昔、おふくろから聞いたおふくろと親父の出会いの物語は素敵だった。俺もそんなふうに好きな人を見つけたい――救いたいと思っていた。
isolation game――隔離された試合。それは、軍で行われているこの国の最高戦力を決めるための闘いであった。
そして、親父もおふくろもその参加者だった。
互いが互いを殺し合う環境の中、けれど、一つの奇跡が隔離された空間で起こった――。
「あっはっは、悪い悪い!」
斬撃を容赦なくぶつけてきた親父はしかし反省の色を見せずに笑う。
「まさかレイがあそこまで鈍いなんてな!」
「気配完全に消そうとしてただろ……」
「そこまでばれてたのか!」
完全にコント調である。
なんなんだ、このノリは……。誰か止めてくれ。
と、そこで。
「おじさん、とりあえず本気はどうかと思いますよ?オズ姉ちゃんのが間に合わなかったらどうするつもりだったんですか?」
「まぁ、そうだったとしても輸血するほどに血を失うのはこの駄目息子だけだったさ」
「え?」
スズラの困惑した声に、あろうことか親父は言った。
「だってこの駄目息子はスズラちゃんの事かばおうとしてたからな!」
お前が"駄目"親父だよ!そういう恥ずかしいこと何で言う!?
案の定、スズラはあぅあぅと言葉にならない声を出している。
「ち、違うんだ!ちょっと体がそっちに傾いただけというか――不可抗力というか……」
俺の必死の弁解を聞き、しかし親父は笑って言う。
「必死な目してスズラちゃん抱き寄せようとしてたのに、よくそんなこと言えるな!」
「この変態~~~~~!!」
親父の一言でスズラはパァン、と俺の頬を打った。
全ての科学力を詰め込んだisolation game。戦争多発のこの国で最高戦力を決めるのは即ちこの国の未来を決めるのと一緒だった。
だからこそ人殺しさえ、正当化された。
なのに参加者が絶えないのは、最高戦力となり金をたくさんもらいたい、と思う者であったり、また、自殺志願者だったり、また、優勝した時の褒美が欲しかったり。
褒美、それは――命と心に関係のない願いを一つ叶える。
どこまでも憧れる褒美であった。
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隔離された空間に閉じ込められたレイ。脱出するにはそこで行われている隔離された試合に勝たなくてはならない――
第7話 馬鹿親父と馬鹿息子