――時は、赤壁の戦いから三日前。
北郷と程昱は城壁の上にいた。
もう日は落ち、光り輝く満月が二人を照らした。
「もう明日なんですね……」
程昱は黄昏のように呟く。
そんな程昱の心の内を汲み取ったように、北郷は程昱の頭を抱えるようにして、自分の胸に抱き寄せた。
「明日の明朝に赤壁に向けて出発。そうなればもう止まらない」
「うう……」
北郷の胸に顔をうずめたままだったが程昱はまた震えていた。
「………」
北郷はそんな程昱をまたぎゅっと強く抱きしめた。
「どうしても一刀さんも行くのですか?」
程昱は北郷の胸の中で訊ねた。
「風を一人だけ行かせるなんて俺にはできない」
実際は違う。本当は行かなければ『いけない』のだ。『赤壁の戦い』は曹操が大敗北する歴史。そしてこれを変えるためには自分以外いない。
「風。聞いて欲しいことがあるんだ」
北郷は程昱の体から離れるとポケットから指輪を取りだし、それを程昱の指にはめた。
「これは誓いの証だ風。この指輪に誓って俺は風を悲しませるようなことはしない」
「一刀さん……」
これが北郷が一生懸命考えた末の答えだった。
「////」
程昱は顔を真っ赤にしつつ再び北郷の胸に抱き寄せてこう言った。
「――ありがとう」
二人はどちらからともなくおたがいに向き直ると、そっと唇を重ねた。
輝く星と月の光が、二人を祝福するように輝いていた。
――しかし
この誓いが、後に程昱の絶望に変わってしまうとは北郷は知る由もなかった
完
あとがき
後編終了し程昱の世界はこれにて終りです。読んでくれた方々が楽しめたのなら幸いです。
いちよう原作ネタは『仮面ライダーディケイド』やゲームの個別ヒロインルートなどがネタです。
いちよう予定ですが『○○の世界』はまた書くつもりなので楽しみに待っていてください。
では……。
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三つめ。