No.134495

真・逆行†無双

テスタさん

投稿名は違いますが、パスワードを忘れてしまい某サイトで投稿していた奴の改正版を投稿します。
確か二重投稿はいけた筈……ダメだったら消します。
内容は一刀の逆行ものです。
強くはなりますが、最強にはなりません。

2010-04-05 04:37:32 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:15356   閲覧ユーザー数:12526

 

 

 

 

 

 

 

夢から覚めると泣いていた。

 

自分でも分からないけど、もの凄く悲しくてみっともなく泣いた。

 

でも、きっとそれは忘れてしまったからだ。

 

忘れちゃいけない、大切な何かを…

 

「ごめんな、華琳。……なくしちゃったよ……」

 

愛した人たちと駆け抜けた、大切な……

 

「………あれ?華琳って誰だっけ」

 

そう呟いて、また俺は泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一刀、どうかしたの?お箸止まってるわよ」

 

「え?あ、ううん何でもないよ」

 

母さんの声で我にかえる。

気づくと俺以外の食器はほとんど空になっていた。

 

俺は慌てて箸を動かしご飯を食べた。

 

 

 

俺の名前は北郷一刀。

普通の一般校に通う一年生で、今は冬休みということで爺ちゃんの家に来ている最中だ。

 

そんな俺の今の気分はすこぶる悪い。

 

もうどんな内容か忘れてしまったけど、今朝、夢から覚めてからずっと心の中がモヤモヤしている。

 

なんだってんだ…一体。

 

「ごちそうさま…」

 

そんな気分のままご飯を食べ終わると、家族全員が俺のことを心配そうに見てくる。

 

「な、何?」

 

「いや、お前の様子が……元気ないのもそうなんだが、何というか雰囲気が昨日と違って見えてな」

 

と、父さんが。

 

「私もそう思ってたのよ。一刀、昨日何かあったの?」

 

そして母さんがそう言ってくる。

 

雰囲気が違う?

別に昨日は何か特別なことはなかったけど……

 

「別に何もないよ」

 

「本当に?」

 

「大丈夫だって」

 

そう返しても父さんも母さんも心配そうな顔を崩さない。

 

なんだか居心地が悪くなって視線を逸らすと、ずっと黙ってこっちを見ていた爺ちゃんと目があう。

 

それからこの場を逃れるための案が浮かび、さっそく爺ちゃんに声をかけた。

 

「あ、そうだ爺ちゃん。ちょっと剣道の練習つけてよ」

 

「む?剣道のか?」

 

「一刀が自分からお父さんに練習を頼むなんてやっぱり……」

 

……逆効果だったか…。

ってもうこのまま話を進めよう!

 

「うん、ダメかな?」

 

「……ふむ、いいじゃろ。着替えて道場に来なさい」

 

「分かった」

 

それからすぐ、まだこっちを心配そうに見てくる両親から逃げるようにリビングから出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

代々、北郷家は武家の家系で……まぁ父さんは普通にサラリーマンをしているけど、爺ちゃんは離れにある道場で剣術を教える師範代をしている。

 

俺も一応小学校からずっと剣道をしているけど腕もそんなに良くない。

でも俺が剣道部に入っているためか爺ちゃんは俺がこっちに来る度に練習と言って俺の相手をしてくれる。

 

だが剣道と剣術は言葉は似ているが全然違う。

 

剣道は剣を通じて精神や礼儀を重んじ、それを育てる。

 

剣術はそれとは違い実戦を想定しての技を磨く。

 

爺ちゃんクラスになると、本当に戦国時代の侍と戦っているみたいに鋭い攻撃、威力のある打ち込みがされ、俺はいつもボコボコにされたものだ。

 

だから普段は絶対自分から道場に行こうなんて言わないんだけど……今回は両親から逃げるためと、少し今の気分を吹き飛ばすために体を動かしたくて爺ちゃんを誘った。

 

……まあ、今回もボコボコにされるんだろうけど。

 

 

 

 

 

 

道場に着くと、既に爺ちゃんがいた。

道場の真ん中で正座をして目を瞑っている。……と

 

「来たか」

 

「あ、うん。ちょっと遅くなったかな」

 

「いや、気にするほどではない」

 

そう言って爺ちゃんが立ち上がる。

 

……あれ?なにかが違う。

 

違和感が俺を襲う。

いつも道場で爺ちゃんに稽古してもらう時とは違う。

なにかが……足りない?

 

その疑問はすぐにとけた。

 

答えは……気迫。

 

爺ちゃんは普段はとても優しい良い爺ちゃんだ。

だけど道場での爺ちゃんは違う。鬼と言っていいぐらいだ。

 

いつも道場に入った瞬間俺を襲う爺ちゃんの覇気、気迫、重圧。

それらが感じられないのだ。

 

いや、完全に無いわけじゃない。

かすかに感じるものは確かにある。

だけどあまりに微弱。

いつもに比べて小さすぎるのだ。

 

爺ちゃんが抑えてる?

それはない。

爺ちゃんはこと剣術に関しては甘さをまったく出さない。

そんな爺ちゃんが抑えているわけがない。

ならなぜ?

……分からない。

 

「どうした、一刀?」

 

「え?いや……あの」

 

変に考えるくらいなら聞いたほうが早いか。

 

「爺ちゃん今日は体調悪いの?」

 

「む?……どうしてそんなことを聞く?」

 

「うん……。なんかいつもより爺ちゃんの覇気っていうか気迫が小さく感じるから……」

 

「儂の気迫が小さく……じゃと?」

 

「う、うん」

 

「……………なるほど、一刀にはそう感じられるのか」

 

そう呟いて爺ちゃんは考えるポーズをとる。

 

「爺ちゃん?」

 

「…………稽古を始めるぞ。一刀」

 

結局、質問には答えてくれないまま稽古は始まった。

 

モヤモヤがまた増えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では一刀よ、儂と打ち合うぞ」

 

爺ちゃんがそんなことを言い出したのは稽古が始まり、まずは体を温めるためのウォーミングアップを終えてからだった。

 

「え?でも、いつもは素振りから始めてたのに……何で?」

 

「何でもじゃ。ほらっ、さっさと竹刀を持って構えんか!」

 

「うわっ!分かった!分かったってば!」

 

竹刀を振ろうとする爺ちゃんを手で止め、慌てて竹刀を持ち構える。

 

うっ……。

やっぱり稽古してくれなんて言うんじゃなかったかも。

いきなり打ち合うなんて聞いてない。

 

俺が爺ちゃんに適う筈がない。

剣道部ということで普段は木刀を使う爺ちゃんも竹刀を使ってくれてはいるが、竹刀も当たれば痛いってもんじゃないくらい痛い。

 

……俺、稽古終わるまで生きていられるか?

 

半分諦めモードになりながら同じように構えて立つ爺ちゃんを見る。

そこでまた違和感が俺を襲った。

 

「………?」

 

まただ。

また、いつもと違う。

 

今度は爺ちゃんと正面から竹刀を持って向かい合っているのに……威圧感を感じない。

 

汗も、手の震えも、足がすくむのも、何もない。

 

打ち合う時、いつも大きく見えていた爺ちゃんが普通に見える。

そしてなにより……

 

怖くない。

 

「では、行くぞ……」

 

「うん……」

 

毎回緊急に包まれたこの一瞬も、ひどく落ち着いていられる。

 

そして――

 

「ハァッ!!」

 

世界がズレた。

 

 

 

 

――え?

 

――どうなってるんだ?

 

――なんだこれ?

 

――向かってくる爺ちゃんの動きが……遅い。

 

――いや、決して遅くはない。

 

――でも、今まで見えなかった爺ちゃんの動きが見える。

 

――なんでか分からないけど……。

 

――これなら受け止めるまでもなく、避けられる!!

 

 

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

沈黙が道場を支配していた。

俺も爺ちゃんも動きが止まっている。

顔に浮かんでいるのは、お互いに驚愕の表情。

 

避けられた?

爺ちゃんの剣を?

 

「……これを避ける、いや……見切るか、一刀」

 

「ッ!?」

 

爺ちゃんの声に我に帰り、距離をとる。

打ち合いの途中にボーっとなんてしてたら容赦なく爺ちゃんに打ち込まれる。

 

でも、今の感覚らはなんだったんだ?

急に爺ちゃんの動きが遅くなった……。

 

「ふむふむ。面白い、確かめてみるとしよう」

 

そう言い、構え直した爺ちゃんから気迫が増す。

だけど、まだ震えるレベルじゃない。

 

「今度はちぃとばかり速いぞ?」

 

次の瞬間、爺ちゃんの体が動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――!?

 

――またこの感覚!

 

――さっきから何なんだこれは?

 

――ッ!今はそんなことを考えてる暇はないか。

 

――さっきよりは爺ちゃんの動きは速い。

 

――でも余裕で見える。

 

――今度は避けることは、出来そうにないけど……受けるだけなら問題は……

 

――ない!!

 

 

 

 

 

「――ぐっ!?」

 

「何!?」

 

竹刀と竹刀がぶつかる激しい音が響くと同時に、俺の体は後ろに後ずさる。

 

「な……んで!?」

 

「ほう。これも防ぐか」

 

嬉しそうな声を出す爺ちゃんとは違い、俺の中は戸惑いでいっぱいだった。

 

今の攻撃、確かに防げた。

だけどギリギリに。

 

もっと余裕を持って防げる筈だったのに……、結果はギリギリ。

 

一体何で?

 

「なら、これはどうじゃ!!」

 

 

 

 

 

――ッ!また……!考えさせてはくれないか!

 

――落ち着け。動きは見えてるんだ。

 

――冷静になれば、ちゃんと防げ……

 

 

 

 

 

「ヅッ!?」

 

「これも防ぐか、一刀よ!!」

 

またギリギリ……!

 

なんで、ちゃんと見えてるのに!

 

「面白い!面白いぞ一刀!!」

 

「腕が……痺れてっ」

 

受けた衝撃で腕が痺れる。

……見えていても衝撃は関係ないか、そりゃ。

 

「ふははっ!ならばこれも防いでみよ!!」

 

 

 

 

 

――いい加減、何なんだこの感覚は!?

 

――また爺ちゃんの動きが速くなってる。

 

――でも、ちゃんと見える。

 

――落ち着け。落ち着け。

 

――さぁ腕を上げて防……

 

――あれ?

 

――腕が動かない?

 

――いや、動いている。でも、遅い。遅すぎる。

 

――こんな動きじゃ防げない!間に合わない!

 

――まさかっ。そういうことだったのか!

 

――爺ちゃんの動きが遅くなってたんじゃない。

 

――俺も同じように遅くなってたんだ!

 

 

 

 

その考えに思い至った瞬間。

爺ちゃんの竹刀が俺のわき腹を強打した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気づいたか、一刀?」

 

「……爺ちゃん?俺どうし……いだっ」

 

「これ、動くでない。骨に異常はなかったが、儂の一撃がモロに入ったからの、しばらくそのまま寝ておれ」

 

「爺ちゃんの……一撃?」

 

……思い出した。

俺はあの時、受け止めることが出来ずにわき腹を打たれたんだ。

 

「……手加減してくれよ、爺ちゃん。ちょっと動けそうにないや」

 

「何を言うとる、儂に手加減をやめさせたのはお主のせいなんじゃぞ」

 

俺のせい?

 

「まさか、儂の剣筋を見切られるとは思わなんだわい」

 

見切る……。

って言っていいのかなぁ?

初撃はともかく、それ以降はギリギリにしか防げなかったんだけど。

 

「さて、一刀」

 

「何?」

 

「お主、何があった?少なくとも昨日までの一刀では儂の一撃を防ぐことさえ出来なんだはずじゃ」

 

爺ちゃんの言葉に少し考えてから口を開く。

 

「爺ちゃんの動きが遅く見えたんだ」

 

「儂の動きが遅い……じゃと?」

 

「うん、今までに比べると月とスッポンぐらいの差はあったかな」

 

そう、あの感覚。

あの感覚になった瞬間、爺ちゃんの動きが遅くなった。

 

「でも違った」

 

「どういうことじゃ?」

 

「初撃の後もさ、ちゃんと見えてたんだ。そりゃ初撃よりは速かったけど、防ぐのがギリギリにならないでいけるぐらいには」

 

「じゃが、あの時お主は……」

 

「うん、なんでか防いだ時はギリギリだった。なんでかなって思ったけど、それも簡単なことだったんだ。

爺ちゃんだけじゃなくてさ、俺の動きも遅かったんだ」

 

「……つまりは、攻撃は見えていたが体がついてこなかったということか」

 

多分、そういうことだろう。

理由は分からないけど、俺の目が良くなっているってことだ。

 

いや、理由はなんとなく分かってる。

 

「じゃが、どうして急に?目なんぞ1日で良くなるわけがないしの……」

 

「多分だけど……」

 

「心あたりがあるのか?」

 

「うん。信じられないかもしれないけど、それが原因だって心の中で確信してることがある」

 

「……話してくれんか?」

 

「…………」

 

俺はまだ痛む体を起こし、爺ちゃんに今朝のことを話した。

 

起きたら泣いていたこと。

 

何かの夢を見ていたこと。

 

その夢を覚えていなかったこと。

 

夢を忘れてしまったことにまた泣いてしまったこと。

 

爺ちゃんは最後まで笑わずに真剣に話を聞いていてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、つまりはその夢を見たことによって目が良くなったと一刀は思っておるのじゃな」

 

「うん。……なんだか胸が温かくなるんだ。その夢のことを思い出そうとすると」

 

それと同時に…

 

「寂しくて、切なくもなる」

 

考えるだけでまた泣き出しそうになる。

本当にどんな夢だったんだろ……。

 

「ははっ、でもさ信じられないよね、夢を見て目が良くなるなんて話」

 

「いや、儂は信じるぞ」

 

「え?」

 

驚きで爺ちゃんの顔を見る。

爺ちゃんはとても優しい表情で俺を見ていた。

 

「儂は一刀より何倍も長く生きておる、だが所詮人一人の人生など短い。

だから儂の知らないことを一刀が経験するなぞ、なんら不思議なことではない。」

 

そう言って爺ちゃんは俺の頭の上に手を置く。

 

「なにより一刀。お主の心に深く刻まれた出来事。そしてそれを一刀は大切に思っておるのだろう?ならばそれを祖父である儂が信じないでどうする。

その目はきっとその夢ゆり与えられた天の才。

大事になさい」

 

「…………ぅん、ありがとう……ありがとう爺ちゃん」

 

泣きそうだった。

嬉しさで胸がいっぱいで……

 

ああ、爺ちゃんに話して良かった。

 

心からそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、じゃ一刀よ」

 

「何?」

 

「お主、剣を覚えてみんか?」

 

「剣……って、剣道じゃなくて爺ちゃんがやってる剣術のこと?」

 

爺ちゃんが頷く。

 

「うむ、せっかくの天の才。極めなければもったいないと思わんか?」

 

そう言う爺ちゃんの顔は楽しそうな表情をしていた。

まるで新しいオモチャを与えられた子供みたいに……。

 

……そ、そうか。

爺ちゃんは俺を鍛えたい気持ちでいっぱいで、あんまり気にならなかっただけたのか。

 

……感動して損した。

 

まぁ、でも……自分を鍛えるか。

 

「――――っ!」

 

その時、俺の脳裏にある光景が浮かんだ。

 

 

 

 

 

どこかの昔の……三国志時代にあるような城、その城壁。

そこに俺と知らない女の子が立っていた。

 

金髪の髪に巻いたツインテール。

その女の子はとても強い瞳をしていて……

 

『一刀』

その女の子が俺の名前を呼ぶ。

それが泣きたいくらいに嬉しくて、

泣きたいくらいに寂しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一刀?どうしたのじゃ」

 

「っ!?………あ、え?」

 

爺ちゃんの声で我にかえる。

それと同時にさっきのことは頭から消えていた。

 

…俺、何か思い出したような。

 

「大丈夫か、一刀よ?」

 

でも、また確信が胸の内に渡来していた。

 

剣を学ぶこと、それがあの夢に繋がる方法の一つだということが。

 

「……爺ちゃん」

 

「なんじゃ?」

 

「俺に剣を教えて下さい」

 

それが、あの夢に近づく一歩だと信じて。

 

 

 

 

 

 

 

それから冬休みの間、俺は爺ちゃんに剣術の指南を受けた。

 

と、言っても剣術を今は一つも教えてもらっていない。

まずは身体の捌き方、重心移動、それから身体能力を上げるための基礎鍛錬から始めている。

 

そもそも剣の腕なんて数日で上がるわけがない、それに俺には学校もある。

 

そのため春休みがくるまでは今のメニューを繰り返しやるようにと言われている。

早く剣を覚えたいという思いはあるけど、焦っても仕方ないからな。

 

そんな感じで俺は爺ちゃんの家を後にした。

 

 

 

 

そして家に帰って翌日、久しぶりに学校に行くと、信じられないことが俺を待ち受けていた。

 

始業式、目の前には少し暗い様子の校長。

告げられた言葉は――

 

「我が校は今学期を持って廃校になることが決定しました」

 

………………。

 

うそ〜ん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき。

 

どうも初めまして。

ここまで見てくれてありがとうございます。

 

改正とかいいながら三つの話をくっつけただけになってしまいました。

すいません。

しかしパスワードを忘れてしまうなんて……情けない。

 

とにかく此処でまた頑張って書いていくのでよろしくお願いします!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
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