No.115411

聖夜と恋姫達 -一刀編-

ぴかさん

かなり遅くというより外れてしまいましたが、聖夜と恋姫達の最終話、一刀編です。

アップしようか悩みましたが、投げっぱなしなのも後味悪いので今年ギリギリですが、アップすることにしました。

過去作、天の御遣い帰還するや学園の恋姫達と同じ世界観で現代を舞台にしているため、各キャラの雰囲気や口調が原作とは異なる場合がありますのでご了承下さい。

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2009-12-31 00:07:06 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:10351   閲覧ユーザー数:8455

期末試験が終わり、あとは冬休みの到来を待つばかり。

いつもなら、バイトに明け暮れる日々が始まるのだが、今年は違った。

彼女達がいるためである。

 

クリスマス……。

 

普段はあまり関係のないこのイベントも、彼女達がいるため今年はかなり違うモノへとなりそうだった。

 

学園から寮へと向かう道で、一刀は考えていた。

もちろん、クリスマスの事である。

彼女達がクリスマスの事を知るのは時間の問題だろう。

いざそうなった時、どうすればいいのか。

 

自惚れでなく、彼女達から好かれている自信はある。

だからなおの事、その中の特定の誰かとクリスマスを過ごしてしまったら他の子が悲しむだろう。

それだけは避けなければならない事態である。

 

はっきりいって贅沢な悩みではあるが、一刀の中では非常に大きな悩みとなっていた。

おかげで試験の答案は散々な事になっていたが……。

 

思い切って誰とも過ごさないという事も考えた。

だが、そうなった場合でも彼女達は悲しむかもしれない。

何より身に覚えはないが、娘達には楽しいクリスマスを過ごしてもらいたいと思っている。

もちろん、娘達以外の他のみんなにも同様であった。

 

誰かと過ごし、他のみんなにはプレゼントでお茶を濁すという事も考えた。

しかし、女の子と一夜を一緒に過ごすという事にももちろん、他のみんなへのプレゼント代だけでもとんでもない金額になるだろう。

ただの一学生に過ぎない一刀には、その負担は無理であった。

何より一緒に過ごせない子の事を考えたらそれはあり得ない選択肢だった。

 

色々考えては頭の中で却下し続ける。

なかなか妙案は浮かんでこなかった。

 

 

一晩考えてみたが、やはりというか一つしか納得のいく答えが出なかった。

 

「やっぱりこれしかないか…」

 

案としては一番無難だが、当たり前すぎて避けたかった。

しかし、これ以上いい案が浮かばないとなるとこれしかなかった。

 

みんなでクリスマスパーティーをするのである。

 

一刀としては誰かと一緒に恋人気分で過ごしたいという事も考えた。

しかし、それは現状では無理だろう。

ならみんなで楽しく過ごすのがいいはずだ。

 

ただ、これをやるには自分だけではどうしようもない。

協力してくれる人が必要だ。

 

「早速行くか!!」

 

あてはないが、協力してくれそうな人の元へ行くことにした。

 

 

まずはパーティーをする会場である。

あれだけの人数がいるからそこそこ広くないとダメだろう。

そして、その会場を借りるだけでお金がかかるのは避けなければならない。

となると、学園のどこかを借りるという事になるのだが、一刀には一カ所だけあてがあった。

 

剣道場である。

 

場所的にも広さ的にもこれほど適した場所はない。

一刀はそう思った。

建物内なので、冬場でも問題なさそうというのもあった。

 

ただ、当日に剣道場が使えるかどうかが分からなかった。

なので、それを確認がてら使えるようにお願いしに行く事にしたのである。

 

「あら、北郷君……。どうしたの?」

 

彼女は剣道部部長の東堂真紀。

全国大会の常連で、剣道界では有名人である。

部員からはもちろん、顧問の先生からも一目を置かれていた。

なので、彼女がOKを出せば問題ないだろうと一刀は東堂に会いに来たのである。

 

「東堂先輩、お願いがありまして」

「お願い?」

 

東堂は一刀の突然の訪問に驚いていた。

一刀とは、部活以外で桃香達の面倒を見ると言う事で話をしたりする事はあった。

だが、今回のようにお願いという形でわざわざ話すという事はなかったからである。

 

先日、一刀に一本を取られてからちょっと気になる相手になっていた。

その相手からのお願いである。

クリスマスという誰もが気になる時期にわざわざ来るのだから期待しない方が無理である。

 

「その……お願いって何かしら?」

「実は、24日に剣道場を使わせてもらえないかなって……」

「そう……」

 

何を期待していたのだろう。

東堂は思った。

そう、一刀には桃香を始め多くの女性が周りにいるではないか。

自分など、ただの部活の先輩ではないか。

そう考えると、先ほどまで色々と期待していた自分がバカらしくなってきた。

 

「24日は特にやること無いから使ってもいいと思うわよ。でも、わざわざ私に言わなくても先生に言えばいいじゃない」

「いえ、先輩は時々みんなが帰った後も練習してましたから、24日も使うんじゃ悪いかなと思って」

「知っていたの……」

 

そう、東堂は別に天才でも何でもない。

ただの努力家なのだ。

でも、それを周りのみんなに見せるのはどうにも気が引けていた。

なので、部活が終了しみんなが帰宅後に再び剣道場に戻ってから練習を行っていたのだった。

 

それを一刀に知られていた……。

そう思うと、なんだか恥ずかしくなってくる東堂であった。

 

「だ……大丈夫よ。その日はもう練習しないから」

「そうですか。あっ、先輩も一緒にどうです?」

「何が?」

「剣道場でクリスマスパーティーでもやろうかなと思って。あっ、でも先輩は用事が……」

「大丈夫よ!!」

「そ……そうですか……。」

 

あまりにも強く言ってくる東堂に気圧される一刀。

 

「それじゃ、詳しい時間とか決まったら教えますね」

「楽しみにしているわ」

 

そう言うと、一刀は次の協力者の元へと向かっていった。

東堂は、一刀が居なくなるのを確認してから、喜びのあまり飛び上がっていた。

 

 

一刀は、次の懸念を解消するための協力者の家に来ていた。

会場は確保できたが、料理であったり色々装飾などが必要だろう。

その為にはやはりお金が必要だ。

その協力を得るためにお願いに来たのは理事長の家であった。

 

この人なら協力してくれるだろうと思った。

 

「北郷君、わざわざどうしたんだい?」

「実は、24日にクリスマスパーティーをやろうと思いまして、それで……」

 

続きを言おうとする一刀の口を理事長が塞いだ。

 

「わかった。私でよければ協力しよう。」

「本当ですか!!」

「ただし、これは貸しだ。いつか返してもらうことになるぞ。」

「もちろんです!!」

 

一刀の真剣な表情に理事長は笑顔で言った。

 

「わかった。それじゃ、これを」

 

そう言って理事長が出したのはあるカードだった。

これは以前に一刀達に渡した、商店街ならお金が無くても物を買うことが出来るというものだった。

 

「これで美味しい物でも買って、楽しいクリスマスパーティーにしてくれ」

「ありがとうございます!! あっ、理事長も一緒にどうですか?」

「私は遠慮しておくよ。そんな年でもないしな」

「そうですか……。それじゃ、借りていきますね。」

 

そう言って、一刀は理事長の元を後にした。

 

 

理事長の家を後にして早速商店街に向かおうとしたが、そこで声をかけられた。

 

「ねぇ、一刀」

「華琳……」

 

一刀が振り返るとそこには華琳が立っていた。

 

「華琳どうしたんだ?」

「あ……、えっと……」

 

華琳はいつものハキハキした感じが無く、目的を言うのも何やら戸惑っている様子だった。

一刀はそんな華琳を不思議に思いながらも、とにかく今は目的があるのであんまり待つわけにはいかなかった。

 

「華琳、ごめん。今ちょっと急いでいるんだ!!」

「えっ……」

「そうだ!! 24日って何か予定入ってる?」

「何もないけれど?」

「だったら空けておいてよ!! よろしく!!」

 

それだけ言うと、一刀は商店街の方向へ走り出した。

残された華琳は唖然としてしまったが、先ほどの一刀との会話を思い出していた。

 

「24日空けておいてと言ってたわね……。ひょっとして!!」

 

華琳は笑顔になると、自分の寮に帰っていった。

 

一方の一刀は商店街の中にある中華料理屋に来ていた。

別に食事をするつもりではない。

ここで働く子にお願いがあったためだ。

 

「いらっしゃい!! あっ、兄ちゃん!!」

「季衣、こんばんは。流琉はいる?」

「いるよ!! 流琉!! 兄ちゃんが来た!!」

 

季衣に呼ばれ、流琉が厨房から出てきた。

 

「兄様、いらっしゃい」

「流琉、忙しいのにゴメンね。ちょっとお願いがあるんだけど……」

「なんですか?」

「24日って仕事かな?」

「24日は休みですけど……」

「よかった。実は24日にクリスマスパーティーを開こうかなと思って……。それで、流琉に料理をお願いできないかなと」

「……別にいいですよ」

「そっか!! ありがとう!!」

 

そう言って、一刀は流琉の両手を掴み上下に振った。

流琉は恥ずかしそうにうつむいてしまったので、一刀は手を離した。

 

「兄ちゃん!! ボクは?」

「季衣も是非参加してよ!!」

「やった!!」

 

季衣は飛び跳ねるように喜んだ。

 

「そうしたら頼むね」

 

一刀は詳細を流琉達に伝えると、店を後にした。

 

 

次に向かったのは、呉の面々の住む寮である。

流琉にお願いはしたが、流琉一人では難しいだろう。

呉にも意外な料理人がいるのでその人にもお願いしようと来たのだ。

 

「あっ、父ちゃんだ!!」

「お、一刀ではないか!! 珍しいな」

 

祭と黄柄の親子である。

二人は何やら料理をしていた。

 

「二人は何を作っているんだ?」

「これはね~」

「黄柄!!」

「あっ、これは秘密だよ!!」

 

白状しようとした黄柄を祭が止めた。

 

「それより、一刀は何の用だ?」

「そうだ、二人とも24日は用事とかある?」

「24日か……。特にないが……」

「そうしたら、お願いがあるんだけど……」

 

一刀はクリスマスパーティーをやること。

その料理人をお願いしたいことを話した。

 

「儂なんかで務まるのかの~」

「祭さんだからお願いしているんですよ」

「そう言われると照れるのぉ」

「あー、母ちゃんが照れてる!!」

「うるさい!!」

 

祭と黄柄のやり取りはとても楽しそうに見えた。

 

「わかった。儂でよければ務めよう。……ちょうどよかったしな」

「ちょうどよかった?」

「いや、こっちの話じゃ」

「そう……。それじゃお願いね」

 

一刀はそう言い残すと、その場を去っていった。

 

 

その後も一刀はみんなに参加をしてくれるよう言って回った。

途中で蓮華にも同じような提案をされて、ここまでやっていると言うことを説明。

桃香達にはキレイに彩られた女子寮と同じく剣道場も飾ってくれるようお願いした。

 

雪蓮と春蘭の争い事にも巻き込まれそうになったが、冥琳と秋蘭に助けられクリスマスパーティーの事を伝えた。

 

明命、小蓮からは必要以上に迫られもしたが、グッとこらえた。

隠には、本の内容を実行しようと、こちらもかなり迫られたが、これも抑えることが出来た。

亞莎と呂琮からは少し早いクリスマスプレゼントももらった。

 

桂花には、冒頭から嫌がられたが、華琳も参加することを伝えると渋々参加を了承した。

風はなぜか稟の介抱をしていた。

そんな二人にも、クリスマスパーティーの事を伝えた。

凪、真桜、沙和の三人もなぜか華琳と同じように一刀に会うと戸惑っていた。

一刀はそんな三人の様子などお構いなしに、クリスマスパーティーの事を伝えた。

 

霞には、商店街の中で出会った。

霞は一刀と会ってびっくりしたようだった。

その手には、何やら大きな荷物を抱えていた。

中身は秘密やと教えてくれなかったが、クリスマスパーティーの事を伝えると喜んで参加を了承した。

 

張三姉妹の元にも行った。

三人は喜んでくれたが、24日はコンサートだということでパーティーには参加できないという回答だった。

一刀としては残念であったが、有名アイドルの三人なら仕方ないかなと思った。

 

これで全員に話したと思ったが、そこであの三人に出会った。

美羽、七乃、華雄である。

全く知らない仲ではないので、無視するわけにもいかず、クリスマスパーティーの事を伝えた。

美羽は最初、面倒などと言っていたが、七乃の言葉で参加を了承した。

華雄も二人が参加するならと、参加する事になった。

 

こうして、恋姫達のクリスマスパーティーが催されることになった。

ただ、華琳と東堂のみ何やら勘違いした状況であったが。

 

 

そして、24日当日が来た。

前日までの準備で、剣道場はそれが剣道場だと分からないくらいクリスマス色に染められていた。

料理も流琉と祭を中心に、紫苑や冥琳なども手伝いたくさん用意された。

 

かなりの強行軍であったが、それなりに雰囲気よくなったので一刀は満足していた。

 

「思ったより、いい感じに出来たな。さあ、パーティーを始めよう!!」

 

一刀のこの宣言でクリスマスパーティーが始まった。

 

とにかく、食事を取る者。

おしゃべりに興じる者などみんながそれぞれにクリスマスパーティーを楽しんでいた。

 

一刀はというと、呉の娘集団に囲まれて身動きが取れない状態だった。

それでも、一刀は嫌がる様子もなく、彼女達と戯れていた。

 

それぞれが楽しむ中、なぜか表情の暗い者もいた。

華琳である。

24日を空けておいてくれという一刀の言葉を別の意味で捉えていたため、このみんなでのパーティーという展開に落胆してしまっていた。

 

「一刀!!」

「な……何!?」

 

華琳の叫びに驚く一刀。

一刀を抱きしめていた娘達も思わず手を離してしまった。

 

「一刀、責任を取りなさい!!」

「責任って、何の?」

「いいから取りなさい!! そうねぇ、このパーティーが終わったら明日の朝まで私に付き合いなさい!!」

「えっ!?」

 

突然の宣言に驚く一刀。

それ以上にその言葉に触発された者達がいた。

 

「華琳さん、ずるーい!! 一刀さんと一晩を過ごすのは私達だよ!!」

「そうなのだー!!」

 

桃香達も似たような事を言ったかと思ったら……。

 

「それなら、私達も参戦しないわけにはいかないわね!!」

「そうよ!! シャオと一緒に過ごすんだから!!」

 

呉の面々も同じような事を言い出した。

 

「華琳には悪いけど、ウチも負けへんで!!」

「せやな。うちらも隊長と一緒に過ごしたいわ!!」

 

華琳の身内のはずの魏の面々からも宣言が飛び出し、収拾が利かなくなってきた。

 

「ちょ……ちょっと……」

 

一刀は戸惑うばっかりであった。

 

 

事態が収拾しない中、一人の女性が叫んだ。

 

「いいかげんにしなさーい!!」

 

東堂である。

東堂の言葉に、全ての発言がピタッと止まった。

 

「一緒に過ごすって、北郷君の気持ちを考えてあげないの?」

「一刀の気持ちね……。一緒にいたくないという選択肢はないと思うわ」

 

華琳がそう言うと、東堂は一刀を睨んだ。

そのあまりの怖さに思わず頷いてしまう一刀。

それを見て華琳が言葉を続けた。

 

「ほら、見なさい。一刀が断るわけ無いわ。だから、部外者のあなたは黙っていてちょうだい!!」

 

この言葉がさらに東堂に火を付けた。

 

「部外者じゃないわ!! 北郷君とは部活で一緒だったもの!! そこで面倒を見てあげていたのは私だわ!!」

「なら、あなたも一緒に過ごしたいわけ?」

 

華琳の言葉にグッと唇をかみしめると言った。

 

「そうよ!! 悪い?」

「悪くはないわ。素直になれないのがもどかしかっただけ」

「素直って……、あっ!!」

 

東堂は自分の言った事を思い出し、途端に顔を赤くした。

 

「さあ、この人も黙っちゃった事だし……、一刀、私と一晩過ごすわよね?」

 

そう言う華琳に、みんなの事を考えるとうんと答えられない一刀。

そんな一刀を見て、周りのみんなも私も私もと先ほどと同じように宣言してくる。

 

再び収拾の利かなくなった中で、一刀は戸惑いつつもこんなのも楽しいと思っていた。

しかし、この後に起こるであろう事態には閉口してしまう一刀であった……。

 

 

あとがき

 

凄くギリギリになってしまいました。

 

それぞれの内容を細かく書こうと思ったのですが、時間的に無理でした。

なので、かなり省略して書いてしまったのがちょっと悔やまれます。

なんか、最近そんな感じばっかりですみません。

 

やっぱり最後はドタバタな感じで終わりが一刀らしいかな。

しかし実際にこんなにいたら収拾はつかないだろうなぁ。

 

次は来年。

と言ってもあと1日ですが(笑

 

風ストーリーの続きを早めにアップできればいいかなって思ってます。

いつになるか未定ですが、お待ちいただけると幸いです。

 

今年も一年、ありがとうございました。

来年もよろしくお願いします。

 


 
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