~山の麓~
雪蓮は冥琳の制止を振り切り山に入っていた。そして、孫策隊千人を分け捜索を開始しようとした時だった。
「そ、孫策様!何故此方に!?」
一人の男が雪蓮の下へ走って来る。
(あの兵は、・・・思春の処で見たことがある)
「どうしたの?」
雪蓮の下まで来た兵に聞く。
「は!甘寧隊が孫堅様を発見いたしましたので、その伝令として私が本陣に走っているところであります!」
兵の報告を聞き、内心嬉しくなり、表情を隠すのに必死になる。
「!!母様が見つかったの!?」
「は!目視ではありますが、旅人の様な者に抱えられて此方に下山中であります!黄蓋様、甘寧様、両名共に其方に向かわれました!」
「抱えられて?母様は怪我をしているの?」
「は!目視では大きな外傷を発見出来ませんでした。しかし、孫堅さまは抵抗する気配がありませんでした!」
(抵抗もせずに運ばれている?自力で動けないということ?)
「母様の居るのは、この山道を登って行った処でいいな?」
「は!約2里(約1km)先であります!」
「分かった。あなたは本陣に走りなさい!孫策隊!ついて来い!」
(母様!待ってて!)
雪蓮は山道を登って行った。
~豪臣たちの居る山道~
豪臣は、黄蓋に興覇と呼ばれた女の子を組伏せていた。
(ん?何か大人しくなったな。顔も赤いし・・・ま、いっか)
そう思い、興覇に言う。
「ちょっと、大人しくしててくれる?」
・・・・・・コクコク///
興覇は豪臣の言葉に二度頷く。
豪臣は、掴んでいない左手で興覇の頭を撫でる。
「ありがとう」
「//////」
真っ赤になる興覇を残し立ち上がった豪臣は黄蓋の方へ足を踏み出そうとした。
その時、黄蓋隊の後方に砂塵が上がる。
(・・・今度は誰だよ。ったく)
と、内心悪態を吐く豪臣。
黄蓋たちも後方を見ている。
朔夜は、豪臣の肩から倒れたまま動かなくなった興覇の背に跳び移りながら
(この人たちは莫迦なのでしょうか。今の今まで攻撃していた相手に背を向けるなんて)
と、憐みの表情を浮かべた。
そして、黄蓋隊の後方に現れた部隊は、黄蓋隊と合流し隊長らしき女性が騎乗したまま黄蓋の下にやって来る。
その女性に驚いた黄蓋は怒鳴る。
「さ、策殿!本陣に残る様に言ったじゃろ!」
「ごめんね、祭。居ても立っても居られなくて・・・!母様!」
策と呼ばれた女性は、黄蓋に謝罪した後、倒れている青蓮(上手く動けないだけ)を見て眼を見開き叫ぶ。
(・・・母様?青蓮の娘?・・・策、策、・・・孫策か!)
豪臣は女性の正体に気づき驚愕する。
(おいおい!娘があの年頃なら青蓮は何歳だよ!)
内心でツッコミを入れていると、孫策は此方を向く。
そして
「!!・・・思春まで・・・」
倒れたままの思春(未だに混乱して動けないだけ)に眼を向ける。
二人を見た孫策の心中は
(母様と思春を殺ったのはコイツか!!!)
である(死んでないけど)。倒れて動かない状態の二人を見て、孫策の表情は怒りに燃え始めていた。
(あ~、襲われるな、こりゃ・・・
・・・丁度良いし、新月使って腕試しでもしてみようかな~)
豪臣がそんなことを考えていると、孫策が下馬し此方に歩いてくる。
そして
「あなたは、私が殺してあげる」
そう静かに言い、剣を抜き、豪臣に斬りかかった。
豪臣は、外套の中でリュックに手を入れ、新月を抜き放つ。
ギィィン!
豪臣の新月と孫策の剣がぶつかり合う。
「!!」
驚いた孫策は後ろに跳んで間合いを開け
「どっから出したのよ、その剣」
「・・・秘匿事項だ」
「そう。それは、残念・・・ね!!」
また、斬りかかる。
今度は、最初の一撃とは違い重い一撃では無く、速度を上げ数で攻めてきた。
ガ!ガガ!ガン!―!―!―!―!!!!
(クッ!速い!)
豪臣は焦る。
(やっぱ一刀流の才能無いわ、俺。調子に乗って新月出すんじゃなかった)
そんな豪臣の顔面目掛けて突きがくる。
「クソッ!!」
振り下ろしたばかりの新月では間に合わない。
そう判断した豪臣は、受け身を無視して左に跳ぶ。
ビリ!
剣は豪臣の顔を隠していた外套を破り、顔が顕わにする。
「ふ~ん。そんな顔してたんだ・・・綺麗な顔ね。
私が・・・刻んであげる!」
「しまっ・・・!」
そう言って孫策は、バランスを崩し倒れている豪臣に斬りかかる。
その瞬間
「止めなさい!!!」
制止の声が辺りに響いた。
制止したのは青蓮だった。
青蓮は、黄蓋に支えられながら立っていた。
孫策は豪臣に視線を向けたまま青蓮に言う。
「母様!何で止めるのよ!この男は、思春と孫家の長たる母様に危害を加えたのよ!私、このままじゃ気が済まないわ!」
「・・・危害なんて加えられてないわよ。豪臣さんには、私が殺されそうなところを助けて頂いたのだから」
孫策は、初めて豪臣から視線を外し、青蓮を見る。
「どういうこと?」
「言葉の通りよ。私が黄祖に追い詰められた時、偶然居合わせた豪臣さんが追い払ってくれたのよ。あなたたちは、礼をすべき相手に剣を向けたのよ」
「「「・・・・・・」」」
孫策、黄蓋、思春の孫堅軍の面々は青蓮の言葉に黙る。
その様子を見ていた豪臣は、立ち上がり、新月をリュックに直し言う。
「ま、気にすんな。青蓮にも言った「貴様!母様の真名を!」・・・!」
豪臣が青蓮の名を呼ぶと、孫策が、また斬りかかってきた。
しかし
パシ!
「「「!!!」」」
その剣を、豪臣は拳の状態で親指と人差し指の間で掴み止めた。
「悪いが、もう油断はしない。ついでに言えば、真名は預けられてある」
(ホント。こいつらって血の気が多いな~)
豪臣は呆れ顔で言う。
「・・・母様?」
自分の剣を、こうも簡単に、しかも指で止められて悔しそうにする孫策は青蓮に聞く。
「ええ。豪臣さんには預けましたよ。いい加減、剣を納めなさい」
青蓮は、そう言って孫策を軽く睨む。
孫策は、しぶしぶといった様子で鞘に納める。
しかし、孫策、そして青蓮を支える黄蓋は、豪臣を、信用していない! という顔をしていた。
そんな中、豪臣は、ふと思春を振り向き見た。
そこには、何故か正座をして豪臣を見上げる思春が居た。
そんな思春と豪臣の眼が合う。
すると
「//////!!」
豪臣と眼が合った思春は、ブン! と音がしそうな勢いで横を向く。
そんな様子を見ていた孫策が
「・・・思春。何やってるの?」
心底分からない、といった感じで聞く。
聞かれた思春は
「あ、や、いえ、その・・・///!」
焦って上手く言葉が出せなかった。
孫策は、その様子で思春がこうなった理由と原因が何となく分かり、豪臣に問う。
「・・・あなた、・・・この子に何やったの?」
「・・・さあ?」
呆れ顔の孫策と首を傾げる豪臣。
そんな豪臣を見ながら、いつの間にか思春の膝の上に移動していた朔夜は
(さあ?ですか。どの口がほざきますか#)
そう悪態を吐くのだった。
そんな思春たちの様子で、周りの空気が微妙に和んだ時だった。
「伝令!伝令!孫策様!黄蓋様は居られますか!」
青蓮たちの後方から一人の伝令兵が慌てて飛び出してくる。
「何がありました?」
そんな兵に青蓮が声を掛ける。
「そ、孫堅様!此方に居られましたか!」
兵はそう言って、一度深呼吸をした後
「周瑜様からの伝令です!本陣が急襲されました。敵将は蔡瑁(サイボウ)。兵数はおよそ三万。至急応援を、とのことであります!」
「「「「「!!!!!」」」」」
和んだ空気は一気に緊迫したものに変わった。
あとがき
どうも、虎子です。
今日、クリエータープロフィールを見たら、お気に入り登録が30人を超えていました。
かなりビックリしました。
さて、作品の話です・・・
何かすみません。思春がキャラ崩壊しまくっている様な気がしまくりです。
そして、雪蓮と祭と微妙に険悪な状態。
この処理はどうしましょう・・・(-_-;)
次は、文中で出てきた2里(リ)という距離のことです。
1里を約500mと設定しました。
※ 飽く迄も設定ですので悪しからず。
そんな感じで次回投稿は、早ければ14日。遅くとも15日までにと予定しています。
次回は短くなる予定です。
文章中に誤字脱字等ありましたら、コメントにガンガン書いてやって下さい。
最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。お気に入りにご登録して下さった皆様。
本当にありがとうございました。
ではでは、虎子でした。
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キャラ崩壊が顕著になり始めました。
お気をつけ下さい。
拙い文章ですが、よろしくお願いします。