人々はその少年を探す。
蒼い眼をした少年は人生を変える。
噂が人々を集め、少年の元へ導く。
自分の人生がどんな方向へ向かうか知らずに・・・。
その部屋には明かりがついていない。
人の気配を感じさせないその部屋にひっそりとその少女はいた。
壁は引っ掻いたような後があり、不気味さをかもし出している。
少女の目は果てしなく虚ろだった。
ただ口だけはにっこり、異常なほどに笑っていた。
約三日ほど前。某高等学校1年4組教室にて。
少女がその噂を耳にしたのはそのときであった。
少女の名前は河田咲。
ごく普通の少女を思わせる雰囲気を漂わせている。
少女は一人、何処をむいているかもわからない瞳を教室に向けていた。
なぜ少女の周りには人がいないのか、それは彼女の名前を知る者は全員といって良いほど知っていた。
彼女は人を寄せ付けない。
彼女は「人間」を嫌悪していた。
おかしな話だが、人間が人間を嫌いになる事は決して珍しくない。
ただ彼女の嫌悪は関わった人間にはもちろん、関係の無い人間にも嫌悪感を抱くのだ。
彼女は人間というもの全てが大嫌いだった。
周りの人間はなぜ彼女が人間が嫌いなのか分からない。
彼女に近づくと、冷たい眼を向けられるからだ。
それでも近づいたものはたくさんいる。
しかし、その人間がいくら頑張ろうと最後に言われる言葉はいつもこうだった。
「殺したくなるから消えて。」
彼女は孤独だった。しかし彼女はそのほうが幸せだった。
「そういえばあの相談の件どうなったの?」
「あぁ、あの蒼眼の?」
「そうそう。由よくあんな怪しいとこ行くよ。」
「あの人の予言は当たるってすごい噂なんだから。」
「噂じゃ、あの人人間じゃないとか。」
「なにそれ!!!笑えるんですけど!!!」
「いや、でもかなり本当っぽいよ。あの人本当に不気味・・・。」
咲は興味を持つ。
数年ぶりの反応。
人間の会話に興味を持つ事は無意味だとも思っていた咲にしては偶然聞こえてきた会話にビックリした。
気付くとその女子生徒の胸倉をつかんで叫んでいた。
「そいつの居場所を教えろ!!!!!!!!!」
周りはいつしか静まり返っていた。
いつも反応すらしない咲が大きな声で、しかも女子の胸倉をつかんでいるのだ。
女子生徒は声も無く、ただ恐怖の色を瞳に浮かばせていた。
そしてその静けさをぶち壊すように少女の声は再び響く。
「何で黙るの!?答えて。」
そしてようやくその少女は答えた。
「うっ裏の2丁目の喫茶店の裏!!!!」
そう少女が答えると咲は手をぱっと離した。
少女は床にどさりと落される。
まだ授業があるにもかかわらず少女はカバンを持ち、学校をでた。
その後、教室中が彼女の異常性を再認識した。
少年はいつもどおり冷房がガンガンにきいた部屋に居た。
最早冷房といって良いのかも分からない。
「冷凍庫」といったほうが正しいのだろう。
室温が0℃以下になった部屋にはクマのぬいぐるみが床中に散乱している。
部屋の中に明かりは無く、外の光も全く入ってきていない。
目を凝らしても何も見えない状態だ。
その中に厚手のコートを羽織った人が一人入ってきた。
性別は部屋の暗さと厚手の服が重ね着されているせいで分からない。
「目の調子はどうだ?」やや低めの声でその人が聞く。
声からも性別が分からない。
少年はゆっくりと目を開きながら答える。
「大丈夫。回復してきてるよ。」
少年は暗くて見えてないはずのコートの人の方を見て言った。
「溶け出してきませんか?あまり無茶しないでください。あなたの目は2℃以上の温度に耐えられないのですから。」
少年の目は特殊だ。
少年の目がこうなったのは4歳の時だった。
彼の目は元々弱かった。少しの日の光で腫れあがり、なかなか元に戻らなかった。
時が経つにつれてそれは徐々に酷くなっていく。
彼の4歳の誕生日の時、突然家族が消えた。
わくわくして眠りから目を覚ます。少年は何かのサプライズだと思いひたすら探す。
そして出てはいけないと言われていた外にでる。
春の暖かい日差しが彼の目に襲い掛かる。
そこから彼の人生が狂いだした。
彼の目から涙が零れ落ちる。
涙と共に温度によって溶かされた目玉が流れ出し、彼の目に激痛が走る。
そして気が付くと彼はもう普通の生活に戻る事を許される事がなかった。
「もうすぐ来るよ。」
狂った少女が彼の元にたどり着く1時間ほど前に彼はボソッとつぶやいた。
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蒼眼の少年「鈴鬼」は特殊な目を持つ少年。
その特殊能力を商売道具とし、様々な人の人生を操る・・・。
のんびり更新していきます。
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