを汚すんじゃねぇって方もリアルにお勧めできない。
・この作品は随分と厨作品です
・過度な期待どころか、普通の期待もしないでください。

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2010-04-15 01:04:34 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2676   閲覧ユーザー数:2483

 赤壁は既に消尽の猛火に包まれていた。既に曹魏の敗北は決定的とも言えた。

「華琳、樊城まで退くぞ」

「・・・」

「曹操!!」

 真名とは違う呼び方に華琳がはっとなる。

「敗北は敗北だ。これ以上被害を出さないためにも退くぞ」

 フォックスが華琳の視界を遮るように抱きしめたそのときだった。

船体が大きく揺れる。あたりに電撃が走り魏将たちがが二人の周りを取り囲んだ。

そんな彼女たちの視線の先にいるのは一刀だった。

どうやってここまで来たのか?そんなことはわからない。しかし状況はそんなことさえも忘れさせるものだった。

「一刀・・・なのか?」

 

 

二十九話 赤壁決戦 ~PEACE WALKER~

 

 

 目の前にいるのはもはや一刀ではなかった。

背中から暴力的とも取れるほど巨大な雷の翼が生じ、牙をむき出し、目はどす黒い赤でこちらを睨んでいる。

その姿はこの世のものとは思えないものだった。

「華琳、今すぐ退け」

「何を・・・」

 華琳が何かを言おうとするが、フォックスはそれを遮った。

「今のあいつは暴走している」

「暴走・・・だと?それだけの危険性を孕んでいたのか」

 秋蘭は一刀とは出会ったことがあるが、あれに相対するのは初めてだ。しかし今の彼と相対したことのある春蘭から聞いているはずだ。

「いや、あいつは類まれな精神力でその危険性を制御していたに過ぎない」

 フォックスは一歩前に出て、いつでも化け物に突っ込む用意をする。

「刺し違える気で行かねば・・・死ぬ」

 もはや龍と化したスネークは、両手を船に突き立て四足歩行の獣となる。

「退けぇ!」

 フォックスのその一言とほぼ同時にスネークが咆哮を上げる。周囲にいる者を恐怖で縛り付ける、あの咆哮だ。

狂人化した咆哮は、その恩恵を受けた音圧に電磁波を重ねたものだ。音と電磁波の強力な振動は本能の恐怖を掻き立てる。

フォックスはその咆哮に構わず突っ込み、蛇腹剣を伸ばした。

その蛇腹剣の先端はスネークがかざした手に弾かれる。

(電撃のエネルギーで運動エネルギーを相殺した?そんなことが人の身に可能なのか?)

 しかし目の前で起こったことは現実だ。その現実と知識そして経験から導かれた結論より早く、本能で危険を察知した狐は大きく横に跳ぶ。

フォックスのいた地点に電撃が走り、船が破壊されていく。

「サンダーボルト・・・制御できているのか」

 電撃をまっすぐ飛ばすのは人体のみではほぼ不可能である。イオン化した大気成分なりナノマシンで導線を作らない限りは、任意の対象に電撃をむかわせることはできない。

「つまりは放射か・・・範囲が広い方が厄介だぞ!」

 次の瞬間、スネークは獣の跳躍でフォックスの上空にいた。

「ちぃ!」

 上空から踏みつける強襲攻撃は船体を破壊する。破壊された船体は、木の欠片となり、フォックスの視界を遮る。

その破片の風景から鋭い光がフォックスの眼前に迫る。剣先と判断したフォックスは上体を反らしそれを回避する。

しかしそれは剣先ではなく、スネークの爪であった。明らかに喉を狙った左手の一撃を回避したものの、右手の高周波ブレードが横から迫ってくる。それは蛇腹剣で受け止められるが問題は次の攻撃だ。先が読めない。

そんなフォックスに差し出されたのは手のひらだった。

(ちぃ!)

 スネークの手のひらから電撃が迸る。

「出鱈目すぎるぞ・・・」

 人間にしては異常の身体の捻りようで回避する。そのまま身体を回転させてスネークの目を狙う。

スネークは上体を反らして回避しフォックスの頸を狙う。フォックスは剣を翻しそれを受け止めた。

鍔迫り合いだ。間髪入れずスネークは口を大きく開く。

(どこからでも放射できるのか!?)

 フォックスは後ろに跳躍する。しかしスネークはすぐに雷を放射せず、フォックスが空中に跳んだ瞬間まで待っていた。

「ちぃ!」

 空中は回避ができない。戦いの天才が犯した失態だった。

「隊長!」

 フォックスの後方から放たれた気孔砲は電撃を拡散させた。

フォックスは無事に着地し、後ろから恋姫達が駆けつける。

「隊長、死にに行くのはかっこ悪いで」

「そーなの」

「お兄さん、相手が強いなら・・・」

「まとめてかかれば良いんですよ」

 三羽烏と親衛隊の二人が戦闘態勢を整えた。

「・・・華琳は?」

「心配するな、ケイン。それくらい華琳様はわきまえてくれているさ」

「大丈夫か?ケイン」

「お前達・・・」

 さらに横に並んだのは春蘭と秋蘭だった。

「奴はあの能力を使っている間、異常なほどに体力を消耗する。このまま時間を稼げば引き分けくらいには・・・」

「なんやケイン。えらい弱気やないか」

 霞の姿もある。どうやら前線で戦っている将は全員駆けつけてくれたそうだ。

「誰だって死の恐怖くらいはあるさ」

 霞の一言を軽口で返したつもりだった。しかしその一言に全員が得物をきつく握りしめる。

「いくぞ!」

 その一言と共に秋蘭が矢を放つ。

スネークは待っていたとばかりに咆哮をあげ、矢が音圧に負けて失速する。

「出鱈目にもほどがあるぞ・・・」

 秋蘭の苦言もその通りだが、悔しがっても仕方ない。

霞が飛龍偃月刀に全体重を載せて突進する。

「あの時の傷かえさせてもらうで!」

 狙うは喉元。しかしその攻撃は届かない。飛龍偃月刀はスネークの左手によってぴったりと止まってしまう。

「・・・なんつう力や」

 その力を象徴するかのように霞は力勝負に負け、どんどんと体勢を崩されていく。

「敵は霞姐さんだけちゃうで!」

 真桜の螺旋槍が伸び、スネークは霞を蹴り飛ばす。次の瞬間には螺旋槍の上に乗り手のひらを真桜に向ける。

しかし電撃の隙を与えない。凪が気弾で牽制し、スネークは跳躍で距離を開ける。

その跳躍の隙を狙い沙和は二天で後ろから斬りかかる。しかし向けられた手のひらに沙和は躊躇してしまう。

「躊躇うな!」

 沙和の体に蛇腹剣が巻きつき、スネークの電撃は空を引き裂いた。

相手は大技を連発する。ならその隙を狙うしかない。電撃の隙に、魏武の大剣春蘭が突っ込む。

「はぁぁ!!」

 スネークは高周波ブレードを地面に突き刺し、その大剣を白刃取りで受け止める。

「何!?」

「離れろ、姉者!雷が来るぞ!」

 秋蘭の忠告より先に春蘭は本能的に危険を察知し、剣を捨て後ろに跳躍していた。

刃の部分は融解し、もはや使える代物ではなくなっていた。

「おりゃぁ!」

「はぁ!」

 反撃の隙を与えさせないために、季衣と流琉の二人が得物を投擲する。

スネークは伝磁葉々を最小限の動きで回避し、伸びきった鋼糸を熱破断ブレードで切り裂く。追撃のために後からきた岩打武反魔は地面から抜き取った高周波ブレードを突き刺し、運動エネルギーを奪った。

「ええ!?」

 二人とも驚きしか出ない。大男が受け止めたのならまだしも、線の細い優男だ。

全員が驚きを見せたそのとき、受け止められた岩打武反魔に火花が走る。

「人体のみで電磁加速砲だと!」

 スネークの正面から電磁誘導で衝撃波と爆音と共に射出された岩打武反魔は、魏将の脇を掠め後方の船団を撃沈させた。

その衝撃波に煽られ、体格に恵まれない魏将はなぎ払われる。

そんな中でもフォックスは反撃を試みた。蛇腹剣を鞭のようにしならせ、スネークを頭上に振り下ろす。

しかしそれは届かなかった。スネークは足元に転がっている伝磁葉々の鋼糸に電気を流し、甲板を大きく破壊する。同時に船体が大きく揺らいだ。

蛇腹剣は力を失い、宙を彷徨う。

(しまった!)

 フォックスはスネークを姿を探した。・・・上空だ。蛇腹剣を連結し、空中からの斬撃を受け止める。

「うおおおお!!」

 地に着かせてしまっては、スネーク特有の鍔迫り合いによって不利になる。そう判断したフォックスは彼の足が甲板に着く前に、全力で彼を空中に押し出した。次にすることは体勢が整う前に一撃を入れることだ。

空中に投げ出されたスネークは電撃を、フォックスは蛇腹剣を伸ばした。蛇腹剣の運動エネルギーは電撃のエネルギーによって弾かれる。

フォックスは連結し直した蛇腹剣でスネークに斬りかかる。この一撃に全てを込める。

しかしフォックスの予想は外れた。船体が真っ二つに割れスネークとフォックス、魏将は分断される。

あちらの船体から呼びかける声が聞こえるが、何も聞こえないふりをしてスネークに振り向いた。

しかしスネークの目は白く戻っていた。雷に翼も消えている。しかしその表情は絶望で・・・この世の終わり、いや自分の侵した罪の大きさに絶望するような表情だった。

「ケイン・・・私は今・・・何をしていた」

 彼がそう尋ねた瞬間、船体が崩壊した。

 

 

 赤壁の片隅で河から一人の男を担いだスネークが岸に上がる。

「うおおおおお」

 スネークは乱暴に肩に背負っていたフォックスを放り投げた。

スネークは疲弊し、フォックスも苦しげに腹を押さえていた。

「重過ぎるぞ・・・サイボーグ」

「生憎、痩せることができん」

 雷と気のぶつかり合いは、スネークが正気に戻ったことにより幕が下りた。

戦いは終わった。しかし戦争は終わっていなかった。

「何があった?」

 赤壁の戦いが集結した長江の片隅でスネークとフォックスが語らっていた。

「ジェームスが死んだ」

「何だと!?」

 フォックスにしては珍しいとまどいであった。予想していなかったという印象だ。

「マグナというサイキッカーが呉の兵に憑依した・・・眉唾だがな。その後私も・・・何かされたらしい。さっきまで自分の意識はなかった」

 二人とも絶壁に背を預ける。敵味方という感覚はお互い持っていなかった。

きっとここは昔の自分たちの家だと・・・そう感じていた。

「ケイン・・・俺はもう・・・人が死ぬのはたくさんだ」

 子供のように丸く縮まったスネークは、戦士らしからぬ弱い声で訴えた。

「ジェームスが死ぬ必要なんかなかった。赤壁であんなに多くの兵が死ぬ必要はなかった。人が死ぬ必要は・・・どの世界にもどの時代にもないんだ」

「やはり・・・お前は戦士になるべきではなかった。お前は・・・優しすぎる」

 腹を押さえていたフォックスは静かに立ち上がり、濁天を仰ぐ。

「一刀、お前が望むなら次の・・・いや最後の戦いは俺たちで決着をつけよう」

 フォックスの一言に、スネークはうつむいていた顔をあげた。

「一騎打ちだ。俺が勝てば華琳は戦いをやめない。お前が勝てば戦争は終わる」

「・・・曹操はそれで納得するのか?」

「お前が俺を生かした意味・・・そういうことだろ?」

「メッセンジャーボーイか、そんなつもりなかったんだけどな」

 スネークは空を仰いだ。赤壁の火は消え、空には雲が出来上がっていた。

「戦争を戦いで止める・・・滑稽だな」

「私は例え矛盾していても、戦争を戦争で終わらせるのは間違いではないと思う。ただ一つ間違いがあるとすれば、それは利益だ」

「利益・・・か」

「そうだ。さまざまな思惑が戦場を交錯し、利害が人を狂わせる。この三国戦争は正史のように利益が発生しにくい。単に思惑だけで動いている。・・・たった一つの信念でも止めることはできるはずだ」

「なんで・・・そんなことを俺に話すんだ?」

「俺は魏の人間である前に・・・お前の兄だ。理由はそれだけで充分だろ」

 フォックスは崖を見上げていた。

「樊城で会おう」

 サイボーグは絶壁とも言える壁を跳躍していった。

「ああ・・・」

 

 

―――終わりにしよう。

 

 

おまけ:設定資料

サイボーグ:ケイン・ウェルナーに施されているサイボーグ技術は、MGSに登場したサイボーグ忍者の技術をさらに発展したものである。サイボーグ忍者は一定期間毎に劇薬とも言える鎮痛剤を打たなければならなかったが、ケインに施されたサイボーグ技術はそれを必要としない。

特徴として神経の光ファイバー化、骨格の強化及び内臓の保護があげられるが、もっとも特化するべきは新型生体筋肉である。この生体筋肉により、彼は垂直跳びにおいて5mの跳躍を誇る。またこの生体筋肉はパワーだけではなく、人間が本来持ち得る精密さも併せ持っている。iPS細胞によって造られており、拒否反応はおろか故障すらも起きない。

なお彼は頭部をほぼ弄っておらず、顔と脳などは自前だが頭部にチタン板を埋め込んでいる。

 

 * *

 

バーサーカー・オーバードライブ:劇中で語られているようにバーサーカーの能力は非常に暴走しやすい。二十五話における設定で脳内物質の過剰分泌とあるが、これにより感情を処理、制御できず本能のままに破壊衝動を実行する陥る傾向がある。劇中で語られた負の感情(ストレスなど)によって精神な不安定な状態であればあるほど危険度は増す。この暴走状態を一刀はバーサーカー・オーバードライブと名づけている。

またアトモスのこの状態は二度目であり、一度目は中東都市壊滅事件である。

なお彼のきょうだいであるアシッドは常にこの暴走状態であり、両名の現象は計画では予想されていなかった事態である。

 

 

おまけ:次回予告

因縁の血。因縁の地。

 

最終前話 Zanzibar Land ~因縁ノ地~

 

蛇と狐。因縁が英雄達を縛り付ける。

 


 
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