白玉楼は、以前俺達がロケット団のアジトへ向かう冥界の森のさらに奥にある場所だった。八雲屋敷とは違っていい風景で、風が穏やかだ。
また、移動中に互いの自己紹介をしており、妖夢からは俺がここに来ていろいろと活躍しているとの話は紫から聞いていたらしい。
妖夢「それとこの前にあった騒動って、結局はどうなったんですか?」
ジュウゴロウ「シャドー団のことか。俺がやっつけて外に追い返したから、二度と悪意を企てはしないだろうな」
シャドー団をやっつけたあの話も紫から聞いていたらしい。その時の紫はデオキシスに敗れて負傷していており、その後では永遠亭でも夜中の間は忙しかったようすだというけど、この時に快楽が体中に広がった。やっぱ最強のポケモンにスキマ妖怪ですら右に出さないとは、容赦もありゃしないことである。
話を戻して、今俺と妖夢は玄関まで来ている。果たして男の言っていた紫の親友、幽々子とはどんな人なのか・・・この様子だと凄い上品な人かも・・・と思っていると、
「おかえり妖夢」
左側の襖から彼女が現れた。水色の服装にマゼンダーの髪色、この女性が西行寺 幽々子・・・と判断したその時、ふと彼女から発している感覚を感じ取った。れはまちがいなく霊力。それにこの感じ、どこかで・・・
ジュウゴロウ(まさか・・・!)
俺は口を開いて喋る。
ジュウゴロウ「お前、あの時の幽霊か・・・?」
妖夢・幽々子「?」
2人は何のことなのかと分からないままでいた。だが俺は知っている、彼女とどこで出会ったのかも。
それはシオンタウンのポケモンタワーのこと、俺はそこで現れる幽霊というのを退治しようと向かったところ、そこには幽霊ポケモンのゴースやゴーストでもなく、ましてや本物の幽霊と思えないもの・・・巨大な影でできた蜘蛛がいたのだ。
何だこれはと思いながらもポケモンで対抗するが、攻撃が通用せず、俺は金縛りにあってしまいながら絶体絶命のピンチに立たされた。その時確か、この女が俺の前に現れて浄化してくれたのだ。何者かと聞こうとするが返事がなく、ただ俺のほうに顔を向けて微笑みながら消えていった。
俺はこのことを全て教えると、幽々子もそうだったと思い出す。
幽々子「随分逞しい人になったわね。きっと、また会えるかもって信じてたんですよ」
ジュウゴロウ「そうなのか?」
幽々子「ええ、私の霊感を感じていたんですよね?私はあの時、まさかと思ってたんです」
ジュウゴロウ「まさか・・・って、まるで俺を知っているみたいなことじゃないか」
幽々子「簡単に説明すると、あなたの母親が生まれてすぐ死んだのは全て、私のせいなんです」
ジュウゴロウ「!?」
俺はそんなまさかとのショックを受ける。
幽々子「そんなつもりじゃなかったの。私は生者の魂を食事としていているのだけど、つい貴方の母親までも手を出してしまったわ。この話を聞いた貴方なら当然怒っているのでしょ?そんな私でも許して・・・」
幽々子は顔を下に向け、自分の犯した罪を償う。俺は右手を前に出して幽々子に近づけた。
ポンッ
幽々子「!」
その時に気づいた幽々子の目には、俺の笑顔があった。
ジュウゴロウ「俺は憎んだりはしてない。お前と出会えたその時に、俺の体に不思議な力が舞い降りたんだ。だから俺は・・・お前が罪を犯してしまったそのことで怒るようなキバシ ジュウゴロウじゃないぜ、幽々子」
幽々子「・・・ありがとうございます、ジュウゴロウさん・・・」
そのあとですぐにお邪魔させてもらった俺は、最初に興味を沸かしていたことを妖夢に言った。
ジュウゴロウ「お前の持つその刀を見せてくれないか?」
妖夢「楼観剣と白玉剣をですか?丁寧に扱ってくださるのならいいですけど・・・」
2振りの刀を手に持ち、楼観剣の刀身を鞘から抜く。光り輝く刃、そして刃こぼれのない鋭さを見ると俺はすぐに納める。
ジュウゴロウ「刀持つなんて久々だな。今の俺とくらべりゃ、昔の俺は闇の中で振り回す腐れ野郎だ」
妖夢「それはどういうことなんですか?」
ジュウゴロウ「俺は昔、多くの人間を殺したんだ。今ではそんなことはしないし、俺は刀がどういうものなのかも知った。刀は人を斬るのモノではなく正義を示すモノ、つまりは正義の心を持つということだ。それが昔に存在してた侍だ」
妖夢「・・・なんだか面白い人ですね。特に白玉剣は人の迷いを断つ刀なんですよ」
ジュウゴロウ「へぇ・・・ってか、どっちが白玉剣だ?」
妖夢「短刀のほうです。因みに楼観剣は10の幽霊を殺傷する刀です」
幽霊ですら斬ってしまう刀って、まさに天下の宝刀だ。しかしこれを作り上げた職人も凄い。
俺は楼観剣と白玉剣を妖夢に返した。
ジュウゴロウ「どうするかな、まだ時間はあるし暇だし・・・」
妖夢「でしたら、稽古に付き合ってくれませんか?ジュウゴロウさんの実力も見てみたいんです」
ジュウゴロウ「いいけど、竹刀か木刀でお願いだぞ?」
妖夢「そのつもりです」
ということで庭に出て、木刀を構えながら稽古を始める。稽古といっても実際のチャンバラごっこと同じことだが。
ジュウゴロウ「振りのスピードも、加える力も充分にある・・・相当の腕だな」
妖夢「ジュウゴロウさんもなかなかです。私の振る位置をうまく止めているんですから」
カンカンッとなる気の音を聞いて面に出てくる幽々子は、俺と妖夢が楽しくしている様子を温かい目で見守っていると、入り口のほうから誰か入ってくる。
一方の俺は守りから攻めに入り、相手の構えが取りにくくそうな箇所を狙いつつ振り回していた。すると後ろから気配を感じた瞬間、木刀が俺の背中に向かって振り下ろされる。
ジュウゴロウ「おらぁっ!!」
右手で木刀を横一線で振りながら、背後の木刀を弾き飛ばした。そして俺を襲った正体も現れ、俺は目を丸くした。
ジュウゴロウ「藍!?」
藍「参りましたねぇ、私なりに襲ってみたんですけど駄目でしたか」
紫の式神である藍は恐れ入った顔で俺に言う。その後ろには藍の式神である橙もいるではないか。
妖夢「何か用なのですか?」
橙「ジュウゴロウさんと遊んでみたかったので、白玉楼に来ました!」
子供はやはり活発なのだろうかと俺は思うが、何故藍までも来るのかが知りたい。
ジュウゴロウ「いいけど、なんで藍まで来るんだ?可愛い子には旅をさせろって諺があるのだろ?」
藍「そんな無責任なことは出来ません!!私は橙が心配で心配で・・・」
要するにお前は心配性か。
ジュウゴロウ「・・・じゃあ稽古もこれくらいして、今度は俺のポケモンで遊ぶとするか。リザードン、出てこい!!」
ボールからリザードンが現れる。
橙「わっ!カッコイイです!」
ジュウゴロウ「それじゃあ早速遊ぶか。背中に乗ってみなよ」
リザードンは招くように背を向け、橙は遠慮なく乗った。
藍「橙、怪我はないようにね!もし何かあったら私に言うんだよ!?あと怖かったら泣いてもいいから私を叫んで・・・」
ジュウゴロウ「お前どんだけ心配性なんだ・・・」
まさかと思うが、咲夜のようにロリコンなのか!?
ジュウゴロウ「とりあえずは準備も出来たみたいだな。しっかりつかまっていれば大丈夫だぞ」
橙「はい!」
ジュウゴロウ「よーし・・・飛べっ!」
リザードンは翼を広げて空に飛び上がった。
橙「凄い!自分で飛ぶより迫力がある!」
藍「橙~!怖くはないか~!?」
橙「大丈夫です藍様~!」
キャハッと笑う橙。俺は彼女の笑顔を見ているだけでも充分に楽しめた。それはリザードンも同じことで、彼女の方に時々目線を向けたりすると、橙は満面の笑顔を見せてくれる。するとリザードンの体が光りだした。
橙「わっ!?わっ!?わ~~~~~~っ!?」
藍「橙ェェェェェェェェェェェン!?」
事故が発生したのかと俺はボーマンダに飛び乗って急行した。光はすぐに止み、橙はそのまましがみついていたおかげで落ちてはいなかった。
ジュウゴロウ「橙!大丈夫か!?」
橙「は、はい!大丈夫です!」
ジュウゴロウ「それはよかった・・・(しかし今のは・・・ん?)」
その時に俺はリザードンの顔を見た。
明るくなっている。
ジュウゴロウ「リザードン、とうとうリライブしたのか!」
橙「? りらいぶって何ですか?」
ジュウゴロウ「このリザードンは訳ありで暗い性格になってたんだけど、お前の笑顔がリザードンの心を開かせてくれたんだ。本当は俺がリライブしようとしてたんだけど先越されたか・・・」
リザードンもガウッと吼えた。
ジュウゴロウ「ヘッ、どうやら『ありがとう』って言ってるらしいぜ」
橙「・・・うん!」
リザードンとボーマンダは庭に降下すると、藍が素早く橙に抱きついた。
藍「橙ェェ~ン!!怪我はなかったか~!?怖かっただろ~!?」
ジュウゴロウ(お前の天然さがよっぽど怖ぇよ・・・;)
こうして1時間程の遊びが続き、その後に俺は宴会の支度を始めようと博霊神社に向かった。
第36話でした。
幽々子様は自分では美しさでナンバー1かと思います。食われたくはないですけど、悩殺されそうなイメージがあるようでないようなってのが自分の考えです。
橙も可愛さもあっていいですし、猫耳よりも自分は尻尾に弱いです。尻尾に触りたいくらいにですがセクハラになるかもしれないのでやめましょう・・・^^;
さて、次回でなんと最終回です!これまで見ていてくれた皆さんありがとうございます!最後に読者の皆さんが用意してくれた花道を通り、ここで立派な花を咲かせようと思います!
では、最終回でお会いしましょう!!
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ポケットモンスターの世界に住むトレーナー達が幻想郷へやってくる不思議な物語。