(序章)
その少女は生まれながらして彼女が望めば何でも手に入った。
「あれが食べたい」
民がいくら望んでも口にすることも出来ない珍しい料理が食べたいといえばたちどころに用意される。
「みなに見てもらいたい」
綺麗な服が着たいと言えば国一番の服屋が上質の絹で作られた服を献上してくる。
誰もが自分に優しく何でも言うことを聞いてくれた。
だが誰もが羨むことを簡単に叶える事ができる少女だが、たった一つだけどんなに望んでも手にすることが出来ないものがあった。
「父上、母上」
それは何度もお願いをしたこと。
「私も友達が欲しいのです」
少女の両親は彼女のためなら何でも叶えてあげた。
だが、それだけはどんなことがあっても許してはくれなかった。
「お前はいずれ儂の跡を継ぐのだ。そのようなものなど必要ない」
いつもは優しく温かみのある両親だが、友達だけは絶対に与えなかった。
そればかりか執拗に繰り返して望む少女に声を荒げたりもした。
「どうしてですか?」
その理由を聞こうとするが何も答えてくれなかった。
そんな日々が続いていく中、いつしか少女は何も望まなくなってしまった。
自分よりも遥かに身分が下の者ですら対等な友達がいるのにどうして自分にはそれを許してくれないのだろうか。
「私も欲しいです」
自分を特別扱いしない対等な友達。
日を追うごとに少女のその想いが強くなっていく。
そして少女が十五になった時、転機が訪れた。
彼女の両親、それにたった一人の姉が流行り病によって病没したのだった。
天涯孤独になってしまった少女に周りの大人達はどこか頼りなさそうな、それとは別にどこか落胆していた。
「あのような方で大丈夫なのか?」
「ダメならダメで考えるしかあるまい」
本人達からすればそれらの会話は影で行われていたが、少女からすれば露骨に見えた。
誰一人として味方などいない。
隙を見せれば自分の今の地位などあっという間に崩れ去ってしまう。
だが地位などどうでもよかった。
(誰かにいて欲しい……)
対等な友達でも絶対的な信頼が持てる臣下でもいい。
ただこの暗い孤独の中から助け出して欲しい。
(私だけの味方……)
そう思う彼女は自分の望みを誰にも知られないように秘密にした。
そしてある夜。
よく晴れたその日は夜空に無数の星々がその輝きを少女に見せていた。
「どうか私に友達をお与えください。もし叶ったなら私はこの国のために何でもします」
祈るように両手を合わせる少女。
夜空の星々はそんな彼女の願いに答えるかのように一筋の光がいくつも地平線へ落ちていった。
少女の名前は劉協伯和、真名を百花(ひゃくか)。
この外史において後に天の御遣いと共に乱世を終わらせ安寧を齎すことになるかもしれない人物だった。
(あとがき)
というわけで再び書いてみようということになりました。
もう少し時間を掛けて色々模索してみようと思いましたが、たまにはいいのでは?と思って書かせていただきたいと思います。
前作よりは短くなると思いますが、それでも読んでいただければ幸いです。
時間を見ては応援メッセージも返事を書かせていただいています。
これほど多くの応援メッセージを頂き感謝に絶えません。
次回から本格始動です。
まだまだ未熟者ですがよろしくお願いいたします。
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おひさしぶりです。
久しぶりにひらめきが起こったのでとりあえず書いてみようと思いました。
魏ルートや蜀ルート、色々と考えたのですがちょっと冒険をしてみようと思ってこのルートになりました。
序章ですが、まだよろしくお願いいたします。