No.120246

真・恋姫†無双~薫る空~第60話 覇道編司馬懿√

60話です。

2010-01-24 01:32:54 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:15722   閲覧ユーザー数:11879

 

 

 

 

 

この二次小説内には以下のオリジナルキャラが登場しています。

 

 

 

 

司馬懿 仲達(真名:薫)

 

 このルートのメインヒロイン。

 

 

曹仁 子孝(真名:琥珀)

 

 このルートではサブヒロイン。

 

 

馬騰 寿成(真名:葵)

 

 このルートでのキーキャラ。馬族の王で、翠の母です。

 

 

 

 

 

 

 ――天水・城内

 

 

 

 【一刀】「たどり着いたはいいんだが……」

 

 むっすりとした門番らしき人と隣に並んで数刻。曹操からの使者だといっても中々通してもらえず、使者の証である手紙を渡して確認してもらう事で、ようやく城内に入ることは出来た。

 だが、そこでも少し待てといわれてしまう。

 まだですか?と横目に見ても、にらまれてしまうだけで何も答えてはくれない。

 

 【一刀】「はぁ……」

 

 とにかく、せめて薫の所在だけでもはっきりさせておきたい。こんなところまで来たんだから、成果なしというのはさすがにつらい。

 と、表情に出てしまっていたのか、番兵の人がこちらをちらちらと覗いてくる。

 あはは、と苦笑いでごまかして、彼から目線をそらす。

 

 【一刀】「ったく、どこにいるんだか」

 

 そう呟いた時だった。

 

 【???】「ここにいるぞーーー!!」

 【一刀】「へ?――ごふっ!!」

 

 甲高い叫び声が聞こえたと思ったら、腹にものすごい衝撃が走った。

 

 【一刀】「げほっげほっ……な、なん……」

 

 腹を押さえながら、半目で前を見ると、ちいさな女の子がいた。当たった時の感触を思い出すと、どうやら頭突きをかまされたようだ。

 

 【???】「むむ、その服、もしかしてあなたが天の………」

 【一刀】「はぁ……はぁ……な、に」

 

 予想以上に効いたその一撃はまだ俺の腹を苦しめていた。

 

 【???】「天の…………召使い、だっけ?」

 【一刀】「御遣いだ!」

 

 大して変わらん気もするがそこは気にしない。

 

 【??】「こらーーー!!なにしてんだ蒲公英~!」

 

 で、そんなやり取りのすぐ後に、もう一人やってきた。

 

 【蒲公英?】「あ、姉様」

 【一刀】「え、えと……」

 

 蒲公英なんて名前からして、おそらく真名だろう。そんな予測の下に俺はとっさに呼んでしまいそうになるのを抑えた。

 

 【??】「ったく……、あぁ、コホン」

 

 あらためて、とひとつ咳をついて最初の子よりも少し年上の彼女は話始めた。

 

 【馬超】「あたしは馬超、字は孟起だ。涼州刺史、馬騰の意思を伝えるぞ」

 【一刀】「はい」

 

 代理ということに少し疑問を抱いたが、馬超の態度に姿勢を整えて、話を聞く。

 

 【馬超】「…………」

 

 かさかさと紙を広げて、読み始めようと――

 

 【馬超】「…………――はぁ!?」

 【一刀】「ん?」

 

 と、その内容を見た馬超の表情は一変してくずれてさる。

 

 【馬超】「な、ちょと、これ……っ~~~~!!!!」

 

 その後すぐに馬超は振り返って、土煙をあげながら走り去っていってしまった。

 

 【一刀】「え……」

 【蒲公英?】「くすくす」

 

 事情を知っているのか、俺に頭突きを食らわせた子はくすくすと笑っていた。

 

 【一刀】「え……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからさらに数刻。街に着いたのは昼前だというのに、君主と面会を求めてから実際に会える頃には既に空は暗く、夜になってしまっていた。

 文官の人に連れられて、俺は広い部屋に案内された。

 

 【一刀】「…………」

 【馬騰】「…………ふむ」

 

 その人は、以前に洛陽で一度、その前にも一度、目にしたという程度だが、見覚えのある顔だった。

 

 【一刀】「洛陽では助けてもらって、ありがとうございました」

 【馬騰】「いや、気にするな」

 

 いいながら、馬騰の目線はさっきから俺の目を捉えて離さない。

 

 【馬騰】「あの時も思ったことだが……やっぱりお前面白いな」

 【一刀】「え」

 【馬騰】「お前、もてるだろ」

 【一刀】「……はい?」

 【馬超】「母様、何言ってんだっ!それより――」

 【馬騰】「翠、すこし黙っとけ。……なるほど、曹操が簡単に渡すわけだ」

 

 馬超を目で制止して、ひとり納得する馬騰。それだけ言うと、俺から視線をはずして踵を返した。

 

 【馬騰】「俺が曹操にだした要求は一つ、お前だ。北郷一刀」

 【一刀】「俺……?」

 【馬騰】「お前をよこせといえば、曹操は好きにしろと言ってきた。だからお前を好きにすることにした。その代わりに曹操の領地から西は絶対に攻めさせない」

 【一刀】「あ、あぁ……」

 【馬騰】「はっきりといっておいてやる。曹操との同盟が切れたときは、俺はお前を殺す」

 

 体はさっきよりも離れているのに、威圧感ははっきりと増していた。

 

 【馬騰】「…………ふ。ま、そこまで気にするな。同盟が続く間は生かしておいてやるから」

 【一刀】「……」

 【馬騰】「ん……そうだな。命がけでここにいるんだ。見返りがほしいところか」

 【一刀】「え、いや、そういうわけじゃ……」

 

 見返りというなら、曹操との同盟がそれにあたるはずなんだが、馬騰にとってはそれは当たり前の事らしい。

 

 【馬騰】「そうだな。お前に俺の真名をやるよ」

 

 ――なっ!?

 

 【一刀】「ま、真名!?」

 【馬騰】「あぁ、言っとくが、俺の真名は重いぞ」

 【一刀】「ちょ、ちょとまった!ストップ!」

 

 馬騰の雰囲気に飲まれ抱えていた俺も、その言葉には一気に正気を取り戻す。

 

 【馬騰】「ん、足りないか?なら翠と蒲公英のも――」

 【一刀】「ちがぁぁぁう!真名っていきなりすぎるだろ!」

 【馬騰】「いや、殺される相手の名前は知っておきたいだろ」

 【一刀】「え、死ぬの前提?」

 【馬騰】「お前次第じゃないか?」

 

 そう言ってニヤニヤしている馬騰の目を俺は知っている。これは華琳のお楽しみの前のあの目と同じだ。誰がどうしようと我を通してしまう気性を、この人も持っている。

 はっきり言ってこの目が出たら終わりだ。

 

 【一刀】「…………分かった」

 【馬騰】「ははは。まぁ、そんなに構えるなよ。他意はないさ」

 

 王座に構えられた椅子に腰掛け、馬騰の雰囲気はようやく元へと戻る。

 

 【馬騰】「俺の真名、”葵”だ。あぁ、それから別に話し方もいつも通りでいいぞ。そのほうが俺もいじりやすいから」

 【一刀】「あはは……わかったよ……」

 

 

 

 

 

 ――――。

 

 

 

 

 一通り面会を終えて、俺は馬超に客室へと案内された。

 

 【一刀】「はぁ……」

 【馬超】「あはは……まぁ、母様は誰に対してもたいていああだから……」

 【一刀】「そ、そうか」

 

 気にするなといってくれているらしい。

 

 【馬超】「じゃ、今日はここで寝てくれ」

 【一刀】「あぁ、ありがと」

 

 扉を閉めて、馬超は自分の部屋へと戻ろうとする。

 

 【一刀】「あ、ちょっと!」

 【馬超】「うん?」

 

 思い出したように、俺は馬超を引きとめた。馬騰こと葵さんの圧力にすっかり忘れていた聞きたい事。

 

 【一刀】「ここに、司馬懿って奴来てないか?」

 【馬超】「司馬懿?……う~ん……どうだろうな、あたしはわかんないな」

 【一刀】「そうか……」

 

 馬超が知らないということは、街にはいっていないんだろうか。

 華琳の話では涼州に向かっていたということだけど。

 

 【馬超】「探してるのか?」

 【一刀】「あぁ、こっちに向かっていたらしいんだけどな」

 【馬超】「こっちに向かっていてここを通り過ぎれば五胡に入っちゃうからな……間違いじゃないのか?」

 【一刀】「五胡……」

 

 初めて聞く名前だった。

 それなりに知っているつもりだった三国志の知識だけど、やっぱり知らないことだらけだ。

 もっとも、もう俺の知っている歴史なんてアテにならないけど。

 

 【一刀】「……ま、地道にさがしていくさ」

 【馬超】「そっか、がんばれよ」

 【一刀】「あぁ、ありがとな、馬超」

 

 しばらく一人旅だったせいか、久々に交わしたまともな会話に嬉しくなって、自然と笑ってしまった。

 

 【馬超】「あ、あぁ……それじゃな!」

 【一刀】「ああ、おやすみ」

 

 

 扉を閉めて、俺は窓から見える空を眺めた。

 星がうるさく光っていて、薫がいなくなった日によく似ている。

 

 【一刀】「何処行ったんだろうな」

 

 誰に言うでもなく、そう呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 ――???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒトの体に向かって、刃物が飛んでくる。

 それを受けて、血を噴出しながら、さっきまで生きていたそれは、ただの物になってしまう。

 叫び声をあげながら、そんな運命を辿る者達が何千人、何万人と、増え続けていく。乱世を思えば当たり前の事で、けれど所詮は他人事。

 戦に関わらなければ、そんなものは遠い世界のものでしかない。

 ――ずっとそう思ってたのに。

 一人が死ねば、同じ苦しみが自分に降りかかる。それは比喩とか、たとえ話とか、そんなものじゃなくて、現実として襲い掛かってくる。

 腹を斬られれば腹が、頭を割られれば頭が、心臓を貫かれれば胸が、足を落とされれば足が。

 気が狂いそうなほど、他人との記憶を共有する。

 慣れてくる頃には、そんな人達の数もどんどん増え続けて、結局は同じことの繰り替えし。ヒトを殺せば、殺された側の痛みを感じる。それが終れば、殺した側の恐怖を感じる。いつ殺されるか分からないという不安をすべて、受け止める。

 数十万にも及ぶそれらの意識を受けながら、そこには彼女がいた。

 

 

 西涼と呼ばれる地域から、さらに西。

 そこは既に、漢という国の領土ですらなかった。

 彼女は、一刀が彼女を追おうとしていることは知っていた。たぶんそうなるだろうと、そんな事くらいはあの特異な力を使わずとも予測できることだった。

 だから、あえて馬騰が治める涼州を通り抜けていったのだ。そうすれば、一刀は馬騰のところで足を止めるだろうし、何より曹操軍の士気を下げることも出来る。下手に呉に向かうよりも、より効率的に華琳を押さえ込むことが可能だった。

 もし予測が外れて、一刀が追ってこなかったとしても、それはそれで問題はない。むしろそのほうが都合が良いこともあるのだから。

 

 

 乾燥した丘の上は風が強く、乾いた砂を巻き上げる。

 足を出せば、ざくざくと響いて、彼女の存在を周囲に知らしめる。

 華琳の下を離れる理由は簡単だった。様々な要因があるとはいえ、結局はそれが自分の役目だということ。

 見せられた未来を改変する。そのためには彼女の下にいるのは都合が悪かった。

 それだけの事。

 

 【薫】「数は問題なし……質は……お察しってとこか……はぁ」

 

 これから向かう先を眺めて、ため息がでる。

 言葉はたぶん問題ないだろう。だが、”彼ら”の気性を考えると、どうしても不安はぬぐえなかった。

 

 【薫】「ま、どうにかなるかな……そのためにわざわざ――」

 

 薫の言葉は最後まで続かず、後ろを振り返る。

 

 【薫】「ふ~……いこっか、ねね、恋」

 【恋】「…………」

 【音々音】「まったく恋殿が納得なさらければこのような……」

 【薫】「あはは、ぼやかないの~」

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

馬騰のキャラ絵を描いてみたので、載せます(’’

翠を参考にしながら描いていったんですが、もう自絵すぎて泣けてくる。

翠のお母さんってことで、年上な感じで、個人的イメージでは男っぽい人なので、そんな要素もいれつつ・・・と

若干蜀カラーですが、特に意味はないです。

 

 

であであ(`・ω・´)ノ

 

 

 

 


 
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