赤壁の戦いから何日かが過ぎた。
現在我が軍の軍師が呉の領土に出向して一通りの調べ物をしている状態だ。
呉の武将達は案内役の冥琳を除いて許昌に滞留している。
一通りの娘達には真名を許して貰っていた。
俺は執務を済ますと、呉国の将にと用意した宿舎に訪れた。
そこにはちょうど蓮華が居た。
「やぁ、蓮華。居心地はどうだい?」
「良くはないわ。私たちは負けたのだから・・・。」
この子が立場的には孫呉のNo2である、何の相談も無しに帰順が決められたのは納得が行かなかったのであろう。
「まだ納得が出来ない?」
「そんなことはない。お姉さまが決めたのだから・・・・。帰る場所もなかったし・・。」
「それに・・・・・。」
そこまで言うと顔を赤くして蓮華は俯いてしまった。
俺としてはその『それに』の後が聞きたいのだがこのままでは言ってくれそうにないので話題を変える。
「ここで彷徨いていても気分は晴れないな。そうだ、良かったら市でも行こうか。」
「え・・・・・」
「護衛は・・・・まぁ必要ないよ。何かあったら俺が守るから。」
「・・・・・・・拒否権は無いのだな・・・。」
「しても良いけど・・・・まぁ、行こうか。」
「・・・・うん。」
俺と蓮華が市に着くと、いろんな人から声を掛けられる。
流石に許昌の街では俺の顔は知られている。
『・・・天の御使い様がまた違う女子を連れている・・・。』
そんな話題も飛び交っていた。
「ずいぶん慕われているのね。」
蓮華が俺に話しかける。
「ああ、これも配下の娘達のお陰だよ。俺はあんまり市政には口を出さないからね。」
「そう言うのも理由なのだろうな。」
「・・・・・・でもまぁ、今は蓮華の為だけを考えていたいかな。」
あの後、雪蓮から頼まれたことが有った、妹の蓮華のことである。
とても内向的で責任感が強く、今回のことで一番気にするのは彼女だから気にしてやって欲しいと。
「え、そんな・・・。」
少し顔を赤らめてちょっと驚いた声を出す蓮華。
しかし、すぐに一刀をにらんで
「私なんか・・・・・降将の私を口説いても何の価値もないわよ・・・可愛くもないし・・・。」
と言った後
「それに北郷殿はみんなにそんなことを言うのだろうな。」
こんどはすねたように蓮華は呟く。
「いや・・・。」
俺は首を振ると蓮華を真正面から見つめて囁く。
「今は蓮華だけにしか言わないさ。」
雪蓮の言葉に俺は応えた。
「俺が可愛い女の子を放って置くわけ無いだろう。」
「確かにねぇ、平原の種馬の名は伊達じゃ無いようね。」
「・・・・・・信じて良いの?・・・・」
蓮華の瞳に涙がにじんでくる・・・・・
「天地神明に懸けて嘘は言わないさ」
蓮華は一刀の顔を見た後、フッと笑顔を見せてその頭を一刀の胸に寄せる。
「・・・・っ、グスッ、ウッウッ、うわーん。」
そして突然泣き出した。
「蓮華・・・・・・・・。」
俺は蓮華の肩を取り、そして彼女が泣き止むまで抱きしめていた・・・・
大分状況が落ち着いてきたある日、俺は春蘭と秋蘭を呼んだ。
そうして一枚の書状を渡す。
「この書状を成都まで届けてくれるか?」
「えっ、成都までですか?」
驚く春蘭。それもそのはず成都は蜀の首都だ。
「うん、使者としてね。出来れば劉備殿に直接渡して欲しい。」
「私たちを使者と言うことはそれだけの内容の書状と言うことでしょうか。」
秋蘭が俺に尋ねる。
「そうだね。これで中原では最後の戦いと成るからね。とても重要な書状だ。」
「そんな重要な役目を・・・・・必ず成し遂げて見せます。」
春蘭は感動している。
「そんなわけで頼むよ。あ、それとついでに返答も貰ってきてくれる?」
「返答・・・・ですか?」
「ああ、その書状に対する返答だ。まぁ特に侮蔑とかする内容じゃないから。」
「よろしく頼んだね。」
春蘭達が去った後、俺は重要な面子を揃えて会議を開いた。
集まったのは我が軍の軍師達と呉の主軸達だ。
「今日集まって貰ったのは蜀に対してどういった行動を取るかだけど・・・。」
「実は今日は評定という形じゃないんだ。俺の話を聞いて貰うと言うことだ。」
「まず蜀に対してだけど・・・・俺に一任して欲しい。」
その言葉を聞いて桂花が言う。
「一刀様に一任するのは構いませんが・・・・・・」
その表情からも落胆の色が見える。
俺のために何かをすることが無上の喜びである桂花にとっては当然の反応であろう。
その様子を俺は見ながら心の中で呟く
『それはわかるけどね、言ったら多分反対されるし・・・・・・』
しかし、気を取り直して発言を続ける。
「今春蘭達に蜀に使者として行って貰っている。実際の内容を説明するのは彼女たちが返事を貰って来てからと成るけど・・・」
「とりあえずここまでだけど、何か質問はある?」
そう言うと、雪蓮が立ち上がる。
「今まで蜀と一緒に行動をしてきた身としては出来るだけ穏便にと行きたいところだけど、ダメかな?」
「あぁ、その件に関しては俺も思っているから。ただ、一言降伏しろと言ってもダメだと思うけどね。」
「向こうにも意地とそれなりの戦力があるからな、一戦は必要であろうなぁ・・・」
冥琳が発言するが珍しくあまり建設的ではない。
「その辺も含めて今回の書状とした。それでは後は春蘭達が戻ってきてからとしようか。」
春蘭達が成都に付くと、対応は早く、劉備の前に通された。
そして、書状を渡す。
それを読んだ劉備の表情が変わった。
「朱里ちゃん朱里ちゃん、これ。」
諸葛亮を呼び寄せ、書状を見せる。
「この内容・・・・・天の御使い様の意図が読めませんね・・・・・・。」
「夏侯淵さん、この内容は確かなものですか?」
諸葛亮が秋蘭に尋ねると、秋蘭は答えた。
「いや、私たちは内容を見ては居ない。一刀様から受け取ったものをそのまま渡しただけだ。」
そう言って書状を受け取る。そして内容を読んだ。
その内容とは
~~~~~~~~~~~~~~~~~
今回、魏と蜀の決着について、代表武将による一騎打ちにてその戦いの決着としたい。
双方一名の代表武将を選出して闘技場で戦い戦闘不能になった時点で終了。
勝った方の国が負けた方の国を吸収するという形を取りたいと思う。
返答をお聞かせ願いたい。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
と言うものであった。
「これはいったい・・・。」
隣からのぞき込んだ春蘭が叫ぶ。
「ふむ、一刀様らしいと言えばらしいが・・・・。」
「しかし、国の大事を一騎打ちにて決めてしまうとは・・・・・。」
「先日呉との決着の際に雪蓮と一騎打ちの形になったと聞いていたがその時に思いつかれたのであろう。」
「我が国の一騎打ちは確かに重い・・・・それが国の代表者ともなれば言わずもがなだ。」
春蘭達が話していると劉備達も諸葛亮、関羽、趙雲などで話し合っていた。
「どうしよう?愛紗ちゃん」
心配そうに劉備は関羽に尋ねる。
「国の大事を一騎打ちで決めてしまうなど、他の兵が納得いくでしょうか?」
真面目な関羽らしい返事だ。
「そうだよねぇ。じゃぁ、断ろうか。」
そう言う劉備に諸葛亮が進言する。
「待ってください、桃香様。これは千載一遇の機会かも知れません。」
「正直言って戦になれば勝機は限りなく0に近いです。しかし、一騎打ちなら勝てるかも知れません。」
周りを見回しながら諸葛亮は話を繋ぐ。
「我が軍には一騎当千の将が居ますから。」
「しかしだな、もし一騎打ちだとすれば我が国からは誰が出るのだ?それと、向こうは誰を出してくるのだ?」
覚めた顔で趙雲が話を混ぜる。
「我が軍は置いておいて、魏軍の代表と言えば今居る夏侯惇では無いのか?」
関羽が一般論を述べるが趙雲が混ぜ返す。
「確かに魏の武の代表と言えば夏侯惇だが、それなら愛紗で充分勝ち目があるな。」
そう言いながらも少し考えて趙雲は言う
「しかし、魏軍最強と言えば呂布が居る。あの武に一騎打ちで勝てるかと言われれば厳しい勝負と成るな。」
「もし、呂布が相手となると・・・・・・相手が出来るのは鈴々くらいか・・・。」
「それでも勝機は一割程度でしょう。しかし、戦よりは勝てる見込みがあります。それに・・・・」
諸葛亮の台詞を劉備は横から取る。
「何よりこれ以上、人が死ななくて済む・・・かな。」
「多分北郷さんの狙いもそこにあるのでは・・・・・。」
「北郷・・・・・・敵ながらあっぱれな考えだな。」
関羽が感心する。
「惚れたか?確かに北郷は見てくれ、中身とも揃っているとは思うが・・・・敵の大将だぞ。」
趙雲の茶々に、関羽ともう一人が反応した。
「馬鹿を言え、そんなことは考えもしないわ。」
「馬鹿を言え、一刀様をお前達なんぞに渡すわけがない。」
その台詞は当然春蘭だ。
こちらはこちらで『魏の代表は当然私だろうなぁ』と春蘭が秋蘭に詰め寄っていたが、一刀様に伺ってみなければ解らないと諭されていた。
「我が主、北郷様から返事を聞いてくるように言いつけられております。お返事いただけますか。」
秋蘭が畏まって尋ねると、劉備は答えた。
「謹んでお受けします。詳しい内容は後日代表を出してお話し合いしましょう。」
「魏の代表は、当然私ですよねぇ?」
帰ってくるなり春蘭が俺に詰め寄った。
「まぁまて姉者、報告が先だ。」
そう言って秋蘭は俺の前に来ると結果報告をした。
「一刀様。劉備は書状の内容を了承しました。詳しい内容は後日とのことです。」
「そうか、受けてくれたか。それじゃぁ評定を開こうか。」
そう言って主な面子に連絡をしようとしたときだった。
桂花が大慌てで入ってくる。
「一刀様、成都で噂になっている件ですが事実でしょうか?」
「んーーー、早いねぇ、桂花。流石我が軍の筆頭軍師だ。」
「え、ええ、はい。ありがとうございます。」
照れる桂花だがすぐ自分を取り戻す。
「ではなくてですね、蜀との戦を一騎打ちで決着させるというのは本当でしょうか?」
「あぁ、そのことか・・・・・・でもすでに街で噂なんて少し蜀は情報管理が甘いのじゃないか?」
「あそこの将は口の軽い人が多いですから・・・・・・・本当なんですね?」
「もしかしたらそれも策だったりして。こちらの退路を断つのが目的だったりするかもねぇ。諸葛亮ちゃんとか居るからねぇ。」
「確かに諸葛亮は侮れませんが・・・・・・一刀様・・・はぁ・・・。」
呆れたようにため息をつく桂花。
「すでに決められたわけですね。私には相談してくれなかったのですか?」
「ごめんね、話すと反対されそうだったから。」
「当然です。すでに九分九厘勝っている戦いを、わざわざ勝敗の解らない一騎打ちでなんて・・・・・・。」
『・・・・それに一騎打ちでは軍師の活躍の場は無いじゃないですか・・・。』
「君たち軍師には、戦いの終わった後にいくらでも活躍の場はあると思うよ。」
桂花を抱きしめるとその思いを解っているように耳元で囁く。
「今も俺のために活躍して欲しいしね。」
「一刀様・・・。」
「大丈夫、これで終わるし平和な世の中にしよう。」
「はい・・・・。」
その後評定は開かれ、会談の場所や日程を話し合われた。
ちなみに他の軍師達の反応は
「グゥ・・・おにいさんらしいですね・・・。」
「一刀様の決められたことですから。」
「一騎打ちは当然呂布殿なのです。」
「相変わらずの甘ちゃんね。でも・・・・あいつらしいけど。」
呉軍は雪蓮と冥琳で
「ふふふふふ、まさかこんな風になるなんてね・・・・私には誰が代表か解ったわよ。」
「ふうむ、やはり呂布だと思うがな・・・確実に勝つのならな・・・。」
「冥琳ったら、相変わらずね。」
「私は勝てる確率の高い方法を選ぶのだよ・・・・」
成都では軍議がひっきりなしに行われていた。
「代表ですが、どなたが良いのでしょう?」
諸葛亮が案件を提出する。
「魏の方からは誰が代表かは言ってこないのか?」
趙雲が質問をする
「それについては色々間者を飛ばしてみましたが・・・・どうやら天の御使い様本人だけが解っているらしく、調べようがありませんでした。」
「ふーむ、では我が方も当日の発表とするか?」
「それでも良いのですが、当方は逆に先に発表してしまうのはどうでしょう。」
「なるほど、公正性を皆に示すか・・・・。それで誰を代表とするのだ。」
「普通に考えれば、私か、お前か、鈴々かと言ったところだろうな。」
横で聞いていた関羽が発言をする。
「私はやめておこう。蜀を背負うには私では荷が勝ちすぎる。」
趙雲が珍しく殊勝な発言を見せる。
「それと同時に鈴々にも背負わせたくはないな・・・・では私が・・・」
と、そこで今まで聞いていただけだった劉備が話し出す。
「私思うの。実はこの一騎打ち、勝っちゃいけないんじゃないかって。」
その発言に一同が押し黙る。
「実は北郷さんのお手紙、体の良い降伏勧告だったんだなぁって今思ってるの。」
「・・・・・確かに、あの状況で私たちは9分9厘勝てない状況だった。しかし、それでも私たちは降伏しようとは思わなかった。」
「それは、みんなの想い、夢、そして意地があるから。でもうすうす感じていたの、それはほとんど北郷さんと一緒だって出来ることだって。」
「残っていたのは、多分意地の部分。北郷さんはそれを一騎打ちによって無くそうとしようとしてくれてるの。」
「だから・・・・この一騎打ち。私が出ちゃダメかな。」
その発言を聞いて一同が感心したように考え込むが、一人関羽ががぶりを振った。
「ダメです。それで私たち将は納得できるかも知れませんが蜀の勝利を願っている庶民達が居ます。」
「その人達が納得するためには私が出ることが必要なんです。」
「確かに、桃香様が出て行ったら、知らない庶民達は最初から勝負を投げたように見えるかも知れないわね。」
黄忠が関羽の後押しをする。
「では、一騎打ちは私で構わないか?・・・・・・それでは通達を朱里、頼むな。」
「はい、解りました。」
そうして蜀の代表は関羽だと発表されたのは一騎打ちの5日前だった。
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成都の城下町ですでにうわさ話に成っていた故に、程なくその噂は許昌にも流れ込んだ。
本来なら国の将来を一騎打ちにて決めてしまう事に対する不安感が表に出ると思われるのだが、どちらかと言えば魏の代表が誰に成るのかと言う話題の方が大きかった。
「まぁ、平和だって事なんだろうけどねぇ。」
この国の方向性はこれで良いんじゃないかと思いつつも、もう少し危機感とか有っても良いとも思っていた。
俺は今回の一騎打ちの件で武将達には当日発表すると伝えた。
日頃の修練は欠かさないようにとも言った。
そうして俺は・・・・・。
試合当日を静かに待った。
決闘場は蜀と呉の国境にある上庸の街に作った。
出来ればコロシアムのようなものを作りたかったが、時間が足りなかったので柵で囲んで見届け用の席を作っただけの簡素なものに成った。
当日、朝、まだ誰もいない試合場の貴賓席に俺は座っていた。
「一刀様、どうなさりました?まだこんなに早い時間ですが?」
見回りに来たらしい秋蘭は俺を見つけると話しかけてきた。
「いや、色々あったなぁと思ってね。」
思い起こしてみると、秋蘭に見初められたのが今の俺が居る理由だ。
「最初、仕えたいと言われたときにはどうしようかと思ったよ。」
俺はおどけてみせるが、相変わらず真っ直ぐな目で秋蘭は俺を見つめると言った。
「私の判断は間違っていませんでした。一刀様はやっぱり王と成る方でした。」
「うーん、最初は全く手探りだったけどね、今は自分の目で真っ直ぐ見て行動できる。これも秋蘭達のお陰だよ。」
「私たちはお手伝いをしただけです。そしてこれで一旦終わりますね。」
「うん。でも終わりじゃないよ。まだまだこれからだ。その為にも今日は負けられない。」
「・・・・・・・・やはり、一刀様が出られるのですか?」
「ああ、秋蘭は誤魔化せないね・・・・・桂花や、風や、稟も気がついてるとは思うけど。」
「気がついていないのは姉者と季衣くらいだと思いますよ。」
「春蘭はすでに出る気満々だね。」
「特訓に付き合わされる霞が可哀想でしたが・・・・・。」
「そうか、霞の得物も偃月刀だったね。仮想関羽か・・・・俺も霞に付き合って貰えば良かったかな。」
「方天画戟を相手にされていたようで。その方が怖いのですけどね。」
「・・・・・・・・それも知ってたか・・・。」
「関羽は尋常の武将ではありません。ご武運お祈りします。」
「ああ、任せておいて。」
そして、試合の刻限と成った。
東側の入り口から関羽が入ってくる。
青龍偃月刀を操る関羽にふさわしい青龍の扉だ。
しかし、西側。白虎の入り口からは誰も入ってこない。
「どうした、私の相手は誰だ?呂布でも夏侯惇でも誰でも構わんぞ。」
すると、貴賓席から声がする。
「君の相手はここにいるよ。」
そして、少し高くなった場所から俺は飛び降りた。
綺麗に着地した後、関羽に向かって俺は話しかける。
「魏の代表はこの俺、北郷一刀だ。関羽ちゃん。よろしくね。」
そう言っていつも通りの微笑みを見せるが、関羽には通じない。
「これから果たし合いというのに、よろしくは無いな。それに、天の御使い殿が代表か・・・・いや、まさに代表にふさわしいか。」
「俺は君の所の劉備ちゃんのように優しくはないからね。この勝負、負けるわけにはいかないよ。」
「それは私とて同じ事。蜀国民のためこの勝負負けられん。」
「そうか、良かった。それでは始めようか。」
そう言って一刀を構えると名乗りを上げた。
「北辰一刀流師範、魏王、北郷一刀。行くよ!」
「五虎大将軍、筆頭、蜀の偃月刀。関雲長。参る!」
二人は得物を構え相手の出方をうかがう。
その気迫と気迫のぶつかり合いに、周りの観客は息を呑んで見守った。
先に動いたのは関羽だった。
「いやーっ!」
気合いの入った叫びから、青龍偃月刀の連撃が繰り出される。
俺はそれを柳のように捌いた。
修練で恋の一撃を受けて感じたのは彼女たちの強い攻撃をまともに受けては、非常に消耗してしまう事だ。
力を受け流すように捌く、それが習得できたのは大きかった。
「むぅ、見事に捌く。」
関羽にまだ余裕があるのか、感心したように言う。
「このくらいはね、でもまだ本気じゃ無いんだろ。」
そう言う俺はあまり余裕は無かった。
なぜなら並の相手なら躱しながら反撃をするのが北辰一刀流の奥義だが、その隙は全く出来なかったからだ。
「長引かせると不利だね。」
俺はその剣を青眼に構えると気を練りながら呼吸を整える。
そうしてゆらゆらと揺れる剣先を数度にわたって振り下ろした。
恋や春蘭に見せたあの技だ。
一気に間合いを詰めて合計7度斬りつけるこの技を関羽は全て受け止める。
一瞬関羽の顔が歪むが、それでも間合いを開けてその範囲から外した。
「これは・・・・・・流石と言えるが一度見せて貰えば二度は通じないな。」
息を整えながら関羽が言うが、俺はすでに次のモーションに入っていた。
「私の魂の一撃が止められるかぁ!」
それでも気迫を込めた関羽の偃月刀が振り下ろされる。
それは躱せないタイミングであり、終わる威力であった。
さらに言えば俺は躱そうともしていなかった。
しかし、その一撃はなぜか空を斬った。
「あっ!」
関羽がそう叫んだ瞬間、俺の剣が関羽の青龍偃月刀をはじき飛ばしていた。
得物を弾かれ、その場にしゃがみ込む関羽に俺は剣を突きつけた。
「勝負あったね。」
闘技場は歓声に包まれた。
ブログを読んで頂いた方はご存じでしょうけど今までのが全て前振りです
そろそろ本編が始まりますw
嘘です。(ある意味本当ですw)
ではシーン変更から
「えーと、ディメンションスタビライザーは正常ねぇん。」
「ここでロックして・・・・・・うん、問題ないわん。数値も安定してるしぃ。」
「後は・・・・・シンクロタイムだけど・・・・60SCって所かしらぁん・・・。」
そこは泰山の頂上にある神殿。
この場所には不似合いなモニター、機械がぎっしりと並んでいる。
そこにいるのは2mのマッチョな巨漢と、身長150程度の少女。
巨漢はその姿に似合わない仕草で細かい機械を操ってる。
「どう?何とかなりそうなの?」
「ええ、やっと成功したわぁん。この外史とシンクロできる外史を作り出すこ・と・に。」
「そこに一刀は居るの?」
少女が尋ねる。
少女もその姿に似合わず尊大な態度だ。
「ええ、それが条件だったわねぇん。」
「貴女を連れて行くために、貴女の居ない外史を作り出す必要があったの。でも、それだけじゃ成功し・な・い・・・。」
「出来る限り現在の状況を同じにする。つまり魏による大陸統一。それがキーワードだったわ。」
「貴女の居ない世界で、魏による制覇・・・・・この条件は思ったより大変だったわぁん。」
「でも、その世界の一刀はそれを成し遂げたのね?」
「ええ・・・・・貴女と別れた後のご主人様はその存在を分解されたの。」
「そうしてその思念はいくつかの外史にばらまかれた・・・・・それを探すのだって一苦労だったわよ。」
「ありがとう・・・・・。」
「あーら、???、あなたからそんな言葉が聞けるなんて思わなかったわぁん。」
「うるさいわね。いいわ、それでどうやったらいけるの。」
「いまからそこの鏡にゲートを開くわ。60秒その外史はここと繋がることと成るの。その鏡に入れば移動できるのよぉん。」
「ふーん、じゃぁ早速行くわ。早く開きなさい。」
「早いわね。いいわ。じゃぁ、開くけどその前に聞いてちょうだい。」
「これから行く先には夏侯惇とか居るけど、貴女のことは誰も知らないわ。ご主人様が思い出すかは結構賭ね。その意識にすり込まれた記憶・・・・・想いがどれだけ強いかに影響されるでしょうけど・・・・」
「だから、この世界と同じような態度は取らない事ね・・・混乱はシンクロ率に影響するわぁん。」
「どうなるの?」
「帰れなくなるか、最悪の場合消滅するわねぇ。」
「解ったわ・・・・私は一刀に会えればいいの。」
「OK、じゃぁ機械を動かすわよぉん。」
そうして、巨体を完全に映し出せるほどの大きな姿見は青く発光した。
二人はその中に消えていった・・・・・
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11話目となります
真・恋姫無双のSSではなくてあくまで恋姫無双の魏ルートSSです。
ただしキャラは真・恋のキャラ総出です。
無印恋姫無双は蜀ルートでした。
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