涼しい風と輝く星の下には、山に囲まれた景色がある。
幻想郷、それは現代の世界に潜むもう一つの世界。人間と妖怪、鬼や神などといった者達が共に暮らす平和な世界である。
そんな世界の一部に、迷いの竹林と呼ばれる場所ではなにやら騒ぎが起きているようだ。それは2羽の兎が鬼ごっこでもしているのかと思いきや、なにやら怒りながら追いかけている様子である。それにこの兎は実際の動物ではない。2人とも兎の耳をつけた少女で、追いかけている少女は女子学生のようなブレザーとピンクのミニスカートで薄紫色の長い髪をしており名前は『鈴仙・優曇華院・イナバ』(れいせん・うどんげいん・いなば)と長い名前をしている。追いかけられている少女は背が低く、黒の短髪にピンクのワンピースを着ていて、名前は『因幡てゐ』(いなば てい)という。
走っている途中に下へ沈んでいる段差が目の前まで来ると、先頭を走るてゐは体格を活かして兎そのもののようにジャンプし、3メートル弱の距離で飛び越えた。続く鈴仙もジャンプするが着地した瞬間、彼女の足場ががらりと崩れ落ちてしまう。落とし穴にはまったらしく、逃げていた少女は振り返りその様子を見て笑った。
鈴仙「て~~~ゐ~~~・・・」
てゐは悪戯好きで、落とし穴を仕掛けるのは彼女にとってのお決まりなことである。そんな話をしているのもつかの間、てゐが潔く逃走しようと走り出した瞬間、
ドンッ
てゐ「ミギャッ!」
?「うわっと!」
前をよく見ていなかったのか、何かに激突。しかも激突した瞬間に声がてゐの耳に聞こえた。それはまさに、人間の声で男性の声でもあった。
対するてゐはその反動でしりもちをつき、その後ろから死神のように追いかけてきた鈴仙がてゐの肩を掴む。てゐの背筋に寒気が走りだす。
てゐ「ひぃぃっ!鈴仙、ちょっとまってよ~!」
この様子はライオンに食われかけている動物と同じことだ。てゐはまさしく、その状況でお仕置きされかけているのである。すると・・・
?「ちょっと待ってくれ」
鈴仙「?」
鈴仙の怒りは突然のごとくに停止した。顔を見上げてその声の主を見るが、その正体は矢車から逃げてきた青年、天野川 星司だった。まだ余談なことであるが、2人は彼が何者なのかはまだ知らない。
星司「この子とぶつかったのは、俺が余所見をしていたせいなんだ。てっきりこの竹林の景色を眺めていたから気づかずに歩いているとこうなってしまってね、怪我はないかい?」
てゐ「う、うん・・・」
星司はてゐの頭を撫でる。しかし実のことを言うと、今の話は全くの嘘で、てゐを庇おうとしていたのだ。
しかしそれだけで鈴仙の怒りは収まらない。
鈴仙「けどそれはそれ、これはこれよ。毎回いろんなことをしていて、また私に落とし穴を・・・」
星司「この子が何かしたのか?」
まだ落とし穴を仕掛けたことが残っており、星司の嘘発言ではなかなか通用はしなさそうである。そこで星司は鈴仙に先程の出来事を聞いてみることにした。
鈴仙「その子は悪戯ばっかりして、さっきも落とし穴で私を落としたのよ」
星司「なるほど・・・それでいいんじゃないのか?」
鈴仙「・・・はぁっ!?」
予想もしないことが発生した。なんと星司は断言してしまったのだ。
鈴仙「どういうことよ!貴方、てゐが私にどれだけ悪戯な子か「それが人間やその他の動物での普通の生き方だ」
星司の発言で鈴仙は息を殺した。馬鹿ばかしいったらありゃしないことであるが星司は平気でいている。
星司「人間は正しいことだけが普通ではない、善と悪はいつも背中合わせで、ときに悪戯することで動物のバランスを取っている。まるで天秤のようにな・・・」
鈴仙「・・・貴方、誰なの・・・?」
もうわけが分からないが、鈴仙は彼が何者なのかを問い詰める。星司は人差し指を輝く星の空に上げた。
鈴仙「天道さんが言ってた。俺は天の川に輝きし星を司る男、天野川 星司・・・」
星の下でその正体を知る2人。鈴仙にはやはりふざけているとして言いようがなかった。星司は自己紹介を終えると、てゐの方に顔を向ける。
星司「だが彼女の言うことも正しい。悪戯ばかりする子は、天秤が崩れてしまうことを忘れないてほしい。約束できるな?」
てゐ「・・・分かった。もう悪戯はしないことにする・・・」
星司「それでいい・・・そりよりも君、」
今度は鈴仙に顔を向けた。
星司「どうしても一発殴らせろとのつもりでいるなら、殴れ。それで気が済むならはよしだ」
そんな無茶なことまでするのかと思うが、星司の目は真剣だった。まさに英雄の塊である。
鈴仙「貴方、どうしててゐをそこまで庇うの?」
星司「俺がこうしているのは。俺はこの子にやってはいけないことを教えているだけだ、さっき約束したようにな」
てゐ「あっ、そういえば・・・!」
てゐはポンッと手を叩いて理解した。確かに鈴仙には殆ど怒らせているようなことはしていない。
星司「気持ちは良く分かるが、今回は許してあげてくれ。俺からのお願いだ・・・」
鈴仙「・・・分かったわ」
星司「よし、じゃあ仲直りだな」
これにて一件落着だと星司は一安心・・・した次の瞬間に黒い服を来た5人の男性が星司達を囲む。
鈴仙「な、なによ貴方達!」
何か違和感を感じた星司は、前に出た男性を睨む。
男性「仮面ライダー、まさかこの世界にもいたとは想定外だが、我々の計画の邪魔だ」
てゐ「かめんらいだー・・・?」
何のことなのか分からないてゐと鈴仙だが、男性一同は帽子を取った瞬間に光だし、星司が睨んでいた男性はザブストワームに、それ以外は雑魚のサナギワームに変身する。
2人「え!?えええええええええええええ!?」
驚くのも過言ではない。人間が突然こんな化け物に変身するのだからそうだけど、何よりも目の前に現れるのだから驚く以外に何もない。
ザブスト「まずはそこの小娘から殺すとしようか・・・」
てゐ「わ、私~~~~!?」
ザブストワームはてゐに近寄ろうと歩き出すと、星司がそうはさせないと殴りにかかる。
ドカッ!と拳が胸部に当たるが、
星司「ッ!(硬い・・・!)」
強固な体には通用せず、拳から血が滲み出る。ならは蹴りでと試みるが、びくともしないうえにパンチ一発で吹き飛ばされてしまう。
ザブスト「お前達、殺れ」
星司「!! やめろっ!!」
止めようとするが、すでにサナギワームはてゐと鈴仙を囲んでいて、じりじりと近寄る。もう駄目だと2人は目を瞑った次の瞬間に青いクワガタがサナギワームを攻撃した。
2人は何が起きたのかと周りを見るが、ザブストワームはその正体がわかっていた。
ザブスト「・・・ガタックゼクター・・・!」
青いクワガタの正体は昆虫メカ、ガタックゼクターでそのまま起き上がっていた星司の右手にわたる。
星司(これって、牢屋から入ってきたゼクター、だよね・・・・・・)
ガタックゼクターがやったようにすれば戦えるはず・・・ならばもう一度変身しようと2人に近寄った。
星司「2人共、大丈夫か!?」
てゐ「こ、怖かった~・・・」
無事のようだがてゐは泣きそうになっている。
星司「いいかい?そこから絶対に動くんじゃないよ?」
鈴仙「もしかしてあの虫と戦うの!?そんなの無茶よ!大体あなたは人間だし、そのクワガタで何が・・・!」
星司「言われてみればそうだろうな・・・だけど天道さんは言ってたんだ。人間は弱い力の代わり、強い知性を持つ。人間に望むことがあるのなら、やがてその力は大きくなるだろうってな・・・心配はない、俺を・・・仮面ライダーガタックを信じるんだ!」
鈴仙に見せていた顔はすさまじかった。怒っているのでもないその顔は絶対の文字を浮かべていて、今にも押しつぶされそうな感じである。その時サナギワームが一斉に星司に飛び掛かり、爪をかわしながらガタックゼクターをベルトへセットする。
星司「変身!」
≪HENSHIN≫
星司の体がみるみると鎧に包まれ、ガタックへと変身した。その瞬間を見ていた2人も思わず驚く。
サナギワームはまたもや襲い掛かるが、今度の星司は自らの拳で迎え撃った。
ワーム「ギチッ!?ギギギ・・・!」
その威力は5体のワームを押し返すほどである。このチャンスに両肩のガタックバルカンが火を噴き、サナギワームを一斉に消去してザブストワームの方向に向く。
ザブスト「貴様・・・邪魔をするな!」
星司「そうはいかない。男はやってはいけないことが2つあるからな。それは・・・」
ゼクターホーンをつかんで右へと折り曲げる。
星司「女の子を泣かしてはいけないことだ。キャストオフ!」
≪CAST OFF≫
≪CHANGE STAG BEETLE≫
弾け飛んだ鎧をザブストワームが吹っ飛ばされ、ガタックはクワガタの姿をしたライダーフォームにへと姿を変える。星司は追い打ちを仕掛けようとクロックアップでザブストワームの背後へと回った。
≪ONE,TWO,THREE≫
星司「ライダーキック!!」
≪RIDER KICK≫
ガタックゼクターを操作してエネルギーをチャージし、痛快な回し蹴りを叩き込んだ。
ザブストワームは竹をなぎ倒すように奥へと飛ばされ、体に電流が流れ出る。
ザブスト「グァァッ!・・・お、おのれ・・・仮面・・・ライダァァァァァーッ!!!!!」
直後に爆発した。サブストワームが消滅したことを確認した星司はガタックゼクターを引き抜いて元の姿に戻り、2人に近寄った。
星司「・・・これでもう大丈夫だ。怪我はないか?」
てゐ「うん・・・」
星司はてゐの頭を撫でて微笑みを見せる。それは彼女達が出会ったときと同じ、優しく、朗らかな笑顔で見つめていて、てゐはすでに泣き止んでいた。
だが星司は思う・・・
星司(・・・それよりも何故、こんな場所にワームが・・・・・・それに・・・)
ザブストワームが言っていたあの言葉をもう一度思い浮かべる。
『仮面ライダー、まさかこの世界にもいたとは想定外だが、我々の計画の邪魔だ』
星司(計画って何のことなんだ・・・?何かとてつもない予感が・・・)
危険を感じていた星司だが、これからどう行動するかと考える。星司から思えば、ここは夢の国だとは思っているけど何処に行こうかといろいろ悩んだ。まずはこの竹林を抜け出そうとしても、方向が分からなくては出られることは不可能だろう。
鈴仙「あの、」
その時に鈴仙が話しかけたきた。
鈴仙「助けてくれたお礼がしたいので、永遠亭に来てくれませんか?」
星司「永遠亭?」
てゐ「私達のいる家みたいなところだよ!」
どうやら彼女の家に連れて行ってもらえるらしい。
鈴仙「よく見たら怪我もしているみたいですから、師匠に見てもらったほうがいいかと」
手当てということは、おそらくその場所は病院か何かだろうと予想した星司は行くことに決める。そもそもここから出られる方法なんてあまりないし、訓練やサビーによって受けた怪我を何とかしなければならない。
星司「その場所に案内してくれ、胸のほうもさっきからズキズキ痛んでいるからな」
2人は頷き、星司を連れながら永遠亭へ向かう。
お待たせしました。第1話です。
星司が今回泊まる場所は永遠亭にしていたんですが、この理由はまず夜のイメージがあることです。星司は実はというと、星の輝きが力の源となるためにこの場所では充分愛称がいいと思います。
天道に続いてやっぱ言っておかなければならないのは天道語録ということで早速言いました。因みに星司の名は天道本人から名づけられたことなのでパクリだとかは思わないて欲しいです。
追伸:余談なことですが、ハイパーバトルDVDで名づけられた加賀美につけられた名は「毎朝鏡の前で顔を洗う男」とされていたとか・・・
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こちらは東方Projectと仮面ライダーシリーズのクロスオーバー作品です。
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※戦闘で『FULL FORCE』を脳内BGMとしていただければかなり盛り上がります。
曲は↓からどうぞ
http://www.youtube.com/watch?v=ICw3rCJSCY4&feature=related