/京
京たちは戦を終え、城に戻り、そして公孫賛から解散と告げられた。
京「公孫賛。ちょっといいか?」
公孫賛「ん?どうした柊?」
京は部屋に戻ろうとする公孫賛を引き止める。
京「この近くに川ってあるか?」
公孫賛「ああ。小さい川ならこの街をでて少し歩いたところにあるが、それがどうした」
京「いや何でもない」
公孫賛「そうか」
京「疲れている所悪かったな」
公孫賛「いや気にするな」
そう言って公孫賛と別れた。
その日の夜遅く、京は街を出て川がある所に向かった。
京「・・・ここか」
そう言って京は川に足を踏み入れ、そして手を洗いだした。
京「(・・・こんなことしても意味がないと分かってはいるが)」
意味がないと分かりながら京は手を洗い続ける。
京「(・・・まだ、残っている気がするな、人を刺した感触が)」
そして顔を洗いだした。そのあと横になり、月を見つめ、月に向け手を伸ばす。
京「(・・・とうとう人を殺したか。・・・一刀はどう思うかな、俺が人を殺したと知ったら。・・・俺から距離をとるかな。・・・ははっ、嫌だな、それだけは)」
月を見つめながら思っていると、
???「不用心ですな」
と話しかけられる。
京「・・・星か」
上体を起こし、声がした方向を向く。
星「ええ」
京「何か用か?」
星「いえ。京殿が外に出たのが見えたもので」
京「そうか」
星「・・・それはそうと、京殿」
京「ん?」
星「・・・泣いていらしたのですか?」
京「・・・えっ?」
そう言われて初めて泣いていることに気付いた。
星「・・・気付かれてなかったので?」
京「・・・ははっ、そうみたい・・・だな」
そう言いつつも京は涙を拭こうとしなかった。
星「・・・お邪魔でしたかな?」
京「・・・いや、せっかくだから話を聞いてもらってもいいか?」
星「・・・承知しました」
京「悪いな」
そう言って京は川から出て、星の隣に座り話しはじめた。
京「・・・知っている通り今日、俺は人を殺した」
星「そのことで泣いておられたのですか?」
京「・・・星が思っているのとは違うな」
京は少し悲しそうな目をする。
京「この世界に友達が来ているかもしれないと言ったよな?」
星「ええ」
京「その友達がだな、・・・俺が人を殺したと知ったらどうなるかと思ってな」
星「・・・」
京「正直な話、桃香たちや公孫賛、それに星に嫌われても別にかまわないと思っている。人が誰をどう思おうと俺には関係ないからな。まぁ、あいつらを守ると決めたから嫌われてても守るけどな」
星「・・・」
京「けど、一刀は別だ。あいつだけは別だ」
星「・・・それほどまでに凄い方なので?」
京「凄いかどうかは知らないが俺にとっては特別な奴だ」
星「・・・特別ですか」
京「ああ。特別だ」
星「それをお聞きしても?」
京「・・・そうだな。簡単な説明になるが、俺は一刀に、・・・その友達に会うまで荒れていた」
星「京殿がですか?」
京「ああ。毎日ではないが喧嘩もしてた」
星「・・・」
京「・・・そんな時に一刀と出会った。一人で昼飯を食べている時に一刀と友樹が来てな、一緒に食べないかと、まぁ誘ってきたのは一刀だけで友樹は反対していたけどな」
星「それで一緒に?」
京「いや、当然断って一人で食べたさ。けどな、一刀は次の日も、その次の日も誘いに来た。・・・そして誘い続けてきて何日目かのある日な」
星「・・・」
京「・・・俺はあいつを思いっきり殴った。目障りだと、俺に構うなと言って」
星「・・・」
京「そしたらあいつなんて言ったと思う」
星「・・・分かりませんな」
京「ははっ、今思い出しただけでも笑える。・・・あいつはな、俺がさびしそうにご飯を食べていたからって、そう言った」
そう言って京は目を細め、月を見上げる。
京「あいつを殴った日から何日かたったある日」
星「・・・」
京「・・・俺は死にかけた」
今度は目を鋭くし川を見つめる。
京「喧嘩相手がナイフを・・・武器を持って仕掛けてきたんだ。一人だったら何とかなったと思うが、複数いてな。それで腹に刺さって、死にかけた」
星「・・・」
京「それを知った一刀がな、泣いてこう言った。『無茶はしないでくれ』と、まぁ他にもいろいろ言っていた。その一刀に対して俺はこう言った。『なぜお前が泣く』と。そしたら『友達が泣かないなら俺が代わりに泣く。何も取り柄のない俺が友達に出来ることはこれだけだから』と」
星「・・・」
京「俺はそれを聞いて、ばかばかしいと言い、一刀を部屋から追い出し、夜になって・・・泣いた」
再び目を細め、月を見上げる。
京「俺はな。両親がいない。小さい頃に死んだらしいだが詳しいことは分からない。それまで俺は親戚の家を転々としていた。・・・俺が邪魔だったんだろう。だからな、俺の事を心配してくれる奴、ましてや俺のために泣いてくれる奴は初めてだった。そんな奴がこの世の中にいるのかと、正直信じられなかった。・・・だからかな、泣いたのは。・・・その夜は思いっきり泣いたな」
星「それでその後、どうなされたので?」
京「何日か経ったある日、一刀がまた俺を昼飯に誘いに来た。・・・俺は誘いにのり、三人で食べた。・・・その時、一刀は俺に色々話しかけてきて、・・・俺は、・・・笑った。久しぶりに笑ったような気がした。・・・そして、食べ終わった後、俺は一刀に謝った。殴ったこと、今まで失礼な態度をとっていたこと、・・・そして最後にお礼をした。こんな俺の事を友達だと言ってくれたことに」
星「・・・」
京「その時からかな、一刀だけは裏切らないと、どんなことが起ころうとあいつだけは守ると、あいつが泣くようなことは二度としないと、誓った」
星「いい友人を持たれましたな」
京「ああ。あいつは俺の誇りだ。今の俺がいるのはあいつのおかげだ。・・・だからな、俺が人を殺したと知ったあいつが俺を怖がり、避けるんじゃないかと思うと・・・怖くてな。・・・戦の帰りにそれをずっと考えてた」
星「あの時にそのようなことをお考えでいらしたとは。普段通りにみえましたな」
京「星にそう言われると安心だな。・・・少なくとも桃香たちには感づかれたくはなかったし」
星「私だったらよろしいので?」
京「・・・少なくとも今はな。俺はあいつらの主だからな。怖がっている姿を何度も見せられない」
星「・・・今はですか」
京「ああ。今はだ」
星「ふむ」
京「・・・それはそうと星」
突然真剣な目をしながら星に尋ねる
星「なんでしょう」
それに答えるように星も真剣な目になる。
京「戦の帰りに少年を助けたと言っていたな」
星「ええ」
京「その少年は真名を知っていたか?」
星「・・・いや、知らない感じでしたな」
京「そいつの服装や特徴は?」
星「・・・見たことも無い服装を着ていましたな。特徴は、・・・気弱な感じの少年だったかと。・・・すいませぬ。短い時間しか会話をしなかったため、あまり覚えてはおりませぬ」
京「・・・いや、こちらこそすまない。・・・もしかしたらと思ったんだが、それだけでは何とも言えないな」
星「・・・友達ですかな?」
京「いや、どうだろうな。真名を知らない時点で可能性は高いがはっきりとは言えない。・・・それでその後そいつはどうした?」
星「陳留の刺史殿に保護されたかと」
京「確認はしてないのか?」
星「・・・はい」
京「・・・そうか。ちなみに陳留の刺史って誰だ?」
星「・・・確か。曹孟徳だったかと」
京「曹孟徳?・・・あの曹操か」
星「知っているのですか?」
京「一応な。もちろん直接会ったことはないが。・・・とするとそいつは曹操に保護された可能性が高いか」
星「・・・万が一、保護されていなかった場合は?」
京「そいつが一刀だった場合は、どんな手段を使ってでも探し出す。・・・友樹だった場合は、まぁ気が向いたら探すか」
星「・・・それでいいので?」
京「ああ。問題ない。友樹は一人でも何とかするだろうしな。・・・あとは曹操に直接会って確認するしかないか。知らない奴かもしれないしな」
星「すいませぬ。私が彼を保護していれば・・・」
京「しかたないさ。それにこれは俺の問題だ。・・・だから星が気にする事ではないさ」
星「そう言っていただけると助かります」
京「それに今思い出した俺もどうかと思うけどな。自分の事しか考えてなかった俺も悪いし、しかも桃香に八つ当たりしたしな」
星「けど、あれはあれで良かったかと」
京「う~ん。確かにあれで良かったかも知れないが、それは結果論だしな。まぁ、終わったことを今更は後悔しても仕方ないか」
そう言って京は空を見上げた。
京「・・・さて」
そして京は立ち上がる。
京「そろそろ帰るか」
星「そうですな」
京「今日はありがとな。・・・話を聞いてもらって、正直助かった」
星「いえ」
そして二人は街へと歩き出した。
京「・・・そうだ、星」
と街に入る寸前で京が星に話しかける。
星「何ですかな」
京は止まり話を続けた。
京「俺たちはいつかここを出る。・・・その時一緒に行かないか?」
星「・・・」
それを聞いた星も止まり、黙り込んだ。
京「別に返事は今じゃなくていい。・・・俺たちがここを出る時までに返事をもらえたらありがたい。・・・まぁ星が一人で旅に出たいなら止めるつもりもないが」
星「ふっ、それではその時までには」
京「ああ。頼む」
二人は再び歩きはじめ、城に戻り、別れた。
京は部屋に戻り、横になり、考え始めた。
京「(・・・人を殺すのは俺が弱いからだな。・・・だとすると、愛紗に鍛えてもらい、人を殺さない技術を身につけないと)」
天井に手を伸ばしてから、そして眠りについた。
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酷い文ですが読んでくれる人がいてくれると幸いです。