黄色の布を身に付けた賊が出現し、黄巾党(賊)と呼称される様になった。
黄巾賊は大陸各地で出現し、“自身を漢に苦しめられた民”と自称しながらも民草に猛威を振るった。黄巾を身に付けた者たちの乱。“黄巾の乱”と呼ばれる様になっていた。
幽州。この地は、鮮卑(せんぴ)や烏桓(うがん)といった異民族からの侵略攻撃の可能性がある。しかし、そんな中でも、小規模ではあるが黄巾賊は発生していた。
この幽州を統治しているのは、北方の雄こと公孫賛。彼女は異民族との睨み合いの中での賊討伐だったため、上手く黄巾を押さえることが出来ていなかった。
しかし、ここで登場したのが劉備・関羽・張飛の三姉妹である。
この三姉妹は、公孫賛の客将として名を挙げ、義勇軍を旗揚げするまでになった。
そんな彼女たちは、北部の守護に集中したい公孫賛に、南部の黄巾の討伐を依頼されていた。
当初、依頼をした公孫賛自身も、受けた劉備軍も小規模の賊討伐ならば、二・三ヶ月で鎮圧出来るだろうと踏んでいた。
しかし、現実は違っていた。
旗揚げから半年、未だに幽州の黄巾賊は絶えていない・・・
~幽州 劉備義勇軍天幕~
日が暮れたころ、軍議用の天幕に義勇軍の主要人物たちが集まっていた。
この場に居るのは、桃香(劉備)、愛紗(関羽)、鈴々(張飛)、朱里(諸葛亮)、雛里(鳳統)の五人である。
皆が集まり沈黙する中、朱里が話を切り出す。
「皆さんに集まってもらったのは他でもありません。現状の異常性についてです」
皆、神妙な顔になる。
「にゃ?」
否、鈴々だけが、この集りの意味を理解していなかった。
「愛紗。何のことなのだ?」
「・・・鈴々・・・ハァ」
首を傾げる妹の姿に、愛紗は嘆息する。
「愛紗ちゃん。何のこと?」
訂正、桃香も理解していなかった。
「と、桃香様・・・」
笑顔で訊いてくる姉に言葉を無くす愛紗。
そんな愛紗に、雛里が声を掛ける。
「あ、あのぉ~・・・」
「・・・何だ?」
「ひっ!」
「愛紗~。睨んだら駄目なのだ」
「あ、す、すまん」
鈴々に注意され、そっぽを向きながら謝罪する愛紗。
そこで、ようやく話が出来る、と朱里が内心で安堵する。
「では、話を戻します。先程言った異常性とは、幽州における黄巾党の数です」
「あ、なるほど。そう言えば、たくさん戦ったのに全然減らないね」
桃香が、パン、と手を叩く。
「そ、そうなんです。そして、その原因は、冀州からの流入です」
「冀州から・・・残党がか?」
継いで説明をした雛里の言葉に愛紗が首を傾げる。
「いえ、ほぼ無傷です」
「無傷だと?何故そんな奴らが来る!?」
「ひぅ!あ、あのあの」
またも愛紗に睨まれて縮こまる雛里。
「あのですね。どうやら『白虎』が冀州に入った様です」
代わりに朱里が答える。
朱里の説明はこうだ。
冀州の袁紹軍は黄巾党の討伐が思う様にいかず滞っていた。さらに南方・西方の黄巾党残党の流入も許してしまい、荒れる一方だった。そこに天の御遣いが率いる義勇軍として名を上げていた『白虎』が冀州に入った。黄巾残党は、その勇名を誇る『白虎』に恐れをなし、戦う前に幽州に逃れた様だ、と言うことだった。
「逃げて来た奴らが、此処で暴れてるのだ?」
「袁紹が討伐を怠った所為か」
「「・・・・・・」」
鈴々と愛紗の言葉に、朱里と雛里が黙る。
「それにしても、戦わずに逃げるとは、腰抜けにも程が・・・どうしたんだ、二人とも?」
愛紗が二人に声を掛ける。
二人は顔を見合わせる。
そして頷き合い、意を決した様に口を開いた。
~幽州 南方『白虎』~
豪臣率いる『白虎』は、先日冀州から幽州へと移っていた。
秋蘭たちに別れを告げた後、黄巾残党が集まりつつあると言う冀州に向けて進軍した。しかし、冀州に入ってみれば黄巾党の数が、情報よりも圧倒的に少ない。これは、袁紹軍の参謀郭図(カクト)に因るものであった。郭図は、『白虎』が冀州に入る前に黄巾党の軍勢の数倍の軍を操り相対した。圧倒的な戦力の違いに、黄巾党は戦闘らしい戦闘をせずに後退する。この後退の道(逃げ道)を、わざと幽州側に作り誘導したのだ。おかげで、殆ど戦力を減らさずに冀州の黄巾党を減らすことに成功していた。
しかし、この話には続きがある。
郭図が取った行動は、名家である袁家の行うべきことではない。周りから、と言うか誰が見ても袁紹が黄巾党を幽州の公孫賛・劉備に押し付けた様に見える。そのため、この所業を『白虎』が行ったことにしたのだ。
つまり『白虎』が、多過ぎる黄巾党を減らすために幽州へと誘導した、と言う風評を流したのだ。
「郭図のおっさんにはやられたよなぁ」
豪臣は、行軍中の馬上で毒づいた。
「そうですな。まさか、我々が黄巾党を幽州に押しやるなど・・・」
「全く。知らぬところで汚名を擦り付けられていたとは・・・あんな三下が参謀とは、袁家も終わりだな」
星と昴(すばる)が同意する。
「だろ?しかも汚名を雪ぐために、態々幽州に行かないといけなくなったんだからな」
(まぁ、劉備を見るために、行くつもりではあったけど・・・面倒くさいんだよな)
と、豪臣が思っていると
「良いではありませんか。沮授さんや田豊さん、顔良さんからは謝罪があったではありませんか。袁紹陣営も、全員がああではありませんよ」
鈴花が苦笑しながらそう言う。
そう。郭図のやり方に反対したその三名は、豪臣たちが冀州入りすると、豪臣たちからの抗議が来る前に謝罪文を連名で送って来たのだった。義勇軍如きに、態々自発的に謝罪してきたのだ。この三名にとっては最大級の礼を尽くした詫び方だっただろう。
当然、身分の高い方からの謝罪で、それを受けた『白虎』に余計なことをさせない狙いがあったのは確実。しかし、一度だけ直接会う機会のあった顔良は、隠れてではあったが豪臣に頭を下げて見せていた。これにより、豪臣たちは溜飲を下げた。
「それは、分かってるさ。ただ、あの袁紹の姿を見ると終わったも同然では?」
「ふふ、確かに」
昴と星がそう言っていると
「・・・申し訳ございません。我々の報告が遅れてしまったばかりに」
急に後ろから声が掛った。
「うおっ!」「なっ!」「!!」「あらあら」
豪臣と朔夜を除く四人(三人?)が驚く。
皆の後ろに居たのは、白尽くめの暗部だった。
「団長ですか。あなた方はよくやっています。気にしないで下さい」
謝罪する団長と呼ばれた者に、朔夜が労いの言葉を掛ける。
隠密部隊である暗部の隊員は、全員で百人。つまり部隊長の朔夜の下には、百人を纏めるこの団長一人しか居ない。さらに、隠密部隊長である朔夜は、暗部が戦場の表舞台に出られないために単騎、若しくは虎の姿で豪臣を乗せて駆ける。この団長と呼ばれた者が、実質的に暗部を率いていると言っていい状態である。
因みに、この者の正体は、豪臣と朔夜以外は、年齢性別容姿を把握していない。
「暗部さんたちの所為ではありません。だから、あなたを責めたりしませんし、あなたが悔む必要もありません。
郭図さんが一枚上手だったのでしょう。今回は彼の一人勝ちです。陣営内では、黄巾賊を追い払った功を立てることが出来て汚名は我々に。我々は汚名返上のために、早々に冀州から幽州に移ります。これにより、我々は冀州での名を上げる機会を奪われました。
これは、“情報伝達が遅れたため”に、後手に回らざるを得なかった、と言うのが原因ではありますが」
「「「「「「・・・・・・」」」」」」
((((((責めないって言ったじゃん!))))))
微妙に責めてくる鈴花に暗部団長は若干落ち込む。周りは同情の目で見ながら押し黙った。
こんな感じで、豪臣たちは汚名返上のために幽州を行軍して行った。
あとがき
どうも、虎子です。
投稿が遅れ遅れですみません。忙しい(+ミスって今回のを消してしまった)んです。
許して下さい<m(__)m>
では、作品の話です・・・
今回から、劉備軍編に入りました。
まぁ、読者の皆様の中には、次回の劉備軍との接触時にどんな遣り取りをするのか気づく方も要るかもしれませんが、気にしない方向でお願いします。
今回、名前の登場があった郭図や沮授、田豊の今後の登場は未定です。
暗部の団長さん? 名前? ありますよ。 え? 知りたい? また今度です!
他にも名前持ってる隊員居るの? 居ますよ。 知りたい? また今度です!
今後の話の流れですが・・・
劉備軍と接触 → 劉備軍との別れ → 拠点っぽいの → 各地の様子 → 黄巾最終戦
こんな感じですね。
早く、黄巾最終戦まで逝きたい・・・
次回投稿は、27日(土)か、遅くとも28日(日)までには更新したいです。
作品への要望・指摘・質問と共に、誤字脱字等ありましたら、どんどんコメント下さい。
最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。お気に入りにご登録して下さった皆様。
本当にありがとうございました。
ではでは、虎子でした。
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超ーーー短っ orz