はじめに
この作品はオリジナルキャラを主役にした恋姫もどきな作品です
原作重視、歴史改変反対な方
ご注意下さい
目を開ければ
そこにあるのは真青な空
雲一つなく何処までも澄みきった
吸い込まれそうになる程に
真青な空
ああ、なんて綺麗なんだろう
こひゅう~…ひゅう~
なんだ?
自分の息が立てる音に違和感を感じる
ズクン
「っつ…!」
なんだ?
息を吸う度に胸が痛む
だが靄が掛かる思考に
目に見える真青な空に
ああ、これは夢の中か?
どこか現実感のない空気に
目を閉じたその時
「ぎゃああああああ」
断末魔の叫びに薄れ掛けていた意識が戻る
「なっ…!?」
顔を上げれば辺りには死臭が漂い
「っ…!?」
飛んできた腕がポンと彼女の胸に当たった
「がっ!?」
大したことのない…そう普段の彼女であれば石礫が当たるほどでもない、その『衝撃』に顔が歪む
肋骨がやられたか
その痛みに此処が戦場であることを思い出す
呂布の最初の一撃により遥か後方まで吹き飛ばされた楽進~凪
咄嗟に両腕で衝撃から身を守ったもののその衝撃で意識を失い、そして
両腕も…か
砕けた閻王の破片がこびり付いている両腕を見れば、既に赤黒く腫れている
そして再度顔を上げれば彼女が飛ばされた場所まで進み出た呂布が視界に入る
「来い…その喉笛を噛み千切ってやる」
よろよろと立ち上がりながら呂布を睨む凪
目が合った呂布が自身に向けられた殺意の元を消そうと進み出たとき
ボフウウウン…
「な!?」
「!?」
突然の煙幕に対峙していた両者が驚く
直後自分の身体に浮遊感を感じる凪
「…隊長っ!?」
「逃げるぞ!?」
自分が抱き上げられたのだと気づくと同時に…視界に入るのは自身が直属の上司である一刀
「待ってください!…まだ部下が!!」
「……」
胸の痛みにも関わらず声を張り上げるも一刀は此方を見ようともせず
「隊長!!」
「凪…黙っていてくれ」
悲痛な表情を浮かべ唯歯を食いしばり、凪を抱きかかえたまま走り続ける一刀
「…隊長?」
「凪…既に壊滅や」
訳が解らないでいる凪にふいに聞こえる親友の声
抱えられたまま横を見れば同じく走り続ける真桜の姿
「真桜…なっ何を?」
「よう頑張った…凪の兵は…よう…頑張った」
自身の親友の言葉の意味をようやく理解した頃
「う…ぐっ…ええ」
ボロボロ零れる涙と零れ出る嗚咽
体中の痛みとショックと悲しみに
凪は唯泣いていた
一刀は腕の中で泣きじゃくる凪にどう言葉をかけるか
どうかけていいのか解らずに…ただ煙幕で煙る中を走り続けていた
今は…逃げる方が先決だ
しかし
「逃がさない」
「あかん!来るで隊長!」
「何!?」
煙幕を切り裂くようにして赤兎馬が飛び出し…三人の頭上を跳び越し行く先を塞ぐ
「っ!?」
冷たい
なんの抑揚も無い瞳が此方を見つめる
ごくりと息を飲む一刀…と
「隊長…凪は頼んださかい」
凪を抱きかかえる一刀の前に進もうとする呂布に立ち塞がらんと両者の間に真桜が出る
フイィィンと螺旋槍が音を立て回転し始める
「駄目だ!真桜!」
「…やめろ…お前じゃ…」
後ろからかかる二人の声に
「はよ行け…後生やから」
振り向いた真桜には笑顔
そして北郷一刀は奥歯をかみ締め
「すぐに戻る…凪を安全なところまで置いて来たら…すぐ戻るから」
「たっ…!?」
走りだす一刀
真桜を置いて
歯を食いしばり
腕の中の凪が暴れるのを無視して
凪の悲痛な叫びも無視して
一刀の姿が遠く小さくなった頃
「隊長を…見逃してくれるんかいな」
ならうちも…と言いかける真桜だったが
フルフルと呂布は首をふり
「すぐ…追いつく」
「…そうかい」
たは~とため息をつく
そして
ゆっくりと方天画戟を構える馬上の呂布に
「うちのダチが世話なったなぁ…凪を泣かした分、きっちりと侘び入れさしてもらうで?」
瞳には怒りを宿らせながらも笑いかける真桜
「恋の家族も…泣いてた」
「あん?」
馬上から真桜を見つめる瞳に陰る感情…それは悲しみ
「月も…泣いてた」
「っは!お互い様やっちゅう訳やな?」
コクン
「なら…喧嘩両成敗と行こか?」
コクン
「でも…恋が勝つ」
「やってみい…ま、持って十合っちゅうとこやけど」
螺旋槍の回転数が上がっていき
キイィィィン
その音が甲高い悲鳴に変わり始めた
そんな真桜を見据える呂布は
またしてもフルフルと首を振る
そして手綱を握っていた手を此方に向け
開いてみせる
「…五合」
直後赤兎馬から跳躍しその勢いのままに方天画戟を振り下ろす
高速回転する螺旋槍と方天画戟がかち合い火花が飛び交う
ギャギャギャギャ…
高速回転し続ける螺旋槍を物ともせず力任せに押し込む呂布
「ちぃ!こ…こんのぉ!」
歯を食いしばり押し返そうとする真桜だったが、その力の差は到底埋められるものではなく
徐々に押され
ガガガガガ…
顔の目前に自身が武器が迫る
「…一合?」
「そ、そうかも…」
既に片膝を付き、押し切られると真桜が諦めかけたその時
「なら二人がかりではどうだ?」
突然目の前に現れた槍を首をひねって交し
「はあっ!」
続けざまの二撃目を方天画戟を横薙ぎに振り弾く
その反動で後ろに跳躍し距離を取る呂布
「ふむ…あれを防ぐか?…本物か」
「…誰?」
呂布の視線に連られるように振り向けば
「北方常山の趙子龍…我が主が命により此処に推参仕った」
愛槍、龍牙を構え不敵に笑う趙雲~星
そして
「星だけに良い格好はさせないのだ!鈴々も戦うのだ!」
「曹操が将よ…関雲長、これより義により助太刀いたす」
義勇軍を率いるは劉備が義姉妹がそれぞれの獲物を構えている
三人の名乗りに
「恋は…呂布」
「…なんか逆ではないか?」
呂布~恋の名乗りに愛紗が眉を顰めるが
「どっちでもいいのだ愛紗!」
「そ、そうか?」
そんな緩い二人のやり取りを他所に星が一歩前に進み出て
「多勢に無勢なのは承知しているが…構わんな?」
真桜と呂布の間に立ち塞がり首を傾げてみせる
「いい…何人相手でも…同じ」
その姿を見据えた恋の殺気が目に見えて膨れ上がっていく
その様に星は振り向き
「くくっ…だそうだ?」
義姉妹が頷く
「ならば…覚悟されよ」
「鈴々は負けないのだ!」
「我が青龍偃月刀…受けてみよ」
呂布を取り囲むように三人
そして
「助けられっぱなし、やられっぱなしゆうんは…北郷隊の名が泣くねん」
真桜も立ち上がり螺旋槍を再度構えた
「…来い」
呂布の声に
四人は一斉に飛びかかった
あとがき
ここまでお読み頂き有難う御座います
ねこじゃらしです
というわけで虎牢関編の中編の中編の中編でした
さすがに三つの描写を同時に進めるのはめんど…紛らわしいので、以降はそれぞれの描写毎に書いていきます。まあ同軸の展開であることを予めご理解いただき、読んで頂ければと…
さて次回も曹操軍&劉備軍VS呂布軍てなわけで行きたいと思います
それでは次の講釈で
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第22話です
昼間寝すぎて気持ち悪い…