ボクと亜矢と翔太は幼馴染みだった。
昔から体の弱かったボクを二人は気使ってくれる。
嬉しい反面申し訳なく思ってしまう。
自分の中の変化に気が付いたのは『初恋』を経験してからだった。
外見が『女子』である限り対象が異性なのに、そうではなくて……。
最初は戸惑いもなかった。
どう見たって一方的な片思いだったし。
それが無理だとわかりだしたのが中学に入ってから。
そこから起き出した体の変化は、ボクを一番戸惑わせた。
体の急激な変化に心が追いつかなくなってきたのだ。
男でいたい、と思っていても、体はどこまでも正直だった。
丸みを帯びていく肩や胸。
自分の思いと裏腹な変化に戸惑い怯えていた。
そのことを初めて人に話したのが亜矢だった。
ものすごく驚きながらも質問も入れながら話した。
嫌われる。
その思いが強かった。
少し間があって口を開いた。
「みのり、大変だったね。そんなもの抱えてて」
ボクは黙っている。
同情なのか、哀れみ、なのかわからずなんと表現していいのかわからない感情に囚われていた。
「でも相談してくれ」
どこまで来た時自分でもわからないほど黒い物がわき上がるのを押さえきれなかった。
今ならわかる。
あれがあの当時の精一杯の「気持ち」で、よくお互いにわからない、出口のない隘路の中に潜っていたようなものだった。
今ならちゃんとわかっていてあの時のこともきちんと言葉を見つけて言えるかも知れなかった。
亜矢はそれからしばらく考えていたようで、腫れ物に触るような感じだった。
あれだけひどいことを言えばそうかも知れない。
けどそう受け止めてしまう自分にも何かしらの原因があったのではと思えてきて凹んでいたところ亜矢から事情を聞いた翔太が言った。
「なんだっていいじゃないか。それでおまえがおまえであるなら。難しく考えるなよ。おまえが、見ていて辛そうじゃないか」
その一言が軽くしてくれたのと、変わらず自分の傍に居続けてくれる二人に感謝した。
高校は三人同じところ進んだ。
その時に翔太と亜矢は付き合っていた。
ボクは……後輩からモテると言う偉業を成し遂げみんなそれぞれに幸せだった。
その時までは。
大学はそれぞれ違うところへ行き、たまたま亜矢とは学校が近かったと言うこともあり、ルームシェアすることに。
翔太は地元を離れた。
そんなところもあり、二人は別れてしまったと言う。
「亜矢、どうして翔太と」
「そこもあったし、それに……翔太」
言いにくそうに言葉を続ける。
「後輩と付き合ってた。それ聞いていて……偶然目撃して、相手の子怯えてた。あたし相当怖かったみたい。なんか許し難かったし。翔太をビンタして、相手に言ったの」
ちょっと息を吸う。
「こんなんだけど熨斗つけて渡してあげるから好きにしなさいって。それから翔太が謝ってきたけど、許せなくって。後輩の子もごめんなさいしてきて。翔太の凹み方見て醒めたって」
「亜矢、それでどうするんだい」
「もうこのままでいいかなって。しばらく忙しくって会うのも無理だし.何より自信ないのかも知れない」
そんな弱気な亜矢は見たことがなかった。
まだ気持ちは残っているんだと知った時、少し胸が痛くなった。
わかっている。
友達の顔をして、傍にいたいと願ってしまう自分のずるさ。
すべてすべて知ってる。
けど……。
カナワナイノナラ、消えてしまいたい。
そんな想いとどこかで葛藤していた。
いつからこんな気持ちだったのか、ゆっくり回想していった。
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