No.1147471

追憶 7

a2t5さん

2024-07-03 14:30:06 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:82   閲覧ユーザー数:82

追憶 7

 

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デコイワンの活躍は目を見張るものがあった。

 

轟音の雄たけびを上げて迫りくる

ティラニッドウォリアーの巨体。

 

ボルトガンの怒りでも御する事が困難と判断した少女は

念動力でもって怪物を向かい上げると

ビル群の廃墟にこれを投げ捨てた。

 

乱れた息を整える暇もなく

ホーマゴーントの津波が畳みかける。

 

少女はテレキネシスの波動で竜巻を呼び起こすと

屋上から投下されたプロメチウムのドラム群を

パイロキネシスで点火

巨大な炎の壁を作り出す。

 

炎の渦に巻き上げられ 悲鳴を上げる侵略者は

くすぶる消し炭となって大地に降り注いだ。

 

命を削りながら 星読みを駆使し

功績を打ち立てる少女だが

彼女自身には余裕はなかった。

 

何としてでも褒章を!!

 

デコイワンは 急いていた。

 

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マリーンと同じく強靭な肉体と

痛覚をごまかす術を手に入れたデコイワンだが

身体を蝕む疼きは一向に緩和されなかった。

 

拘束シューズと同じく 

アーマーのブーツ内では完全に足が固定され

肌を刺激できる部分も限られていた。

 

パワーアーマーの内部は

常に清潔が保たれるように設計されており

発汗や排泄などの生理現象も内部完結できる仕組みになっている。

 

そのため 

特別なメンテナンス以外 

頻繁には脱着する物ではないのだ。

 

最初こそ ブーツ内で足裏を身じろぎさせれば

多少の快楽は得られたものの

焦燥はそのたびに肥大し手に負えない状態に至った。

 

星読みの力は

この世界に飛ばされてからというもの

更に精度 威力ともに高められていた。

 

にもかかわらず

必要最低限の使い方しかしてこなかったがために

 

それ以上に 少女のやぶれかぶれな生き方ゆえに

 

その力の種類も 応用範囲も著しく狭まり

またも少女自身の窮地には役立たずであった。 

 

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総長テロパスがデコイワンを激励する。

 

「この度の働きも見事であった。

 お前を【同胞】と呼べる日も近いやもしれぬな。」

 

デコイワンは 少し朦朧とし始めていた。

テロパスは声を落とすと

 

「お前が何に気を焼いているかは知っているぞ?

 

 あわてるな あわてるな・・・。

 

 私は興味こそ無かれ 

 他人が淫行にふけっていようと とやかく言う堅物ではない。

 

 このまま手柄を重ねるなら

 恩赦をくれてやっても構わんぞ?」

 

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そして数か月後 

まことに信じがたい事柄が記録文書に追加された。 

 

一度侵略された星が 

 

あのティラニッドによって

蹂躙されたはずの 一つの星が

息を吹き返した。

 

降り立ったのは 幼きゼノ

 

異端者の炎が 

 

かくも恐ろしき死のイナゴを

灰へと帰した。

 

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「約束であったな。

 願いを申せ。」

 

「ではどうか 素足をさらすことをお許しください。

 足先だけで結構です。どうか・・・。」

 

少女はこれ幸いとばかりに懇願した。

もはや限界であった。

 

気高いマリーンの戦団内において

そのような淫欲めいた願いなど

本来受け入れられるはずもない。

 

マリーンたちから口々に非難の言葉が浴びせられる。

 

総長テロパスによって特例は

認められた。

 

{あからさま}に見えぬように努力する

ことを条件に

少女は 裸足になる事が許されたのだった。

 

アーマーのつま先が外され

専用の歩行フレームが取り付けられる。

 

ひさしぶりに自分の足指を目にする少女。

 

少女は下劣な衝動に駆られるが

全身に力を込めてこれを耐える。

 

ここで粗相をさらしては元も子もない。

 

数時間後の戦いに向けて 

少女は 今一度 己を押し殺した。

 

 

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星を変え 星域を変え

敵を変えて

 

苛烈な戦いの日々は続く

少女は期待以上の成果を上げ続けた。

 

彼女の存在に否定的なマリーンたちの中からも

同胞として認めても良いのではないか

そのような声が上がり始めたが

 

そこから先への進展はおそらく望めないだろうことは

誰の目にも 少女自身にも明白だった。

 

あまりにおぞましい少女の癖

それが妨げとなっていたことは明らかだった。

 

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戦いのさなか 少女は敵の肉体を踏み砕いては

執拗に死骸を踏みにじった。

 

そして 戦闘がひと段落したと見るや

手ごろな死体の内臓に足先を出し入れし始めた。

 

レフテナントのひとりが

あまりに常軌を逸した光景に

たまらず声を上げる。

 

 

「総長テロパス!! あのような淫行を放置する気ですか!?」

 

「いけないかね?

 好きにさせたほうが

 その後の働きが良くなるのだから。

 

 何も問題はない。」

 

「あの者はそうでも!

 皆の士気が低下します!!

 

 偽物といえっ! 

 誉れ高きマリーンの鎧を背負っているのですよ!?

 

 それがあのようなっ!!!」

 

「淫行を目撃した程度で下がるのかっ!?

 貴様の士気はっ!!!」

 

「ライノロフス殿っ!!?」

 

ガッ!!

「どうした!見ろっ!!! 

 ヤツの行為に憧れでも抱いたかっ!!?ええっ!!!

 下衆な行為に興味があるのかっ!!?ああっ!!?」

 

「・・・っ! 私は そのようなことは・・・。」

 

「ふんっ!!

 お前たちはどうだ!?

 そんなもので皇帝陛下への畏敬は薄れるのかぁっ!!!」

 

ざわざわ・・・ 

 

「情けないっ!!まったくもって!!!

 

 小娘一人の蛮行をとやかく言う前に!!

 淫乱ごときに気をもまれる己自身を恥じよっ!!!!」

 

ライノロフスの怒号が飛び交う中 

少女は 何食わぬ顔で身を震わせる。

 

 

 


 
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