「軍議って呼ばれたけど・・・俺いなくてもいいんじゃない?」
中庭には、雪蓮、冥琳、祭、穏、一刀が集まっていて軍議を開いていた。
本当に自分が参加して意味があるのか、一番まともな答えを言いそうな
冥琳に訊ねた。
「確かに、今のお前は呉の人間なのだから出なければいけないだろう。
それに、孫呉のために尽くすこと。と最初言ったであろう?」
正論だが、一刀はというと・・
(めんどくせ~)
どうやら、逃げ出す予定だったみたいのようだ。
「何か言ったか?本郷」
「な~にも。で、議題は?」
「ちょっと待ってくれ。もう少ししたら・・」
そういいかけると、
「あ、来ましたよ」
「やっほ~~。許可が下りたわよ」
雪蓮が、こちらに歩いてきた。
「そうか。なら今日中には連絡して、今週中には迎えにいくとするか」
「そうじゃな。権殿の成長も見てみたいわい」
「興覇ちゃんに、周泰ちゃんにも会いたいですしね~」
「懐かしいわね~皆」
一刀をとりのこして話が進んでいく中、
(俺・・どうしたらいいの?)
半分涙目で途方にくれていた。
「ああ、北郷。お前には説明していなかったな」
「で、何なの?見当もつかないんだが」
「各地方に散らばっている旧臣を集める許可が下りたのだよ」
「各地に散らばっている?何で?」
「袁術が私達が力をつけないようにって、仲間を各地に
散らばらせ、一定の力を保つようにしていたのよ」
「そういうことだ」
「ふ~~ん。?でも力をつけないようにって散らばせたんでしょ?
集める許可なんて普通下りるの?」
一刀は疑問をぶつける。
旧臣をを集める許可を出す。ということは、「反抗してもいいですよ~~」
といっているも同然なのだ。
「下りるわよ。あの馬鹿二人は。ねえ一刀、あなた黄布党って知ってる?」
「ああ、知ってる。今暴れている奴等だろ?俺の世界にもいたよ。」
「その黄布党を倒すために兵が必要。集めれば大丈夫。て、いったら下りたわよ」
「え?袁術ってもしかして・・・馬鹿?」
「今頃気付いたの?馬鹿も馬鹿。大馬鹿よ」
「うわ~ひどい言われようだな」
「しかし本郷よ、その馬鹿のおかげで私たちは助かっているのだから、よしとしよう」
「そだね~~。まあ、馬鹿のほうが悪いんだし」
「そうよ。馬鹿なのがだめなのよ」
二人が相槌を打っていると冥琳が話を進める。
「さて、軍議の途中だったな。いま荊州で暴れている黄巾党は北と南の
二部隊。北が本隊、南が分隊だ。袁術だったら本隊を当ててくるだろうな」
「おお!いきなり本隊。勝ったらいいけど、負けたら・・さよならだね~~」
「ほんとね~~まあ、負ける事は無いけど」
「二人とも軽く考えすぎだ。こちらの兵力は5千、無理して1万だ。
その状態で本隊とあたる事は兵法としては邪道だぞ」
「そうですよ~~。兵法の基本は、相手よりも多くの戦力を用意するんですよ~」
そんな呉の軍師をよそに楽観的な意見で話が進む三人。
「大丈夫じゃろ。こちらには本郷と策殿そしてわしが居るのだから」
「そうそう。冥琳と穏の知略もあるんだし」
「はあぁ~~話にならんな・・・」
「大丈夫よ。どうにかなるから」
「なあ冥琳。そんなにやばいのか?」
「ああ、こちらには兵も足りなければ軍資金も足りない」
「ああ~なら袁術に出させれば?」
「なに?」
「だから、本隊と戦ってやるから軍資金と兵を分けてくれって言うの」
「断られたら?」
「それは無いと思う」
「その根拠は?」
「袁術は本隊と戦いたくないんだろ?なら、戦ってやるって言ってるんだから
少しぐらい支援を出すだろ」
「へえ~一刀さんにしては、いい案ですね~」
「なんかひどい言われようだ・・・」
「まあいいじゃないか。よし、本郷の案で行こう」
「そうですね~」
「あ、決まった?」
「ああ、本郷の案を使う事にしようと思う」
「そう。じゃあできるだけ早く館を出ましょう」
「そうだな、では準備に取り掛かるとしよう」
冥琳の言葉で軍議は解散となった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ねえぇ~~まだ着かないの?早く戦いた~い」
「もう少しだ」
「雪蓮さっきからそればっかりだよ。いまので13回目」
「だって、着くのが遅いんだもん。早く戦いた~~い!」
「もういいよ・・・」
「ところで本郷。この戦勝利するのは当たり前。
では、どのような勝ち方が必要だと思う?」
「なにそれ。なぞなぞ?」
「まじめな話だ」
「圧倒的な勝利。火を使えば簡単だよ」
「ほう。そこまで分かっていたか」
「だって、でかい事言ってても実力がなきゃ意味無いもん」
「良い答えだ」
「そんなのはいいから~。私は早く戦いたいのよ」
二人の話をまったく聞いてない雪蓮が14回目の『早く戦いたい』発言をする。
「ねえ雪蓮今の話聞いてた?」
「いいえ」
「はあ~。この戦いには圧倒的勝利が必要なの。
だから、それなりの策も必要なの」
「本郷の言うとうりだ雪蓮」
「そう?盗賊相手に策なんているかしら?」
(雪蓮・・よく今まで国が修めれたね・・)
「じゃあ雪蓮。一人も死者を出さないで戦に勝った軍があったら凄いと思わない?」
「それはとても凄いじゃない」
「今からそれをやろうとしているの」
「しかし本郷、そんな事が可能なのか?」
「できるよ。俺の策では」
自信満々に言うので全員の目が一刀に集まる。
「その策とは?」
「まず先鋒が一当たりして後退する。それを追ってきた黄巾党を俺が炭にする
これで誰一人として死なすことなく勝てる」
一刀の突拍子もない策に一同唖然。
「本郷よ『俺が』と言っているが、黄巾党を炭にできるほどの
炎はどこから持ってくるのだ?」
「ここから」
一刀が指差した先には一刀の腕があった。
「一刀・・・ふざけちゃだめよ」
「ふざけてなんか無いって」
「なら本郷その炎を出せばいい話じゃろ」
「そうですよ~信じろって言う方が無理ですよ~」
「だそうだ。では本郷出してみろ」
「りょーかい」
一刀は手を頭上に上げる。
「炎帝」
一刀の体が燃え出して次第に右手に移っていく。
そして、全ての炎が手に燃え移ると右手には高さ30センチほどの火柱が立っていた。
「じゃじゃ~~~ん!!!」
自信満々に炎を見せる一刀。
だが一同の反応は・・・
「一刀!出せるのは認めるけどこれじゃ駄目!迫力が無いもん!」
「そうじゃ本郷!もっとボオオオオ~~と出せんのか!」
「本郷・・これで本隊をどうやって炭に変える?」
「かずとさ~ん、な~んで~すか~それは?」
非難の嵐・・・
「ぐすっ・・これだけじゃ・・ないもん・・」
もう泣いてもいい位の顔で訴えていた一刀は、火柱を握りつぶして
新しい炎を作り始める。
「あ、また作ってる」
「今度はちゃんとした物がよいな」
期待している二人に反して軍師二名は、
(なあ穏、火はこちらで準備しようとするか)
(そうですね~その方が安心できますし)
もう一刀の炎には興味が無いようだ。
そして、火の準備に取り掛かろうとした時、一刀の炎が完成した。
「完成したよ」
「えっ!見せなさい!」
「わしにも見せろ!」
何万人もの人を炭に変えるほどの炎と言っていたので、
とてつもなくすごい物だと思っていたが、
「「えっ・・・???」」
二人が見たものは先ほどよりもっと小さい火の玉だった。
「「一刀(本郷)・・・何(じゃ)これ?」」
「火柱にする前に許可を得ないと。冥琳」
「なんだ?」
「兵が驚いても文句言わないって約束する?」
「?何のことだ?」
「今から火柱を立てる」
「ああ~そういうことか。良いぞ。」
「分かった。じゃあ・・・」
一刀は右手を高く上げる。
「発」
小さく呟いた瞬間。右手の火の玉が爆発する。
”ボン!ボオオオオォォォ!!!”
「何・・・あれ・・」
「あれは・・・ほんごうが?・・」
一刀の頭上には、約10メートルの火柱が出来上がっていた。
そして、その炎は段々大きくなっていく。
「まあ、本気だったらこれの1000倍は出せるかな?・・・死ぬけど・・」
そういっている間にも炎はどんどん大きくなっていく。
だが、25メートルになったほどで冥琳のストップがはいる。
「それ以上はまずい本郷」
「そう?なら消すか」
素直に炎を消そうとする一刀だが、雪蓮と祭が駄々をこねる。
「ええ~~もっと大きくしましょうよ」
「そうじゃ!本郷もあと1000倍は出せると言っているだろうに」
二人はもっと大きくして欲しいようだが、一刀はさっさと炎を消す。
「あのね二人とも、さっきの炎より大きくすると暴発する危険があるの。
氣を大きくするのは戦で多く兵を出すのと同じなんだ。雪蓮も兵が多いと
軍の統率が難しいだろ?それと同じで氣を多く出すと氣を操れなくなり暴発する危険性がある。
だから炎を消したの。
二人も自分の兵士が黒焦げになって死んでいく姿は見たくないでしょ?」
「「むううぅぅ・・・」」
一刀の正論で二人の短い反抗期は幕を閉じた。
「孫策様!!前方一里に敵分隊とおぼしき部隊を発見しました!!その数約一万!」
「一万・・か、分隊だな。下がっていいぞ。二人とも駄々こねてないで準備をして下さい
あなた達は先鋒なんですから。しっかりやってくださいよ」
「やった~!久々の戦だわ」
「雪蓮・・・暴走だけはしないでくれよ」
「保障は出来ないわ」
「はあ~祭殿。雪蓮は任せます」
「無駄だと思うが、任されよう」
「さて、雪蓮出陣の号令を」
「勇敢なる孫家の兵たちよ! いよいよ我らの戦いを始める時が来た! 新しい呉のためにっ!
先王、孫文台の悲願を叶えるためにっ!
天に向かって高らかに歌い上げようではないか! 誇り高き我らの勇と武を!
敵は無法無体に暴れる黄巾党! 獣じみた賊共に、孫呉の力を見せつけよ!
剣を振るえっ! 矢を放てっ! 正義は我ら孫呉にあり!」
「「「うおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」
雪蓮の号令に兵士達が咆哮をあげる。
「全軍抜刀せい!!」
祭の一言と共に全員が己が武器を抜き放つ。
「全軍、突撃せよ!!」
そして、雪蓮の号令と共に黄巾党に向かって突撃を開始する。
「さて本郷。お前も準備に取り掛かってもらおう」
「ん。でも、失敗したときのことを考えて一応火の準備はしておいて」
「分かった。くれぐれも死ぬなよ」
「大丈夫だって」
「そうと願おう。ではまた後で」
「がんばってね~」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「もう少しね。はあぁ~~」
先鋒の雪蓮はさっきまで喜んでいたのになぜかため息をついていた。
「どうかしました策殿?」
「だって、久々の戦なのに一回当たって退くなんて~
私の誇りが許さないわ」
「確かに。しかし、被害を最小限に抑えるには本郷の策が良いのは確かだろうな」
「私も戦いたい~」
そうこうしている内に敵軍は目の前にきていた。
「まあ、今回は我慢しようか」
「そうね」
そして、雪蓮たちは作戦を開始した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
一方、雪蓮達の後ろで待機している一刀は火の準備に取り掛かる。
「敵さん多いからな~結構大きな火が必要だな」
一刀が氣を練り始めると体が淡い赤色に光り始める。
その光が消えたかと思うとまた、光り始める。
「久々だな~こんな大きな炎を作るなんて」
そんな事を言いながら氣を練っていると前方から雪蓮の声がしてきた。
「か~ず~と~」
「おっ!やっと来たか。」
一刀は氣を練るのを止める。
向かってきた呉の軍はさっと二つに分かれて
一刀を飲みこむ。
「一刀!敵はすぐ後ろだからね~~」
「ん。なら開けたらすぐだな」
そして、兵が全員後ろに行った時、黄巾党が火に包み込まれる。
”ゴオオオォォォォ!!!!!!”
「ギャアァァァァァ!!!」
「た、助けてくれ。た、たの”ザシュッ!”」
辺りには黄巾党の悲鳴と焦げた臭いが漂う中、
燃え盛る火の中から出て来た黄巾党を絶命させていく。
「お前らは、生きるためにやっているかもしれない。
だが、罪の無い人を殺す理由にはならない。
せめて、苦しまずに死ね」
一刀の策で呉は一人も死傷者を出さずに勝つ事ができた。
そして、戦った黄巾党の生き残りは誰一人いなかったそうだ。
「お疲れ~~一刀。予想以上に大きい炎だったわね」
「本当じゃ。敵が可哀想に思えたわい」
「しかし、本当に誰一人死傷者を出さないとは、よくやったぞ本郷」
「でも、この策って一刀さんがいないと愚策ですよね~~
まあ、結果がでたからいいんですけど~」
戦が終わり兵を休ませていた一刀達のもとに吉報が入る。
「孫策様!ただいま孫権様と合流しました!」
「ッ!わかった。下がっていいわ。」
「意外に早かったな。」
「まあ、いいんじゃない。早い方がいいんだし」
「では早速会いに行こうか」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「姉様!お久しぶりです」
「久しぶりね蓮華。元気だったかしら?」
「はい」
「明命も思春も久しぶりね」
「お久しぶりです。雪蓮様」
「お久しぶりです」
呉の将たちは再会を喜んでいるようだが、何を思ったか一刀は兵士の中に
紛れようとする。だが、
「どこに行くのだ?本郷」
冥琳に見つかってしまったようだ。
「ちょっと厠に」
「嘘だろ?」
「はい・・・」
「丁度いい。蓮華様達にも紹介しておこう」
「俺の予想で孫権さんの第一声は『何ですかこの胡散臭い男は!』だ。絶対そうだぞ」
「それは楽しみだな」
「うわっ!ひでえ」
そんな事を言っているうちに呉の将が話しているところに
連れ戻された一刀であった。
「ええと、新しく呉の将?になりました本郷一刀といいます」
ならべく丁寧に言った筈だが
「何ですかお姉さまこの胡散臭い男は!!」
そんな事は耳に入っていないようでさっき一刀が
言った言葉に物凄く似た言葉を言う。
「な?俺の言ったとおり」
完璧に無視され半べそになりながらも冥琳に結果を報告する。
「手紙にも書いたじゃない。それに、将来あなたの夫になるかも知れない人よ」
「なっ!///こんな一般兵にも負けそうなヒョロヒョロな男をですか?!」
「”グサァ!”うう・・」
一刀の心に深々と剣が刺さる音がした。。
「そうです。この様な男、町の暴漢の方が強いように思えますが?」
「”グサッグサッ!!”もう無理・・・」
2本目の剣が刺さって一刀は目を閉じた。
・・・
・・
・
・
・・
・・・
「・・ずと・・・かずと・・・」
「・・・はっ!」
誰かに呼ばれて目を開けると目の前に雪蓮の顔があった。
「あなた、立ったまま寝るなんて・・」
氣の使用による疲労と精神的ダメージで気がつかない間に眠って(現実逃避)
いたようだ。
「ん?軍議は終わったの?」
一刀はまだ眠たそうな目を雪蓮に向けながら軍議のことを心配する。
「終わったのって・・・一刻まえにとっくに終わっているわよ」
「そう。・・・・・・すう」
「まったく、子供みたいね」
また眠り始めた一刀を雪蓮がおんぶして天幕へと連れて行く。
その寝顔は何も悩む事がない子供のような寝顔だった。
まず、投稿遅れてすいません!!!!
ネタが切れてしまって、大佐方の才能が羨ましいです。
この作品の炎と火の区別がついていないのですがそのところは
大目に見ていただけるといいです。
それと、投稿が不定期で比較的遅いと
思いますが暖かく見守ってください。
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投稿です。
過度な期待はせず、読んで頂ければ幸いです。