No.1158133

運命の双子と鏡の悪魔

Nobuさん

※オリキャラがいますので、ご注意ください!

絶望鬼ごっことSoundHorizonのクロスオーバーです。
双子の姉弟が屋敷の中で冒険をします。

2024-12-15 08:02:42 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:32   閲覧ユーザー数:32

 ここは、日本のどこかにある桜ヶ島。

 そこに住む双子の姉弟、有栖と章吾は、ごく普通に中学校に通い、ごく普通の一日を過ごす。

 ――いや、鬼がいるから、「ごく普通」とは言い難いのかもしれない。

 

 いつものように双子は中学校の授業を終え、自宅に帰ろうとした。

 優しくて美しい母親が待っていて、双子を出迎えてくれる。

 

 しかし、運命というのは残酷である。

 狡猾な蠍の影が、双子の後ろから迫った時――

 

「……有栖、ここはどこだ?」

 

 双子は見知らぬ部屋の中に閉じ込められていた。

 チカチカと、部屋の中で灯りが点滅する。

 その部屋には、古い鏡が壁中に飾られていた。

 

「分からないわ、章吾……。どうしてここにいるのか、分からない……」

 

 双子は何故閉じ込められたのか、全く思い出せない状態だった。

 幸い、名前だけは憶えているようだが、この状況が双子には理解できなかった。

 

「だが、身体は何故か覚えている。鬼に力を授かった……かもしれないのを」

「私も……魔法が何となく使える、のかと思って」

 双子がお互いの状況を理解しようとした時、突然、有栖の後ろで大きな音が鳴った。

「きゃっ!」

「どうした、有栖!?」

「章吾、鏡が……!」

 振り返ると、古い鏡が壁から一つ、落ちていた。

 そこにはポッカリと、真っ暗な通路が大きく開いていた。

 もしかしたら、ここを通り抜ければ脱出できるかもしれない、と有栖は思った。

 

「……穴が開いているな。飛び込むぞ」

「ええ!」

 双子は意を決して、通路の中に飛び込んだ。

 有栖は超能力を持っていた時に残っていた暗視能力を使い、章吾と共に暗い通路を進んでいく。

 古い人形に、剥がれかけた呪符、腐りかけの注連縄、そしてたくさんの古い鏡。

 無数の鏡の中で、双子が同じように不安げな表情を浮かべている。

 

「ここは、どうやら幽霊屋敷みたいね。いや、鬼屋敷と言った方がいいかしら。肝試しに来たら行方不明になるらしいわ」

「有栖の言う通り、多分、鬼が住み着いたのだろう。あいつらみたいな不思議な術を使うからな」

 鬼は現代科学では解明できない様々な術を使いこなす。

 この屋敷にも術をかけ、双子を混乱させようとしているのだろう。

「やる事はただ一つ。鬼を倒して、脱出する事よ」

「ああ。俺達を酷い目に遭わせた鬼は、絶対に許さない!」

 双子は鬼を倒すために、先に進む。

 ふと、何かが動いた気がして、双子は視線を向ける。

 

 ――鏡に映っていた双子の顔に蠍の模様が浮かんだ後、ニタリと笑った。

 それが鏡の中から手を伸ばし、双子を捕らえようとする。

「有栖、下がれ!」

「ううん、私も戦うわ!」

 章吾は持ち前の運動能力を活かして、鏡の怪異に飛び蹴りを繰り出す。

 有栖は力を「思い出し」、魔力の弾丸を放って鏡の怪異に何とかダメージを与えた。

 無数の鏡が割れて砕け、キラキラと破片が落ちる。

「やった!」

 喜ぶ有栖だったが、さらに廊下の奥から無数の手が伸びてくる。

「逃げるぞ!」

「はっ、やっぱり鬼ごっこだからね!」

 この数を相手にするのは得策ではない。

 双子は無数の手から逃げ出した。

 

「ふう……何とか撒いたな」

「あいつらはしつこくなかったのかしら」

 何とか無数の手から逃げ切った双子は偶然、倉庫らしき部屋を発見した。

「うわぁ、結構物がたくさんあるわね」

 倉庫の中には道具がたくさんあったが、壊れていたり、子供では使えなかったりと大したものではなかった。

 ここで使えそうなものは何もなさそうだ。

 しかし、この倉庫には鏡がないため、無数の手は襲い掛かってこない。

 双子はひとまず休憩し、記憶を整理する。

 

「あの鏡にはやっぱり鬼が潜んでいたわ。私達で祓いましょう。……でも、どうすればいいのかしら……」

「俺達が家に帰る前に、何をしていたのかを思い出せ」

「ええ……分かったわ……」

 

 15分後、何とか有栖は記憶を取り戻し、鬼が屋敷に取り込む瞬間を思い出す。

 合わせ鏡の状態にある鏡に、鬼がいたのだ。

 つまり、鬼の本体は合わせ鏡の中にいる、という事になる。

 

「合わせ鏡……そういう事だったのか。鬼らしいな」

「もう少し、正々堂々と戦ってほしいわね」

 双子は鬼の狡猾さに呆れながらも、合わせ鏡――鬼の本体がいる場所に向かった。

 

 双子はいくつもの鏡のある部屋を探索し、何度かあの手を撃退し、一際広い部屋に辿り着く。

 そこには巨大な鏡が合わせ鏡になっており、鏡像が連なっている。

「さぞかし鏡鬼、といったところかしら」

「そうだな。いくぞ、有栖!」

 双子がそう呟いた瞬間、鏡の中の双子が再びニタリと笑った。

 

「有栖は俺が守る!」

 章吾は木刀を振るい、自分の真似をする鏡鬼を次々に攻撃し、気絶させていく。

 鬼の力を失ったとはいえ、運動能力は健在であり、有栖も負けじと鏡鬼を魔法で攻撃する。

「きゃっ!」

「有栖に触るなっ!!」

 鏡鬼から攻撃を受けた有栖に章吾は怒り、なんと木刀で二体の鏡鬼を真っ二つにした。

 次の瞬間、鏡鬼は無数の鏡の欠片となって砕け散り、屋敷が大きく揺れる。

 合わせ鏡の一つから光が見えると、双子は大急ぎでその中に飛び込んだ。

 

「う、うぅ……」

「私達……一体、どこに……あれ、ここ、は……?」

 気がつくと、双子は自宅で眠りから覚めていた。

 先程双子が体験していたのは、はっきりとしていたが、夢だったようだ。

 恐らく、鬼が見せたものだろうとは思ったが、どうしてこんな夢を見たのかは双子には分からなかった。

「どうしたの? もう朝ご飯、できてるわよ」

「は、はーい」

 母親が双子を呼ぶと、双子は朝食にありつくのだった。

 

「……やれやれ、双子を夢の中に閉じ込めようと思ったけど、失敗だったようだね。魔法使いも超能力者も消えてくれないか」

 その様子を見ていた一匹の鬼がいたのには、双子は気が付かなかった。


 
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