No.135904

恋する乙女

雪月菜絵さん

遥が唯人を好きという設定を使った作品をあまり見ない気がしたので
遥の恋する乙女な部分が見えるものを書いてみようと思いました。
締め切り間際になって1時間半で急ごしらえ(-_-;) したものなので
必要最低限のプロットをパパッとまとめただけの書き込みが薄いSSですが
雰囲気だけでも感じ取ってくだされば・・・(^_^;)

2010-04-11 23:58:38 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2653   閲覧ユーザー数:2622

2月14日、朝。

「で、出来た・・・」

遥の前には試行錯誤の末出来上がった手作りのハートチョコ。

この日にこんなものを作るということは、当然想い人へ渡すためのものだ。

チョコには「お誕生日おめでとう」の文字が入れられている。

今日はバレンタインであると同時に、偶然にも想い人の誕生日でもあるのだ。

彼女の想い人は、先輩で生徒会長の如月唯人。

最初は、年頃の女の子なら誰でも持っているだろう、

カッコいい男の子に憧れるミーハーな気持ちで興味を持っただけだった。

けれど、生徒会長の華やかなイメージとは違った彼の実生活、

両親と離れてアルバイトをしている苦労人であったり・・・

というのを知るにつれて惹かれていったのだ。

彼は同時にツインエンジェルをひそかに手助けしてくれるミスティナイトでもあるのだが、

何故か遥だけはそれに気づいていない。

 

時計を見ると朝の七時半。

そろそろ制服に着替えて、朝ごはんを食べて、学校に行かなければならない。

「うう、結局徹夜になっちゃったよ・・・」

快盗天使レッドエンジェルである彼女は夜遅くまで忙しい。

よりによって、昨夜は特に時間がかかってしまったのだった。

しかし彼女はチェリーヌ学院に通う普通の学生であると同時に、恋する乙女でもあった。

恋する乙女にとっては年に一回の一大イベントであり、

同時に彼の誕生日でもあるこの日、

遥にとって絶対に逃せない日だった。

昼休み。

憧れの先輩の教室の前で、身だしなみチェックをした遥は愕然とした。

徹夜のせいで、目の下には酷いクマ、髪の毛はボサボサ。

(どうしよう・・・こんな状態で先輩に会うのは恥ずかしいよ)

少しでもかわいい自分を見せたいのが乙女心。

とはいえ、もうどうしようもない。

回りには、同じく唯人にチョコを渡しに来たのだろう女子生徒が何人もいた。

その中には知ってる顔もいたが、なんだか普段よりおめかししているようにも見える。

迷いながら教室の中を除き見ると、唯人は珍しく眠っているようだった。

これは遥と同様、快盗の仕事が夜遅くまでかかってしまったからなのだが、

唯人=ミスティナイトだと気付いていない遥は

(先輩もたまにはこんなことあるんだなあ)とか

(私が眠くてたまらない時に先輩も寝てる偶然、ちょっぴり嬉しいかも)

なんてのんきに考え、

元々直接渡すか迷っていたところに、

寝てるんじゃしょうがないと諦めも付いたので

他の女子生徒に便乗し、下駄箱作戦に切り替えたのだった。

後で

(唯人先輩、他の子からもたくさんチョコもらってるもん。

直接渡さなきゃ、あげたこと自体気付いてもらえないかも・・・)

と後悔したのだが。

1ヵ月後、3月14日、放課後・・・。

「はーっ、結局、先輩から、義理すらもお返しもらえなかったよ・・・。

 やっぱり直接渡すんだったな・・・」

一緒に下校する葵達に、遥はぼやく。

「まあまあ遥さん、まだ今日は終わっていませんから。チャンスはありますよ?」

「でもでも、わざわざ家まで渡しに来てくれるなんて考えにくいし・・・」

葵は快盗としての仕事が終わった後にまだチャンスはあるという意味合いで言っているのだが

遥はそれに気が付いていないので話が少し噛み合っていない。

「もうっ、遥らしくないわね。

 とにかく、今日はまだ終わっていないんだから。

 残念がるのはそれからでも遅くないでしょ?」

「うん、ありがとう、二人とも」

そう返事はしたものの、遥はあまり元気がなかった。

 

3月14日、夜。

快盗天使ツインエンジェルとして

天使の涙をブラックファンドから守る戦闘の最中も遥は元気がなかった。

そのせいで一度は宝を奪われかかったのだが、

ミスティナイトの加勢により何とか守り抜くことが出来たのだった。

戦闘が終わるといつもはすぐに去っていくミスティナイトだが、

「今日はいつも世話になっている君達に素敵なプレゼントを用意したんだ。

 どうか受け取って欲しい」

そう言ってエンジェル達に小さな箱を渡してから颯爽と闇に消えていった。

「あら? 遥さんのだけ箱が大きいようですが・・・」

「ねえ、開けてみなさいよ」

ブルーとホワイトに促されてレッドが箱を開けると、

そこにはクッキーに添えてメッセージカードが入っていた。

【君の気持ちは受け取ったよ、ありがとう】

ミスティナイトの正体に気づいているブルーとホワイトは

遥の渡したチョコのお返しが無事に来た事に笑顔を見せたが、

当の遥は

「えええ~!?!? 私、ミスティナイト様に何かプレゼントした覚えないし、

 そ、それにっ、私には他に好きな人が・・・」

と、顔を真っ赤にしてわたわたとしていた。

 

遥が二人が同一人物だと気付くのはまだ先の話。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
3
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択