真・恋姫無双 二次制作小説 魏アフターシナリオ
『 想いの果てに掴むもの 』孫呉編
第17話 ~ 天の御遣い呉の現状を知る -前編- ~
結局あの後、風は、風には珍しく、夜寝るまで笑顔で、俺を虐めて来た。
俺は、宛がわれた部屋の寝台の上で正座させられ(床の上で無いだけ、今回はましなのかも)
「季衣ちゃんと流琉ちゃんが、風の立場だったら、どう思ったでしょうねぇ」
「・・・・・・・・えーと、思いっきり泣かれた後、二人に吹っ飛ばされたかも」
「凪ちゃん達だったら、どうしたと思いますか?」
「えーと、とりあえず、袋叩きにあった挙句に、泣かれた上で、散々奢らされたかも・・・・・・・・」
「霞ちゃんだったら、かなり凄い事になりそうですね、どう思います?」
「・・・・・・あーー、凄い勢いで泣かれた上で、罵倒されながら、張り倒された挙句に、しごかれそうだ」
「春蘭ちゃんや秋蘭ちゃんだったら、どうするでしょうねぇ」
「春蘭は間違いなく、泣きながらその場で斬りかかって来るだろうし、秋蘭は・・・・・・・ぶるっ・・・・ごめん、考え
たくも無い、ただ、きっと涙は浮かべると思う・・・・・・・・」
「じゃあ華琳様は、もっと凄いでしょうねぇ」
「・・・・・・・・華琳は・・・・・・・・きっと・・・・・・・・なんか、その手で地獄に叩き落された挙句に、無理やり現世に連れ
戻されて、三日三晩お説教を喰らうなんて、とんでもない様子しか頭に浮かばなかった・・・・・・・・俺どれだけ
華琳を恐れてるんだよ・・・・・・・・でも、きっと俺に分からないように、泣いてたかもしれない」
「そうですねー、きっと稟ちゃんや桂花ちゃん、そして、張三姉妹だって、同じだと思うのですよー」
風の言いたい事は分かる。
桂花は、なんか喜んで止めをさしてきそうな気もするけど、
皆の悲しむ顔が俺の脳裏に浮かび、俺を罪悪感に浸らせる。
きっと、俺が思う以上に、みんなを悲しませたと思う。
風だって、それが分かっているから、
そういった気持ちになるのが嫌だから、
今、こうして俺を虐めているのだと思う。
まぁ、そう思うと、風の行動は、まだましな方なのだと思う。
思うのだけど・・・・・・・・・・・・・・・・はい、十分反省しましたから、もう勘弁してくださいと、最後には泣が入っていたのは、みんなには内緒だ。
「お兄さんの困った顔を、十分堪能できたので、今日はこれくらいにしておくのですよー」
・・・・・・・・今日はなのですか? まじ勘弁してください。
で、あの趣味の悪い歓迎会の次の日、
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・あの」
「くぅーーーー」
街の案内役兼護衛と言う事で、朝から、街の彼方此方を歩き回っているのだが・・・・・・・・
只ひたすら、彼女、甘寧の後を付いて歩いているだけで、案内も説明も、なにもない。
此方から聞いたとしても、
「・・・・・・・・見てのとおりだ」
ギロリッ
「・・・・・・そう、そうですよね(汗」
等と、もはや、取り付く島もない状態だ。
それでも、何とか、街の様子を知ろうとすると、
「・・・・・・・・勝手な事をするな、脚を止めるな」
と、もはや案内と言うより、街の中を引き摺り回される罪人の気分だ。
風に助けを求めるようと、視線を送ると
「今日の所は諦めたほうが良いのですよー、お兄さんは、幾ら芝居での出来事とはいえ、蓮華ちゃんに剣を突
きつけたのですから、思春ちゃんはその事で、きっとおかんむりなのですよー」
「いや、元を返せば・・・・・・ごめんなさい、全部俺が悪いです」
下手な事を言って、昨日の今日で風の機嫌を損ねるのは不味いと、気がついた俺は、慌てて口をつぐみ、甘寧の後を付いていく、案内が無いなら無いで出来る事をするだけだ。
俺は、なるべく道標となるものを覚えながら、街の様子や、其処に住む人々の表情を見ていく。
ところどころ、警備の詰所らしきものもあり、その甲斐あって、その周辺や、表通りはそれに相応しい活気がある。だが、それに比べて、一歩道を外れると・・・・・・・・陰湿な空気を纏っている場所や、暗い影を落とす人達の姿が見える。甘寧が居なければ、風と俺だけでは、どうなっていたか判らないような路地裏まで・・・・・・
そうして、そう言った箇所を何度も回り・・・・・・・・あれ? 普通、こういう所って、余所者の俺達に見せたがらないはずだけど、
そうして、日が傾き始めた頃、何とか広いこの建業の街を、大雑把に見て回る事ができた。
「・・・・・・・・明日は別の者が案内する。 風殿はゆっくり、体を休まれてください」
「・・・・あの、俺には言ってくれないの?」
ギロリッ
「・・・・・・・・言って欲しいのか」
「い・いえ、いいです(なにかそのまま、黄泉路へ旅立つ最後の言葉を送られそうなので・・・・・・)」
甘寧は俺を感情を映さない目で、もう一度睨みつけた後、踵を返して行ってしまう。
「お兄さんは、きちんと気付いたようですねー」
風が、少し嬉しそうに、目を瞑りながら微笑を浮かべる。
「まぁね、無口で厳しい感じの人だけど、どうやら、しっかりと案内してくれたよ。
この街で、何が問題になっているのか、どうしたいのかを」
「で、どうするのですかー」
「うん、基本的には、蜀と同じだよ。
街を見回りながら、今までの報告や記録を読んで、今後の対策を導き出す。
今度はきちんと説明してね。すぐには無理かもしれないけど、根気よく行くよ」
「むふふふふ~♪」
「ん、どうしたんだい」
「お兄さんには分からなくて、良いのですよー」
「そっか」
「明日までには、此処最近の警備を含めた政策の報告書を用意させよう。
それより前となると、2~3日待ってて貰わねば用意が出来ぬ」
「・・・・・・・・えーと、冥琳、頼んでおいてなんだけど、俺たちみたいな余所者に見せていいの?」
難色を示すかと思った、俺の頼みは、あっさりと了承され、あまりの事に、俺が逆に聞いてしまう。
「言ったろ、蜀での噂は聞いていると、
それに、本当に見られて不味い物には、お前達に関わらせるような真似はせぬよ
ただし、それでも他国のお前達に見せるのだ。 それを面白くないと思う人間もいるし、成果を挙げねば、
どうなるか分かっているのだろうな?」
「えーーーと」
「少なくとも、呉でのお兄さんの信用は、ガタ落ちですねー」
「あれ?こいつに信用なんて会ったか?」
「宝譿、それは言わない約束なのですよー」
冥琳の言葉に、一瞬言い淀んだ俺を、フォロー(?)するように、風と宝譿がいつもの小芝居を始める。
・・・・・・・・あの、風、俺を虐めて楽しいですか?
それに、信用なんて最初から無いかもしれないけど、甘寧がこの街に起こっている事態を、何とかしたいと思っている想いには応えたい。
そうだ、そのためにも、現状把握をしなければいけない。
俺は、意を決して、
「冥琳、いま呉に、いや孫家に不満を持つ者達は、どれくらいいて、どういう状況か教えて欲しい」
俺の言葉に、冥琳は目を細め、その瞳の光を怪しく揺らす。
「聞きにくい事を、随分はっきり聞いてくれるな、風の入れ知恵か?」
「風は、何も助言をしていないのですよー。
風は、お兄さんの手助けはしても、それ以上はお兄さんの成長の邪魔になりますから」
「なら、すこし、見方を改めなければいかんな。
だが、気がついたのなら、教える必要があるという事だろう」
「すまない」
「何、貴公が謝る事はなにもない、逆に謝らなければいけないのは、力の及ばない我々のほうだ」
俺の謝罪に、冥琳は、小さく、ゆっくりと息を吐き
「これでも、一時期よりは収まったほうだが、やはり、一度大敗を決し、解体された我等に統治される事を、
不満を持つ有力者や民は多い」
「・・・・・・やっぱり」
「民の不満は判らないまでも無い。口の悪い者は、我等を魏の犬とさえ言い捨てる始末だ」
「・・・・・・・・」
「貴公がそんな顔をする必要はない。 全て力の及ばなかった我等が招いた結果だ。
それでも、民が平和に暮らせるならばと、我等は力の限りを尽くした。だが、結果は見てのとおりだ。
反抗する勢力や、民の妨害で、復興は蜀や魏に比べて大きく遅れている。
それでも、二年の月日をかけて、粗方の反抗勢力の制圧は出来た。そこへ、天の御遣いである貴公が、再び
降臨したと言うのでな、陳留や許昌をあそこまで、導いた貴公の腕を借りたいと思ったのだ。
雪蓮が勘任せで華琳殿と約定を無理やり交わした事が、こんな形で役に立つとは思わなかったがな」
冥琳は其処まで話すと、もう一度今度は深く息を吐く。
それは、今までの苦労を、一気に吐き出すように・・・・・・・・深かった・・・・・・・・
そして、それだけの事を、きっとこの人はやってきたのだと思う。
でも・・・・・・・
「分かっているとは思うけど、俺に出来るのは助言だけだよ。
俺自身には、なんの力も無い、ごく普通の人間なんだ。
それに、この国を平和にするのは、それはこの国の人達の力で無ければいけないと思う。
そうでなければ、何の意味もないし、長続きなんてしない。
民自身が作り上げた平和でなければ、其処に何の誇りも自覚も生まれやしないと思うから」
「ふっ、それを言える者を、ごく普通の人間とは言わんよ」
俺の言葉に、冥琳は、自嘲気味に笑い、そして、
「それに、そんなことは、貴公に言われなくても、我等が誰より自覚している。
知恵は貸してもらうが、決断し、動くのは我等だ。 その辺りは勘違いしないで貰おうか」
そう、力強く俺に鋭い眼光を付き付けた。
「愚弄したと感じたなら、謝罪するよ」
「構わぬよ。ほかに今聞きたい事はあるか?」
「警備の兵達の質と志気は?」
「決して高いとは言えぬが、それでも現状を何とかしたいと思っている者が大半だ。彼らには感謝している」
「じゃあ、蜀で街の警備兵向けに、警備ついて幾らか纏めた物があるから、警備の皆に読ませておいて欲しい。
あっ、だけど、まだ動くのは待ってもらいたい。策無しに動いても、今までみたいに、空回りにしかならな
いと思うからね。今は頭に叩き込む事と意識を改革する事を徹底させて欲しい」
俺は、そう言って、持ってきた書物を冥琳の机に置く。
えらそうな事は言ったけど、纏めたのは風だ。
俺は、魏でやってきた事を、その上で大切な事や考え方を、風に話しただけ、
まぁ、魏に居た時から、許昌での警備を国中に広めるために、行っていた作業だから、蜀で、簡単ながらも纏める事ができたわけだけど。
それでも、俺が四苦八苦しながらやった事をまとめたそれは、蜀では、将達の腕も大きいのだろう、短時間で効果が出始めていた。あの後上手くいっているかは分からないが、考え方さえ分かれば、後は俺なんかより有能な軍師や将が揃う国だ、何とかするだろう。と言うか俺より上手くやるに違いないな。
だが、そんな俺の考えを他所に
「良いのか? もとは天の国の知識とは言え、これは貴公が汗水を垂らして、この世界に合わせた物を纏めた
物、いわば財産とも言える物、貴公はこれに、どれだけの価値があるのか分かっているのか?」
「これで、少しでも民の生活がよくなるなら問題ないよ、元々、そのために纏めた物だからね。
それに、華琳の言葉を借りれば、これは字を並べただけの物、それを活かすも活かさないもそれを読んだ者
次第だよ。もし価値が在るとしたら、これを読んで、これに書かれた事を活かせる人達の事だよ」
「賢しい事を、だが、今はその気持ち、ありがたく受け取っておこう。
ふふっ、風よ。北郷は、いつもこうなのか?」
「困った事に、そうなのですよー」
「確かに、それは困ったものだな」
「え・えーと、俺、何かおかしな事言ったかな?」
俺は、納得顔で頷く二人についていけず、思わず訊ねてしまうが、
冥琳は、俺を見て小さく笑うと
「なに、可笑しいと言えば可笑しいが、それを治せとは言う気に慣れんから不思議だ。
まったく、これではまた、見方を改めねばならぬな」
そう楽しそうに言うのだった。
あの、そう言う言い方されると、よけい気になるのですが・・・・・・・・
つづく
あとがき みたいなもの
こんにちは、うたまるです。
第17話 ~ 天の御遣い呉の現状を知る -前編- ~ を、此処におおくりしました。
最近、他者の作品を見て思った事だけど、この『想いの果て・・・・・・』では13話まで課していた行数目標は、多作品に比べて多いと言う事が分かりました。
それと、某作品を見て、どうしても繋ぎが上手くいかなかったら、いっその事ぶった切ると言う事を学びました。まぁその某作品は、私では真似できないほど、古いレコードの針の如く思い切った飛ばし方でしたが(と言いつつ、表現としては知っているのですが、レコード自体を知らない世代だから、適当に言っているだけですが)
まぁ今回は他作品に比べても短すぎですが(汗
と言うわけで、制限を外したら、少し気が楽になり、結構ハイペースで書けました。
さて、孫呉編に入って、最初に味方に引き込めたのは、総都督こと冥琳でした。
孫呉の現状の設定には、不満を持つ方も居られると思いますが、こういった事もありえると、私は考えています。孫呉の最大の強みは、信義の絆でしたが、それが一度ズタズタにされたわけですので、魏の支援があったとは言え、その復興の道のりは、並大抵のものではなかったと思います。そして、そんな彼女を少しでも、助けたく思い、スポットを当ててみました。
さて、次回ですが、誰にスポットが当たるかは、次回へのお楽しみと言う事で、
頑張って、執筆いたしますので、どうか温かい目で見守りください。
Tweet |
|
|
137
|
16
|
追加するフォルダを選択
『真・恋姫無双』魏END後の二次創作のショート小説です。 誤字脱字があると思いますが、 温かい目で見守ってやってください よろしくお願いします。
風の芝居に衝撃を受けた一刀、だが、そんな一刀は、更なる衝撃的な事実を知る。