はじめに
この作品はオリジナルキャラが主役の恋姫もどきな作品です
原作重視、歴史改変反対な方
ご注意下さい
董卓の乱、前哨戦
こんなにも重いのだろうか剣というものは
こんなにも重いのだろうか鎧というものは
こんな物で簡単に散ってしまうほど
人の命という物は軽いのだろうか
こんなにも軽いというのだろうか
こんなにも…
「くっ!」
華雄は既に肩で息をしていた
反董卓連合と汜水関にて対峙し、挑発により討って出たものの目の前の弓使いは彼女の間合いの外から一方的に攻撃を加えているのに対し、此方は近付くことさえ侭為らない
一歩踏み出そうものなら
ビュンっ!
「ちいぃっ!」
正確に心の臓を狙って飛んでくる矢を横に飛んで交わす
だが
追撃の矢は飛んでこない
交わした直後、着地の直後を狙えば一撃くらいは刺さっただろうに
何故だ?
「遊んでいるのか!?…貴様」
「…」
無表情に此方を見据える目は何も言ってこない
唯、弓を構えて静止している
二人が対峙してからというもの華雄が一歩動けば一本の矢を放ち再び構える…唯それを繰り返している
だというのに
この私が気圧されている?
対峙している男は特段大柄というわけでもなく、細い体格に腰まで伸びた長い髪…もし後ろ姿を拝見することがあれば女性と見間違うだろう
その影はここが戦場であるにもかかわらず、一人場違いな場に出てきてしまった街娘のようだ
だというのに
なんなのだ…この男は?
斧を握る手がじっとりと汗ばんでいくのを感じていた
成程、あれが彼本来の実力というわけね
後方で戦局を見据えながら華琳の瞳が輝く
「秋蘭、貴女とどちらが上かしら?」
華琳の問いに秋蘭が振り向き…首を振る
「…解りません」
「解らない?…貴女にしては随分な物言いね」
華琳の視線に秋蘭が目を伏せる
「あれがもし…あの者の実力の全てであるならば、我が弓術に敵う者ではありますまい…ですが」
「あれはまだ本気ではないと?」
華琳が目を細める
先程から見ていれば雑兵ではない…音に聞く一介の猛将が近付くこともできずに、唯その場に釘付けにされている
それだけでも彼の腕がそこ等の兵卒や将の物ではないと理解出来る
「彼の者は腕の内を隠しております」
それが誰かの目を気にしての物なのか、はたまた対峙する将を遊んでいるだけのか…華琳にも、秋蘭にも解らない
「大した者ね?…貴女の『元』同僚は」
「…」
華琳の問いにも隣にいる桂花は答えられないでいた
唯、遠くの光景に…戦場で弓を構える比呂の姿に目を奪われている
勿論、袁家に仕える以前に狩や街で自身の弓術を披露する比呂の姿を何度も見ていた…だが
あれが比呂…
あれが袁家将軍にして袁本初が懐刀…張儁乂
戦場に立つ比呂を
誰かに殺意を向ける比呂を
初めて目にし、言葉を発せずにいた
「いつまで、そうしているつもりだ!?」
「……」
華雄の再三の問いかけにも男は答えずにいる、戦場の音が響く中で唯静かに構えている
あれから更に三度同じ事を繰り返していた
違うな…私だ
私がいつまでこうしているつもりだ?
軸足を半歩引き、斧を握る手に力を込める
二度深く息を吸い、呼吸を整える
このままいたところで埒が明かないのは明白なのだ!
ジャリっと砂を踏み姿勢を低くする…やはり目の前の男は動かない
間合いに入らぬ限り…動かんということなのだろう?
ぎりりと奥歯をかみ締める
二人の距離は十数メートル
だがこの間合いを詰めねば此方には勝機はない
「…多少掠ったところで一気に間合いを詰めれば」
二人の間にそれまでとは違う空気が漂いはじめ
そんな二人を戦場の中見ていた人物が一人
「あかん…誘いや、乗ったらあかん」
華雄が走り出すと同時に心の臓を目掛けて矢が放たれる
「読んでいるわぁ!」
あらかじめ決まった所に目掛けて飛んでくる矢を半身にして避ける
直後視界に捕らえるのはまたもや心の臓目掛けて飛んでくる矢
「っっのぉ!」
それを間一髪避けて更に一歩踏み出さんとしたその時
「がっ!?」
両肩に走る激痛と衝撃に足が縺れる…さらに
「ぐあっ!」
斧を持つ右肩に再度激痛…二本目の矢が刺さっていた
ガシャン……
斧が滑り落ち、その場に膝を付く華雄
額には大量の脂汗が浮かび
首筋に冷たい感触が伝わる
顔を上げれば
男が目の前に立ち腰に刺していた剣を華雄の首に当てていた
「…速い」
「貴公が遅い…唯其れだけの事」
「…凄い」
初めて出た戦場で、初めて見る達人の腕に孫権~蓮華は息を呑んでいた
「華雄が十歩踏み出す間に五本放つか、しかも内二本は同時ときたもんだ…やるのう」
彼女の隣で腕を組みながら祭がその凄さに関心する
「祭殿、あれと同じことは貴女にも?」
冥琳の問いに顎に手をあてフムと一拍
「難しい…と言わざるをえん、唯五本弓を放つなら出来んこともないが、あそこまで正確に射ろとなればな」
「それよりも気になるのは…何故あんなまどろっこしい真似をしたのかです」
「思春?」
後ろの声に蓮華が振り向けば思春と呼ばれた将が祭と同じように顎に手をあて戦場の二人を見据えていた
同じくして思春の方を振り向く祭の顔が笑っている
「ほう…やはりそう思うか?」
「自らの間合いで仕留める事も可能であるにも拘らず、態々相手を近付かせた…違和感を感じずにはおりません」
思春の発言に再度戦場に視線を移す蓮華、確かにあの男にはいつでも華雄を殺すことができた…なのに
「迷っているわね…彼」
「お姉さま?」
先頭に立ち戦局を見据えていた姉の呟きを風が運んできた
思い返せば軍議の間も彼は姿を見せなかった…この戦に迷いがあるのだろう
自分の首を絞めることになるわよ…比呂
「どうした?首を刎ねるのではないのか?」
「…」
もはや何の抵抗も示さない華雄を前にして比呂は動かずにいた
「まさか此処まで来て怖気づいたわけでもあるまい?」
「…」
額に大量の汗を流し、両肩に矢が刺さり、血を流す彼女を前に剣を引けずにいた
「将の首を前に動けんか…軟弱者め」
「っ!!」
華雄の言葉に奥歯を噛み、剣を持つ右手を振り上げたそのとき
「ずえりゃあぁぁ!!」
突然割り込んできた殺気に飛び退いて距離を取る
「張遼!?」
「悪いな別嬪はん!この勝負預からしてもらうで!」
馬上からにししと白い歯を見せて笑う張遼に比呂の意識が研ぎ澄まされていく
強い
半身に構える比呂を見据えて胸が疼く張遼
そんな目で睨んでも…あかんで~バレバレやん
「ちゅう訳で…ほなさいなら~」
「おいっ…ちょ!」
華雄を脇に担ぎ上げて遠ざかって行く張遼…そんな彼女の背中に向けて比呂は矢を構えていた
………
撃て
今なら届く
今なら殺せる
二人の姿が見えなくなっても
比呂は弓を構えたまま動けずにいた
あとがき
ここまで読んでいただいた皆様、ありがとうございます
ねこじゃらしです
というわけで汜水関攻略戦でした~♪
おおっ!ついに戦闘描写っぽいものが(笑)
書いてて面白い反面…難しいですね~
余談ですが何故か、ねこじゃらしの作品はラスト1Pになると余白が大量に(笑)
書いてる本人にも謎ですっ!!!
さてお次は虎牢関編ですよ~サクサクいきますよ~
この連休中に…ってもう半分以上消化してますが終えれるかどうか…
まあ期待なぞせず気長にお待ちくだせえ
それでは次の講釈で
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第18話です
天気は悪いし、そもそも給料日前に三蓮休とか何考えてんですかね?