仮面ライダー×真・恋姫†無双 蜀編 第9章
一刀が龍騎の力を手に入れてから数週間後、北方の斥候が戻ってきて、曹操が孫策の呉を攻めるという情報が入った。
かと言って油断はできない。曹操なら呉を攻めている間に蜀も攻めるという可能性もあるのだ。何かあるといけないので、蜀も軍備強化などをして準備した。
それから幾ばくかして、魏軍は呉の国境線を突破。そのことは当然一刀達の耳に入った。
「曹魏と孫呉が、全面戦争に入ったみたいだね」
「いよいよ戦いの火蓋が切って落とされたんだね」
「ああ。攻め入った曹魏の兵力は百万を越してるって聞いた」
「ひゃ、百万!? なにそのデタラメな多さ……」
「華琳はそれほど本気ってわけやな」
蒲公英は驚くが霞は自分で納得する。
「対する孫呉の兵力は?」
「約四十万だという噂です」
「総動員でそれとは圧倒的だな」
「はい。両勢力はあくまで噂の段階でしかないとはいえ、その差はまさに圧倒的です」
「ふむ…それならば今は曹魏の動きより、孫呉の動きが気になるな」
「徹底抗戦って言ってるけど……どこまで持つのか分からないのだ」
「鈴々の言うとおりだな。いくら孫呉の王が英雄と呼ばれている人物だったとしても。兵数の差って言うのは絶対的なものだ」
(戦いは数だぜ……っか…)
翠の言葉を聞いて若干嫌悪感を抱く一刀。
「敵よりも多くの兵を集める。兵法の基本だな。そういう意味でも曹魏は兵法に沿い、孫呉は兵法に沿えていない……」
「その差を覆すには、何かしらの奇策を用いるか」
「または兵を増やすか、ですね」
紫苑と朱里が呉が魏に勝てそうな条件を述べる。
「兵を増やすって…そんなこと出来ないでしょ? 今の段階で総動員を掛けてるんだし」
「自国の兵だけが兵というわけではありません。…それに孫呉には美周朗さんがいらっしゃいますから」
「他国を巻き込むと?」
「考えてみてください。今の兵力で北方の竜、曹操さんを止めることは不可能です。
そして孫呉が破れたあと、曹操さんの矛先が向かう先は……」
「俺たち蜀か…。そして周瑜はそれをネタに俺たちを使おうというわけか……。そして呉と蜀の同盟を求めると…」
「恐らくは……」
一刀は朱里の言いたいことを見抜いていた。というより分かっていたというのが正しいかもしれない。
「今、ここで決断しなければ、私達は座して死を待つしかなくなるでしょう」
「それほどまでに大陸の状況は急を要しているという事か…」
「さもありなん。反董卓連合より続いていた諸侯の割拠も、曹操、孫策、そして我らの三陣営に収束した。
あとは誰が最後まで立っているかを決定するだけだからな」
(最後の勝利者を決めようとするか……)
「三人一緒に立つ事って…出来ないものなのかなぁ……」
桃香の言葉に一刀はあることを思い出し、それをひらめきの考えと一緒にした。
「またその話ですか…」
愛紗が呆れるように桃香に言う。
「私…諦めきれないんだ。皆、やり方は違えど目指すところは一緒なんだから。だったら協力し合えば、きっとこの国の未来はずっと明るくなると思うの」
「お姉ちゃんの言う事は分かるけど、人はそう簡単に自分のやり方を曲げられないのだ」
「桃香の言う事、結構良いな」
『え?』
一刀の発言で皆一刀に視線をやる。
「かと言って、鈴々の言い分ももっともだ。だったら曲げなきゃいいんだ」
「それはどういうことですか?」
「自分のやり方を曲げないまま、三人一緒に立とうということさ」
「ご主人様……」
「けどよ、ご主人様。皆、この戦乱の終息を願いながら生きてきた中で……死んでいった奴らの想いを、その背中に背負ってるんだぜ……」
「翠の言うとおり。誰しもがその心の中に、誰かの思いを託されているのですからな」
「っても、皆には悪いが俺から考えたらただの重荷だ……」
「重荷…」
「ああ、俺もその想いを背負ってる人間の一人だが、そんなの戦いが終わった後だと生きてても重荷にしかならないと思う。だったらその重荷を完全に仮面ライダーが解き放つ!」
「どうするつもりなのですか?」
「それは……」
一刀が朱里の方に視線をやる。
「朱里、俺の言ったこととは違うだろけど、桃香の意見には賛成のように見えるが?」
「はい。私は反対じゃないです」
そして朱里は自分の考えを述べた。あくまで領土拡大の野心は曹操だけが持っており、
孫策は経済などの事を考えると南にしか領土を広げれず、それは必然であり野心と言う訳ではないと言う。
「しかし孫策は江東の小覇王と呼ばれる英雄だろう? 天下統一の志が無いとは思えんが」
「反董卓連合の頃は天下統一の志を持っていたと思います。でも競争相手の曹操さんの膨張が急激過ぎて、すでに太刀打ちできないのを悟っていると思うんです」
「となると孫策は一体…」
「王という立場にあれば、天下の次に考えるのは自国の保全。他者に負けない国づくりを考えるならば、南方に進出し、人材、兵力、兵糧と軍資金を確保する…筋の通る話ですね」
「事実、南方を手に入れた後の孫策さんは、北方の曹操さんにつっかかるわけでもなく、私達に戦を仕掛けるでもなく、ただ時を過ごしていただけでしたから…」
「でもどうしてそれが桃香様の理想と繋がるの?」
蒲公英が朱里に尋ねる。
「天下統一の野心が無い人だからこそ、天下の平穏を願う桃香様の言葉に同調してくれるはずです。
ただし……それぞれが持つ天下、という事ですけど…」
「それぞれが持つ天下……? どういうことだ?」
「私達には蜀という天下がある。孫策さんには呉という天下がある。そして曹操さんには魏という天下で満足してもらう。
互いが互いを見張りながら、不干渉を貫けば、三つの天下の平穏を保つ事が出来るでしょうこれが……私の考えた」
「「天下三分の計(です)」」
朱里は驚いた。もう一つ自分と同じことを言った声があったのだ。同じことを言ったのは一刀である。
「やっぱり俺が思ったとおりだよ、朱里」
「ご主人様!?」
一刀が朱里の頭をなでる。
「ま、それをするにしても曹操を一度負かす必要があるけどな……」
「はい。曹操さんの勢力を削いで、三国の均一をしないと…」
「そのための蜀呉同盟、か」
「じゃあ、同盟するという事で……俺が朱里と一緒に行くぜ」
「ご、ご主人様が!? ダメだよそんなの!」
桃香が早速行こうとする一刀を止める。
「そうです! 危険すぎます!」
「つっても孫策の性格だ。大将自ら行かないと話しを聞きそうにないし、天下三分の計の話もしないといけない」
「なら私が行く!」
「ダメだ。桃香はこの国の代表。呉との同盟のあと、誰が軍を率いる? それに生存確率は仮面ライダーがある俺の方が高い」
「ならあたしが行こうか?」
「それもダメ。翠は桃香の補佐だ」
「じゃあ鈴々が行くのだ!」
「鈴々じゃ孫策との弁舌じゃ勝てないだろうな。交渉ってのは駆け引きが必要になるときが多いからな」
「私は絶対ついていきますから。却下されてもついていきますよ」
「いや、愛紗も桃香の補佐を…」
「星に任せておけば大丈夫でしょう」
(なんだこのプレッシャーは!?)
一刀は愛紗の放つ嫉妬プレッシャーに圧されぎみだった。
「ふっ。まぁやってやろう」
星も星で愛紗の言葉で乗り気になった。
「………」
「ついていきます。あなたに……」
「……仕方ない。愛紗に護衛頼むか。あと…恋」
「……恋もついてく」
「いや、連れて行くと言おうとしたんだけど……」
「ではすぐ出立の準備をしますね」
「馬じゃ時間かかるからバイクで行くぞ。ただし本当はバイクは多くても二人乗りだ。
四人乗るとなるとかなり詰めるぞ。朱里は一番後ろで自分の体と恋の体に縄をくくりつけるように。じゃないと落ちるからな。
恋も愛紗につかまってろよ。恋も落ちちまう可能性がある」
「……(コク)」
「朱里よ、出立は六名分用意しろ」
「へ?」
「お館様の心意気、しかと受け止めた。我が命に変えてもお守りいたす」
「ってもバイクは限界だ」
「何、我々は少し遅くなりますが馬でいきまするぞ、お館様よ」
「そうか…」
「焔耶、お前もついてこい!」
「そんな~」
こうして一刀は愛紗、恋、朱里と共に先に孫策のところに行く事にした。
「絶対に…無事に帰ってきてね、ご主人様」
「約束だ!」
一刀はマシンデンバードを走らせる。
「もっと飛ばすからな! しっかりつかまっとけよ!」
一刀はマシンデンバードを更に加速させる。竜虎相打つ、呉のところへ……。
それから二日後、一刀達は柴桑で戦っていた呉の陣営に到着し、孫策のところにお目どおりが適った。
「貴様は……」
周瑜が一刀の顔を見て、少々面を食らった顔をする。
「劉備の使者の北郷一刀。反董卓連合の時以来になるな」
「ああ」
「北郷一刀って…あの?」
「あのと言われても困るが、天の御遣いや仮面ライダーと言われてる男だ」
「ふーん……」
「で、孫策って人は? あなたで?」
「そうよ。こっちが周瑜で、こっちは妹の孫権よ」
「どうもよろしく」
一刀が頭を下げると孫権は何か不機嫌そうな顔をした。
(警戒するのは無理ないか…)
「ふむ…で? 我らの陣にやってきた理由は?」
「分かってて聞いてるだろ?」
「何がかな?」
「俺の口から言わせるつもりか? なら帰るぜ」
「我らの腹を探るつもりか」
「冗談だよ。俺は腹の探りあいは苦手でね。直接言ったり聞く性格なんでね…」
「察するところ、同盟の申し込みに来たというところか」
「そちらは腹を割る気はないのか?」
「……」
「食えない男だな、本当に」
「俺達も必死だからな」
そうは言っても何故かは自分でも分からないが、一刀の心は余裕であった。
しかし他の皆は一刀の言葉通り必死である。
「ならば言い直そう。同盟の提案をするために、我らのところに来たというのだな?」
「そうです。曹魏に対抗するための唯一の手段…蜀呉同盟を組むために来ました」
ここに来て、ようやく朱里が話し出した。
「ん? お前は…」
「諸葛孔明。劉備様の軍師です」
「あなたがあの諸葛孔明? 稀代の軍師とかはわわ軍師とか言われてる?」
「その通り」
「はわわ……。はわわじゃないですもん……」
一刀の言葉に朱里はツッコムがはわわと言ってるので説得力が無い。
「驚いたな。……あの諸葛孔明がこのような少女だったとは…」
朱里を見て、驚く周瑜。
「嘘じゃないぜ。こんなに可愛い女の子が諸葛孔明だ」
(ご主人様……)
「そうなんだ。…こんな小さい子が、あの名軍師諸葛孔明とはねぇ~」
「あぅ~……」
朱里が恥ずかしがって一刀の背中に隠れてしまった。
「朱里、お前が隠れてどうする? 話が出来ないでしょ」
「は、はい……」
一刀は背中に隠れた朱里を引っ張り出した。
それから朱里から同盟の話をし、その話は一刀達が裏切らなければよいとのことで何とかなり、天下三分の計も理解してくれた。
朱里はとりあえず曹操軍がどこまで来てるのか聞き、周瑜は江陵まで来ていると聞く。
「じゃあ、同盟の記念に早速江陵に行って助けに行くとするか!」
一刀は朱里達の意見を聞かず、すぐにマシンデンバードに乗って一人で江陵に向かった。
「ご主人様!」
「お館様!」
「まったく、ご主人様は!」
愛紗が余っている馬に乗って急いで一刀の後を追うが、マシンデンバードを最高速度にしている一刀にはすぐには追いつけない。
「ご主人様……」
一刀の身をただ案じるだけの愛紗。
一刀は先ほどいたところから北へ五里(日本での距離単位として約20㎞)のところにいる曹操軍と接触した。
その部隊はそこまで多いわけではないが、一刀が来るのに気付いていたかのように戦闘態勢の状態だった。
「こいつらを叩けば江陵の城にいる連中を逃がせるってことだな」
一刀はデンオウベルトを腰に巻いて、青いボタンをする。
「変身!」
「ロッドフォーム」
一刀が電王ロッドフォームに変身した。
「お前達、僕に釣られてみる?」
一刀がデンガッシャーロッドモードを兵達に向け、いつもの言葉を言った。
そしてそのあと、マシンデンバードを飛ばして次々に跳ね飛ばしたり、デンガッシャーで槍のように振るい、敵をなぎ払う。
「君達、釣られる過ぎだよ」
一刀はかなり余裕で敵兵達をなぎ払う。そして先陣の部隊に到達した。
「うん? お前達は……」
一刀が見覚えのある顔を見て、バイクから降りて変身を解く。それは一刀が龍騎の力を手に入れる前に会った三人であった。
「李典に于禁、それに……凪か」
「久しぶりですね、一刀さん」
一刀と凪が対峙する。
「え? 凪ちゃん?」
「凪、自分の真名、あの男に許したんかいな?」
「ああ……」
「凪、あの時の言葉覚えているか?」
「ええ……」
一刀が龍騎のライダーデッキを取り出す。凪はそれに答えるように構える。
「本気でやろうと言う約束だ。行くぜ!」
一刀は落ちている槍に向きを変え、自分とデッキを映し、Vバックルを腰に出す。
Vバックルを出した後、凪の方に向きを戻し、変身ポーズを取り叫ぶ。
「変身!」
バックルにライダーデッキを入れ、仮面ライダー龍騎に変身した。
「……っしゃ!」
その掛け声と共に一刀と凪が走り、拳を合わせて、戦闘を開始した。
一刀のパンチを凪が受け流し、その隙に凪が氣を出して一刀に当てて、一刀をひるませる。
「うわっ!」
「はあっ!」
凪が隙を見て近づこうとするのを一刀が自分の体を回しながら、回転蹴りで凪に当てて、自分に近づけないようにして、体勢を直し、また肉弾戦が始まる。
二人が肉弾戦をしてから数分後、戦線が崩れたと李典が言ってきた。
「アカン! 凪、もう戦線がもたんで!」
「愛紗達、もうそこまでやったか…」
「ここまでだな。…沙和、真桜。残存部隊を引き連れて華琳様に合流してくれ」
「え? でも凪ちゃんはどうするの?」
「殿を務める」
「凪、死ぬ気でおるとかアホな事いうたらアカンで?」
「それだったら俺も嫌だな」
戦っている一刀もその考えには反対する。
「大丈夫。死ぬ気はない。ただ一矢報いたいだけだ」
「ま、こうなった以上。これ以上の一騎打ちは無意味か……。だけど俺もそう簡単には引かないぜ」
「結構です」
「絶対に凪ちゃんも戻ってこなきゃやだよ?」
「ああ。……また三人でお茶を飲みに行きたいな」
「それは死亡フラグになるから言うなよ……」
「しぼうふらぐ?」
一刀が丁寧に説明してあげる。
「戦場でそんなまた何かしたいなとか戦いが終わったら何かするはね、そいつが戦場で死ぬ確率を跳ね上げるだけだ。
まあ確率はあくまで確率だから死なないこともあるけど、その確率は低いけどな」
「だったら私のはその低い確率ですね」
「ふ……そうか……」
李典と于禁は先に離脱した。
「私もあまり時間が無いので次の一撃でどうにかしますよ」
「いいぜ」
一刀はデッキからカードを取り出し、ドラグバイザーに入れる。
「ストライクベント」
上空から、ドラグクローが降ってきて、一刀の右手がそれをはめる。
「あれから強くしたよな?」
「もちろんです」
一刀のドラグクローに炎のエネルギー、凪の右手に氣が大きく溜まる。
「「はぁぁぁぁぁああああああああああああ!!」」
二人の拳に最大までエネルギーが溜まる。
「「はあああああああああああああああ!!!」」
二人の右手から放たれた力がぶつかりあい、その力は凄まじく、二人はその場から遥か後方に吹き飛ばされた。
「どわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「くっ……!」
二人が放った昇竜突破により谷は崩れて通行が出来なくなった。
「ここまでか……」
凪は崩れた岩を見て、急いで自分の部隊と共に撤退した。
その撤退の足音は一刀の耳に聞こえていた。
「行ったか……」
一刀が変身を解いた。
「とりあえず、次だな……うん?」
一刀が足元を見てみると、なにやら変わった形の携帯電話が粉々になった岩の砂上に埋もれていたのを見つける。
「おいおい、これって……」
一刀がその携帯電話を拾う。
「何でケータロスがここにあるんだ?」
ケータロス、それは仮面ライダー電王のパワーアップに使うアイテムである。
「ためしに……」
一刀がボタンを押す。しかし何も反応がない。
「モモタロスとかの声が無いのは、いないからか?
ま、でも電王に変身してる時はちゃんと機能するだろうな」
一刀はケータロスをしまって、愛紗達と合流し、次に桃香達のいる国境に向かった。
おまけ
作者「今回の仮面ライダー×真・恋姫†無双 蜀編 第9章どうだった?」
一刀「捻りを感じにくかったな」
作者「書いてるときは捻ったつもりでもいざ投稿するとそう思う時がたまにあるけど、許してくれ」
一刀「何でだよ?」
作者「愚痴になるけど、一話書き終わるのは早くても2,3時間は掛かるんだ。これでも結構苦労している」
一刀「まあそこはがんばれよ」
作者「頑張るさ。それと次回の10章だけど、今日中に投稿しようと思っていて、正直な話、明日には蜀編の終わりまで投稿しようかと考えている」
一刀「随分急だな」
作者「俺は急とは思ってない。ただ早く結末を見せた方が良いかなとか思ってるだけだ。まあ自分の事情を考えると少々早めが良いかもしれないし…。それではまた…」
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基本的には真・恋姫†無双の蜀ルートの話ですが、もしも北郷一刀が仮面ライダーの力を手に入れたらという妄想から生まれました。
そして流れも基本的に原作のままですが、仮面ライダーの力があるためセリフや一刀の態度が違うところや話そのものが大きく違うところも出てきたりします。
そのためそんなの嫌だという方は閲覧をご遠慮願います。