●登場人物●
▼野丸のまる♂
一人称「俺」ナレーターでは「僕」
二人称「お前・君」
主人公。特に取り柄も無い普通の男子中学生。
雑学だけはあるらしい。
▼成士なるし♂
一人称「僕」
二人称「キミ」
家が大金持ちのお坊ちゃん。
とてもナルシストな野丸の幼馴染。
運動神経ばつぐん、頭も良く、顔も良く、
ルックスもスタイルも良いと、なにもかも完璧。
1:なるふれ
「大好きだよ。」
僕のクラスメート成士は鏡を見ながらそう言った。
そう、そうなのだ!
こいつはナルシストなのだ!!
しかもかなりの重症。
世界一と言っていいほどのナルシストなのだ!
しかし、僕はそんなナルシストな彼と友達なのだ。
僕の友達はナルシスト。
ナルシストフレンド、なるふれである。
2「誕生日プレゼント」につづく
2:誕生日プレゼント
「お前、誕生日もうすぐだよな、何がいい?」
僕は成士に聞く。
「ん?全体がうつる鏡がほしいな。」
何言ってるんだこいつは。鏡なんか腐るほどもってるくせに。
「そう言うあ野丸ももうすぐで誕生日だろ。」
「あ、そう。」
まさか、成士が僕に何かくれるなんて思いもしなかった。
約11年間も一緒にいて「おめでとう」すらいわれてないんだぞ!
「じゃ、誕生日プレゼントは僕でいいよね?」
「・・・は?」
「だから、キミのプレゼントは僕。」
一瞬だけこいつに殺意が芽生えたことは言わないでおこう。
3「女の子」につづく
3:女の子
「あの・・・。」
ちがうクラスの女の子が僕に話しかけてきた。
結構可愛い女の子だ。しかし、僕に何の用だろう?
「どうしたの?」
「これ・・・。」
女の子は手紙を僕に見せる。
もしかして、ラブレターか!?
こんなのははじめてだ!!!
「これ、成士君に渡しといて。あなた、仲いいじゃない。」
「え・・・?」
「お願いね!」
手紙を無理矢理胸に押し付けられ、女の子はそのまま走ってどこかへ行ってしまった。
くそおぉ!!!
僕は成士のポストじゃないんだぞ!
貰った手紙を捨てたくなったが、僕にはそんなことできないから、渡しに行った。
「これ、2組の女の子から。」
成士は僕から手紙を受け取りその場で読み始めた。
「ああ、あの子か。」
どうやら知っているらしい。
「やっとか・・・。最長記録だな。」
「・・・は?」
「だから、あの子はもっと前から僕のこと見てたんだよ。3ヶ月か・・・普通なら1週間ぐらいだけどな。」
「意味がわからないんだけど・・・。」
「だから、簡単に言えば僕に惚れない娘がいるわけないってことだよ。」
こいつがナルシストだってことなんかずっと前からわかっていることだが
今のはさすがに殴りたくなった僕だった・・・。
4「バレンタイン」につづく
4:バレンタイン
バレンタインがとうとうやって来てしまった。
バレンタインは女の子から男の子に告白をするチャンスでもあり、
男の人生がかかった日でもある。
僕はチョコと言うものは近所の子や母などしか貰ったことがなかった。
だから今年こそは!!!
「成士君、これあげるー。」
「ありがとう。」
天使のようなほほ笑みで彼はお礼をする。
成士の机はチョコの箱で埋め尽くされていた。
確か、去年もこんな感じだった。
しかも食べきれないとか言って、僕に渡してきたっけ・・・。
チョコは好きだからいいんだど。
「野丸。手伝って。」
放課後、成士が机いっぱいのチョコを袋に詰めるのを手伝えと言ってきた。
「そんなの、自分でやれよ。」と言いたいところだったが、
実は僕も女の子からチョコをもらって上機嫌だったのだ。
「何、どうしてそんなに機嫌いいの?」
そんな僕を見て成士は質問してきた。
なので僕は無言で貰ったチョコレートを成士に見せつけた。
「なに?これ僕に?」
「ちげーよ。バーカ!俺が女の子から貰ったんだよ!」
「・・・そう。じゃあ僕のチョコあげないから・・・。」
成士は頬を膨らまして拗ねていた。
僕にはまだその理由はわからなかった
5「ポスター」につづく
5:ポスター
「成士くんの部屋ってどんな感じなの?」
クラスの女子が成士に話し掛けているようだ。
「ん?普通だよ。」
「えーそうなの?ポスターとか貼ってる?」
「うん。あるよ。大きいのが。」
「誰のポスター貼ってるの?」
「僕の。」
「・・・え?」
「僕の体が全身写ってるポスターだよ。キミも自分の貼ってるだろ?」
こいつのナルシストは重症だ。
改めてそう感じてしまった。
6「ファンクラブ」につづく
6:ファンクラブ
やっぱりこれだけ成士が人気者だとファンクラブのひとつやふたつぐらいはある。
女の子にキャーキャー言われてるのって年頃の僕には羨ましかったりする。
僕はだいたいいつも成士の隣にいるわけなのだけども
どうも僕の存在は薄い。
たぶん成士の影が濃すぎるせいなのもあるだろう。
「あ、あなたいつも成士くんの隣にいる人だ。」
「あ、どうも。」
こんな感じで名前は呼ばれたことは無い。
唯一僕の存在をわかってくれてるのは成士ファンクラブの子たちだ。
ファンクラブに入るほどだから成士のすべてをわかっていないといけない。
てなわけで、僕の存在もしっかりわかってくれている。
でも・・・
「野丸くん、手伝ってくれる?」
「・・・いいよ。」
学校中に成士のポスターを貼る仕事を手伝わされた。
男手が足りないそうだ。
確かに成士は女子にモテるけど男子には嫌われている。
だからこうやって活動を手伝ってくれる人は成士の友達である僕しかいないのだ。
「ねぇ、野丸くん。」
「何?」
「野丸くんと成士くんってただの友達?」
え?ファンクラブの子に意味のわからない質問をされた。
「友達だけど・・・。」
「そう。ならいいんだけど。」
・・・え?
何?
ファンクラブの子には僕と成士はどんな風に写っているんだ!?
7「手鏡」につづく
7:手鏡
成士はつねに鏡を持っている。
お前は女子か!ってツッコミたくなるけど我慢する。
突っ込んだところでスルーされるだけだから。
今日もまた自分を鏡に映して見とれている。
「なんで美しいのだろう・・・。」
これが中学2年生のとる行動なのだろうか?
「あ!!」
突然成士は大きな声を出した。
「野丸!僕の髪を整えてくれないか?」
どうやら髪型がよくなくて声を出したらしい。
こんなことよくあることだけどやっぱり急に大きな声を出されたら驚いてしまう。
「ブラシ貸して。」
「はい。」
僕は成士の長い髪を梳かしてあげる。
「できたよ。」
そう言って僕はブラシを返す。
「うん。完璧だ。」
成士もそう言い、また鏡を見始めた。
「野丸。」
名前を呼ばれて振り返る。
同じクラスの男子たちが僕に手招きをしていた。
僕は男子の固まりに行った。
8「あたりまえになっていた」につづく
8:あたりまえになっていた
「野丸。我慢しなくていいんだぞ!」
そう言われ肩をつかまれた。
なんのことだかさっぱりわからない。
僕がそんな顔をしているとみんなにため息をつかれた。
「な、なんだよー。」
「お前はいつも成士と一緒にいるからあたりまえになっているようだけど、あいつは変だ!」
そんなこと知ってるよ・・・。
「変以上に成士は最低だよ。」
「え?」
「友達にパシる奴がいるか?」
え?意味がまったくわからないんだけど。
何言ってるのこの人たち。
「お前は成士の執事・・・いやメイド化している!」
「え?ええぇぇぇぇぇええ!!!?」
嘘だろ、気づかなかった!!!!
「俺たちから見ればそうなんだよ!いい加減目を覚ますんだ!」
幼稚園からずっと一緒だった成士・・・。
成士の髪を梳かしてあげるのも制服を綺麗にしてあげるのも着せてあげるのも
成士にご飯を食べさせてあげることも幼稚園の入園式からすべてが僕の日常になっていた。
あたりまえになりすぎて気づかなかったんだ。
習慣って怖い。
僕は額にながれる汗を拭く。
「野丸。お前は少し成士から距離をおいたほうがいい。」
「お前のためにも成士のためにもなる。」
そう僕はクラスの男子から言われ、頷くことしかできなかった。
9「身代わり」につづく
9:身代わり
僕はなんとなく気づかれないように成士を避けた。
授業の合間の10分休みは一緒にいるが
お昼休みも体育の着替えも全部他の人と過ごした。
そしたら僕に命令するようなことがなくてって来た。
しかし、ある日
「野丸。こっちにおいで。」
成士に呼ばれた。
「な、何?」
「今日の昼休み学校の裏に行ってくれないか?」
「え?」
「僕の代わりに話を聞いてきてくれないか?僕は忙しいんだ。」
「お前・・・何言ってんの?」
「今日先輩から呼び出されちゃってさ。僕と話をしたいんだって。」
・・・先輩から・・・。
それって・・・・
「俺は行かないよ!お前が呼び出されたんだろ!自分で行けよ!」
成士は驚いた顔で僕を見る。
僕も驚いた。
こんなに怒りが沸いてきたことはない。
だって今までの命令とは違う。
今までは成士の身支度だとかお世話をするものだったけど、
今度の命令は「身代わりになれ」って言ってるのだから。
10「自己中」につづく
10:自己中
「なんてキミは自己中心的なのだろう!」
僕は成士に怒られた。
え?これって僕が怒るべきところなんじゃないかな?
「自己中なのはお前のほうだろ!?」
クラスの男子がそう成士に言った。
「いつも野丸に頼ってばかりで何もしなじゃないか!」
「もっと野丸の気持ち考えろよ!」
男子は次々と成士に文句を言い始めた。
「みんな、いいよ。そんなこと言わないでよ。」
成士の怒りに満ちた顔を僕は見ることができなかった。
11「呼び出し」につづく
11:呼び出し
「野丸くん!!」
女子に名前を呼ばれて笑顔で振り返る。
「大変なの!成士くんが!!」
成士?そんなの今の僕には関係が無い。
「成士くんが可愛そうよ・・・。」
女子たちが泣き出した。
「今先輩に呼び出されて・・・・」
「あたしが学校の裏にごみ捨てに行こうと思ったら成士くんが殴られてて・・・。」
え?
あれから成士を見かけないと思ったら・・・
あいつ馬鹿だろ!
なんで・・・あんな変な奴だけど先輩に呼び出されたら大変なことが起きることぐらいわかってるだろ!
なんであいつは行ったんだよ!
「野丸くん、お願い!助けて!!」
男子たちには「行くな」という目で見られる。
女子たちには「助けて」という目で見られる。
僕はどうしたらいい?
僕は・・・・
僕は・・・・
僕は・・・!!!!
僕は階段を駆け下りた。
急いだため足がもつれ足をひねってしまった。
痛い・・・
しかし、今はそんなこと気にしている暇は無い。
一刻も早く成士のもとへ!!!
「成士!!」
学校の裏には円になっている3年生の男子が数人いた。
どれも体格のいい人たちばかりだ。
僕の声で3年生たちは僕のほうを見た。
円の中心には成士が倒れていた・・・。
12「嫌いなこと」につづく
12:嫌いなもの
「成士!!」
僕は急いで成士に駆け寄ろうとしたが
「来るな!!」
成士の冷たく尖った声で足が止まってしまった。
3年生は僕を無視し成士を蹴ったり殴ったりし始めた。
そして窓からいろんな生徒が顔を出してきた。
「やれー!そんな奴やっちまえー!」という男子の声。
「やめてー!」と女子の泣き声。
やめて・・・。お願い・・・やめて・・・。
それ以上成士を傷つけないでよ。
僕は思いっきり走って3年生にタックルをした。
そして傷ついた成士を抱きしめる。
「野丸・・・」
「先輩、もうこれ以上はやめてください。お願いします。もう、こいつを傷つけないで・・・。」
僕は強く成士を抱きしめ大粒の涙を流した。
「邪魔だ。どけ。」
3年生は僕を蹴飛ばした。
口の中は鉄の味がした。
血だ・・・。
でも僕は成士を離さなかった。
成士が傷つくぐらいなら僕が傷ついたほうがいい。
3年生は容赦なく僕の顔や腹を殴ったり蹴ったりした。
「野丸・・・もういいよ。」
そう言い成士は立ち上がった。
「なんだお前、まだ立てるのかよ。」
「野丸を傷つけた奴は僕が許さない。」
成士が背を向けているため僕には成士の表情が見えなかった。
しかし成士が非常に怒っていることはわかった。
成士は拳を強く握り締め長くて綺麗な髪を掻き揚げる。
そして成士は目に見えない速さで腕を動かし、
いつの間にか僕の目の前には倒れている3年の姿しかなかった。
ちょっと時間がたち、先生達が来て倒れている3年生たちを運び始めた。
「後で事情を聞きますからね。」
担任の先生は僕たちにそう言い保健室に連れてった。
保健室について先生は成士を手当てしようとした。
「僕は平気です。早く野丸を手当てしてください。足が腫れています。」
あ、そういえばそうだったっけ。
靴下を脱ぐと真っ赤に腫れあがった足が出てきた。
「大変!」と先生は言い湿布と包帯をしてくれた。
「野丸、いつも言ってるだろ。僕はお化けやピーマンなんて平気だけどキミが傷つくことは大嫌いなんだって。」
「・・・。」
「僕は強いんだから。あそこで黙って蹴られてほうが後で楽だったのに。」
成士は小さいころから勉強だけじゃなく、柔道、剣道、合気道、ボクシングなどをし体を鍛えていた。
だから強い。
別にあそこで僕が駆け寄らなくても成士は平気だったのだ。
でも僕が成士を助けようとしたのは
「俺だってお前が傷つくことなんて大嫌いだよ。」
「・・・・・・ありがとう。」
13「好きなものは」につづく
13:好きなものは
先生にしっかりと事情を話し終わった。
僕たちはまっすぐに教室に向かった。
「ねぇ、僕やっと気づいたよ。」
成士は僕のほうを向いて言った。
「え?何を?」
「僕の好きな人が誰かって。」
「自分じゃないの?」
「ふふっ。違うよ。」
成士は笑いながら走り出した。
「じゃあ誰だよー。」
僕もその後を追う。
「教えない。」
成士は意地悪そうな顔をして言った。
僕の友達はナルシスト。
今はもう世界一じゃないと思う。
でもナルシストなのは変わらない。
僕の友達、ナルシストフレンド、「なるふれ」である。
THE END
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