No.121308

真・恋姫†無双 ~魏~ 終焉後物語12.5

harutoさん

harutoです。
今回は本編ではないんです。
それと時系列がめちゃくちゃなのはご勘弁を(_ _)

熱読してもらえれば光栄です^^

2010-01-30 03:28:28 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:10253   閲覧ユーザー数:7310

拠点 〖 張 遼 〗

 

李淵「終わったぁ~」

 

最後のお客が出たと同時に傍にあった椅子に座り込んだ。

 

蒼蓮「だから、お客さんが出たあとに叫ぶのやめなさいよね」

 

李淵「いやぁ、仕方ないんだってば」

 

蒼蓮「何が仕方ないよ。ちょっと魏光さんも何か言ってくださいよ」

 

李淵への怒りが店内の片付けをしていた一刀に矛先がむいた。

 

一刀「ん?まぁ、わからなくはないんだよなぁ」

 

一刀は手を休めずに返答した。

 

蒼蓮「もう、魏光さんまで」

 

その反応に頬を膨らませ、ご機嫌斜めな様子。

 

一刀「ははっ、まぁ、李淵は働いている人間としてまだ子供なんだから仕方ないんだよ」

 

一刀の子供というフレーズに李淵が敏感に反応する。

 

李淵「ちょっと魏光さん!子供ってのは聞き捨てならないよ」

 

蒼蓮「十分子供じゃない!」

 

李淵「なっ!?、おまえには言われなくないよ」

 

蒼蓮「な、何ですって?!」

 

一刀「はははっ」

 

普段どおりの閉店後の喧嘩を見つつ、一刀は一人黙々と片付けを続けた。

 

バンッ!

???「ういっす!!」

 

突然、はりのある声とともに勢い良く扉が開いた。

 

霞「光っち!飯食いに来たで」

 

一刀「おおっと!?」

 

突然の出来事に持っていたお皿を落としそうになる。

 

喧嘩をしていた二人も言い合いを止め、霞の方へと視線を向けた。

 

蒼蓮「ち、張遼様!?」

 

霞「なんや、なんやそない驚いた顔して。うちが来たんやからもっと喜びや」

 

そう言いつつ李淵の背中を叩き、笑いながら椅子に座った。

 

李淵「いや、あんな勢いで入ってきたら誰でも驚くよ。それに、いちお店終わってるし」

 

叩かれた背中を擦りながらいかにも片付けをしていたようなそぶりを見せた。

 

霞「え~、ええやんええやん。久しぶりに来たんやし」

 

蒼蓮「久しぶりって言っても三日前にも来たばかりじゃないですか」

 

霞「十分久しぶりやんか」

 

自信満々にそう答えられ、蒼蓮は苦笑いをしながら肩を落とした。

 

一刀「まぁ、いいじゃないか」

 

霞「おっ、やっぱ光っちは話が分かるなぁ」

 

一刀「それに、そこら辺のものを片付けたら二人はもうあがっていいよ。張遼様以外はお客はいないんだし」

 

李淵「えっ!いいの?」

 

蒼蓮「でも、魏光さんだけに残りの片付けをさせるわけには・・・・・・」

 

自分に正直な李淵と人を人一倍気遣う蒼蓮とではこれでもかと言うほど反応に差がでていた。

 

一刀「いいんだよ。それに、蒼蓮ちゃんだって早く市に行きたいんだろ」

 

蒼蓮「うっ・・・・」

 

今日は半年に一度開かれる他国の商人が一同に集まる市場が開かれている。

 

この市は国内外で誰しもが一度は行ってみたいと言うほどの評判があり、そこには評判どおりに様々なものが並び、多くの人間が訪れ、お祭り騒ぎの一日となる。

 

その中には洋服や装飾品も多く、前々から噂を聞いていた蒼蓮は、洛陽に来てからこの日をずっと待ち望んでいた。

 

蒼蓮「でも・・・・」

 

一刀「いいからいいから、先に楽しんできな。俺も後から行くから」

 

といつものように笑顔で答えた。

 

蒼蓮「は、はい。ありがとうございます」

 

承諾したかと思えば、片付けを一瞬ですませ李淵とともに店をあとにした。

 

その後、一刀は調理を済ませ、テーブルに料理を並べていた。

 

霞「いただきー」

 

満面の笑顔とともに料理を口に運ぶ。

 

霞「いやぁ、光っちのはほんまにうまいで。これなんか変わった見た目やのにな」

 

天ぷらを頬張りながら一刀の料理の腕を褒め称えた。

 

一刀「張遼様にそう言われると自信がつきますね」

 

一刀は材料の余りで作った料理を頬張りながら、霞の方を見た。

 

霞「せやで、うちが認めたんやから自信持ちや」

 

一刀「はは・・・・」

 

霞「どないしたん?」

 

一刀「いえ別に」

 

嫌味で言った言葉がまったく通じていないことに苦笑いだった。

 

一刀「(まったく、酒とつまみがあれば何でもいいくせに)」

 

そうこうしているうちに最後の料理を口に運び、満足そうに箸を置いた。

 

霞「ごっそさん!」

 

その様子を見た一刀は早々と食器を片付け、食後のお茶を出した。

 

霞「それにしても、この店は他の店と違って変わった店やな」

 

出されたお茶を飲みながら店内を見渡した。

 

一刀「んっ?店内のことですか?そうですね、自分なりにいろいろアレンz・・・じゃなくて工夫しましたから」

 

霞「でも、何でこんな感じにしたん?いや別に悪いとか言うわけやないんやで、でも、やっぱ変わっとるからなぁ」

 

あからさまに他の店とは異なった様子の店内、逸脱しているわけではないが何か変わっていると感じ取れるものだった。

 

一刀「うーん・・・・そうですね。料理屋としてではなくただ居心地のいい店をつくりたかったんだと思います」

 

霞「居心地?」

 

一刀「えぇ、おいしいお店ならこの洛陽にはいくらでもありますからね。私はそういうのではなく、お客の皆さんが楽しく料理を食べていってくれればいいいんです。それこそ見知らぬ人とでも一緒に話をしながら食事が出来るような」

 

霞「光っちのゆうとることはわからんようでわかりそうな気ぃするけど・・・・十分料理の味だけでもみんな通うで」

 

一刀「まぁ、そう言っていただけるのは嬉しいですよ」

 

霞「せやせや、だから店のつくりやら雰囲気なんてそんな気ぃ使わんでもええねや!」

 

一刀「むっ、張遼様」

 

霞「?なんや」

 

一刀「そうかもしれませんが、やっぱり私は、そういう雰囲気は大事だと思いますよ」

 

霞「えっ・・・・・・・」

 

少しむきになった顔を見ながらしあは黙ってしまった。

 

【???「どうって、こう・・・・雰囲気を作ってさ」】

 

【霞「雰囲気を作るんかいな」】

 

【???「そういうのも大事だろ」】

 

【霞「分からん」】

 

【???「そっか・・・・・いいよ、じゃあ俺に―――――」】

 

霞の頭の中では走馬灯のようにその映像が流れていた。

 

いつ、どこで、誰と話していたかも、むしろ、そんなことがあったかさえも定かではないが、なぜか心が温かかった。

 

霞「・・・ふん・・いき・・・・」

 

そして、知らず知らずのうちにその言葉を呟いていた。

 

一刀「張遼様?」

 

霞「・・・・ん?あぁ、すまんすまん、ちょっとぼおっとしとったわ」

 

一刀「大丈夫ですか?」

 

しあ「大丈夫やって!せや、光っち、なんかうちに聞きたいことがあるってゆうとったやん」

 

先程の感覚を振り払い、強引に話を変えた。

 

一刀「ん?あぁ、そういえば以前襲撃されたときのことなんですけどね」

 

霞「なんや」

 

一刀「あのとき、張遼様、どこか怪我をされていたんじゃないかなって思いまして」

 

霞「ん?なんで?」

 

一刀「最近、鍛錬を見させていただいたときと動きが全く違っていたので、もしかしてと思って」

 

霞「ようわかったなぁ。光っちの言うとおりちょっと怪我しとったんやであん時」

 

一刀「(やっぱり・・・・)」

 

霞「光っちんとこ向かう前日にちょっと高いところから落ちてな、そん時に怪我したんやで」

 

一刀「足でも捻られたんですか?」

 

霞「いや、足は強く打って痛めただけや」

 

一刀「・・・・・足は?」

 

霞「せや、足はまだええほうやったんやで。どっちかっちゅうと骨の方がやばかったわ。あんときはあばらが何本がいっとったからな」

 

一刀「・・・・・・」

 

普通のことだと笑いながら話す霞に、一刀は言葉が出てこなかった。

 

一刀「じゃあ・・・落ちたってどこから?」

 

霞「街の塀」

 

一刀「・・・・・・・・・・へい?」

 

霞「うん」

 

一刀「へいってあの街を囲ってるやつ?」

 

霞「当たり前やん!それ以外に何があるちゅうん」

 

一刀「・・・・・・・・・」

 

霞「しかし、襲われたときはやばかったなぁ、足は痛いしあばらには激痛が走るし。さすがに骨がいっとるときにこれを振り回すもんやないな、気ぃ失いそうやったで」

 

自分の飛龍偃月刀を軽々と振り回しながら、豪快に笑っていた。

 

一刀「はは・・・は・・は・・・・」

 

どれほど顔が引きつっていただろうか。わかってはいたが。いや、分かりきってはいなかったのだろう。この時代の武将の化物ぶりを・・・・。

 

一刀「(修行すればするほど差が広がっている気がするな)」

 

自分の三年間の積み重ねが音をたてて崩れそうな気持ちだった。

 

とそんなことを考えていると突然、扉が開いた。

 

流琉「霞様!」

 

季衣「やっぱりここにいた!」

 

霞「流琉っちに季衣っちやんか、どうしたん?」

 

 

流琉「どうしたのじゃないですよ!お昼に市で待ち合わせをしていたじゃないですか」

 

霞「ん?・・・・・・・・あぁ!せやせや、すっかり忘れとったわ」

 

悪怯れた様子はなく、楽しそうに笑っている。

 

流琉「まったく・・・・」

 

季衣「そうだよ、霞ちゃん!一人だけおいしいもの食べて!!」

 

一刀「・・・・・・」

流琉「・・・・・・え?」

 

季衣「兄ちゃんの料理、私も食べたかったのに」

 

霞「にゃはは、美味かったで~、さすがは光っちや。せや、季衣っちも作ってもらいや」

 

季衣「うん!」

 

霞の言葉を聞き、満面の笑みになる季衣。

 

一刀「うん、じゃないでしょ。ていうかなんでし・・・ちょ、張遼様が決め――――――」

 

ガチャ!

 

???「へぇ、変わった店内ね」

 

???「そのようですね」

 

季衣と霞への話も終わらぬまま、次から次へと人が入ってきた。

 

一刀「曹操様!?それに、夏侯淵様に夏侯惇様」

 

春蘭「華琳様、なぜこやつの店なのです」

 

華琳「変わった料理を出しているらしいからね。味付けは一風変わったものらしいけどその評判はかなりのものよ」

 

秋蘭「だから、われらもその料理を一度食べてみようと話をしたではないか、姉者」

 

春蘭「おぉ、そういえば」

 

一刀「(あいかわらずだな・・・)」

 

霞「おっ、華琳やないか」

 

華琳「あら、あなたも来ていたのね。それに、季衣と流琉も」

 

季衣「僕も流琉も今から、兄ちゃんの料理を食べるんだよ」

 

一刀「えっ!?いやまだ誰も――――――」

 

華琳「そう、なら私たちの分もお願いするわ」

 

秋蘭「頼んだぞ」

 

一刀「いや・・・・」

 

春蘭「まずかったら、本気でまずいといってやるからな」

 

一刀「(・・・・・味オンチに言われたかないよ。ていうか、なんでこいつこんなに刺々しいんだよ)」

 

流琉「すいません、兄様」

 

一刀の心境を察したのか唯一、流琉だけがその言葉をかけてくれた。

 

一刀「はは、大丈夫ですよ・・・・はぁ」

 

片付けの終わった調理場を見てため息を一つ。

 

一刀「(ごめん蒼蓮ちゃん、俺、市に行けそうにないや)」

 

市にいる蒼蓮に謝りつつ、渋々と調理場に入り、準備を始める一刀であった。

 

拠点 〖 張三姉妹 〗

 

うおおぉおぉおぉぉぉぉぉ~!!!!

 

歓声と熱気に包まれる会場。

 

観客の視線の先には数え役萬☆姉妹の三人がいた。

 

天和「みんな~今日もありがとう~」

 

地和「次の舞台も絶対見に来てね~」

 

人和「それじゃ、またね」

 

大歓声を浴びながら、三人はステージを降りた。

 

鳴り止まぬ歓声の中、数え役萬☆姉妹のライブは終わりを告げた。

 

その会場の警備には、一刀が借り出されていた。

 

というのも、この日の警備の担当がライブに参加するために一刀に警備を変わってほしいという申し出をしていたからだ。

 

一刀「いやぁ、しかし、あいつらの人気も衰えないなぁ」

 

地響きにも似たその歓声を聞き、三人の人気が衰えていないことを実感した。

 

一刀「アイドルで三年もしたら人気が落ちることだってありえるからな。んっ?おっ、帰ってきたか」

 

ステージから降りてきた三人を見つけ、その満足そうな表情が視界に入った。

 

地和「いやぁ、今日もちぃが一番だったなぁ」

 

天和「楽しかったけど、お姉ちゃんお腹がすいたよぉ」

 

地和「ちぃもお腹すいてたんだよね。ねぇ、人和、今日ぐらいぱぁーっと食べようよ」

 

人和「う~ん、・・・・そうね。久しぶりに帰ってきたんだし、少しくらい使ってもいいわね」

 

地和「やったぁ」

 

天和「じゃあ、早く着替えていこうよぉ」

 

一刀「(あいかわらずだな、この三人も)」

 

この後の夕食の話をしている最中、人和が一刀の存在に気づいた。

 

人和「あれ、あなたは?」

 

一刀「?・・・・・・(あっ、そっか。いちお、初対面か)」

 

以前通りに三人を見ていた一刀であったが、今は自分が別人としてここにいることを忘れていた。

 

一刀「はじめまして、今日の警備を担当させていただいた魏光と申します」

 

地和「はじめて見るなぁ、あんた」

 

一刀「そうですね、最近、洛陽に来たばかりですので」

 

人和「・・・・・・・・あっ、あなたが華琳様の言っていた新しい親衛隊隊長の人?」

 

事前に、華琳から聞いていた報告を人和が思い出したように口に出した。

 

一刀「はい、その通りです」

 

地和「へぇ、じゃああんた意外とすごい奴なんだね」

 

一刀「すごいかどうかは分かりませんが、まぁ、責任ある仕事を任せていただいたとは思っています」

 

人和「でも、どうしてあなたのような人がここの警備をしているの。いつもは、警備隊の人たちがいるはずなのに」

 

一刀「ええっと、まぁ、いろいろありまして」

 

地和「?」

 

今日のライブの警備を任されていた人間がそのライブに行くために自分がかりだされたとはさすがに言いにくかった。

 

天和「もう、そんなことはどうでもいいから早く行こうよぉ。お姉ちゃんお腹すいたんだってば」

 

人和「分かったわ、姉さん」

 

と、二人は楽屋に歩き出した。しかし、一人だけ一刀を見ていた。

 

人和「ちぃ姉さん?」

 

地和「・・・・・・・・ねぇ、なんかあんた面白そうだから、一緒にご飯に行きましょうよ」

 

一刀「・・・・・はい?」

 

いきなりの誘いに、さすがの一刀も声が裏返っていた。

 

人和「ちぃ姉さん、いきなりどうしたのよ」

 

地和「えっ、なんかこいつ面白そうじゃない、お人よしそうだし」

 

一刀「(おいおい、こいつ呼ばわりでお人よしときたかいきなり・・・・)」

 

地和「ねぇ、天和姉さん、いいでしょ?」

 

天和「そんなのどうでもいいから、はーやーくー」

 

地和「じゃあ、決まりね。着替え終わるまでちゃんと入り口で待ってるのよ」

 

その言葉を残して、楽屋へと走っていった。

 

天和も一緒に走っていったが、人和はというと、ため息を一つ残してから追うようにその後を歩いていった。

 

一刀「いや、俺の意見を聞けよ・・・・・」

 

一人取り残された一刀は、地和の行動にただただ唖然としながら、三人を待つしかなかった。

 

 

地和「おつかれ~!」

 

天和「おつかれさまぁ~!」

 

コップを高らかと掲げ、今日のライブを労い、一気に飲み干した。

 

地和「いただきまーす」

 

天和「いただきまぁす~」

 

テーブルに並んだ料理に楽しそうに手を付け始めた二人、その二人とは対象的な二人がいた。

 

人和「・・・・・・・ふぅ」

 

一刀「・・・・・・・・・」

 

地和「どうしたの人和?食べないの?」

 

目の前の料理に手をつけていない人和に気がついた。

 

人和「いや、食べるけど。それよりも、聞きたいことがあるんだけど」

 

地和「なに?」

 

人和「なんでこの人を連れてきたの?」

 

人和の指をさしている先には本日限りの警備員、一刀がいた。

 

一刀「ははっ(そりゃそうだわな・・・)」

 

人和の当たり前の発言に、同意の意見しか浮かび上がらなかった。

 

地和「えっ?さっき言ったじゃん。なんかおもしろそうだったからって」

 

人和「・・・・・それだけ?」

 

地和「うん」

 

料理を口に方張りながら、即答した。

 

二人のやり取りを見つつ、地和の自由奔放さに呆れていた一刀であったが、横から突き刺さるような視線を感じた。

 

天和「じーーーーーーーーーっ」

 

一刀「・・・・・・・・・・・」

 

食事を続けながらも、一刀から視線をはずそうとはしなかった。

 

一刀「あのぉ~、なんですか?」

 

天和「ふふっ」

 

満面の笑みを見せたかと思うと、一刀のとなりに席を移動させてきた。

 

一刀「いや、良く意味が分からないんですけど」

 

天和「かたい」

 

一刀「はい?」

 

天和「しゃべり方がか~た~い~」

 

一刀の敬語が気に障ったのか、頬を膨らませながら指摘してきた。

 

一刀「えっ、いや、いちお、初対面ですし・・・・」

 

天和「ぶぅぶぅ」

 

一刀「・・・・・・・・」

 

一刀が女の子の押しに勝てるわけがなく、すぐに折れてしまった。

 

一刀「はぁ・・・張角さん、なんでまたこんなに近いの?」

 

呼ばれ方に不満があるようだが、先ほどまでとは話し方が変わったことにいちお満足はしたのか表情が緩んだ。

 

天和「なんとなくだよ」

 

一刀「は、はぁ・・・」

 

その笑顔をみながら、彼女の天真爛漫さをじわじわと思い出してきた。

 

地和「あ~!天和姉さん、何でそこにいるわけ?」

 

人和と話をしていた地和が、天和が席を移動させていることに気が付いた。

 

天和「だって、近づいた方が話しやすいじゃない」

 

さらっと笑顔で返した。

 

地和「ずる~い、じゃあちぃも隣に行く」

 

むきになったのか、天和とは反対側に椅子ごと一刀の隣へと動いてきた。

 

一刀「いや、あの、おかしくない?」

 

その言葉には耳を傾けず、二人は一刀を挟んだまま口論を始めた。

 

地和「ちぃが先におもしろそうって目つけたんだから天和姉さんは後にしてよね」

 

天和「ても、お姉ちゃんの方が先にとなりに座ったもん」

 

新しいおもちゃを取り合うかのように二人の口論は止まりそうになかった。

 

一刀「あの張梁さん、た、助けて」

 

人和「自分で頑張って」

 

と三人を気にせずに一人黙々と食事を続けていた。

 

一刀「そ、そんな薄情な・・・」

 

人和「むしろ、私ではその二人を止めることは出来ないわ」

 

一刀「・・・・・・」

 

口論を続けている二人を見て、大きなため息をついた。

 

人和「・・・・・・・あの」

 

一刀「はい?」

 

人和「今日の警備はあなたが指揮をしたの?」

 

一刀「舞台のこと?指揮をしたって言うほどじゃないな、少し気になったところに口を出したぐらいだし」

 

人和「そう」

 

一刀「それが何か?」

 

人和「いつもより、観客の誘導や解散の手際のよさ、警備の配置からその移動や交代までいつもより効率的に行われていたから」

 

一刀「そっか」

 

人和「・・・・華琳様が言うようにできる人なのね」

 

一刀「k・・・・曹操様がそんなことを?」

 

人和「えぇ、頼りになるようには見えないけれど信頼できるほどの能力はあるって」

 

一刀「(華琳・・・・褒めてくれるのはうれしいけど頼りにみえないってひどいな相変わらず・・・)」

 

人和「で、私も少しだけあなたの有能さを垣間見たというわけ」

 

一刀「う~ん、そういってもらえるのはうれしいけど。それは、俺のおかげじゃないな」

 

人和「なぜ?」

 

一刀「確かに指示を出したのは俺だけど、それをしっかりと実行してくれたのは警備隊の皆だよ。いつもとは違うことしっかりとこなしてくれたんだし」

 

人和「・・・・華琳様の行っていたとおりの人ね」

 

一刀の発言を聞き、ボソッと呟いた。

 

一刀「えっ?」

 

人和「いや、謙遜するのねって」

 

一刀「謙遜も何も、俺は事実を言っているだけだからな。俺のやったことなんて指示を出して、舞台裏を警備していただけだから。それでも、って言うんだったらそれは君たち三人を含め、皆が頑張ったからこそより良くなったんだよ」

 

人和「・・・・・・・・」

 

一刀「張梁さん?」

 

黙ってしまった人和に声をかけた。

 

人和「えっ、なんです?」

 

一刀「いや、なんだかぼーっとしてたから」

 

人和「な、なんでもないわ」

 

そういうと、顔を背けてしまった。

 

一刀「?」

 

と一刀が不思議そうな顔をした矢先、

 

地和「ちょっと!さっきから人和とばっかり話してるじゃない!!」

 

一刀「へっ?」

 

天和「そうですよ~、お話をするために隣に来たっていうのにぃ」

 

一刀「えっ???」

 

口論をしていた二人であったが、人和とばかり話をしていたことがどうもだめだったらしい。

 

一刀「いや、だって二人は今の今まで喧嘩を――」

 

地和「なんですって!!」

 

地和のものすごい剣幕に圧倒され、言葉の続きを言わずに飲み込んだ。

 

一刀「ご、ごめんなさい」

 

地和「だいたい、ちぃが誘ったのに何でほかの人とばっかり話すのよ!そんなに、ちぃのことが嫌ならここの御代払わせるわよ!んっ?それがいいわ!ちぃにひどいことしたんだからそれぐらいはしてもらわないと」

 

一刀「えぇっ!?それはどう考えても理不尽だろ!?」

 

地和「どこが理不尽なのよ!ねぇ?人和」

 

地和は人和に同意を求めた。

 

常識人に話が振られたと同時に人和へ救いの目を向けた一刀であったが、

 

人和「そうね、それなら費用が無くなるわね」

 

一刀「ちょ、張梁さん!?」

 

天和「ねぇねぇ、私とはお話しないのぉ?」

 

一刀「いや、今はそれどころじゃ」

 

天和「う・・・うぇぇ~ん」

 

一刀「えぇえぇ!?な、何で泣くかなぁ!?」

 

地和「ちょっと!聞いてるの!!」

 

一刀「は、はい!」

 

人和「ふふっ」

 

三人をみていた人和の顔には無意識に笑みがこぼれた。

 

いつからか、心から笑えなくなっていた自分にいまは本当の笑顔があった。そんなことも気づかずに人和はただ笑っていた。

 

一刀「な、何でこうなるんだよぉ!!」

 

その賑やかな店内には、一刀の悲痛な叫びが響きわたった。

 

 

拠点 〖 許緒・典韋 〗

 

 

場所は調理場。そして机の上に料理が並んでいる。

 

一刀「・・・・・・・」

 

流琉「・・・・・・・」

 

その料理を流琉が味見しているようだ。

 

一刀「どうですか?」

 

真剣に味わっている流琉におどおどと声をかけた。

 

流琉「これなら、華琳様へも十分にお出しできる味だと思います」

 

一刀「ほ、ほんとうに!?・・・ですか?」

 

流琉「はい、私たちとは変わった味付けではありますが、とてもおいしいですし、見た目・材料に偏りも無くて料理としては完成されていると思います」

 

一刀「お・・・・おぉ・・・・・」

 

元の世界に戻って三年間、地道に努力を積み重ねてきた結果が報われた瞬間であった。食べさせたかったうちの一人、その中でも舌が肥え、絶品の料理を作る流琉にここまで言わせたのだから。

 

一刀「う、ううぅ」

 

感極まり、涙が出てきそうだった。

 

流琉「えぇ!?あ、あの大丈夫ですか兄様?」

 

一刀「う?あ、すいません。思わず感動してしまって」

 

流琉「そ、そんなに今までおいしくないって言われていたのですか?」

 

一刀「そうなんですよ、今までずっと・・・って違いますよ!」

 

流琉「あ、違うんですか」

 

一刀「どんな想像したらそんな考えに行き着くんですか、全く」

 

少しふてくされながらも、料理に箸をのばした。

 

一刀「(自分でいうのもなんだけど、俺の料理もそこそこいけてるとは思うけど、流琉の料理は次元が違うな)」

 

自分の料理と流琉の料理を食べ比べてみるも、誰が食べても自分の料理の方がおいしいとはいわないだろうと実感をした。

 

流琉「どうしましたか?」

 

一刀「ん?いえ、相変わらず、料理がうまいなぁと思いまして」

 

流琉「ありがとうございます。でも私なんてまだまだです」

 

一刀「これだけできてまだまだだったら、大抵の料理人が未熟者になりますよ」

 

流琉「いえ、そんな////」

 

褒められたことで、顔をふせてしまった。

 

一刀はそんな流琉に気づかず流琉の料理を黙々とつまんでいた。そこに、兵の訓練を終えた季衣が入ってきた。

 

季衣「流琉!僕おなかすいたよ」

 

流琉「えっ、あぁ、もう作ってあるからそこに座ってて」

 

季衣「はーい」

 

言われたとおりに、席に着く季衣。

 

流琉「はい、どうぞ」

 

運んできた皿にはどれもこぼれそうなほど料理が盛り付けてあった。

 

季衣「いただきまーす」

 

満面の笑みで目の前にある料理を食べ始めた。

 

その光景を見ていた一刀が自分の料理を季衣の目の前に置いた。

 

一刀「おまけ程度ですけど」

 

季衣「ふぇ、いいの?」

 

一刀「えぇ、典韋様ほどの味ではありませんが、それでもよかったら」

 

季衣「うん、ありがとう兄ちゃん!」

 

季衣の言葉に一刀は笑顔で返した。

 

一刀「(相変わらず良く食べるな)」

 

三年も立ち子供っぽさが抜け大人らしくなってはいるが、昔となんら変わらない季衣。一刀にはそれが嬉しくてしょうがなかった

 

そんな季衣を見つめていた一刀ではあったが、ふと横から視線を感じた。

 

流琉「・・・・・・・・」

 

一刀「あの、どうしましたか?典韋様」

 

流琉「あ、いえ、その・・・・」

 

一刀「?」

 

流琉「わ、私も食べてよろしいですか」

 

一刀「私の料理ですか?ですが、典韋様の作った料理には到底及ばない味ですし、それに私が言うのもなんですがご自分の料理をお食べになった方がよろしいかと」

 

流琉「・・・・・・・」

 

その言葉に少しご機嫌斜めな様子の流琉。しかし、一刀にはその真意も表情も全く伝わってはいなかった。

 

流琉「でも、やっぱりほかの人に作っていただいた料理を食べる方がおいしいですし」

 

一刀「う~ん、そういわれればそういう気もしますけど・・・・・そこまで言っていただけるのであればどうぞお食べください」

 

流琉「はい」

 

一刀のその言葉に笑顔を取り戻した流琉は料理が並んでいるはずの机に視線を移した。

 

しかし、その視線の先には、すでに綺麗に食べ終わった皿がぽつんと残っているだけだった。

 

季衣「あー、おいしかった」

 

流琉「・・・・・・・・」

 

一刀「あ、あの典韋様?」

 

流琉は反応をしなかった。一刀は心配そうに見つめていたが、流琉の握った拳が震えているように見えた。

 

流琉「き、季衣の・・・・」

 

季衣「んっ?なに流琉?」

 

流琉「季衣のバカぁ~!」

 

ドゴォ~ン!!

 

流琉の振り下ろした伝磁葉々は見事に机を粉砕した。

 

一刀「・・・・・・えっ?」

 

目の前の出来事を受け入れられずにいる一刀。

 

季衣「いきなり何するんだよ」

 

流琉「季衣が全部食べちゃうからいけないんでしょ」

 

季衣「だって流琉が食べて良いっていったじゃん!」

 

流琉「私の料理じゃなくて兄様の料理のことよ」

 

季衣「だってにいちゃんが食べていいっていったもん」

 

流琉「でもでも、私も食べたかったのに」

 

季衣「最初っから流琉が言わないからいけないんだよ!」

 

流琉「もう!季衣には何も作ってあげないんだから」

 

季衣「なにぉ!それだけはさせないぞ」

 

言い合いのなか、二人の武器が室内を飛び交う。

 

机、椅子、食器、すべてを粉々に粉砕していく様はまさに圧巻であった。

 

狭い室内でこれほどの戦闘ができる人間はそうはいないだろうと感心していた一刀であったが、そんなことを考えている場合ではなかった。

 

確実にそして、着々と部屋が壊れていることにようやく気づいた。

 

一刀「いや、見とれてちゃいかん」

 

ドゴォ~ン!ドガァ~ン!

 

大鉄球と大円盤が飛び交う中、一刀は二人を止めるために動き出した。

 

一刀「いや、お二人とも!!まずいですってここ屋外ではないんですよ」

 

そんな一刀の静止も聞かず、二人はヒートアップしていく。

 

季衣「流琉のバ~カ!」

 

流琉「もう、季衣なんて知らない!!」

 

止まることを知らない二人の様子を見て、ことのまずさを一刀は把握した。何が何でも止めるために聞き分けてくれそうな流琉のほうへと足を進めた。

 

ドゴォ!!

 

しかし、その瞬間、流琉めがけて放たれた季衣の岩打武反魔が一刀に直撃にする。

 

一刀「ぐふっ」

 

一刀はその衝撃に耐えられるわけも無く、宙をまい壁へと打ち付けられた。

 

季衣「に、にいちゃん!?」

流琉「兄様!?」

 

その光景を見ていた二人もさすがに喧嘩をやめ、倒れている一刀に駆け寄った。

 

一刀「あ・・あは・・よ、ようやく・・・止まって・・・くれた・・」

 

季衣「だ、大丈夫!?」

 

一刀「た、たぶん・・・・大丈夫では・・・ないな・・・」

 

流琉「す、すぐにお医者様を」

 

一刀の様子を見てあたふたとしている二人、とその時、轟音を聞きつけた秋蘭が部屋にはいってきた。

 

秋蘭「何事だ二人・・・・・な、なんだこの部屋の有様は・・・」

 

ぼこぼこになった壁と散乱している木くずを見て、さすがの秋蘭も動揺を隠せなかった。

 

流琉「秋蘭様!兄様が」

 

秋蘭「んっ?な、大丈夫か魏光!」

 

床に倒れていた一刀を見つけると秋蘭はそばに駆け寄った。

 

一刀「か、夏侯淵様・・・・あ、あとは・・・・任せました」

 

ガクッ

 

そこで一刀は力尽き、意識が途絶えた。

 

一刀が気絶してから程なくして、聞きつけた華琳が駆けつけた。華琳のおかげで事態を収拾したが、二人には今後こういうことが無いようにきつくおきゅうがすえられた。

 

余談ではあるが、大鉄球をうけた一刀は幸い骨に異常はなく、ひどい打撲で済んだ。部屋の中であったことで無意識に季衣も力をセーブしていたのだろう。しかし、一刀が気がついたのはあの事件から四日がたっていたらしい。

 

・ ・ ・ 雑 談 ・ ・ ・

 

お久しぶりです;;

 

かなり更新が遅れてしまいましたが本日上げることができました。

 

今回は、お話を進めずに一刀君と彼女たちの何気ない日常を書かせていただきました。

 

それと、前回、たくさんのコメントをいただいたのですが、返事の方をせずにすみませんでした。

 

ですので、この雑談内で少し反応をさせていただきます。m(_ _ )m

 

オリキャラについてですが、実際、真恋姫登場キャラよりオリキャラが中心になることはまず考えていません。

 

だって、彼女たちと一刀君の後日談が書きたかったから書き始めた節がありますし(^^)

 

だから、そんな感じでオリキャラを今後出しても、出来る限り、『真・恋姫†無双』の後日談として書いていきたいと思う所存であります!

 

(恋姫キャラに違和感があるときはバンバン言っていただいてかまわないのですが、オリキャラのほうは優しい目で見てください)

 

それと、一刀君の強さについてですが、これから成長していくかは今後のお話を見ていただければ分かると思います!

 

これから一刀君は負けることもたくさんあるのかな?まぁ、それは分かりませんが、彼なりに頑張ってくれるでしょう。

 

 

 

今回の話についてですが、霞さんと張三姉妹と流琉&季衣を書きました。

 

本当は、誰を書いても良かった節があるので皆さんに聞ければアンケートみたいな形で聞きたかったのですが、聞くほどのことでもないのかな?と思ったところがあったので聞きませんでした。

 

実際、じゃんじゃんリクエストを書いていただいたら彼女たちと一刀君のお話を書きますのでよかったらコメントで言ってください。

 

 

 

それでは、

 

いつも、支援、コメント、閲覧してくださってる方ありがとうございます!!

 

それではまた次のお話でお会いしましょう (・ω・)ノシ

 

 


 
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