「兄ちゃん、最近機嫌良いね」
「そうか? 普通だろ」
ヴェネチアーノの言ったとおり最近、俺は機嫌が良い。なにしろもうすぐ三月十七日が来る。この日は、俺達が統一された日。誕生日。
そして―――俺の命日になる日でもある。
消える華
誕生日が来る瞬間、俺は死ぬ。そう夢の中でお告げがあったから。やっぱりイタリアに選ばれたのは、弟の方だった。そんなこと、産まれた頃から知っている。
今から、消えることが楽しみで仕方がないと言ったら、周りはどう思うのだろうか? とくにスペインだ。小さくて役に立たない俺を必死に守って、育ててくれた。今でもそれなりに良い関係を築けている。
独立した今でも、俺とスペインの関係は「親分と子分」だ。それ以上の何ものでもない。
それから解放されると思うと嬉しくて仕方がない。
何年も何年もずっと、スペインを思ってきた。何度も告白した。でも、スペインはそれを理解してはくれなかった。どんなに言っても「ほんまに?嬉しいで、ロマーノ」で終わる。俺がどんな思いで言っているのか、絶対に分かってくれない。
ここまで来たなら、もう分かってくれなくても良い。どうせ、俺は消える。 こんなくだらないことで、悩むことは、もうない。
自由だ。
「どうしたん、ロマーノ?」
「俺が、来ちゃいけないのかよ」
「そうやない。ロマーノが来てくれて、嬉しいで」
本当なら、いつもと同じように、家で過ごしてベッドで寝ている間に消えようと思った。でも、もうスペインに会うことがないと思うと、むしょうに会いたくて仕方がなかった。
そして、体は勝手にスペインの家に向かっていて、定位置のソファに座っている。
スペインはちょっと呆れ顔をしたが、追い出そうとはせず、話し相手になっている。
「なぁ、スペイン。もし、俺が死んだら、お前はどうする?」
「ロマーノが死ぬ? ないない。俺ら、国やで。殺しても死なへん」
「それもそうだな……」
どうせこれの繰り返しだ。自分が聞きたいことを返してくれるのは、本当に稀で、たいていどうでもいいことを言う。何度、あの頭を解体してやろうかと思ったことか。
このまま、スペインと話していても仕方がない。どうせこの思いは伝わらない。それに今更伝わった所で、遅すぎる。何も分からないなら、分からないままが良い。俺が消えても、弟は残るから、スペインは喜ぶだろう。昔から、弟を欲しがっていたから。
「どこ行くん?」
「シエスタ」
立ち上がり、昔使っていた部屋がある方に歩き始める。
起きていると余計なことばかりが浮かぶ。それが未練がましくて、嫌だ。
最後にスペインの顔が見れただけでもう十分だ。
懐かしくて、まだ、希望を持っていた頃の夢でも見ようじゃないか。
続きはあとがきです
あとがき
いちおう、ここで終わりです。続きも書いたんですが、思った以上につまらないので。
消失話は、イタちゃんは何もしてない良い子だけど、ロマーノが消える原因。スペインは、見守りすぎで、いつまでもロマーノの気持ちに気が付かないで、消失するときようやく気が付く感じが好きです。その後、壊れればなお良い。
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